LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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Theatreの記事一覧

能@キングス・プレイス

2016.05.14
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(Kings Place, from L to R: Kiyoshi Yoshitani, Mitsuhiro Kakihara, Tatsushi Narita, Yukihiro Isso, Masaki Umano, Yoshimasa Kanze

今週末、2016年5月13日と14日、キングス・クロス駅から少し歩く所にあるキングス・プレイスで、日本で「能」を学んだイギリス人が企画した「能」のイヴェントが催される。能はおそらく今まで全く観たことないので、折角だから日本人演者による本格的な舞台を観たかったので、昨晩の舞台を。

Noh at Kings Place, London

Yugen – the mysterious elegance of classical Noh
Noh Reimagined
Music / Friday, 13 May 2016 - 7:30pm / Hall One


Yoshimasa Kanze Noh Shite main dancer-actor

Yukihiro Isso Nohkan Flute

Mitsuhiro Kakihara O-tsuzumi- hip drum

Tatsushi Narita Ko-tsuzumi- shoulder drum

Yoshitani Kiyoshi Taiko- stick drum

Masaki Umano - Shite and Koken

This programme will include highlights from the classical Noh plays Tenko and Toru, both by the foremost Noh playwright-performer Zeami (1363-1443).

Tenko refers to a celestial hand drum and is also the name of a boy who possesses this amazing drum. The boy had refused to give the drum to the emperor and drowned when the drum was taken from him. But when the drum makes no sound when played for the emperor, a memorial service is held for the boy. There, the ghost of Tenko appears and dances, then disappears between waking and dreaming as day breaks. Toru was a prince who retired from court to spend the rest of his life elegantly enjoying arts in his country home where he re-created a replica of Shiogama Bay with its pine trees and beautiful moon. In the play, he appears to a travelling priest and dances in the moonlight.

Yukihiro Isso (Nohkan flautist) together with other artists will perform his original pieces inspired by Noh ghosts and demons.

Generously supported by Yakult, Daiwa Anglo-Japan Foundation, Great Britain Sasakawa Foundation, Arts Council England, Arts Council Tokyo, and Japan Foundation.


 昨晩の客層は日本人、非日本人の比率がちょうど半々という印象。昨晩はソールド・アウトだったし、前半はほとんど満席のようだった。しかし、休憩から戻らなかった英人客は少なからず居た。思うに、外国人が思う「理想」の日本の印象と、「伝統」の日本の差があったのかなと推測する。

 毎週、毎月、能を観たいかと問われれば即答はできない。でも、昨晩の舞台は個人的に多くの刺激を受けた。最初の演目は「三番叟」の音楽だけ。肩の所で鳴らす小鼓、腰の部分で叩く鼓、そして笛の3人。鼓2人だけの部分では、「なんてfunkyな」。主旋律のない、打楽器だけの部分のとても挑戦的で、しかも美しさを失わないリズム。

 全体を通して感じたのは、欧州の文化と日本の文化の相違点。例えば、観世芳正さんが謡うとき、大きく口を開けてオペラ歌手のように朗々と声を響かせることはなかった。最も汗をかいていたKakiharaさんは汗を拭わなかった。その演奏に集中する姿勢が本当に美しく、清々しいと感じたのは日本人だからなのかな。

 僕も含めて、多くの人が戸惑ったであろう点は、どこで拍手をしていいのか。例えばウィグモア・ホールだと、演者が舞台に出てきた時に拍手、パフォーマンスが終われば拍手。昨晩、多くの演目で、「あれ、ここで終わりなのかな?」という、どうもクライマックスを迎えたという終わり方はほとんどなかった。演者の皆さんが動きを止め、すっくと立ち上がったので、終わったんだとわかる。

 最も印象に残ったのは、舞台上での皆さんの姿勢の美しさ。背筋が揺れることのない、そしてその姿勢の美しさが緊張感を強いない自然な姿に、観ている僕の居住まいも自然と矯正されたような気分。日頃、姿勢の美しさがどのようなことなのかの理解をもっていないと思われるイギリス人に囲まれていると、日本人の姿勢の美しさはもっと語られても良いのではと思う。

 キングス・プレイスの予定は全く追っていないので、教えてくれたブログ仲間に感謝。

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ハムレットを求めて何万キロ:カンバーバッチ@バービカン

2015.08.05
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(ガーディアンから無断拝借)

今日、8月5日に、バービカンでベネディクト・カンバーバッチ主演の「ハムレット」が初日を迎える。テレヴィ・ドラマも映画は滅多に見ないから彼がどれほどの人気・実力を誇るのか全く知らないが、盛り上がりが凄い。

バービカンの情報
http://hamlet.barbican.org.uk/

Cumberfans on Hamlet: 'I can’t imagine what it will be like to see him'
http://www.theguardian.com/culture/2015/aug/04/benedict-cumberbatch-hamlet-shakespeare-barbican

 この記事によると、アメリカのど田舎、フィリピン、そして日本からもこの舞台を観に来る人が居るそうだ。ブログ仲間の方のチケット争奪戦観察の記録。

http://ameblo.jp/peraperaopera/entry-11905461560.html

 当初、当日券は100枚との情報もあったようだが、30枚のみ。

£10 seats announced for Benedict Cumberbatch's Hamlet
http://www.theguardian.com/culture/2014/jul/31/10-pound-seats-benedict-cumberbatch-hamlet

 さすがにこれだけの需要があるとライヴ・ヴューイングもあるのではなかろうか。

[追記:9月15日]
 もう一つホットな、ニコール・キッドマン主演の舞台レヴュー。

Photograph 51 review – Nicole Kidman captures the ecstasy of scientific discovery
http://www.theguardian.com/stage/2015/sep/14/nicole-kidman-photograph-51-noel-coward-theatre-rosalind-franklin-review

Golem @ Young Vic

2015.01.01
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演劇を観に行かない最大の理由は、台詞を咀嚼するのが面倒くさいから。が、友人からこれはかなり面白そうだからと説得され、ヤング・ヴィクで上演中の「ゴレム」という舞台を観てきた。思いのほか楽しめた。

http://www.youngvic.org/whats-on/golem

 ガーディアン本紙以外は、5星、4星のレヴューで評判が高く、観に行ったのは土曜日のマチネながらほぼ満席の盛況だった。この舞台で注目を集めた点の一つは、中心キャラクターであるゴレムがCGであること。このCGを含めて舞台セットはとても秀逸。

 得意分野でない舞台ということで、観ている時に過去の経験からのレファレンスを総動員した。今回の「ゴレム」の主題である、コンピューター等に人間の自主性が徐々に奪われて行くというのは、手塚治虫が「火の鳥」の未来編で描いた物語と重なる。

 現代ということで、オンライン・ショッピングを利用するのに似た感覚で、人間が自分で考える能力を次第に去勢されて行く(と言うのはパワフルすぎる表現ではないかとは、同行した友人の意見)。言い換えると、自分の生活の中で、decision makingの能力をコンピューターによって次第に弱体化されて行く過程が描かれる。

 具体例は、僕たちの日常生活に溢れている。アマゾンを使えば、毎日のように、「Mr Moriya, we think you may like these items because you have bought such items」というメイルが届く。最初のうちはうっとうしく思う程度でも、次第にもしかしたらアマゾンが勧める商品を買っていれば選ぶ面倒が省けると思ってくるだろう。

 このような舞台だから、舞台上のパフォーマー達の演技力を判断することは難しい。パトロナイジングな印象を感じる場面もあった。しかし、「今」を強く感じるという点では、よく練られた舞台。

伊川東吾さんのインタヴュー@ガーディアン

2014.10.31
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(ガーディアンから拝借)

今日のガーディアンに、日本出身の俳優、伊川東吾(Igawa Togo)さんへのインタヴューが掲載されている。

Togo Igawa: how I became the RSC’s first Japanese actor
http://www.theguardian.com/stage/2014/oct/30/togo-igawa-how-i-became-the-rscs-first-japanese-actor

 舞台は数年に一回観るか観ないか程度なので、伊川さんのことは初めて知った。今週の水曜日、10月29日から始まった「Who do we think we are?」に出演しているからの様だ。

http://southwarkplayhouse.co.uk/the-little/who-do-we-think-we-are/

 舞台の国、イギリスでこのように活躍されているのは素晴らしいこと。

The Wind in the Willows at Duchess Theatre: 柳に吹く風、ウェストエンドに移動

2014.01.01
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(プログラムの表紙)

これまでの十数年、ロイヤル・オペラ・ハウスでは数々の名演や名場面に遭遇する経験をしている。本当に幸運なことだと思う。しかしながら、作品として最も好きなのは、ウィリアム・タケット演出の、「The Wind in the Willows」。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1844.html

 今シーズンも再演が決まり喜んだのだが、ロイヤル・オペラ・ハウスの作品として始めてウェスト・エンドの劇場の一つ、ダッチェス・シアターでの公演となった。

http://www.roh.org.uk/news/wind-in-the-willows-to-transfer-to-west-end-for-christmas

 演出のタケット、ロイヤル・オペラ・ハウスにとっては良い試みなのかもしれないが、ウェスト・エンドには全く馴染みのない僕には、最初から不安がつきまとっていた。最初の不安は、チケット代の高騰。リンベリィの最前列ど真ん中、噛りつきの席が£20−位だったのが、その倍以上。
 
 とりあえず、プレヴューの初日に劇場に行って唖然としたのは、そのうらぶれた雰囲気。こんな施設にこの値段はおかしいのではないかと。更に、手数料と払いたくなかったので、チケットはロイヤルのウェブ系由で予約した。その際、ロイヤル側のウェブでは最前列は売りにだされ居なかった。

 最前列が売りにだされていなかったのは、結果として幸運だった。というのは、舞台がかなり高くて、最前列だと出演者の姿がかなり見切れてしまう。最前列に座った親子連れは子供が舞台を観られなくて大変そうだった。

 という不満をイギリス人の友人に愚痴ったところ、「君はね、ロイヤル・オペラ・ハウスにスポイルされているからだよ。ウェスト・エンドの劇場なんてどこも同じだけど、施設を向上させる費用をまかなうことは大変なんだ。ロイヤル・オペラ・ハウスは、彼らももちろん独自の努力をしているけど、国からの予算や、寄付金集めのイヴェントを行う企画・運営部門の規模は、ロンドンだけでなく、イギリス国内で最高・最良なんだ。そのオペラ・ハウスとウェストエンドを比較しては公平ではないな」、と。

 で、そんな会話の数日後に起きた事故。

Apollo theatre collapse injures more than 80 people in London's West End
http://www.theguardian.com/uk-news/2013/dec/19/apollo-theatre-london-balcony

 劇場への不満は全く解消されないが、舞台は本当に楽しい。激戦のクリスマス時期にあって、更に値段が上がったにもかかわらず、クリスマス前はほぼ完売状態。リンベリィのときと比べ一つ素晴らしいのは、プログラムの内容がとても充実している。

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 それでも、次回の再演は是非、リンベリィに戻して欲しい。リンベリィで感じた舞台との親近感はダッチェスでは全く感じられない。

 柳は2月1日まで。土曜日のチケットはかなり売れているが、平日はまだたくさん残っているので、未見の皆さん、是非。

 で、今年のクリスマス時期のリンベリィでは、家族向けを歌った新しいオペラ。

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http://www.flickr.com/photos/royaloperahouse/sets/72157638311931833/

 酷かった。リンベリィの空間を新しいやり方で作り上げた舞台セットは記憶に残るものだが、肝心の音楽が最低。これもまた、再演されずに記憶の彼方に消え去る作品だと思う。

『按針と家康』、サドラーズで公演

2012.10.13
昨日のイヴニング・スタンダードのエンタメ情報欄にざっと目を通していたら、懐かしくもぎょっとする写真が飛び込んで来た。

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 サドラーズ・ウェルズで侍の物語って、冗談?!と思いつつ今日、サドラーズのウェブを検索したら来年1月から2月にかけてのの上演予告、さらにチケットが発売になっていた。

http://www.sadlerswells.com/show/Anjin-The-Shogun-and-The-English-Samurai

William Adams, known in Japanese as Anjin, was an English maritime pilot who is believed to be the first Englishman to ever reach Japan. His story is brought to the Sadler’s Wells stage in a stunning new play directed by the Royal Shakespeare Company’s Artistic Director, Gregory Doran.

Washed ashore on a strange and exotic land, Anjin soon finds himself as the trusted adviser to the powerful Shogun Tokugawa, drawn to the heart of a dangerous clash of cultures and struggle for power, whilst war threatens to erupt all around. Torn between two worlds and two lives, Anjin must decide who he really is, and where he really belongs.

An epic and compelling tale of friendship, honour, love and sacrifice, this beautifully staged new production stars the celebrated Japanese actor Masachika Ichimura alongside Stephen Boxer, Yuki Furukawa and an international cast direct from Japan and the UK.

Performed in English and Japanese with English surtitles.


 これって、秋・冬公演のパンフレットで予告されていなかったと思うし、サドラーズから追加のお知らせも来ていなかったように思う。正直なところ、このような舞台をサドラーズがやる意味があるのかなと。ハンブルク・バレエとか、パリ・オペラ座バレエのモダンとか、ベジャールやプティのプログラムを上演してほしいぞ。
 で、いつ決まったのだろうと思い、日本語の情報をググったら、今年の6月にイギリス公演のことが既に報道されていた。

http://www.theaterguide.co.jp/theater_news/2012/06/06_02.php

 ダンスではない上に、台詞が日本語と英語のミックスというのには躊躇いがあるけど、初日の最前列が手つかずのままだったので、ど真ん中を買ってみた。ちなみに、最終上演の最前列の中央の二席は既に売れていた。

 ま、市村正親さんの舞台を最前列で観るなんてこと、日本では食指が動かないだろうから記念にはなるだろうけど一体どんな舞台になるんだろうか。

コリオレイナスby地点@グローブ劇場

2012.05.24
ロンドン2012フェスティヴァル(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1636.html)の一環であるワールド・シェイクスピア・フェスティヴァル2012は、4月21日から6月9日までテムズ河畔にあるグローブ劇場を中心に上演が続いている。

http://www.worldshakespearefestival.org.uk/

 グローブ劇場での上演に日本から参加しているのは、京都に拠点を置く「地点」という団体。

http://chiten.org/index.php

 彼らがロンドンに来るのは知っていたけど、英語であろうと日本語であろうと、演劇が舞台に生み出す大仰さが駄目で行くつもりは無かった。が、行けなくなってしまったイギリス人の友人(演劇ファン)からチケットを譲り受けたので22日に観てきた。シェイクスピアの台本はとても面白い内容でそちらは思いのほか楽しんだのだが、熱演する俳優の皆さんの普通だったらあり得ないような大げさで、不自然な台詞回しには引いてしまった。

 ずっと以前に同じことを書いたが、シェイクスピアとのつながりは積極的に持たないようにしていた。演劇だから。ということで、今回の「コリオレイナス」の物語も全く知らなかったのだが、21世紀になっても世界のどこでも同じことが延々と続いている政治と民衆のおろかな関係を鋭くえぐっていて非常に面白かった。あるのかどうか知らないが、ぜひ、オペラのフォーマットで観てみたい。

 「そんな日本語の話し方、いつの時代の、日本のどこで、どんな人がしゃべっているの?」と問い正しいたいと拳を握ること数知れず。もしかしたらそれが正しい系統の日本語だと言うなら、僕の耳は日本語を聞くことを拒否するだろう、それほど不自然で耳障りなセリフ回し。演出の意図はあるのだろうけど、僕にはどうしてあのように言葉を繰り出さなければならないのか、さっぱり理解できなかった。また、穿った見方だけど、一人の俳優が延々と台詞を言い続けるのは、記憶力を見せびらかしているだけなのかと。言い換えれば、僕は演劇には向いていないということ。

 To be fair to the actors, 終演後は観客からは惜しみない拍手がなんどもなんども贈られた。熱演だったことは確かだ。また、舞台後方でずっと音楽を奏で続けた音楽家の演奏はとても楽しかった。

 閑話休題。「コリオレイナス」の前半、始まって30分くらいした頃、突然一機のヘリコプターが劇場の上空に現れ、10分くらいホヴァリングした。その轟音は俳優の皆さんの声をかき消すほどの大きさ。オープン・エアの劇場の上空にとどまるなんて無粋にもほどがあると、また俳優の皆さんはやりづらいだろうと思っていた。
 翌日、5月23日のイヴニング・スタンダードを読んでどうしてあのヘリコプターが突然現れ、上空にとどまり続けたかの理由が判った。

Author Will Self flees with his children after roof of £1million Georgian Stockwell townhouse collapses

http://www.thisislondon.co.uk/news/london/author-will-self-flees-with-his-children-after-roof-of-1million-georgian-stockwell-townhouse-collapses-7781222.html

 グローブ劇場からそれほど遠くないところにあるストックウェルという地域でヴィクトリアンのタウンハウスの屋根が突然崩れ落ちたとのこと。その崩落事故に誰かが巻き込まれ、その場合まだ生存者がいるかどうかを上空から調べていたらしい。

Police, ambulances and fire crews were at the scene in minutes and a helicopter with a heat-seeking device hovered overhead to ensure nobody was trapped but no one was hurt.

 地点の俳優の皆さんにとっても降って湧いた災難だったろうけど、家に戻ることができなくなっている皆さんも散々な気持ちだろう。報道によると、今回の事故は保険がカヴァーしていない類のものらしい。地震が無くても家が崩れる国、それがイギリス。

The Bee @ SOHO Theatre

2012.02.24
今日、24日から東京で始まった野田秀樹演出の「THE BEE」を、ロンドンの初日、1月24日に観た。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120223/k10013223311000.html

 朝日新聞の報道でニュー・ヨークで上演されて大好評で、ロンドンにも来るという記事を偶然読んだので、早めにチケットを購入できたのは幸運だった。が。
 中身を知らないまま舞台を観ることは多くのひとが経験していることだし、当たり外れは常にある。そうわかっていても、この舞台は、僕個人の問題にすぎないけど、ただ一つのことがどうしても受け入れられず、結果としてどんよりした気分で家路についた。

 別の日に舞台をご覧になったかんとくさんの感想。出演者たちの熱演、そして舞台のことをとてもわかりやすく、鮮明に書かれている。

http://blog.goo.ne.jp/bigupset39/e/504e77d59947e7dcd42cafdb91f171b6

 何がだめだったかというと、主人公のIdoが人質の子供の指を切り落とす(振りをする)場面。大人の俳優が演じていると視覚で確認でき、頭で「これは舞台」と理解してなお、子供の指を切り落とすという演技がどうしても生理的に受け入れられなかった。それだけ、俳優たちの演技に説得力があったということだが、2度、3度と繰り返されると、舞台の意図を理解しようとする思考プロセスよりも、暴力をふるってでもその残虐行為をやめさせたいという不条理な気分が勝ってしまった。

 かんとくさんがこの場面を的確に表現している。

>残虐行為でさえ、ルーティン化すると淡々と日常のなかに溶け込んでしまう様子

 僕の前の列に座っていた外国人カップルは、一度目、そして二度目には目を背けていたものの3度目、4度目になると「またか」という感じで肩をすくめただけだった。
 野田秀樹が意図した「暴力による報復の連鎖を批判する」という点は、成功したと言えるのだろう。しかしながら、ことイギリスに限れば、テロ・戦争への恐怖が、自国内から他国へと移っているように感じる現在、今回の舞台を、イギリスの観客たちに自分たちの生活と関連づけてみることを可能とさせるほどの普遍性を持っていたかどうかは、僕には判断できない。

 演劇初心者レヴェルのときにこのような気分を経験すると次の舞台を観る気が萎んでしまう。が、舞台を観てからひと月が経過し、俳優たちが生み出したあの熱気を思い出している。次はもっとシンプルな舞台を観に行きたい。

2010年に観た、「ムサシ」の感想。
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1196.html

春琴2回目、およびバービカン情報

2010.11.13
8日に、春琴を再び観劇。この日は、それなり日本文化に親しんでいる二人のイギリス人の友人と一緒。彼らの感想を含めて、感想を箇条書きで。

☆友人二人、WとY双方が痛く気に入ったのが、ナレイター役の立石涼子さんの声。勝手に解釈すると、どうやら気が休まるらしいアルトだからとのこと。イギリスにはアルトやメゾ・ソプラノに著名なオペラ歌手が多いようだから、その系統がすきなのかな、と。

☆そのナレイションの内容が、初日(11月4日)から変更されていた部分があった。個人的には、ナレイションの終わり方は前回のほうが好きだが、11月8日の終わり方は初日より丁寧に練られた印象だった。その変更は、ガーディアンのレヴューの、

But the virtue of the story is that its meaning is left open.

に呼応している。

☆Wによる、「嫉妬って、表現の違いはあるけれど、どの文化でもあるのね」は、春琴の佐助への態度をまさに言い当てている。

☆今回のロンドン公演で、レヴューで一人の俳優だけを取り上げて評価するということがないのは、舞台上の俳優たちが生み出すアンサンブルに瑕がないということなのではないかと想像する。日本的といえば日本的だが、今回の舞台は一人の俳優にだけ頼っているものではないと強く感じた。

☆ロンドン公演2回目にして、ロンドナーの多くがこの舞台をコンテンポラリィな舞台とより鮮明に意識しだしたように思う。もう一度くらい、ロンドン公演があってもいいなと。

☆パリでも、チケットの売れ行きは上々らしい。劇場のウェブの解説(英語!)を読むと、コンプリシテの舞台だから、というの大きな売りのよう。舞台が始まって、演者にフランスでどのような評価がくだされるのか興味津々。

☆今回の「春琴」の再演を含めて、昨年と今年はロンドンで日本の舞台を多く観ることができた。2009年は春琴、KABUKI十二夜http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1039.htmlhttp://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-995.html)。今年は、MUSASHIhttp://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1196.html)、歌舞伎http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1214.html)と春琴の再演。東京では演劇や歌舞伎なんて観たことなかったけど、ロンドンにいるうまみを満喫している気がする。

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(タイムズから。£1-も払ったんだから使っても良いかなと。今回の再演の舞台からなのかは不明)

 この秋、バービカンは日本文化にどっぷり浸っている。ギャラリーではファッションの大変素晴らしい展示。そして映画も北野武や黒澤明の作品を多く上映している。その中で異彩を放っていた、そして居るのが溝口健二監督による「瀧の白糸」。
 10月24日に、イギリス在住の日本人女性弁士と、イギリス人女性による琴の伴奏つきで上映されたのを見た。全然興味がないまま、イギリス人の友人に引きずられるようにして観にいったのだが、もう、吃驚。こんな素晴らしい心理劇が、無声映画の時代に日本で作られていたなんてまったく知らなかった。溝口監督の作品は、ほかに「山椒大夫」と「雨月物語」も上映されたけど、売り切れ御礼になったのはこの「瀧の白糸」だけ。あまりの反響に、急遽2011年1月23日の再上映が決まりチケットももう手元にあるのだけど、バービカンの予定からは削除されている。興味のある方は、こまめに確認してみてください。

 文化予算が大幅、というか悲劇的というほど削減されるイギリスの文化施設のほぼすべてが同様の行動に出ているが、バービカンもメンバーシップを三段階に分ける新しい制度を導入した。したからイエロォオレンジレッド。既存会員は自動的にオレンジになっているが、最高ランクのレッド・メンバー(年会費、£100-)になってみてはとの誘いが来る。レッドの売りのひとつは、新しくあつらえた、レッド会員だけが使える専用ラウンジ、レッド・ルーム。春琴を観にいった日に、上演前に試してみた。
 込んでいなければ雰囲気は結構良い。ワインも値段の割にはいけるし、何より会員証を提示すれば飲食費が少し割引になる。£100-をはらって、このVIPルームを元が取れるほど使う気になるかどうかは、これからのプログラムしだい。

春琴のレヴュー

2010.11.10
春琴のレヴューがほぼ出揃った。面白いことに、どれも4つ星。インディペンデントのレヴューはあらすじ紹介の域を出ていない。個人の推測の域を出ないけど、この変化は、2009年の公演以降、日本文化への理解が「異国趣味」から「成熟した文化」という視点に移行してきたからではないかなと。

Shun-Kin – review

Michael Billington
guardian.co.uk, Wednesday 10 November 2010 22.15 GMT


http://www.guardian.co.uk/stage/2010/nov/10/shun-kin-review


Complicite's version of a 1933 Japanese story by Jun'ichir¯o Tanizaki was coolly received when first shown nearly two years ago. I don't know why. Simon McBurney's production is one of the company's finest achievements. It offers a compelling portrait of sadomasochistic love, is full of moral ambivalence and is staged with miraculous delicacy and wit.

Tanizaki's tale reconstructs a true story from 19th-century Japan. It revolves around the relationship between the domineering Shun-kin, an Osaka merchant's blind daughter, and the devoted Sasuke, who learns from her the art of playing the stringed "shamisen", and who becomes her lifelong servant and secret lover. So intense is his passion, in fact, that when Shun-kin suffers a facial disfigurement, he performs an astonishing act of self-sacrifice. But the virtue of the story is that its meaning is left open. It can be seen as the ultimate triumph of masochistic ardour, as a study in the reversal of traditional Japanese gender roles or as an attack on a hierarchial society now eroded by industrial modernisation.

By using multiple narrators, McBurney allows for every possibility. He also turns a story filled with cruelty and violence into an object of aesthetic pleasure. The domineering Shun-kin is brilliantly represented first by a petulant puppet, then by a masked female actor, and finally by one of the puppeteers. The staging conjures a vanished world with refined simplicity: poles become waving branches, flapping papers turn into soaring larks and Honjoh Hidetaro's shamisen music even evokes the horrific act. The piece is enthralling.


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