LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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Christoph Prégardienの記事一覧

Christoph Prégardien@Wigmore Hall on 14th Mar 2017

2017.03.16
3月14日、昨年の秋以来のクリストフ・プレガルディャンのリサイタル。

昨秋の感想
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-2768.html

写真
https://www.flickr.com/photos/89578620@N00/albums/72157678027585574
(スマフォだとどうしても白色が強調されてしまう。照明の所為だろうか)

Christoph Prégardien invariably gives life to metaphor, irony, pathos and the full span of rhetorical invention of poetic texts.

The revered German lyric tenor is joined by Julius Drake for a programme of late Schubert songs, rich in emotional content and resonant in its depth of psychological reflections on the natural world.

Franz Schubert (1797-1828)
Auf der Brücke D853
Der liebliche Stern D861
Im Walde D834
Um Mitternacht D862
Lebensmut D883
Im Frühling D882
An mein Herz D860
Tiefes Leid (Im Jänner 1817) D876
Über Wildemann D884
Interval
Dass sie hier gewesen D775
Greisengesang D778
Du bist die Ruh D776
Der Tod und das Mädchen D531
Im Walde D708
Nacht und Träume D827
Fischerweise D881
Totengräbers Heimweh D842
Der Winterabend D938



 内容は、聞いたことがある歌と初めて聴く歌がちょうど半分くらいづつだった。久しぶりに聴いた「死と乙女」。短い曲、内容に反して暗くない旋律で語られる有無を言わせずに命を奪う死の無慈悲さが、プレガルディャンのよく考えられた解釈により胸の当たりにひんやりとした感情とともに叩き込まれる。まさに一期一会の歌唱だった。そのあとに続く、「森で」、「夜と夢」、「漁夫の歌」の配置は面白いものだった。

 4月6日に行けないことがほぼ確実になったので、次に彼の歌を聴けるのはいつになることか。来シーズン、ウィグモアへは1回、しかもランチ・タイム・コンサート。

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クリストフ・プレガルディャン@ウィグモア・ホール:soul liftingなリサイタル

2016.10.24
ChristophPregardien.jpg
(ガーディアンから無断拝借)

10月20日、ウィグモア・ホールでクリストフ・プレガルディャンのリサイタル。僕にとって、2016年のプレガルディャンの聴き納め。最高に素晴らしいリーダー・アーベントだった。

Christoph Prégardien tenor
Christoph Schnackertz piano

Christoph Prégardien makes a welcome return to Wigmore Hall with Christoph Schnackertz to perform Britten’s evocative Hardy cycle, Winter Words, and a group of the ever-inventive strophic songs by Schubert.

Although best known today for his G minor Violin Concerto, Max Bruch was a prolific songwriter whose output includes fine settings of Geibel, Goethe and Meörike, a selection of which is presented in this recital.

Franz Schubert (1797-1828)
Tischlied D234
Der Rattenfänger D255
Wer kauft Liebesgötter? D261
Tischlerlied D274
Der Entfernten D350
An die Harmonie D394
Die Herbstnacht D404
Der Herbstabend D405
Abschied von der Harfe D406
Die gefangenen Sänger D712
Die Mutter Erde D788
Des Sängers Habe D832

Interval

Benjamin Britten (1913-1976)
Winter Words Op. 52

Max Bruch (1838-1920)
Lausche, lausche! Op. 15 No. 1
Goldne Brücken Op. 15 No. 4
Frisch gesungen Op. 7 No. 6
Russisch Op. 7 No. 3
Um Mitternacht Op. 59 No. 1
Zweites Kophtisches Lied Op. 59 No. 3
Kophtisches Lied Op. 59 No. 2


 ブリテンは8曲。前半の4曲は、さすがのプレガルディャンでも違和感ありまくりだったが、後半の4曲は安心して聴いていられた。

 前半のシューベルトの歌曲パートでは、聴いたことがあるの1曲だけだった。ということで存分にプレガルディャンの歌を楽しむことができた。高音域が高くない曲が多かったこともあるかもしれないが、プレガルディャン、絶好調。いつにも増して、歌われる一つ一つの言葉がその綴りを即座に思い浮かべられるほどくっきりと聞こえる。シューベルトの2曲目の歌詞の中に、「nötig(必要な)」という言葉があった。これ、カタカナで発音を書くと「ネティヒ」。でも、これをオー・ウムラウトとして発音するのは歌の中ではけっこう難しいのではと思ったのだが、プレガルディャンがこの単語を歌った途端、耳に届いた響きはオー・ウムラウトだった。

 この夜は、聴衆は7割ほどと、インゴルシュタットhttp://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-2718.html)やシュヴァルツェンベルクhttp://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-2753.html)の満員の会場と較べると寂しい限り。しかも、聴衆の平均年齢のなんて高いこと。僕が若く見えるほどだった。ウィグモア・ホールにはしっかりとしたマーケティングをしてもらいたいもの。

 で、そんな入りだし、レヴューなんてでないだろうと思っていた。しかし、今朝のガーディアンのレヴュー欄に彼の顔写真が掲載されていた。しかも、満点、五つ星!

Christoph Prégardien review – an object lesson in Lieder singing
https://www.theguardian.com/music/2016/oct/23/christoph-pregardien-review-oxford-lieder-festival-schumann-project

 違った。10月22日のオックスフォード・リーダー・フェスティヴァルでのリサイタルだった。オックスフォードへ行くのは、インゴルシュッタとへ行くよりも僕には難しい。

Max Bruch’s songs are hardly known at all, but the seven that Prégardien and Schnackertz included revealed two gems, the lingeringly beautiful Lausche, Lausche! and the haunting Um Mitternacht.

 意地悪ACが書いているマックス・ブルッフの7曲のリートは、ウィグモアでも白眉だった。ブルッフのことは全く知らない。そしてプレガルディャンの歌は、今晩ここに居られるのは、奇蹟、少なくとも最高の一期一会、そうとしか思えないほど彼の声に包まれる幸せだけだった。最後の「コプティク・ソング」が歌われている間ずっと、「これがソウル・リフティングなんだな」と、魂が高みに登っていくような形容しがたい高揚感だった。

 アンコールは、リストの歌曲を一曲。

 終演後、グリーン・ルームへ。まず、11月27日、オランダで催されるリサイタル(http://www.petercaelen.com/event/christoph-pregardien-michael-gees/)には当地の友人が参加することを伝える。

 「インゴルシュタットの舞台は、少なくとも録音はされているんですか?」

 「どうかな。ちょっと判らないな」

 「本当に素晴らしい舞台でしたよね。もう一回くらい、どうですか?」

 「僕も本当に楽しんだよ。またやってみたいね」。

 ということで、日本のオペラ関係者の皆さん、どうか企画/実現してください。会場はサントリィ・ホールでお願いします。

 11月15日には、ウィンブルドン国際音楽フェスティヴァルでプレガルディャンは歌う。

http://www.wimbledonmusicfestival.co.uk/christoph_pregardien.html

 シューマンとマーラーを歌うから行きたいのだが、イングリッシュ・ナショナル・バレエの「ジゼル」、ロンドン公演の初日。泣く泣く断念。2017年3月14日のウィグモア・ホール公演は、サドラーズでのセルゲイ・ポルーニンの公演初日と重なっているが、これは迷うことなくプレガルディャン。

 いつも熱く書いているけど、日本にいる友人達がプレガルディャンの公演の観に行ってくれるのかどうか。オペラの師匠が、今年の春、「東京・春の音楽祭http://www.tokyo-harusai.com/)」でのプレガルディャンの「冬の旅」を聴いて、素晴らしかったと教えてもらったくらい。来年の4月上旬までの彼のスケジュールでは、日本での公演の予定は全く無い。

 今週末は、ドイツのマインツで、メンデルスゾーンの「エリアス(または、イライジャ)」。

http://www.staatstheater-mainz.com/web/veranstaltungen/extras/domchor

 教会で歌うからなのか、チケットは€10。行きたかった。

プレガルディャン父子@シューベルティアーデ

2016.09.13
スクリーンショット 2016-09-13 14.46.55
(パパ・プレガルディャン)

スクリーンショット 2016-09-13 14.46.36
(ユリアン・プレガルディャン)

オーストリアの山奥の村で毎年開かれる「シューベルティアーデ」に行ってみるかと思い至ったのには幾つかの理由。まず、ロンドンのブログ仲間のレポに興味をかき立てられた。

シューベルト祭のアンゲリカ・カウフマン・ホール in Austria
http://ameblo.jp/peraperaopera/entry-11917699303.html

 クリストフ・プレガルディャンの「イドメネオ」を観にインゴルシュタットへいくのなら(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-2718.html)、同じドイツ語圏だし、オーストリアは初めての海外旅行以来、訪れたことが無いから行ってみるかと。そして、昨シーズと今シーズン、ロンドンのウィグモア・ホールがシューベルトの歌曲全曲制覇という企画(https://wigmore-hall.org.uk/news/schubert-the-complete-songs)をやっているが、シューベルティアーでに行けば滅多に歌われることがない曲も聴けるだろうとの期待。

2016年8月29日@シュヴァルツェンベルク
http://www.schubertiade.at/produktionen/sophie-karthaeuser-christoph-prgardien-julian-prgardien-michael-gees.html/

Sophie Karthäuser: Soprano
Christoph Prégardien: Tenor
Julian Prégardien: Tenor
Michael Gees: Piano

FRANZ SCHUBERT (1797–1828)

The Complete Songs, Programme #39

Des Fräuleins Liebeslauschen (Schlechta), D 698 *°^

Don Gayseros (Fouqué), D 93 *°^

Lebenslied (Matthisson), D 508 ^

Alte Liebe rostet nie (Mayrhofer), D 477 °

Der Traum (Hölty), D 213 *

Der Gott und die Bajadere (Goethe), D 254 *°^

Sprache der Liebe (A. W. v. Schlegel), D 410 *

Wiedersehn (A. W. v. Schlegel), D 855 ^

Fülle der Liebe (F. v. Schlegel), D 854 °

Der Vater mit dem Kind (Bauernfeld), D 906 *

Erlkönig (Goethe), D 328 *°^

– Intermission –

Prologue
Die drei Sänger (Bobrik), D 329 *°^
(fragment, completed by Julian Prégardien)

The First Singer °
An die Leier (Bruchmann), D 737
Gruppe aus dem Tartarus (Schiller), D 583
Strophe aus »Die Götter Griechenlands« (Schiller), D 677

The Second Singer ^
Des Sängers Habe (Schlechta), D 832
Der Rattenfänger (Goethe), D 255
Der Geistertanz (Matthisson), D 116

The Third Singer *
An die Sonne (»Sinke, liebe Sonne«) (Baumberg), D 270
Lied der Mignon (»Nur wer die Sehnsucht kennt«) (Goethe), D 877/4
Wehmut (M. v. Collin), D 772

Epilogue
Nachtstück (Mayrhofer), D 672 *°^
arranged for three voices by Julian Prégardien


* Sophie Karthäuser

° Christoph Prégardien

^ Julian Prégardien


 聴いたことのある歌曲はおそらく2曲だけであとは初めての曲ばかりでとても楽しめた。ただ、ゾフィ・カルトホイザー(ベルギー出身だから発音は違うかも)の声は、僕にはかなり軽く聞こえた。それと「魔王」。この曲を3人でわけて歌うのは無理があるのではなかろうかと思った。で、終わった直後の印象は散漫。プログラムの流れでこの曲が入るのは理解できるのだが、3人で「魔王」を歌い分ける意味は無かったように思う。

 初めて聴くカルトホイザーは、上手いのだがプレガルディャン父子と較べてしまうと声がどうしても軽い。アンコールの一曲目で歌われた、「グラツィエ」で終わるモーツァルトの歌曲が彼女の声に最もあっていた。

 ユリアン、「イドメネオ」の時にも同じことを感じた、どうしたんだこの好調ぶりは、と言うくらい素晴らしい歌唱。2年前、ウィグモアでの父子競演の時(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-2369.html)の時から一段上に確実に到達した印象。彼は2017年1月11日に、東京の紀尾井ホールで「冬の旅」を歌う予定。

http://www.kioi-hall.or.jp/20170111k1900.html

 パパ・プレガルディャンが若い人と歌う時の傾向は、一歩下がる。手を抜くということではない。これまで、短いながらも何度か話をしてきて、彼の性格では自分がでる舞台で手を抜くなんてこと考えたこともない人だろう。既に還暦になり、マスター・クラスをやっているということがあるからかもしれないが、若い人を引き立てようとする姿勢を感じる。ということで、彼の声や解釈を味わうにはやや薄いリサイタルだった。ただ、終演後ホワイエで聴衆と語る彼らの表情はとても充実していた。歌い甲斐のあるリサイタルだったのだと思う。

 閑話休題。ウィグモアでのリーダー・アーベントで、2017年の初夏に興味深いプログラムがある。何を歌ってもチケット争奪戦が厳しいクリスティアン・ゲルハーエルがブラームスの「麗しきマゲローネ」を歌う。昨シーズン、マーリス・ペテルゼンのリサイタルの時、ロイヤル・オペラで「タンホイザー」に出演していたゲルハーエルが来ていたので、どうしてこのプログラムにしたのか尋ねた。「ウィグモア・ホールからのリクエストだよ」とのことだった。

 プレガルディャン中心とはいえ、ウィグモアの歌曲プログラムを、在ロンドンの日本人の中では僕はけっこう聴いている方だと思う。それでも、「マゲローネ」を聴いたのは一度だけ。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-475.html

 是非、聴いてみたいのだけど、チケットを取れるかどうか。

インゴルシュタット3:イドメネオ、プレガルディャン父と息子の共演

2016.07.27
スクリーンショット 2016-07-27 10.28.19

数年前から、ロンドンのウィグモア・ホールでのリサイタルは本人の病欠以外は欠かしていないクリストフ・プレガルディャン(名前の表記はこれで)。プレガルディャンのリーダー・アーベントに不満は全くない。ないのだが、遅れてきたファンとして、1度でいいから彼をオペラの舞台で聴いてみたい、ウィグモアからの帰りに、いつも思っていた。

2年ほど前だろうか、あるリサイタルの終了後に、本人に直接、尋ねた。プレガルディャン曰く、「もうオペラは歌わないよ」とのことだった。

2015年の11月のリサイタル終了後に再び未練がましく訊いたところ、「イドメネオ」を2016年に歌うと。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-2562.html

 その時に場所の名前を言ってくれたのだが、聞き取れなかった。今年の1月に改めて検索してインゴルシュタットと言う事はわかったのだが、インゴルシュタットのどこでということまではその時点でも判らなかった。

欧州でのオペラ上演に詳しい友人の助けでアウディ主催のサマーコンサートの一環である事が判った。チケット発売初日に最前列ど真ん中を奪取、同時に飛行機と宿泊を予約し、ドイツ鉄道と一悶着あったがインゴルシュタットに到着。待ちに待ったプレガルディャンがタイトル・ロールの「イドメネオ」は、コンサート形式だったが、胸の奥深くにグッとくる、とてもとても、とても素晴らしい舞台だった。

Idomeneo, Audi Sommerkonzerte
http://www.audi.de/de/audi-artexperience/sommerkonzerte/vorsprung-festival/vorsprung-17-juli.html

Wolfgang Amadeus Mozart: Idomeneo KV 366
Dramma per musica in drei Akten

Christoph Prégardien: Idomeneo
Julian Prégardien: Idamante
Christina Gansch: Ilia
Marina Rebeka: Elettra
Magnus Staveland: Arbace
Audi Jugendchorakademie
Martin Steidler, Choreinstudierung
Concerto Köln
Peter Schmidt, Artistic Concept
Kent Nagano, Leitung


会場に着くと、前日には無かった4本の木の柱が会場正面に立っていた。頂上部には王冠のような、船のようなもの。そして舞台上の左右にその柱が10本以上もあって非常に邪魔だった。オペラ上演中には頂上部の物体に下部に光が灯り、更に左右に揺れるので視界にできるだけ入らないよう、舞台の中央の歌手だけに集中した。舞台奥の壁にはスクリーン。スクリーンには海や島の画像が投影されていたのだが、最前列の席からはよく観ることができなかった。

 いつまで経ってもオペラ初心者なので歌手の技術的な面や、オーケストラの善し悪し、指揮者がどれほど素晴らしい指揮をしたのかを評論することはできない。まず、「イドメネオ」がどのようなオペラか、また各地のオペラ・ハウスがどのように舞台化したかをブログ仲間の鑑賞の記録から。

モネ劇場
http://didoregina.exblog.jp/14056612/

ロイヤル・オペラ
http://ameblo.jp/peraperaopera/entry-11958223581.html

イングリッシュ・ナショナル・オペラ
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1228.html

 舞台に登場する歌手は5人。ソプラノ2人、テノール3人というのは声の鮮烈さという点だけでもとても印象の深いコンサートだった。アルバーチェは初めて聴く歌手だった。たまに削られるらしい彼のソロ・アリアも歌ったはずで、説得力のある歌、そしてステイジ・プレゼンス。

 イリアを歌ったクリスティーナ・ガンシュを表す言葉は「清らか」。声の透明度では登場歌手の中でひときわ輝いていた。まだ若いようだが、既にキャスリーン・フェリィエ・プライズで歌い、2015年にはザルツブルクで「フィガロの結婚」のバルバリーナを歌ったそうだ。他のヴェテラン、そして超ヴェテランに臆することの無い存在感を全く失わない歌唱。

 プログラムの写真では、バルバラ・フリットーリを思わせる艶やかな笑みを浮かべるマリナ・レベカ。ロンドンでは、2010年に、ゲオルジュウが降板した「ラ・トラヴィアータ」の代役の素晴らしいデビューで知る人も多いかだろう(http://ameblo.jp/peraperaopera/entry-10594658785.html)。

 最初の登場のとき不機嫌そうな表情だったので、「あまり知られていない夏のフェスティヴァルにでるのはお気に召さなかったのかな?」と思った。が、舞台演出家の名前が表記されているように、コンサート形式とはいえ、レベカを含めて全ての歌手が迫真の演技だった。ちなみに、ソプラノ2人はドレスを代えることは無かったが、男性陣、特にイダマンテは4回ほど上着やシャツを代えていた。

 レベカの歌唱は、「旬のオペラ歌手の声って、これほどまでに美しいものなんだ」ということを久しぶりに身体いっぱいで感じることができた。最前列ど真ん中に座っていたので、当夜の目的の歌手が誰だったかを思わず忘れてしまうのほど感動。特に著名な第3幕のアリア、「D`Oreste,d`Ajace」には、多くの聴衆が言葉を失ったのではないかと思う。ネガティヴな意味ではなく、レベカの声はエレットラを完璧にこなすにはまだどこかに軽さを残しているように感じることがあったものの、第2幕での「Idol mio, se ritroso」、そして重唱での存在感、聴くことができて良かったエレットラだった。

 ケント・ナガノ(以下、マエストロ)の指揮を生で見るの初めてだった。その指揮ぶりは、オーケストラ、コーラス、そして歌手陣への信頼と慈愛を失わない、しなやかな指揮だった。マエストロの指揮ぶりは、これまで間近で観たことのあるアントニオ・パッパーノ、マーク・エルダー、そしてサイモン・ラトルとも全く違う記憶に深く、長く残る指揮だったと思う。

 今回の「イドメネオ」が最も注目されたであろう点は、イドメネオとイダマンテという王と王子をクリストフ・プレガルディャンユリアン・プレガルディャン、本当の父と息子が共演するということ。彼らの競演は、ウィグモア・ホールで聞いたことがある。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-2369.html

 リートとオペラでは歌い方がこんなに違うものなのか、というのがユリアンの最初の声を聞いた時に感じたこと。声に漲らせるパワーが違う。当夜の5人の歌手すべてから感じたのは、声が曇ることが全く無かった。とりわけユリアンは空の一点を目指してスコーンと突き抜ける声。オペラのテノールってこうでなければ。

 それまでは黒系の上着だったイダマンテが犠牲になることを決心してイドメネオと歌う時、初めて白のシャツで現れた。実の父と息子という事前情報に影響されているとはいえ、胸に込み上げる場面だった。


 クリストフ・プレガルディャンのリーダー・アーベントへの不満は全く無い。他方、彼の歌唱を初めて聴いたハイドンの「アルミダ」でのバルトリに勝るとも劣らない歌唱技術は今でも忘れること無く、彼が一線から引く前にバロック・オペラで彼の歌を聴きたいと常に願っていた。

 イドメネオの最初の登場の時、舞台左手からクリーム色のよれよれのティー・シャツ、同じ色合いのよれよれのチノパン姿の男性が苦しそうに登場してきた。「誰、あれ?」と思ったらイドメネオ・プレガルディャンだった。コンサート形式でも手を抜かずに役をつくり込んでいるのは判るし、遭難してなんとか助かった場面だからあのような衣装の方が説得力があるとはいえ、ちょっと驚いた。

 全体を通して感じたのは、パパ・プレガルディャンの現在の発声は、他の4人とは違う。年齢によるものだろうと推測するが、例えば息子のユリアンの声から感じる瑞々しさは少なかった。また、短いパッセイジからはブレスの鋭さが欠けていたように聞こえた。

 というマイナス面を忘れるほど、クリストフ・プレガルディャンの歌唱、演技からはリーダー・アーベントとは全く違う素晴らしい経験を積んできた素晴らしいオペラ歌手の舞台を「今、観ている」という気分が消えることは無かった。イドメネオのアリアだけでなく、イダマンテとのデュオ、そして3重唱、4重唱でもオーケストラの音にかき消されずにしっかりと耳に届くあの「声」は、インゴルシュタットまで来たことは良い選択だったと。

 オペラの最後、喜びのコーラスが歌われる中、独り舞台にたたずむイドメネオは、未来ある者達への慈しみと同時に、表舞台から去っていく自分が歩むであろう道が示す方向をただ見つめるだけの王の孤独感に優しく包まれているようだった。

 関係者の方から伺ったのは、このプレガルディャン父子の競演のきっかけはマエストロからの提案だったそうだ。マエストロがインゴルシュタットい携わるのは今年が最後。ドイツ南部では悲しい事件が続いているが、インゴルシュタットの今年のサマー・コンサートが多くの人に喜びをもたらしたと願う。

Die Stunde der großen Tenöre(地元新聞のレヴュー)
http://www.donaukurier.de/nachrichten/kultur/Ingolstadt-Die-Stunde-der-grossen-Tenoere;art598,3244608

写真
https://www.flickr.com/photos/89578620@N00/albums/72157668423795864

スクリーンショット 2016-07-27 10.29.44
(左からユリアン、クリストフ・プレガルディャン、マリナ・レベカ)

アウディ・サマー・コンサートの情報求む、プレガルディャンの日本公演

2016.01.26
ロンドンでのリサイタルはほぼすべて追っかけているクリストフ・プレガルディャン。毎回、ウィグモア・ホールでのプログラムには満足するも、日本での公演の方がよく見える。今年の3月から4月にかけて、現在の所、3回のリサイタルの予定が発表されている。

3月24日、トッパン・ホール
http://www.toppanhall.com/concert/detail/201603241900.html

4月2日、東京文化会館小ホール
http://www.tokyo-harusai.com/program/page_3023.html

4月4日、愛知電機文化会館
http://www.chudenfudosan.co.jp/bunka/denbun/topics/detail/19015

 3月31日に戸川純さんの誕生日ライヴがあるので双方を観に帰国したかったが、日程他諸々を調整できなかった。プレガルディャンは4月8日にウィグモアでリサイタルが予定されているのでそちらを待つ。

 昨年11月のリサイタルの時に本人から聞いた「イドメネオ」(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-2562.html)は、どうやらこのプログラムの一環で7月17日に予定されている。

Audi Sommerkonzerte
https://www.audi-mediacenter.com/de/sommerkonzerte-293

 日時は本人のウェブから判ったのだが、このイヴェントの情報が全く判らない。チケットの入手方法や、以前の演目を現地で観た等の情報を教示いただけると嬉しい。

クリストフ・プレガルディャン@ウィグモア・ホール(シューベルト特集)

2015.11.03
今シーズン、そして来シーズンにかけてウィグモア・ホールはシューベルト作曲の歌曲を制覇する(らしい)プログラムを設定している。

Schubert: The Complete Songs
http://wigmore-hall.org.uk/artistic-series/schubert-complete-songs

Schubert’s songs belong to the stock of mankind’s highest achievements, potent examples of the best in human creation and a vast reserve of solace and joy for performers and listeners alike.

Over the following two seasons Wigmore Hall presents the chance to hear the complete songs of Schubert performed by truly outstanding artists. Every recital in the Hall’s series will unfold in chronological order, moving from little-known early pieces to sublime late masterworks and exploring their infinite universe of musical and poetic expression.

We are delighted to be working on this mammoth project with the Schubertiade Schwarzenberg and Hohenems, with singers and pianists chosen by John Gilhooly and programmes devised by him in close collaboration with Graham Johnson, rightly regarded as one of the world’s leading Schubertians.

This series continues in the 2016/17 Season.


 既にこの企画によるプログラムは始まっていて、10月29日、クリストフ・プレガルディャンのリサイタルへ。

スクリーンショット 2015-11-03 6.52.58
トッパンホールのウェブから無断で拝借。http://www.toppanhall.com/concert/detail/201603241900.html


Christoph Prégardien tenor
Christoph Schnackertz piano

Schubert has occupied the centre ground of Christoph Prégardien’s recital repertoire for over three decades. The German tenor’s penetrating interpretations flow from his sophisticated engagement with words and music.

He and Christoph Schnackertz present such familiar songs as ‘Der Hirt’ and ‘Nachtviolen’ in company with rarely performed early treasures, ‘An Emma’ and ‘Der Liebende’ outstanding among them.


An Emma D113
Der Jüngling am Bache D192
Der Liebende D207
Der Traum D213
Die Laube D214
Hoffnung D251
Ritter Toggenburg D397

Edone D445
Die Liebesgötter D446
Der Hirt D490
Bei dem Grabe meines Vaters D496
Der Alpenjäger D524
Nach einem Gewitter D561
Trost D671
Nachtstück D672
Nachtviolen D752
Auflösung D807


 まいどまいど同じ感想になるが、今回もまた、素晴らしいリードの夕べだった。前半はシラーヘルティ(Hoelty)の詩によるもの、後半は全てMayrhoferの詩への歌曲という構成だった。前半で歌われた、最近では歌われることの少ない初期の歌曲も良かった。更に素晴らしかったのが後半。公平に言えば、最高音は微妙に不安定になりつつある。しかし、ドイツ語を既に理解できなくても、歌われる単語の一つ一つが鮮明に聞こえる正確な発音、揺るぎの無い解釈があってこその想像力を刺激する歌唱に、身じろぎできなかった。
 本編の最後に歌われた「Auflösung」を聴くのは5年ぶり。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1180.html

 5年前の歌唱は今では思い出せない。2015年の「プレガルディャン」による豊かな歌唱を聴くことができて本当に良かった。トッパンホールのリーフレットの写真にあるように、本人、2年前と比べて格段に痩身になっている。それが功を奏したことは明白で、声の瑞々しさが失われどころか、輝きが増している。

 本人が舞台で言ったように、当夜のプログラムは通常より短かった。ということで、アンコールは3曲。そのあとグリーン・ルームで「今夜の素晴らしい歌唱を聴いていて、あなたのことを初めて知った『アルミダ』での歌唱を思い出していました。オペラにはもうでないと仰っていましたが、違ったプログラムを歌う予定なんてありますか?」。

 「No, I am not doing opera anymore, but I will sing Idomeneo in a concert style next summer in Germany」。

 ということを聞いたので、帰宅後、ネットで情報収集。しかし、見つからず。息子のユリアンのサイトでも言及されているから上演されるのだろう。本人サイトの今後の予定によると、2016年3月24日のトッパンホールのでリサイタルの他に、上野の文化会館(http://www.tokyo-harusai.com/program/page_3023.html)や名古屋でリサイタルの予定。

http://www.toppanhall.com/concert/detail/201603241900.html

 桜の季節の日本はせわしないし、4月8日にウィグモア・ホールでリサイタルがあるから行かないだろう。で、興味がわいて、シューベルティアーデの演目を観たら、父子競演がある。

http://www.schubertiade.at/produktionen/sophie-karthaeuser-christoph-prgardien-julian-prgardien-michael-gees.html/ID_Vorstellung=2458&m=232

 ブログ仲間の経験(http://ameblo.jp/peraperaopera/entry-11918740885.html)を読むと車が無いと行くのは大変そうだが、あれほど素晴らしいシューベルトを聞いてしまうと、ファンとしてはもっと聴きたいなと。行くとしたらどうせ一人だし、気楽に鉄道で行けば良いだろう。

[追記]
どうせレヴューは無いだろうと思いつつガーディアンに行ったら、ウィグモアの2日後、オックスフォードで催されたプレガルディャンのリサイタルのレヴューが。なんと、超辛口、意地悪ACが満点をつけている。

Christoph Prégardien/Roger Vignoles review - lieder singing of the highest class
http://www.theguardian.com/music/2015/nov/02/christoph-pregardienroger-vignoles-review-lieder-singing-of-the-highest-class

The Oxford lieder festival makes a point of mixing recitals by up-and-coming singers with appearances by established international artists. It always ends with a high-profile concert too, and so the finale of this year’s fortnight-long event was a programme given by one of the outstanding lieder singers of of our time, the German tenor Christoph Prégardien, who was partnered by Roger Vignoles in a programme of Mahler, Schubert and Schumann.

Prégardien may now be nearing the age at which many singers turn their attention to giving masterclasses rather than vocally demanding recitals, but there were only a few hints that his voice was no longer the intensely flexible instrument it once was. One or two phrases were taken down an octave, and perhaps there was more use of head voice and falsetto than a younger singer might have used, but it was all fused into a seamless whole with such conviction and such intense musical awareness that nothing ever jarred or seemed out of place.

On the contrary, much of what Prégardien did was a revelation, with such immaculate diction and attention to each musical detail that the audience hung on every word. The four songs of Mahler’s Lieder eines Fahrenden Gesellen, so often presented as expressions of youthful self-pity, became a genuinely dramatic scenario, the tragedy searingly convincing. And the settings of Heine from Schubert’s final collection Schwanengesang became a series of vividly etched portraits, all achieved by Prégardien and Vignoles without any hint of caricature or exaggeration, and with the integrity of each musical line always rigorously respected.


Christoph Prégardien: BBC Radio 3 Lunchtime Concert @ウィグモア・ホール

2015.05.18
2015年5月18日、ウィグモア・ホールでクリストフ・プレガルディャンによる、BBCラジオ3のランチタイム・コンサート。

https://wigmore-hall.org.uk/whats-on/schubert-and-schumann-201505181300

Christoph Prégardien tenor;
Daniel Heide piano

Schubert and Schumann

Franz Schubert (1797-1828)
An den Mond D259
Schäfers Klagelied D121
Erster Verlust D226
Rastlose Liebe D138
Wandrers Nachtlied D768
Willkommen und Abschied D767

Robert Schumann (1810-1856)
Dichterliebe Op. 48: Im wunderschoenen Monat Mai; Aus meinen Traenen spriessen; Die Rose, die Lilie, die Taube; Wenn ich in deine Augen seh'; Ich will meine Seele tauchen; Im Rhein, im heiligen Strome; Ich grolle nicht; Und wuessten's die Blumen; Das ist ein Floeten und Geigen; Hor' ich das Liedchen klingen; Ein Juengling liebt ein Madchen; Am leuchtenden Sommermorgen; Ich hab' im Traum geweinet; Allnachtlich im Traume; Aus alten Marchen; Die alten, boesen lieder

 
 舞台に出て来てプレガルディャンを観てちょっと驚いた。過去数回は、ドイツの伝統的な礼装で歌うことが多かったのだが、今日は、とてもスタイリッシュな黒のスーツに黒のシャツ。そして明らかに、痩せた。体調不良なのかと一瞬不安がよぎったが、ひとたび歌いだせば、2月の好調が更に安定していて、耳福の極み。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-2433.html

 6月に「冬の旅」、来シーズンの2回はシューベルト特集の一環なので、その前にシューマンを聴けたのは良かった。本編最後の2曲の緊張感と声の美しさは聴き惚れるばかりだった。

 アンコール終了後、グリーン・ルームへ。

 「東京、暑くなかったですか?」

 「It was humid, but I did not feel hot there. Everything was fine」

 「I heard that your recitals last week were really successful. Did you enjoy it?」

 「Fantastic! The second night was so special」

 「By the way, it may be an awkward question. Have you lost weight?」

 「Yes, I have」

 「I have today found your voice much stronger and more moving than before. I had the same feeling when you sang in February」

 「Do you think so? Interesting and someone in Japan told me the same thing」

 オペラ歌手は太っていれば良いって訳ではない。今日のランチタイム・コンサートの歌曲群は、彼にとっては目新しいものではないはず。にもかかわらず、以前よりも言葉の一つ一つが鮮明に耳に届き、現在の彼にとっての高音域でも声に濁りは一切なかった。

 グリーン・ルームでは、ギルフーリ支配人と熱くハグしていたので、ホールとの関係は良好のよう。来年、還暦を迎えるプレガルディャンだが、引退を決める前にもっとロンドンに来て欲しい。

 来月、ウィグモア・ホールで歌われるシューベルトの「冬の旅」は、以前プレガルディャンでも聴いているが、その時は会場の環境が良くなかったこともあって楽しめなかった。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-2037.html

 歌われる内容も好きではないので、声だけに集中しよう。

Christoph Prégardienの東京公演は、13日と15日

2015.05.12
クリストフ・プレガルディャンの東京公演は、今週13日と15日、トッパン・ホールで。特に15日のプログラムはとても聴きたい。行きたかったな。

http://www.toppanhall.com/concert/detail/201505151900.html

 心配なのは台風一過で気温が急上昇する東京でどのように体調を維持できるか。東京公演ではなくて、来週18日、ウィグモア・ホールでのランチタイム・コンサートに無事に来ることができるか?

https://wigmore-hall.org.uk/whats-on/schubert-and-schumann-201505181300

Christoph Prégardien tenor;
Daniel Heide piano

Schubert and Schumann

Franz Schubert (1797-1828)
An den Mond D259
Schäfers Klagelied D121
Erster Verlust D226
Rastlose Liebe D138
Wandrers Nachtlied D768
Willkommen und Abschied D767

Robert Schumann (1810-1856)
Dichterliebe Op. 48


 プログラムは全く目新しくはないのだが、彼も来年で還暦。聞ける時にどんなプログラムでも聴いておきたい。来シーズン、ウィグモアでは2回登場の予定。東京でも、既にトッパン・ホールで2016年3月24日に「水車小屋の美しい娘」を歌う予定になっている。プレガルディャンの「水車小屋」はまだ生では聴いたことがないのでこれまた羨ましい。

 日本の皆さん、13日はまだ席に余裕があるようなので、是非。

Christoph Prégardien@ウィグモア・ホール

2015.03.01
2月28日、ウィグモア・ホールは丸一日をかけて、ドイツ人作曲家、ヴォルフガンク・リームの特集プログラム。そんな作曲家を知る訳もなく、プログラムを最初に読んだ時は見逃していた。が、午後のプログラムにプレガルディャンの名前。予定の演目はリーム作曲の歌とシューベルト。現代物はゲルハーエルで懲りたので躊躇いもあったが、半分はシューベルトだし、しかもチケットの価格がいつもの半額以下にもかかわらず、予定時間はいつもと同じ2時間とあっては、見逃すわけにはいかなかった。そして、本当に素晴らしいリサイタルだった。

Christoph Prégardien: tenor

Ulrich Eisenlohr: piano

Wolfgang Rihm Composer Focus Day

In the 1970s the young Wolfgang Rihm was at the vanguard of a movement to restore expressivity to contemporary German music and open a modern dialogue with the past.

While his strikingly original works often connect with the aesthetics of Romanticism, they do so without trace of nostalgia or sentimental yearning for styles overturned by the cataclysmic upheavals of the last century. Wigmore Hall’s Composer Focus Day, featuring performances by artists closely associated with Wolfgang Rihm, touches on the myriad ways in which his art draws pulsating life from the abiding energy of music and poetic images of an earlier age.

Franz Schubert (1797-1828)
Auf der Bruck D853

Wolfgang Rihm (b.1952)
Ende der Handschrift
Glückloser Engel 2

Franz Schubert
Im Frühling D882

Wolfgang Rihm
Ende der Handschrift
Nature Morte
Blaupause

Franz Schubert
An mein Herz D860

Wolfgang Rihm
Ende der Handschrift
Leere Zeit

Franz Schubert
Im Jänner 1817 D876 'Tiefes Leid'

Wolfgang Rihm
Ende der Handschrift
Traumwald

Franz Schubert
Im Walde D834

Wolfgang Rihm
Ende der Handschrift
Mit der Wiederkehr der Farbe
Drama

Franz Schubert
Über Wildemann D884
Wolfgang Rihm

Ende der Handschrift
Geh Ariel bring den Sturm


Wolfgang Rihm
Das Rot: Hochrot, Ist alles stumm und leer, Des Knaben Morgengruss, Des Knaben Abendgruss, An Creuzer, Liebst du das Dunkel

Franz Schubert
Schwanengesang D957
No. 10 Das Fischermädchen
No. 12 Am Meer
No. 11 Die Stadt
No. 13 Der Doppelgänger
No. 9 Ihr Bild
No. 8 Der Atlas


 土曜の午後だし、ドイツでは有名らしいがイギリスではどれほど知られているのかさっぱり判らない現代ドイツ人作曲家中心のプログラムでは、聴衆はおそらく会場の3割くらい。でも、プレガルディャンのリサイタルでいつも見かける人がかなり居たので、彼のコアなファンは集まっていたようだ。

 前半の構成は、リームのEnde der Handschriftからの歌と、シューベルトエルンスト・シュルツェの詩に曲をつけたリートを織り交ぜてという形式だった。

 プレガルディャン、絶好調。最初の「橋の上で」から僕にとって最高、至上の声が全開。今回のピアニスト、ウルリッヒ・アイゼンローアという人は初めてだったが、この人の演奏もまた素晴らしく。歌う人が歌うと、シューベルトの歌曲は僕のは極上のポップ音楽のよう。

 リームによる曲は、前半は楽しめなかった。しかし、後半のDas Rotはプレガルディャンの熱唱もあり、聴き応えのある物だった。中でも、4曲目のDes Knaben Abendgrussは、「プレガルディャン、こんな歌い方もできるんだ!」と驚嘆の大熱唱。

 売れていなかったので、席は最前列のど真ん中、プレガルディャンの正面を余裕で購入できた。写真を撮るには全く不向きな席だが、目の前1メートル弱の席で彼の曇りのない歌唱を聴ける幸福。リームの幾つかの曲で最高音部がきつそうだなと感じたが、掠れることは全く無く、本当に絶好調の歌だった。ここ数日、予定外のことに対処しなければならず、気持ちに余裕がなかったのだが、聴くことができて本当に良かった。

 終演後、グリーン・ルームへ。訊きたかったのは、5月にある東京のトッパン・ホールでのリサイタル。

 「東京での2回のリサイタルのあと、5月18日にウィグモアで予定されているランチタイム・コンサートは、平気なんですよね?(これまでに、彼の体調不良でキャンセル3回経験している)」

 「I hope so, the concerts in Tokyo were scheduled much later(ブッキングはウィグモアの方が先だったようだ)」

 「本当に、無事にロンドンに来てください。東京のプログラム、とても素晴らしいですね。羨ましいです」

 「The Toppan Hall asked us to do those, they are really keen on the programmes. Will you come?」

 「I wish」

 トッパンの演目はこれ。昨日の好調が東京でも披露されれば、素晴らしいリサイタルになるだろう。

http://www.toppanhall.com/dll/201505131900.pdf

 客の入りが今ひとつの割に、ウィグモアとは良好な関係が続いているようで、今シーズンは今回を含めて4回。来シーズンはシューベルト・ソング・シリーズで2回登場の予定。

[追記:3月8日]
この特集についてのレヴューが二つ。どちらもプレガルディャンが中心ではないが、彼の歌唱についてのレヴューがでることは滅多にないので、嬉しい。

Wolfgang Rihm Day review – stars come out for a master of dark delights
http://www.theguardian.com/music/2015/mar/02/wolfgang-rihm-day-wigmore-hall-review

Rihm’s expressive centre of gravity now seems fixed quite firmly in that post-romantic, expressionist language of the turn of the 20th century. The starting point for many of the songs in Prégardien’s remarkable recital with pianist Ulrich Eisenlohr – from the 1999 cycle Ende der Handschrift, settings of poems by Heiner Müller, which he interwove with Schubert’s late songs on poems by Ernst Schulze, and the cycle Das Rot (1990) which was followed with the Heine settings from Schwanengesang – was that of early Schoenberg and Berg. The juxtaposition with the greatest of all Lieder composers worked perfectly, while Prégardien’s acute, concentrated response to every detail of every song was a wonder in itself.

Wolfgang Rihm Focus Day, Wigmore Hall, review: 'contrasting emotional worlds'
http://www.telegraph.co.uk/culture/music/classicalconcertreviews/11440000/Wolfgang-Rihm-Focus-Day-Wigmore-Hall-review-contrasting-emotional-worlds.html

Singer Christoph Prégardien rose magnificently to the challenge of projecting these two emotional worlds. Rihm’s little wisps of songs could sound precious, but Prégardien has such a magnificently powerful sound they seemed monumental. In the Schubert songs such as Der Atlas, he and pianist Ulrich Eisenlohr summoned a power I’ve never heard equalled.

Christoph and Julian Prégardien with Michael Gees@Wigmore Hall

2014.12.17
スクリーンショット 2014-12-17 14.08.24
(2014年11月27日、ウィグモア・ホール)

https://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157649093819240/

11月27日に、ウィグモア・ホールでドイツ人テノール、クリストフ・プレがルディャンと彼の息子、ユリアンによる二人のテノールによるリートのリサイタル。

Father and Son
http://www.wigmore-hall.org.uk/whats-on/productions/christoph-pregardien-tenor-julian-pregardien-tenor-michael-gees-piano-35907

Performers
Christoph Prégardien:tenor

Julian Prégardien:tenor

Michael Gees:piano

Programme
Mozart

Sehnsucht nach dem Frühlinge
Abendempfindung
Komm, liebe Zither, komm
An Chloe

Beethoven

Der Kuss
Neue Liebe, neues Leben

Silcher

Ännchen von Tharau ist, die mir gefällt
Frisch gesungen

Schubert

Zum Rundtanz
Die Nacht
Des Fischers Liebesglück
Auf dem Wasser zu singen
Meeres Stille
Der Zwerg

Brahms

Die Sonne scheint nicht mehr
In stiller Nacht
Erlaube mir, Feins Mädchen
Da unten im Tale

Silcher

O wie herbe ist das Scheiden
Die Loreley

Schubert

Erlkönig
Wandrers Nachtlied II
Nähe des Geliebten
Widerspruch
Im Frühling
Licht und Liebe
Nacht und Träume

About this concert

Father and son, Christoph and Julian Prégardien, share the stage for a recital rooted in the romantic realms of folksong, legend and love.

Their programme, featuring many songs specially arranged for two voices, includes four works by Friedrich Silcher, a near contemporary of Schubert who was celebrated during his lifetime as a Lieder composer and collector of German folksong.


 この企画、数年前に欧州を回っていた。また、エジンバラの国際フェスティヴァルでも催されたが、ロンドンには来てくれないのかとすっかり諦めていたら、ウィグモア・ホールで。

 一曲をパート毎にわけて歌う曲が大半で、ソロで歌われたのは2、3曲だった。テノール二人でどのように歌うのか興味津々だった。アレンジはどうやら高めのパートを若いユリアン、ハイ・バリトンのようなパートを父親が歌うという印象。だからか、プレガルディャン父の方は今でもとても潤いのある中音部分が素晴らしく聞き惚れた。いつも思うことだが、ディクションも素晴らしかった。

 息子の方は若いだけあって高音域は父親よりもずっと自然に歌っていた。ただ、所々、力任せのような発声もあった。それに、ディクションは父親のレヴェルに到達するにはまだまだという印象。

 曲は通常のリートに加えて、ドイツの民衆歌曲も数曲。中でも面白く感じたのは、「ローレライ」。大昔、高校生の頃に音楽の授業で歌わされた「ローレライ」とは、当然だが次元の違う響き。リートも良いけど、このような曲をもっと聴きたい。

2003年、ヴァルトラウト・マイヤーのリサイタル

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-230.html

 「父と息子」というタイトルだからあると思っていたし期待していたのが、「魔王」。当夜歌われたシューベルト、そしてレーヴェによる「魔王」をこれまでにプレガルディャン父のリサイタルでは何度か聴いて来たし、その都度彼の豊かな表現力に惹き込まれた。
 
 これを、実の父と息子が歌い分けるとどうなるのかと。詩がもたらす緊張感は二人による歌い分けでちょっと落ちたかなというのが正直な感想。しかしながら、同じテノールとはいえ、声質の違いがもたらすドラマ性は素晴らしかった。


https://www.youtube.com/watch?v=Un8Uowdfx-Q

 終演後、舞台裏のグリーン・ルームでサイン会。この企画の元になっているCDは購入済み。二人にサインをしてもらってからプレガルディャン父に二つ質問。

 2015年3月、4月に彼の新しい挑戦、「マタイ受難曲」が欧州各地で上演される。が、イギリス国内での予定は無い。

http://www.pregardien.com/en/

 イギリス、少なくともロンドンでの予定は無いのかを尋ねての答えは、「残念だけど、イギリス国内ではない。この企画は僕たち独自のものだから、劇場の予算から援助を受けなければできない。イギリスでは予算が取れなかったんだ」。ウィグモア・ホールでは規模が小さいから無理だが、サウスバンクとかバービカンに動いて欲しい。

 落胆を隠せず、でも二つ目の質問は、「日本には行くんですか?」。「行くよ、来年の5月トッパン・ホールで歌うよ」。

http://www.toppanhall.com/dll/201505131900.pdf

 ふた晩、そして内容を見て吃驚。聴きに帰りたいほど。良いな、「冬の旅」なんてもう聴きたくないから、来年初夏のウィグモアでのリサイタルはこれにして欲しいぞ。チケットは、日本時間2014年12月18日に発売。

 話し終わって出口に向かうと、ウィグモアの支配人、ギルフーリ氏がいたので、彼にも質問。

 「9月のフランコ・ファジョーリのリサイタル(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-2322.html)、素晴らしかったですね。再び彼を呼んで欲しいんですが」。
 
 「来シーズン(2015/16)に来てもらおうと交渉中。ロイヤル・オペラでは実力に合う役ではなかったから、本当に残念だったよ」。

 「他のカウンターテノールは?例えば、サバドゥスとかは?」。

 「よいカウンターテノールがたくさんいてブッキングが大変だけど、サバドゥスは近いうちに是非にと思っているんだ」。

 「最後。バルトリが来ることは?」。

 「Well, we need to think about her fee......」。

 ヨナス・カウフマンのチケットが£100−でも売り切れるなら、バルトリのチケットが£100−でも問題ないと思うのだが。

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