LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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2004年06月の記事一覧

1年以上も先ですが

2004.06.25
親愛なる皆さん

 おはようございます。現在午後9時半。いまだに嵐、更に近所のパブからは、耳障りな雄たけびが。さっき知り合いに電話したら、普段はサッカーはおろか、新聞のスポーツ欄すら読まない人間が、「イングランド、今リードしているんだ」、などというので「イングランド、負けて欲しいんだけど」、と言ったら、会話が凍りつきました。心の底から「イングランド、今夜で退場」、と。新聞の一面にサッカー選手の写真を見るの、飽きました。既に負けた国の皆さんが羨ましいです、静かな夜を過ごせて。

 でも話題は、サッカーファンからすれば同列なのかもしれませんが。来年7月の、ロイヤル・バレエの6年ぶりの日本公演に向けて、「ダンサーの事を教えて」、という質問を幾つか。バレエのことなんか誰も読んでいないんだろうな、と思っていたので、好き勝手なことを沢山書きます。
 日本で発売になった「ダンスマガジン」を読んでいないので、人伝ですが、持っていく演目は「シンデレラ」(アシュトン)と「マノン」(マクミラン)だそうです。以前はミックス・プログラムも上演していたので、もしかすると追加があるかもしれないですね。今シーズン評判の「オネーギン」や「マイヤーリング」も上演すればいいのにと思う一方で、そうすると一月くらい日本にいることになってしまうし。
 で、ダンサーです。女王シルヴィ・ギエムが「マノン」を踊るか、踊るとしたら誰と、ということはおいといて、恐らくコジョカル・コボーのペアは両演目を踊るだろうし、必見です。この二人のパートナーシップは本当に素晴らしい。あと、女性はタマラ・ロホと、唯一のイギリス人プリンシパルのダーシー・バッセルも両方踊るかな。吉田都さんは、日本のファンの為に「シンデレラ」を踊ることでしょう。この冬に観た吉田さんのシンデレラは、コジョカルのよりもずっと美しかったです。大好きなセナイダ・ヤナウスキーは、日本に行かないのではと思います。なぜなら、彼女が踊れる役って、「マノン」に一つあるくらいだし、「シンデレラ」には彼女が踊れる役ないし。注目は、ロイヤル期待の星、ローレン・クスバートソン。往年のダンサーたちに教えてもらっているそうで、ロイヤルの伝統を見せてくれるのではないかと。逆に観なくてもいいと断言するのは、マーラ・ガレアッツィ。彼女がプリンシパルだなんて、認めない。
 男性は、コボーと、キューバ出身のカルロス・アコスタは見る価値ありです。プリンシパル最高齢のジョナサン・コープが暑さに負けずに出演すれば、彼にとって、ロイヤルのダンサーとして最後の日本公演でしょう。後の男性プリンシパルは新顔が多くて未知数です。それと、最初の3人は、「マノン」のデ・グリュー役と「シンデレラ」の王子役をこなせますが、他の皆さんはどちらか一方しか出来ない雰囲気だと思います。ロイヤル・バレエといっても、その看板は少数の世界レヴェルのプリンシパル・ダンサーに負う所が多いのが現実かも。
 「シンデレラ」には、ご存知の通り、意地悪なお姉さんたちが出ます。これはロイヤル、ひいてはイギリス・バレエの伝統なのかもしれませんが、意地悪で、でもコミカルな役柄は男性が演じます。昨年の12月の話題は、このもの凄いお姉さんを前芸術監督のダウエルが演じたこと。もし彼がこの役を日本でやるのなら、これも観て損はないです。いずれの演目でも、もしエドワード・ワトソン、シアーゴ・ソアレス、ティム・マティアキスが出演すれば、結構惹きつけられると思います。

 まぁ、実際1年以上も先だし、チケットは来年の発売だろうし、更に即完売だと思いますが、機会があったら是非。バレエは女性だけのものでもないし、バレエファンの為だけに存在するわけでもないですから。



期待していた、マティアキス、あっさりほかのバレエ団に移籍してしまいました。それと、アコスタは2005年の時には参加せず。
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I wish England football had not won

2004.06.24
親愛なる皆さん

 こんにちは。昨日は西風(ゲイル)が一日中、猛烈に吹き荒れ、寒いし。昨日の朝のBBCのウェブの天気予報では、週末まで連日雨の予報。今朝は月曜日まで快晴。

 日本で報道されているかどうかわかりませんが、ポルトガルで行われているサッカーのユーロ2004、性懲りもなくイングランド・サッカー・ファンの狼藉ぶりが報道されています。勿論報道で取り上げられるのは強調されすぎのこともあると思うんですが、僕はイングランド・フーリガンの大半は、自身では全くサッカーをやったことがない人間だと思っています。ただ、騒ぎたいだけ。経済にだって、儲かるのはパブくらいでしょう。モラル低下も著しいし。
 例えば、消防士ユニオンのトップ、余りに疲れすぎて予定されていた重要な会議を欠席、でどこにいたかと思えばポルトガル。ご丁寧に医者の診断書は、「stay away from work but keep active」。唖然。本人は「子供にポルトガルに連れて行くって約束したし、会議の予定は変更されたから仕方ない」、とのたまったそう。更に、ユニオンの他の役員も「何の問題もなし」だそう。あろうことか、〆のコメントは「私達は、彼が早く健康になって戻ってくることを毎日考えている」んだそうで。こんな連中が、市民の安全の為に働いている消防士の代表だなんて、腐ってる。
更に、来週29日から30日にかけて、全国規模で鉄道のスト、ロンドン地下鉄の24時間ストが予定されています。いつものことだと思っていたんですが、ユニオンの幹部がサッカーの試合をパブで見たいから画策したんじゃないか、と疑い始めています。
 地下鉄の労働組合のトップ、これこそどうにかして欲しい。自分の内縁の妻を、組合員の財政をコントロールするセクションに採用したと。通常のプロセスを経たと主張しているんですが、このセクションで働く他の皆さんはヴォランティアの組合員で無給、彼女だけが有給、更に採用三ヵ月後には昇給したそうです。募集は内部で行われ、応募したのは彼女だけ。露骨だ。Nepotismは知っていましたが、cronismという言葉があるんですね。ロンドン市長に再選されたケン・リヴィングストンはこのトップを支持しているそうですが、疑われても仕方ないと思います。

 昨日のフリーペーパー「Metro」に面白い統計がありました。リーダーズダイジェストがヨーロッパ19カ国で意識調査をした結果。予定調和というべきか、UKはヨーロッパで一番ユーモアのセンスがある国だそう。僕の意見は、イギリス人のユーモアは理解できないけど、ユーモアのセンスがあるといっているんだからそういうことにしてあげましょう、と。以前書いたと思いますが、ユーモアのセンスがあるというイギリス人のユーモアは、人をからかう事に重きを置いていて、気分よくないです。反面、Humourという単語の定義の考え方の差かもしれませんが。ロンドンに来て一番気持ちのいいsense of humourの持ち主は、現クラスメートのイギリス人男性。彼の話を聞いていると、気持ちよく笑えます。
当然ですが、UKのご飯は不味く、オランダは一番「開かれた国」で、国籍を替えて住みたい国は「イタリア」だそうです。統計のトップはフランスみたいです。一番になったのはパリが一番好きな都市だけですが、どの質問でも大体2位か3位。

 長くなりましたが、これを書かずに。僕がロンドン地下鉄を誉める日が来るなんて。Oyster Cardという新しいプラスティック定期。主に利用するゾーンにあわせて料金を払うことが出来、それ以外のゾーンに行くときは、先に追加料金を上乗せすることが出来ます。先日、久しぶりにゾーン3に行かなければならずチャージしようとしたところ、画面に新しい項目を見つけました。開いたら吃驚、たった数分前に利用したバスの記録が画面上に表示されたんです。以来、興味半分で、気がつくと利用記録を見ているんですが、正確無比。やればできるじゃん、UK。

魂の代償その3:ファウスト

2004.06.20
ラストは、昨晩観てきたシャルル・グノーの「ファウスト」。知り合いの知り合いがフェノメラルといったそうですが、それも頷けるかな。

 まず、原作の「ファウスト」、読んでいません。なので的外れなことを書くかもしれませんが。昨晩は、指揮にロイヤルオペラの音楽監督アントニオ・パッパーノ、演出がマクヴィッカー。タイトル・ロールにロベルト・アラーニャ、マルグリーテにアンジェラ・ゲオルギュー、彼女の兄、ヴァランタンをサイモン・キーンリサイド、彼らの友人にソフィー・コッホ、そしてメフィストフェレにブリン・ターフェルと、1月にダイジェストに書いたとおり、オペラのドリーム・キャストです。

 苦労してリターンを取った甲斐があったオペラでした。が、まずダウンなこと。マクヴィッカーの演出、3回観ていますが、オペラへの愛情を感じられない。全体を通して、「エンターテイメント」に徹する姿勢はいいんですが、歌手やオペラそのものから遊離しているような。原作を読んでいないからここが的外れになりそうですが、最後マルグリーテが死ぬとき、「魂の救済」という雰囲気をもっと出して欲しかった。出てきた天使が、ロイヤルのコーラスの中でも一際でかい男性。ここまで豪華なキャストなら、最後だってエマ・トンプソンとか、エル・マクファーソンに天使をやってもらえばいいのに。後は、このオペラ自体ですが、ヴァランタンとマルグリーテの関係がもっと強調されていたら、より共感できたのに、と思いました。
 演出で面白かったのが、最終幕でのバレエ。フレンチ・グランド・オペラではバレエが組み込まれるらしいですが、昨晩のは面白かったです。「ジゼル」第2幕を、マッツ・エックがちょっと力を抜いて振付けた感じの踊りでしたが、ファウストの苦悩をさらに増幅させる趣旨には合っていたように思います。この場面、身長2メートル、更に体積を増した感があるターフェルが、個人的には悪魔の両性具有性を言いたかったのかと思っているんですが、黒のイヴニング・ドレス姿になります。凄い迫力。大きく開いた背中は毛むくじゃら、剥き出しの岩のような肩、丸太のような腕、機会があったら見ていただきたいです。
 2回のオネーギンでのオケが、どうしたんだ(特に金管)という出来だったんですが、流石パッパーノ、いいできでした。

 まずはご夫妻から。今までこの二人がロイヤルで共演するオペラは、全てチケットが取れなくて今回が初めてでした。双方とも、現在キャリアのピークでしょう。ステージの外では、「オペラのボニーとクライド」とか「チャウシェスク夫妻」なんて揶揄されている二人ですが、舞台に立てば立派。レヴューでは、最高音が出ていないと指摘されていたアラーニャ、素晴らしいテノールです。売れっ子である、ということは矢張り才能があるということ。演技もよく出来ていたし、特に第1幕、メフィストと契約を交わし、若返った直後、とんぼを切るなど、舞台を見せる、如何に自分を見せるということをよく知っているようです。ちなみに、EMIから契約を破棄されたアラーニャ、ユニヴァーサルと契約したそうです。昨晩は、テレヴィ放送の為にカメラが入っていましたが、二人のレコード会社が別々になった現在、DVDやCDででるのか、不透明です。
 カーテンコールでの勝手なはしゃぎ様はいささか興醒めでしたが、ゲオルギューは今の時代の最高のソプラノとして記憶されることでしょう。彼女の声にはずれなし。特に最終幕、息絶える直前の歌唱は、今でも耳に残っています。ショルティが涙した彼女の「椿姫」、聴いてみたい。
 イギリスを代表するバリトンの二人。ターフェルはとっかえひっかえ衣装を替えつつ、キーンリサイドは、流石に体育会系オペラ・シンガーの代表、死に様は圧巻でした。でも、この二人はもっと明るい役で観たい。フィガロとか、ターフェルのパパゲーノを観てみたい、彼が歌うなら。
 観客もいつもよりずっと気合が入っているというか。右となりの若手エグゼクティヴ・カップルはウィンブルドン在住。昨日の朝はロイヤル・アスコットで過ごし、夜は「ファウスト」。来週からは、押さえてあるウィンブルドンのセンターコートの指定席に気が向いたらいくとか。左隣の老齢のカップルの旦那はジョーン・サザランドの「ルチア」が素晴らしかったと、何観にきているか判っています?、と尋ねたくなりました。
 間違いないのは、本当に素晴らしい一夜でした。もっと、フレンチ・グランド・オペラを観る機会があればいいな、と。

その2:オネーギン

2004.06.19
ジョン・クランコ振り付けの「オネーギン」がロイヤルバレエのレパートリーに入ったのは、2001年の秋。当時、紐育に居た元同僚のご夫婦と観にいったときの初演のキャストの印象が強く、今回も何かが足りないと思いつつ、いまやロイヤルを代表する演目だな、と。何でこれ、来年もっていかないのか、不思議です。

 今回は、二つのキャストで観たんですが、前述の通りオネーギンが良ければ、タチアナが物足りない、またはその逆と、まぁ、贅沢なことを言っているのは承知しています。誰が誰だかわからない方のほうが多いでしょうが、来年7月のロイヤル・バレエの日本公演に向けて、覚えてください。
 初回は、本来はオネーギンに最高齢、かつ貴重な「イギリス人」プリンシパルのジョナサン・コープ、タチアナにタマラ・ロホがキャスティングされていたんですが、コープは腹部の手術を受ける為、ロホは怪我の回復が思わしくなく、離脱。一番楽しみにしていたキャスティングだったんですが。代りにオネーギンは、ブラジル出身で人気急上昇中のThiago Soares、タチアナにラウラ・モレーラ。ソアレスはよかったです。田舎暮らしを小ばかにした冷笑を口の端に湛え、眉間のしわがオネーギンそのものでした。若いからパートナリングは力任せのところもありましたが、彼のピルエットのすざまじいこと。あんなパワフルなピルエットができる男性ダンサー、ロイヤルでは他にカルロス・アコスタくらいでしょう。問題はラウラさん。ソアレスにぶんぶん振り回されてなお憂いを秘めた踊りは流石。だけど、華がない。レンスキーにイワン・プトロフ、オルガ(タチアナの妹)がアリーナ・コジョカルと脇がプリンシパル・ダンサーだったので、余計に地味に映りました。矢張り主役を張る人はカリスマがないと。
 
 2回目は、いまや世界が認めるベスト・カップル、ヨハン・コボーとコジョカルが主役。技術から見ればこの二人は完璧です。23歳のコジョカルに成熟したタチアナを演じることができるのか、と思っていましたが、彼女は天才ですな。余談ですが、プレア首相の奥さん、シャーリーさんが、お嬢さんと一緒にロイヤル・ボックスで鑑賞していました。
 レンスキーを演じたフェデリコ・ボネッリは、演技力不足なんで問題外。落胆したのが意外にもコボーでした。上手、踊りに関しては何のミスもなし。超高速ピルエットでは軸が全くぶれず、コジョカルを振り回すときは、パワフルさは無いものの、その振りまわすスピードの速いこと、思わず息を呑んじゃいました。さらに第一幕最後、僕が観たときはソアレスが失敗した片手リフトを、余裕、かつ優美さを失わずにこなす技術。
何がひっかかったかというと、オネーギンに見えない。洗練されすぎ。「オネーギン」はバレエでしか知らないんですが、初演時に観たアダム・クーパーが醸し出していた、世界に対する不満、野望、厭世観を湛えた雰囲気がコボーには無縁に映ってしまいました。ファンて、本当に身勝手な生き物です。ちなみに、「オネーギン」で一番好きな場面は、第1幕一場、9組のカップルが縦隊で2回舞台を駆け去っていく場面。観ていて気持ちいいんです。ここで必ず大きな拍手がおきます。

 あとは、今晩の「ファウスト」。


このあと、アダム・クーパーのインタヴューを読んだんですが、彼はオネーギンを踊っても得るものは少なかったそう。誉めた僕の立場が。

魂の代償:兵士の物語

2004.06.19
親愛なる皆さん

 おはようございます。沖縄での台風被害が最小限であることを祈りつつ。

 試験・プレゼンが終わるのを見越して、今週はエンタメ三昧。いつもの通りロイヤル一辺倒ですが、今週はバレエ・オペラとも「悪魔に魂を売った男の物語」と括れる演目ばかり。バレエの「マイヤーリング」と「オネーギン」には悪魔は出てきませんが、破滅を選んだ男の物語だし、オペラの「ファウスト」はここで説明の必要は無いでしょう。ちなみに、「ファウスト」、The hottest ticket in the Worldは今晩観てきます。何着てこう?

 初っ端は、ロイヤル・バレエのダンサー、兼振付家のウィリアム・タケットの新作、ストラヴィンスキーのオリジナルを題材にした「兵士の物語」。ロイヤル・オペラ・ハウスの地下にあるLinbury Studio Theatre で上演されました。見終わってから粗筋を知ったんですが、休暇で家に帰る途中の兵士が、ヴァイオリン(=彼の魂)と引き換えに悪魔から未来のことが書いてある本をもらう。三日間、どこかに居た後故郷に戻ったら、3年が過ぎていて、彼は死んだことになっていた、というものです。この手の「浦島太郎」のような物語って、世界共通なんですかね?勉強不足で、この点はよくわかりません。

 タケットの昨年の新作、それとThe Wind in the Willows 双方が満足できる出来だったので、特にアダム・クーパーとご贔屓のセナイダ・ヤナウスキーの素晴らしい踊りを期待していました。出演者は4人、兵士にクーパー、彼のフィアンセ/プリンセスにヤナウスキー、悪魔(他4役)にマシュー・ハート、ナレーターにウィル・ケンプという、イギリス・バレエ・ファンにはたまらないキャストなんですが、最初の10分間は硬直しました。ケンプだけが喋ると思っていたら、全員が台詞ありだったんです。バレエ・ダンサーの声を聞く機会って滅多にないし、先入観から勝手に作り上げていた彼・彼女の声のイメージを実際の声とすり合わせるのにちょっと時間がかかりました。それと、かなり演劇の要素も濃くて。でも、ヴォイス・トレーナーがクレジットされているくらいでしたから、台詞は全て聞きやすかったです。
 その硬直が過ぎれば、75分の休憩なしの舞台のスピードと密度、4人が作り上げる舞台の緊張感の素晴らしいこと。クーパーのちょっと甲高い声はベッカムの声を初めて聞いたときに感じた違和感があったものの、アダムとセナイダのパドドゥは溜息が止まるくらいダイナミックで、繊細で。なりたてプリンシパルの皆さんには、見習って欲しいです。それと上手なバレエ・ダンサーは、コメディを演じても本当に上手。でも、この夜、観客を圧倒したのはハートでした。小柄なんですが、後半、兵士に殺され、悪魔として復活する場面でのそれこそ「悪魔的」といえるくらいのダイナミックでシャープな踊りは、誰一人として視線を外せなかったのではないかと。
 「兵士の物語」、素晴らしいのにたった6回の公演。当然ほぼ完売。舞台セットもかなり凝っていて、ギャラも含めてどこにこんな金があったんだと思っていたら。舞台の両脇に、酒場のテーブルが幾つか置いてあり、そこに何組かのカップルが座っていました。「あんな席もあったんだ」と羨みつつ、後で聞いたら、1テープル、なんと1,500ポンド。ちなみに僕は立ち見の5ポンド。文化って、あんなふうにお金を使えるパトロンがあってこそ成り立つんだな、と。宝くじがあったら、かぶりつきの席を生涯を通じて買い占めたいです。
 続きます。嫌だといわれても送ります。

Racism の続き

2004.06.17
親愛なる皆さん

 おはようございます。素晴らしい晴天、昨夏購入して、この冬を越えてくれたハイビスカスがまた咲いて、気分は沖縄です。

 「人種差別」の補足。先のにも書きましたが、僕にとっては「白人と黒人の間の緊張」は言及できないので、個々人の間にある「差異」、「違い」によって増幅される「違和感」に絞りました。なので、幾人かの方には、及び腰に見えたかも。ディスカッションの中でよく使われたのは、「not knowing」、「not wanting to know」situation、要するに「知っているのかいないのか」、「知りたくないのか」、この気分に左右されるだろうと。

 Bridging the gap caused by the differences between people is not as easy as I thought.

By this point, I am coming to feel how difficult to establish a relationship in a counselling room if I do not understand my racist feeling. Noonan says that the basic requirement of liking each other underlines the fundamental fact that there are two ordinary people in the relationship. We are ordinary people, but paradoxically, each of us is also unique, different. I would feel that looking at people’s own uniqueness in detail may sometimes frighten us.

 これが僕の正直な気持ちです。

 このトピックはイギリス人の学生にもかなり影響を及ぼしたようで。また、頂いたメールの幾つかに、精神的なカウンセリングを受けるなら日本語で、と仰られた方がいます。同感です。が、キャリアを確立しているならともかく、経験を積む段階では、イギリスに居る限りは無理でしょう。
一通りの観察が終わったので、僕らのグループだけ、クリニカル・プレイスメントにまつわる経験を共有しようということになりました。本当に難しいんですよ、これが。経験が少ないとか、いろいろとハードルは高いし。更に、経験をつめる病院が見つかったら見つかったで、今度は好きなときに休みが取れないとかなどなど。僕は「やっぱり有名な病院で経験を積みたいよ」、と言ったらみんな頷いていたので、安心。
 で、そんなことを議論しているうちに、徐にあるクラスメート(イギリス人男性)がこう言いました。「僕は、英語が母国語で無い人のカウンセリングをやりたくない、というのが本音だ。君が言ったように、文化、言語によって思考システムが違う。いくら英語が上手くても、クライアントが本当に言いたいこと、僕が彼らにいいたことが伝わるのか」、と。
彼はかなりリベラルな方なので、正直、吃驚。でも、この不安もわかる。僕も、自分のカウンセラーがどこまで僕の言いたいことを理解しているのか、たまに不安になりますから。もしかしたら彼女だって、「本当にわかりづらい英語だわ」、なんて思っているかもしれないし。経験つめるようになったら、「何で日本人のカウンセラーなんだよ」、とクライアントに拒否されるかもしれないし。立場の逆転はどこにでもある、と。カウンセラーになる道は、険しいですが、やり甲斐もあります。

人種差別 in Counselling room

2004.06.15
読みたくない方のほうが多い話題かもしれませんが。

 皆さんのご教示のおかげで、ワークショップもまぁ上手くいきましたが、矢張り、へとへとな一日でした。あれこれ書く前に、どんなことを言ったかを。

 My tutor was also my interviewer.

When I found his family name in a letter from the department, I felt disappointed. I know it is absolutely ridiculous, but I spoke to myself, `Why is this counsellor’s family name like this?’ Similar to an example of the paper, I felt belittled by the department. Furthermore, I was still thinking, `OK, his name is like this, but he may be a westerner’. It is really hard to admit this process.

Then, my racist imagination, fantasy hit me really seriously. I am sure that he found the state of my emotion, because he asked me, `Why were you surprised when you met me?’ I did not answer clearly because I was not able to see whether I had shown my surprise to him. This experience emotionally affected me very badly.

As some of you know, between Japan and China (I even do not know whether he or his family came from China), there were lots of tragedies, especially during WW2. I do not know exactly what happened to them and us. However, I was influenced by indirect information, which is sometimes formed by rumor, history and my own fantasy. Moving to the UK and learning counselling have led me to think about racism as a part of my life.

 こんなことを言いました。僕のチューターは、いわゆる華僑の方。彼のファミリー・ネームから勝手に想像した結果、自分を陥れました。取り上げたペーパーの主題は白人・黒人だったんですが、これは僕には現実的に感じられないので、自身の経験を織り込みました。ペーパーでは、黒人のクライアントが黒人のカウンセラーと会うことになると、「カウンセリング・オーガナイゼイションから、不当に扱われている」、と感じることがあるとか。つまり黒人ですら、「White is better」というファンタジーに捕われていると。ちなみに、筆者は黒人のサイコアナリストです。
 プレゼンが終わって、ちょっと気を抜いていた間に、ディスカッションの話題が、アイルランド人に移っていました。どうしてかって言うと、レクチャラーがアイルランド人女性、グループ全体が「黒人、アジア人の話題には触れたくない」という意識が、無意識のうちに彼女に責任を転嫁する意識を共有したようです。つまり、前者2グループに触れたくないから、白人にもかかわらず、クラスの中ではマイノリティであるアイルランド人に攻撃の矛先を向けたと。知人からの言葉、Victim's victimを現実のものとして感じました。更に、いつもはグループのオピニオンリーダーの二人が全くの貝。イギリス人にとっても難しい話題なんだ、と。
 今日から、実際カウンセラーとして「イギリス」で働くときに経験するであろうことを論じ始めたんですが、厳しいですね。まず、経験できる病院を見つける難しさ。その後も、クライアントから拒絶されることもありうるとか、逆に「カウンセラーにクライアントを拒否する権利はあるのか?」、これは僕の質問ですが、来週の課題です。

 最後に軽い(かな)話題。先々週、故ダイアナ妃のご母堂がなくなりました。先週の木曜日、お葬式があり孫であるウィリアム・ハリーの両王子も列席。ちなみにチャールズは列席を拒否されたそうです。雨が降っていたらしいんですが、雨で濡れたウィリアムの髪が、「植毛しないとまずいんじゃないの」というくらい哀れな様相でした。矢張り、チャールズの息子だけのことはあります。

 朝から重い話題で。皆さん、お健やかにお過ごしください。

お願いがあります

2004.06.11
いつも愚痴を読んで頂いている皆さん

 こんにちは、ロンドンも昨日は真夏日でしたが、バラ園でテキストを読みながら過ごす午後は、学生でないと楽しめません。

 学業に関して助けていただきたいことがありまして。来週の月曜日14日に、「カウンセリングにおける人種差別」というトピックでテキストの解釈と、カウンセリング・ワークショップで関連するプレゼンをやります。使うペーパーがもろに「白人のカウンセラーと黒人の患者」、「黒人のカウンセラーと白人の患者」もしくは「黒人のカウンセラーと黒人の患者」などと、日本人にとってはかなり厄介、というか存在を認識するのが難しいような問題。でも、多文化社会のイギリスで勉強する以上、避けては通れない点です。
 テキスト解釈のほうでは、通常発表者の個人的な経験を入れるように促されます。イギリスに来て、差別されたことはないはず。何が嫌って、自分が差別「する」側に立っていることに気付いたとき。そう思うことが、よく起きるんです、個人的に。最近だと、デンマークの皇太子の結婚式の報道で、一人、アジア系の女性が他の王族とともに写っていたのを見つけたときの戸惑い。デンマーク皇太子の弟の奥さんは、香港生まれのイギリス人なんだそうです。驕り、不遜、無知である事の罪などなど、結構ネガティヴな気持ちが一気に吹き出しました。今回も発表の準備段階から既に、自分の中の人種差別意識を見つめなければならず、ちょっとダウンです、正直な所。

 で、お願いしたいことはですね。ワークショップで、人種差別、もしくは個々人の違いを強調した写真を使いたく探しています。例えば、ベネトンの一連の写真とか。肌の色だけでなく、同性愛者の結婚式の写真とか、顔のあらゆる所にピアスをした若者がスーツを着てオフィスで働いているとか、広範な意味で「差別」、もしくは「差異」、「違和感から来る不安」という意識を刺激する写真を集めているウェブをご存知でしたら、教えてください。また、そんな感じの写真をお持ちの方、ZIPで送っていただけると大変助かります。血が飛び散るようなのはパスです。ワークショップが終わったら、全て廃棄しますので、ご迷惑はかけません。二つとも他のクラスメートと一緒にやります。
 たった一回のプレゼンで、自分が理解できるとは思っていません。でも、何故自分が差別意識を持つのか、その理由の一端くらいは理解したいと思っています。

 明日は大荒れの予報。それとロンドン市長選、かなり接戦になっているそうです。そういえば、地下鉄のストはどうなったのかな。



ありがとうございます
2004年6月11日

昨日のお願いに、早速、色々と送っていただき、ウェブをお知らせいただきました。ありがとうございます。あくまでも基本は「サイコダイナミック・カウンセリング」なので、考えるとベネトンの広告も全て使えそうな訳でもないし。まだまだ、何かありましたら、お知らせいただけると助かります。再度、血飛沫はだめです。僕本人が受け付けられません。

 メールとインターネットが無い生活なんて、もう考えられないです。

フィンランドは音楽の才能の宝庫

2004.06.07
と、何を突然に、というときはエンタメです。いつだったか、新聞の文化面の特集にクラシック音楽界でのフィンランド出身者の目覚しい活躍が取り上げられていたんですが、その特集でも大きく取り上げられていたソプラノ、Karita Mattilaがタイトル・ロールを歌い、演じたリヒャルト・シュトラウスの「Arabella」を観てきました。使い古していますが、オペラが好きでよかった、そんな、感動に打ち震えた夜でした。

 試験期間中だったので、予習する時間がなく不安だったんですが。新聞のレヴューでは概ね歌手は誉められていましたが、セットの評判が今ひとつ。このプロダクションは、2年前にパリのシャトレ座での新演出を持ってきたもので、ホテルのロビーらしきセット。これが、歌手が上に移動すると天井桟敷に近いところからは全く観られないのが批判されていました。が、全体芸術としてみれば、素晴らしいオペラでした。
 何が素晴らしいって、マッティラさん。背が高く、個性的な美人、何を着ても綺麗だし。演技者としても素晴らしかったですが、矢張り歌の圧倒的な存在感が。最近は使われすぎだと思うんですが、今目の前で唄っている女性が「DIVA」だ、と思えるものでした。全てのフレーズが鮮明に、かつ感情の起伏が完璧に伝わる細やかさ。技術をひけらかすのではなく、アラベラという女性をみせてくれました。第一幕の、男として育てられた妹、ズデンカを演じたバーバラ・ボニーとのデュエット、第2幕の初め、アラベラのHusband to beのマンドリカを演じたトーマス・ハンプソンとのデュエットでは、余りの美しい歌声に目頭がかなり熱くなりました。人間の声って、なんて美しいんだろう、と。
今シーズン初め、パリ・オペラ座でシュトラウスの「ザロメ」を演じたときも、マッティラさんは現代最高のザロメと大絶賛されていました。勿論シュトラウスの音楽の素晴らしさもあると思いますが、4月に感動しまくった「薔薇の騎士」の儚い中にも芯の強い凛とした元帥夫人で聴衆を魅了したフェリシティ・ロット同様、他の歌手でアラベラを見るのはちょっと難しい感じです。何度も引き合いに出すのもなんですが、デボラ・ヴォイトの舞台では観たくないかな。マッティラさんが日本でオペラを歌うなら、いく価値、大有りです。こんな素晴らしい歌手をオペラ好きだけに楽しませるなんて、勿体無いです。マッティラとバルトリ、それと個人的に一押しのアレクサンドラ・フォン・デア・ヴェートが日本で歌うなら、あらゆるコネを使ってもチケット獲得の苦労は報われるでしょう。
 他の歌手の水準も、今シーズン最高の一つでした。男装していたときのほうが格好よかったボニーのドイツ語はドイツ語に聞こえたし、ハンプソンの喜劇役者ぶりは地のままかと思えるくらいでした。若手コロラチューラ・ソプラノの筆頭、ディアナ・ダムラウなんて、トータルほんの4分くらいの出演でしたが、盛大にブラヴォーが飛んでいたし、本当に贅沢なキャスティング。マッティラとハンプソンは来年のヴェルディのオペラでも共演することになっています。そうそう、些細な事ですが、マッティラとボニーが肩が剥き出しになったドレスを着たときに、じっくり肩を見たんですが、ツベルクリンだったかBCGだったかの注射の痕が無い。あれは日本人だけなんですかね。
 来週は、今シーズンの超プラチナチケット、「ファウスト」のリターンが取れました。別の大きな楽しみを犠牲にしたので、なんとしても素晴らしい夜であって欲しい。あの豪華キャストのギャラが幾らくらいなのか、知りたいです。

 そろそろ日本に戻らないと、皆さんに忘れ去られてしまいそうだし、夏になると矢張り鰻を食べたいし。でも、沢山のオペラ・バレエが日本よりずっと安く楽しめるロンドンを離れるのもちと辛いかなと。

200兆円の個人負債

2004.06.04
親愛なる皆さん

 こんにちは、日本は暑いようですね。

 本題の前に。昨日の「英国ニュース・ダイジェスト」に「ナクソス島のアリアドネ」の記事が掲載されました。編集の方が素晴らしい写真を使ってくれたので、皆さんにもカラーでお見せしたいです。日本からも購読できるそうなので、是非。最近特集記事も楽しいし。原稿料が上がるわけではないです。

 受かるかどうかは話が別ですが、お持ち帰り試験、やっと昨日終わらせることが出来て、ほっと一息。この2週間の反動を煽るように、昨日の「Metro」(地下鉄の駅で配られる無料の新聞)が、「イギリスの悪口を言いたい病」に火をつけました。一面は、この夏には、イギリスの個人負債の総額が200兆円を超えるだろうとの記事。これについては既に2週間ほど前に全国紙でも読んだんですが、改めて、この国の習慣「Pay Late」の凄まじさを実感。試算では、4分毎に2億円づつ負債額が増えているそうです。実際は、金利上昇による住宅ローンの増加がメインの理由だそうですが、いまだに各クレジット会社の新規キャンペーンは続いているし。
 来週の木曜日、10日にロンドン市長選挙や、地方選挙のほかに、EUの規約に関する投票も行われます。そのキャンペーンのためにEUはプロモーション・ヴィデオを作成したそうです。冒頭に母親が乳児に授乳するシーンがあり、乳首が写っているそうです。それがイギリスでは、何故だか知らないけど引っかかり、乳児が顔を寄せている母親の胸にあるべきものが無いという、全く奇怪なシーンが放送されたらしいです。授乳シーンって、イギリス人は堪えられないシーンなのか、不可解。
 で、その10日に、ロンドン地下鉄の24時間ストが行われる模様。これに関しては、ケン・リヴィングストン市長と労働組合のトップの馴れ合いが指摘されていますが、組合の要求が、ごり押しとしか。現在でも、週35時間勤務、5日労働、平均年収700万円以上、さらにロンドン市内の交通費は無料などの特典がたくさんあるそうです。が、彼らの要求は、週32時間、4日勤務で年収増額。先日、近所のフレンチ・デリで働いているフランス人の店員と「イギリス人て怠け者だよね」、と盛り上がりました。彼女曰く「イギリス人は働くことへのリスペクトを完全に忘れている」。お国芸といえるほどストライキが大好きなフランス人にこんなことを言わせてしまうなんて。そういえば、昨日の早朝、空港の管制システムを管理する会社が新しいコンピューターソフトを走らせて大失敗。イギリスの主要空港のほぼ全部で、大混乱。何でそんなことを早朝にするかな、と。
 数週間前に、ベッカムとの浮気を暴露した女性、テレヴィのキャスターにスカウトされたそうですが、あっという間にお払い箱。彼女の「Fifteen Minutes Fame」も終わったようです。
 昔、「ここが変だよ日本人」って番組があったような。「ここが変だよイギリス人」って番組、成立、しないでしょうね。イギリス人に自虐嗜好があるとは思えないし。でも、すっきりした。
 初夏は、ロンドンが一番輝く季節。楽しまないと。皆さん、よい週末を。
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