LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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2005年02月の記事一覧

空気が冷たすぎて

2005.02.24
 おはようございます。日本ではインフルエンザがかなり流行っているそうで。

 初っ端からなんですが、痛みがなくなったとはいえ、咳が一月以上も続くので心配になって再度医者に行ったところ、「風邪やインフルエンザじゃないな。なんか悪い菌が喉の奥に入り込んだみたいだね」、と言われロンドンに来て初めて抗生物質を処方されました。医者はあっさり、「お腹をこわすと思うけど」、とのこと。実際その通りになっていますが、咳が治まってきたので、腹痛の一つや二つ仕方ないか、と。
 で、今週ロンドン、というか北部スペインまでを含むヨーロッパ大陸のほぼ全域は、まるで冷凍庫の中に入ったよう。地中海沿岸のニース・マルセイユでも雪が降ったそうです。今朝は、ロンドンは雪が積もっていました。エッセイが終わったとはいえ、あとプレゼンテイションが2回あるので、図書館に行こうと外に出たところ、余りにも空気が冷たく感じられて、息苦しくなってしまい、外出できませんでした。昔沖縄に行ったとき、暑くて息苦しくなったことはありますが、寒くて息苦しくなることもあるんだな、と。まぁ、そんだけ体力が落ちているということでしょう。住環境もかなり影響しているようなので、3月に引越そうかと考えています。そん時はまた、「引越しおめでとうカード」の送付を要求すると思いますので、よろしくお願いします。

 興味ないと言いつつ、矢張り王室がらみなので、ゴシップ雑誌を買い、新聞をくまなく読んで情報収集しているチャールズ皇太子の結婚。ここにきて、当初予定されていたウィンザー城での結婚式が不可能になり、代わって、ウィンザーのタウン・ホールで執り行われることになったのは良いけど、エリザベス女王はそのセレモニーは欠席。今日の報道では、既にこの結婚式が必要以上にメディアの注目を集めていることに女王はかなりご立腹とのこと。チャールズを呼びつけた一方、高い金を払って、王室のコンサルタントをしている皆さんの不手際の数々にもかなり怒っているとか。結婚式まで一月余り、まだまだ二転三転しそうなこの結婚式。

 最近ロンドンに来られた方は少なくとも一回は目にされたかと思いますが、2012年のオリンピック招致が、大変盛り上がっています。まあ、これは夏のオリンピックですから今日のような雪による交通網の(ほぼ)完全麻痺を心配することはないですし・2012年までロンドンに居るとは思っていませんが、後7年でロンドンの交通網が飛躍的に改善されるなんて、絶対にありえない。ロンドンの為にも、ニューヨークかパリが選ばれるべきですね。夕刊紙の報道によれば、イングランド南東部の鉄道網、ずたずただそう。

 咳こんでいる人間が言っても何の説得力もありませんが、皆さんどうかご自愛のほ
ど。
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いずれ椿かカーネイション

2005.02.20
親愛なる皆さん

 ロンドン、とても寒いです。来週の半ばは、ほぼ丸一日中氷点下らしいです。コースワークが仕上がって気が抜けてまた風邪がぶり返す、だけは避けたい。

 エッセイのラスト・スパート期間でしたが、ロイヤル・オペラで「ラ・トラヴィアータ」を2回と、ピナ・バウシュ率いる「Tanztheater Wuppertal」のNelken(カーネイション)を観てきました。両者とも、自分にとって納得の行くエンタメではなかったんですが、いろいろ思うところもあって。

 「ラ・トラヴィアータ」、昨年の4月にキャストが発表されたとき、ファースト・キャストに3年前のたった1回のコンサート形式のオペラで魅了されたドイツ人ソプラノの方が予定されていたので、非っ常に楽しみにしていたんですが、チケット発売を前に降板。代役の、イタリア人ソプラノ、ステファニア・ボンファデッリも体調不良で降板。セカンド・キャストだったフランス人ソプラノ、ノラ・アンセラムがファーストに繰り上がるも、通常だったら、ファース・トキャストの主役とセカンド・キャストの準主役が混ざることがないのに、混ざりまくり。歌うほうも大変だったでしょうけど、「たたられてんじゃないの」、と。こんなに主要キャストでもめたのは、数年前、前音楽監督のハイティンクが最後に指揮した「トリスタンとイゾルデ」の主役二人がキャンセルして以来でしょう。
 久しぶりに、「オペラはやっぱりこうじゃなきゃ」という舞台で観る「ラ・トラヴィアータ」、音楽は楽しみました。ファーストのアンセラムさん、技術的には素晴らしかったです。ピアニッシモがきちんとピアニッシモとして聞こえたし。問題は、みたこともないのに、「ロイヤル・オペラの椿姫=アンジェラ・ゲオルジュー」というイメージに取り付かれてしまっていたこと。恐らく修正が入っているとはいえ、プログラムに掲載されているアンセラムさんの写真は綺麗です。舞台でも目鼻立ちがくっきりしていて綺麗な方。でも、なんと言うか男顔っぽいんです。眉間の皺も、アルフレードの父親を演じたイギリス人バリトン、アンソニー・マイケルズ・ムーアより深いし。容姿に難癖をつけてはいけないのは承知していますが、矢張り理想の人物描写を見せて欲しい。より説得力のある容姿であって欲しい。プリマドンナは、天から二物以上を与えられた人であって欲しい。
 セカンド・キャストのアルフレードはデッカ・レーベル一押し、マルタ島出身のJoseph Calleja。まだ20代という若さだから、声が軽いのは仕方ないとして、体型が既にパヴァロッティ並。それとこれも舞台という芸術には言ってはいけないんでしょうけど、ジェルモン親子のどの組み合わせも、どうしても親子に見えない。二晩とも演技と歌唱がそういう次元の不満をねじ伏せるほどでなかったのが残念です。

 これまた未見がゆえに非常に楽しみにしていたピナ・バウシュ。ある方が「好みがはっきり分かれる舞台ですよ」、と。ええ、はっきり分かれました。バレエの延長線上で観にいったんですが、この演目に関しては事前に情報を仕入れておくべきでした。
 舞台一面にカーネイションが植えられ、こんなんでどんな風に踊るんだろうと、わくわくしていた気分は、「だるまさんが転んだ」や、女性が泣きながら、自分の頭に泥をかけるシーン、中年男性がスカートをはいてフラダンスを机の上で踊るシーンの連続に萎えました。でも、周りは拍手喝采。休憩があったら最後まで居なかったことでしょう。
 が、中盤に入って、ダンサーが椅子を持って舞台後方と前方を行き来し、座り、踊るシークエンス。美しかった。「なんだ、こんな饒舌なダンス言語をもっているんだ」、と思いました。終盤、数人の男性ダンサーが、刻んだ玉葱に顔を突っ伏すシーン、最後は一人ずつ「何故ダンサーになったか?」を観客に言っておしまい。
 帰りのバスの中で、プログラムを熟読。漸くピナ・バウシュの「ダンス」の解釈と自分の解釈の違いがわかり、ちょっと納得。思ったことは、バウシュが非常に稀な才能の持ち主だということ。恐らく彼女は、自分の深い、もしくはネガティヴな感情をダンサーの集約・拡散の動きで昇華させてしまう。今では、もう一回くらいは観てみたいと思っています。

 こんなメールをあちこちに送っていたらこんなことも有るんだ、ということで、26日のロイヤル・オペラの「魔笛」、ある団体がお客さんの接待でボックス・シートのチケットを取ったは良いけど、話を合わせられる人が居ない。なので、バイト代として席を提供するから、解説よろしく、と。「魔笛」のまともな解説なんか出来るわけないけど、以前レヴューを書いたときにかなり勉強したし、何とかなるでしょう。これが商売には、ならないでしょうね。

跪いて、足をお舐め、といったのは山田詠美

2005.02.12
親愛なる皆さん

 おはようございます。エッセイの下書きが終わったのでちょっと浮かれ気味です。日曜日の正午までにタイプアウトしないと。

 色々とウェブをみたら、日本でも結構チャールズ皇太子の再婚は詳しく報道されているようですね。今朝の新聞各紙の一面トップは、当然二人のツーショット、もしくは、婚約指輪を報道陣に示し、嬉しくてたまらないわ、とばかりに歯茎をぐっとむき出して笑うカミラさん。やっぱりただのおばさん。ちなみに、指輪はプラチナに大きなダイヤが一つと、小さなダイヤが3個で、デザインはかなり大人しめ、というかダサい。アスプレイの報道担当者曰く、同じ指輪が欲しい、という問合せは全くないそうです。ダイアナさんの婚約指輪が初めてメディアに出た翌日は、電話がパンクしたとか。
 カミラさん曰く、皇太子は、片膝をついてプロポーズしたそうで。彼女の答えは、「Of course」。二人が幸せなのは良いことなんだろうけど、30年以上も前に出会い、お互い心惹かれつつも、意にそぐわない結婚をし、離婚、そして晴れて結婚。二人の結婚の為に犠牲になったようなダイアナさんを思うと、ちょっと。
 The Telegraph紙は速攻でこの結婚について世論調査をしたそうです。結果、結婚については、概ね歓迎の意識が高いようです。が、カミラさんが、「国王夫人、Princess of Consort」のタイトルを将来受けるであろう事に関しては、半数近くが不快だそうです。更に、エリザベス女王が退位、もしくは死んだときには、チャールズでなく、ウィリアムがその後を継ぐべきだ、との声が強いと。報道によると、王室は慎重にこの結婚を準備してきたようですが、まだまだ道は険しいのかな。チャールズ皇太子、最近の報道では、国からの給料に加えて、自己の食品会社や個人不動産から得る収入が巨額、且つ経理が不透明と指摘されています。この際、チャールズは王位継承権を放棄した方が全てが丸く収まる、というのは早計でしょうね。
 今日の報道で面白かったのが、カミラさんのお子さん二人の待遇。チャールズは速攻でこの二人にもセキュリティ・ガードをつけたりと色々と手配しているそうですが、今回の結婚で一番得したのはこの二人だろう、と。息子はかつて麻薬所持で捕まり、現在ギャンブル依存症に片足を突っみかけている売れない料理ジャーナリスト(9月に結婚予定)。娘はメイフェアの小さな画廊のアシスタント。早速王室メンバーになったと吹聴しているそうです。この二人にいきなり爵位が授与されたら、それこそチャールズの我儘ぶりがまた非難されることでしょう。いずれにしても、今週の日曜紙と、来週のゴシップ雑誌の報道合戦が楽しみです。

** Crush chaos at Ikea store opening **
Several people are injured as thousands of customers flock to the opening of
a new Ikea store in north London.
< http://news.bbc.co.uk/go/em/fr/-/1/hi/england/london/4252421.stm >
 今週、もう一つ興味深かったのが、この事件。数日前に、ロンドン北部で、IKEAの新しい店がオープン。その記念に49£のソファなど、信じられない値引き販売を深夜に始めたそうです。で、集まった客は、7000人。パニック、怒号、怪我人が出て、30分で閉めたそうです。IKEA側の手落ちは非難されるべきですが、客のほうも、店員を殴る蹴る、幸運にも何かを買えた人は、ちょっと足下を見た数秒間に、盗まれたそう。多分どこかで写真が見つかると思いますが、拳が入るくらい口を大きく開けて店員に怒鳴っている女性、暴徒と化した客から守る為に幼児(連れて来るなよ)を守ろうとする警備員、ここは文明国のイギリス?
 「安物買いの銭失い」、という教訓がこの事件に当てはまるとは思いません。が、なんというか、自分に対しての誇り、という意識がなくなりつつあるように思えます。そこまでして買いたいほどIKEAって、質いいか?IKEAのソファ以外にこの世の座れることのできるソファがない、というのであれば話は別ですけど。

これもRoyal Wedding

2005.02.11
親愛なる皆さん

 おはようございます。いいな、日本は連休ですね。

 連休前だからか、それとも日本には関係ない話題なのか、日本時間2月11日、午前6時現在報道されているのか判りませんが、来る4月8日に、チャールズ皇太子は、長年のパートナー、カミラ・パーカー・ボウルズ夫人と結婚することになったそうです。この結婚によって、チャールズが王位を継いだとき、夫人が「女王」のタイトルを授与されることはないそうです。夫人の友人の発言として、パーカー夫人は、「Princess of Wales」のタイトルは欲しくない、と。このタイトルが使える、ということを知らなかったんですが、仮にパーカー夫人がこのタイトルにこだわれば、結婚はもっと先になったことでしょう。とりあえず結婚後に使われるタイトルは、Her Royal Highness the Duchess of Cornwall が有力だそうです。
 それにしても、34年間の恋の成就、美談になるだろうけど、二人の容姿からは、イギリス人の田舎の貴族の遅すぎた結婚、という雰囲気しか伝わらなくて、王室好きとしては、今ひとつ盛り上がりません。といっても、来週のゴシップ雑誌は買いますけど。

** Prince Charles to marry Camilla **
The Prince of Wales is to marry long-term partner Camilla Parker Bowles,
Clarence House announces.
< http://news.bbc.co.uk/go/em/fr/-/1/hi/uk/4252795.stm >

 先週末のThe Independent紙の旅セクションに日本の特集がありました。何でも、20日まで日本では「外国人観光客お迎え強化週間」だそうで。10ページくらいの特集ですが、それぞれの記事が良くかけていて感心しました。特に、築地、沖縄、更に和食好きのイギリス人が、日本食には寿司・天麩羅以外にもすばらしい食材が有るのに気づき始めた等は、これまでのどこか今でも日本は不思議な国、という観点から書かれていた記事と違って、普段の日本についてかかれているようでした。昔、友人に連れて行ってもらった、銀座の「新ひのもと」のイギリス人主人の記事は懐かしかったです。それと、イギリスから沖縄まで、上海経由で行けるなんて。遠いと思っていた沖縄が、ちょっと身近になったかんじです。
 この特集記事の特典は、来月でしたっけ、愛知のどこかに開港する新空港から日本に入り万博を見学するツアーのプレゼント。もしこれに当った人が、「南セントレア」なんて市の名前の由来を知ったら呆れるでしょうね。酷い、というかこんな何のセンスも想像力もない名前を考えつける思考回路はどんなものなのか、図解で見たいです。この名前が拒否されることを、ロンドンからも願って止みません。

3月5日はロイヤル・バレエ東京公演の発売日

2005.02.08
で、これを一緒に送りたかったかので。

 これを受け取られる大多数の皆さんが、さほどバレエに興味がないのは承知しています。が、現在のロイヤル・バレエの勢いは素晴らしいものです。ロンドンに来て以来5年、ずっと見ていますが、トップダンサーからコール・ド・バレエの皆さんまで、その充実振りはファンとしては、他のものを切り詰めても全てを観たいと思わせるほど。偶然にも、The Telegraph紙と The Observer紙の辛口で知られる批評家が前後して、「芸術監督モニカ・メイソンの卓越したリーダーシップのもと、現在のロイヤル・バレエは過去10数年の中でもプライムだ」、と。
 スター・ダンサーの充実振りは言うに及ばず、キャラクター・アーティストやコール・ド・バレエの水準も、「なんでこのランクでとどまっているの?」と不思議に思うくらいの人材が溢れています。
 プリンシパル・ダンサーについては、皆さんの周りのバレエ好きの人に聞いていただくとして、他のダンサーについて。
 プリンシパル・ダンサーの下に、「プリンシパル・キャラクター・アーティスト」というランクがあります。判りやすく言うと、ドン・キホーテ役(余り踊らないで演技中心)などを演じる皆さんですが、ここにいる皆さんが今年は、時に主役を凌駕するほど。特にウィリアム・タケットとアラステア・マリオットの演技ぶり。マリオットは「シンデレラ」でのアグリー・シスターズと「リーズの結婚」のシモーネ未亡人役を観たんですが、「こんなおばさんいるよな」と思わずにはいられませんでした。タケットも同じくシモーネ役で大絶賛。未亡人によるクロッグ(木靴)ダンスは「リーズ」の中でも人気が有る場面。コミカルに演じつつ、結構難しいステップがあって、ロイヤルの伝統を知った人が踊ってこそ、と。
 ファースト・ソロイストも、一部を除いて誰もがすぐにでもプリンシパルになれそうなくらい。男性陣だと、シアーゴ・ソアレスとエドワード・ワトソン、女性では、イザベラ・マックミーカン(老け顔のために役に恵まれず)や、アメリカ人ながら、アシュトンのバレエを見事に演じるディードレ・チャップマンなどが、安心してみていられます。
 その下のランクだと、ロイヤ・ルバレエ期待の星であり貴重な生粋のイギリス人ダンサー、ローレン・カスバートソン、跳躍が素晴らしいホセ・マーティン、最近、コンスタントに役がつき始めた蔵健太さんなどなど。

 つうことで、7月に6年ぶりの東京公演があります。演目はアシュトンの「シンデレラ」とマクミランの「マノン」。どの組み合わせで観ても、はずれなし。中には、ロンドンで観られない組み合わせもあるし。脇を固める役には、元芸術監督のアンソニー・ダウエル卿も参加するようだし。でも、「シンデレラ」での彼のアグリー・シスターズは正直なところ老醜。それより、「マノン」でのムシュー・GMで見せる足フェチぶりのほうがいい味。前述のマリオットのほうがアグリー・シスターズの面白さを上手に出しているように思います。「シンデレラ」には、恐らくファースト・ソロイストが大挙してでるでしょうから、将来のプリンシパル・ダンサーを見るいい機会でしょう。それと、もし「マノン」をギエムと他のキャストで観る方がいらっしゃいましたら、是非、3幕での衣装の違いによる印象の違いを見てください。

 吉田都さんの「シンデレラ」を今年は見逃してしまったので、是非観に帰りたかったんですが、同じ日にロイヤル・オペラでのプラシド・ドミンゴとヴァルトラウト・マイヤー、更にブリン・ターフェルがでる「ヴァルキューレ」が買えてしまったので。逆に、ロイヤル・バレエの今シーズン最終日の抽選が外れてしまったので、これはなんとしてもリターンをゲット。最終日の最後を飾るのがギエムですから。これを見逃したら、一生後悔しそうです。

 勉強に戻ります。

マノン、ギエム、マノン、ギエム

2005.02.08
親愛なる皆さん、

 おはようございます。久々のエンタメです。

 コース・ワークを仕上げられない焦りに苛まれつつ、先週の木曜日、3日ロイヤル・バレエで、ケネス・マクミラン振り付けの「マノン」を観てきました。言わずもがな、マノンを踊ったのはシルヴィ・ギエム、相手のデ・グリューはジョナサン・コープです。

 ギエムの「マノン」を観るのは2年ぶり、更に、その間コール・ド・バレエにも上手なダンサーが加わり、舞台の出来は素晴らしく良かったです。オペラ・ハウス中のファンの熱気もかなり高かったです。ロンドンのファンも、ギエムの「マノン」を待ち焦がれていたんだと思います。今回は、更に、現在人気・実力共に注目を集めている、ブラジル出身のシアーゴ・ソアレス(First Soloists)が、準主役に当る、レスコー(マノンの兄)デビューを果たすのも話題でした。
 ソアレス、上手いです。日本人女性が思い浮かべるダンサーの顔からはちょっと外れるかも知れない個性的な方ですが、技術のレヴェルも安定してきたし。何より、ランクが上がって重要な役を踊るようになってきたので、昨年ははらはらしながら観ていたパートナーリングも随分としっかりしてきました。それと、ロイヤル・バレエのダンサーとして重要な、「役を演じる」ということを理解しているのが頼もしい。マノンが出てくる前の踊りは、確かに「この役に抜擢されるだけのことはある」と頷けるものでした。
 が、他のダンサーに眼をやる余裕があったのも、ギエムが出てくるまで。ギエム、今月23日で、40歳。前回「マノン」を踊ったときや、昨春の「ジュリエット」を踊ったときなど、けなすことが批評だと誤解している向きからは「10代に見えない」なんていわれていました。確かに見えないよ。でも、先週の木曜日は、ファンの遠吠えでもいい、何かが違っていたんです。
 舞台右手奥の馬車から降りてきた女性、紛れもなく未だ自分の魅力に目覚めていない「マノン」そのものでした。はにかむとかでなく、「無垢」という言葉がぴったりの仕種・表情。宿の中庭で繰り広げられる騒動を興味深げに見ている様など、性に目覚める前の少女そのもの。役を考え尽くした末に生み出された、舞台上に凝縮されたマノンの思うこと・感じることがまるで本物の人生のようでした。神がかった演技、という気はないです。ただ、自分の目の前で演じられているマノンの波乱に富んだ日々が、観ている僕の中にすっと入り込んでくるような不思議な高揚感を感じました。
 結末に行く前に、もう一つ。ギエムが踊っていようが、舞台の端で演技していようが、彼女が舞台に居る間は彼女しか観ていなかったので、彼女に絡まないダンサーはほぼ全く観ていませんでした。ということで、ギエムの次にずっと観ていたのが、ジョナサン・コープ。カンパニー最高齢のプリンシパル・ダンサーであり、ロイヤル・バレエでのギエムのパートナー。先シーズンの後半は病気降板が続いて体調が心配でしたが、今シーズンは絶好調。「シルヴィア」、「シンデレラ」そして「マノン」での素晴らしい踊り・サポート・演技を観て、彼はカンパニーの至宝。
 第3幕後半、沼地に逃げ込んだマノンとデグリュー。マノンは死に行く自分の運命を受け入れて最後の命を燃やし尽くす、という場面。超高度なリフトの連続で、ダンサーの技術を目の当たりにできるシーンでもあります。当然、他のダンサーがどんなトレーニングをしても出来ないであろうリフトを軽々とこなすギエム、そんなギエムを受け止めることが彼の人生の全てで有るかの如く支えるコープ。たった数分間にもかかわらず、「この最後の抱擁のためにマノンとデグリューは生きてきたんだ」、と。凄かったです。デグリューにしっかりと支えられ、聴衆のほうを向いたときにギエムが見せた絶望と幸福が溶け合った末の穏やかに澄んだ表情には、「今この舞台で生み出されているのは何?」、と思わずにはいられませんでした。これを「計算し尽くされた演技」、という批評家が居たら、その方は職を失うでしょう。
 マノンの亡骸を前に泣き崩れるデグリュー。そしてカーテンが降り、再び上がったとき、舞台の中央に放心状態のまま立ち尽くすギエムとコープ。何度も何度もカーテン・コールが繰り返される中、5回目くらいのときに漸く二人の表情から、「あ、戻ってきた」と。
 2月25日と、3月1日にも、彼ら二人が創り上げる舞台の一部になれれば、と。
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