LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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2007年09月の記事一覧

軍は同胞を殺す

2007.09.28



 亡くなられた長井さんのご冥福を心より祈ります。

 
 写真は、The Guardian紙のウェブに掲載されていた、ロイター発の写真。本紙ではさらにこの後に続くものとして、長井さんが苦痛に顔をゆがめている写真があった。その長井さんの横を平然と通り過ぎ、同朋に銃を向けるミャンマー軍の兵士達。
 国を、そして国民を守るためにあるはずであろう軍隊が、たった一人の独裁者の為に、同じ国で生まれ育った仲間を殺していく。遠くない昔に、人間は同じことをした。

 長井さんの写真は、とりわけ日本にとっては衝撃だろう。この大きな犠牲が、日本が軍を持つこと、そして戦争に参加することを押し進めようとする政治家に、国民が「軍隊なんて、いらない」、と主張する流れになって欲しい。
 長井さんの死がもたらした衝撃で一時的にしろ忘れられてしまっているかもしれないが、このミャンマー軍の暴力により、ビルマの力ない人々、子供、お年より達の命も脅かされているはず。コソヴォで、イラクで、チェチェンで、そして太平洋戦争末期の沖縄で人は同じことをやってきた。まだ、したりないのか?

 アメリカ、中国、ロシアが「力」と「金」のためにビルマを蹂躙する前に、ビルマの民衆に銃を向けているミャンマー軍の兵士達が自ら武器を捨て、民衆と一緒に独裁者の暴挙に立ち上がって欲しい。それだけを、心から願う。僕に出来るのは、願うことだけだから。
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イングランドは美しいのに:スト情報の更新

2007.09.27
ロンドンは、秋も終り冬のようです。でも、もしかしたら10月に夏が戻ってくるかも。この国では、そんな無茶なこともありですから。

 ストの情報をアップデイトするのは僕の仕事ではないですし、直前になれば、日本の郵便局に張り紙か何かでお知らせがあると思います。が、余裕を持って知っておいたほうがいいかなと思いまして。ロイヤル・メイルによる実質5日連続のストライキの実施が、ほぼ、確定したようです。更に、最新の情報だと、10月いっぱい、ゲリラ的なストライキが続くようです。

http://www.royalmail.com/portal/rm/content1?catId=1000002&mediaId=51600692

 これだけインターネットが生活から欠かせない存在になっても、フィジカルな郵便の配達が止まるのは、やっぱりとても困ります。僕のように、日本からの食料、もといお菓子が届かなかったらどうしようから始まって、年金を小切手で受け取っている人たちにとっては、手持ちのお金がなくなる、すなわち日々の生活基盤が崩れる、ということです。
 他にも、当然ですが、国内だけでなく、海外にも手紙を出せない。ということは、この時期にイギリスを訪れる観光客は、最悪、旅の記念の絵葉書を投函できないことになるでしょう。国外から届くはずだった郵便物だって、どんな扱いを受けるのか、誰にも判りません。
 イギリス国内では、郵便を出すことも受け取ることも出来ないわけですから、ある意味状況は判りやすいです。困るのは、海外からイギリス宛に郵便を送らなくてはならない皆さんでしょう。少なくとも、来週いっぱいは、避けられるなら、イギリス宛の郵便は送らないほうが賢明だと思います。どうしても、というのであれば、フェデックスなどの国際宅急便の他、通常の航空便より高くつきますが、EMSはきちんと配達されるようです。それと、インターネットで、イギリスから何かを購入・発送、というのも避けた方が善いかと思います。アマゾンUKなど幾つかの大手企業は既にロイヤル・メイルとのビジネス契約を解消していますが、他の中・小規模なネット販売は、恐らく発送はロイヤル・メイルでしょう。

 先日も書きましたけど、ストはイギリスだけではないです。サルコジ大統領が揺さぶりをかけている年金減額問題で、フランス国鉄の全国ストの日程がでました。10月18日です。

 ロイヤル・メイルで働く皆さんも、彼らの生活の為にストライキをやるのでしょう。でも、生活する人、訪れる人の双方の気を挫くことばかりが続くと、いくら強気なイギリスでも、そのうち誰かに鼻っ柱をへし折られることが起きるのではないか、という気がしてなりません。


 イギリスに限らず、どの国にも、国の美しさを人々に伝える自然があり、そして建築物があるのは言わずもがなのこと。大英帝国の一部、イングランドには、「こんな建築物を見ることが出来て、イングランドに住んでいてよかった」、という建築物がたくさんあります。そのような歴史に残る、また日常生活の中にさりげなく溶け込んでいるイングランドの建築物の写真を集めたアーカイヴが出来上がったそうです。

http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2007/09/26/nheritage126.xml

http://www.imagesofengland.org.uk/

 検索エンジンを試してみました。正直な所、あまり使い勝手はよくないようにおもいます。また、中には、「何でこんな普通の家の写真があるんだ?」、と言った物もあり、玉石混交です。登録は無料なので、建築物に興味がある方、僕と違って、イギリスのことなら何でも好きという人には堪らないアーカイヴでしょう。添付の写真は、サマセットにある、なんてことない教会です。イングランドらしい趣を感じます。




 風雪が刻んだ年月を感じさせる荘厳な教会や、澄み渡った空の下のぽつんと置かれている風車の写真を見ていると、イングランドって美しい国だな、と思います。たくさんの人が、今でもイギリスに魅力を感じるのは、当然のことだと思います。
 にもかかわらず、そんな人々を悲しませるであろうストライキ。世界の多くの国で、毎日、命をかけて生き抜いている人たちのことを考えれば(戦争がおきていない国のほうが稀な感じがします)、こんな愚痴を言うことは甘いかもしれません。でも、世界一高い都市で暮らしているのだから、できることなら、余計な妨害の少ない生活を送りたいです。毎度毎度、こんなことにすき勝手に振り回されていられるほど、人生長いわけでもないですし。

ロンドン・トランスポート・ミュージアム:London Transport Museum

2007.09.26
毎朝の日課は、地下鉄の運行状況、もとい、どの地下鉄が運行を放棄しているかを確認する為にhttp://www.tfl.gov.uk/を確認すること。そこで最近アップされていた情報によると、ロンドン・トランスポート・ミュージアムが11月22日に、改修を終えて再オープンするとのこと。

http://www.ltmuseum.co.uk/default.aspx

 改装前の博物館に行ったことないので、どれくらい素晴らしくなっているのかは行ったとしても判らないだろう。、バスは運行会社によってはけっこう頻繁に車体がアップ・グレードされてファンには興味が尽きないだろうと思う。でも、路線によって全く代わり映えのしないロンドン地下鉄のファンはどれだけいるのかな。
 開館を盛り上げる為にも、日本から鉄道ファンを惹きつける努力をしてみては、と思う。

Must-Have Cultureの行く末

2007.09.23
おはようございます。日本は連休ですけど、母校の大学は、月曜日ばかりが休みではカリキュラムに支障をきたすとのことで、授業をやるそうです。

 恐らく、日本でも使われていると思いますが、消費者の購買意欲を盛り上げる為にイギリスで使われるの決り文句は、「Must Have」。この夏のMust Haveアイテムはあのブランドのどのトップだとか、どこそこに新規オープンするブランドのMust Haveはこれだ!、とか言う風に使われます。
 判りやすいのは、日本でも報道され、また販売もされたこのバッグ。




このたった5ポンドのバッグを買う為に、朝も暗いうちからロンドンはもとより、ロンドン郊外から人は押し寄せ、並び、メディアは騒ぎ立てる。これを実際に使っている人、まだ2回しか見たことないです。恐らく大半は、ネット・オークションに流れたのだと思います。
http://www.asahi.com/life/update/0718/TKY200707180615.html

http://www.asahi.com/komimi/TKY200707240451.html

http://kyoto-np.jp/article.php?mid=P2007071800057&genre=B1&area=K1F
 このバッグの影響で、TescoやMarks&Spencer等のスーパーが独自のエコ・バッグを売りだし、ビニール袋の削減に努める、という動きがでてきたのは評価すべき点だと思います。反面、忘れてならないことは、この5ポンドという価格が実現したのは、中国やインドで、奴隷のように働かされている労働者がいてこそ、という事実。

 ここ2年くらい、イギリスの消費者は、Must Haveこそ正しい、といわんばかりの消費行動を繰り広げているように思います。あの女優がきていたから私もこのドレスを買わなければ、あの有名人が愛用しているのだから私も使わなければ、との無意味な衝動に駆られ、片っ端から欲しいものを手に入れなければ、誰かに負ける、とでも思っているような狂乱振り。

 その最たる例は、スーパー・モデルの一人、イギリス人モデルのケイト・モスがデザインを手掛けた洋服が、トップ・ショップで売られたとき。




そのケイト・モス、自分がデザインした洋服を売る為に、発売当日にウィンドウで自らがマネキンになって話題作りに励み、結果は以下のとおり。ショッパホリックだった自分のことを棚に上げてなんですけど、ケイトが着るから絵になるんであって、誰もが似合うものではないと思うんです。
http://www.telegraph.co.uk/fashion/main.jhtml?xml=/fashion/2007/05/02/efmower102.xml
 僕もメディアに流れている情報しか知りませんが、ケイト・モスをご存知無い方のために。絶世ではないけど、個性的、且つ忘れがたい美しさでファッション界をサヴァイヴしているモス。前の恋人、ベイビー・シャンブルズというバンドのシンガー、ピート・ドハーティーと一緒にコカインを吸入している写真がメディアに流れたとき、彼女のモデルとしてのキャリアも終わりと多くの人は思いました。が、大方の予想を裏切り、一度は失ったファッション・ブランドとの専属契約を再び獲得し、今では最も稼いでいるモデルの一人です。

 この狂乱振りは、何も高いもの、セレブなものばかりではないです。この春、ハイド・パークよりのオックスフォード・ストリートにPRIMARKという安価な洋服の大量販売で有名なデパートが旗艦店をオープンしたときの混乱は、全国紙のトップで報道されるほどのものでした。もともとPRIMARKで売られる洋服は安い価格設定のものばかり。例えば、10ポンドのキャミソール、5ポンドのジーンズ等。ですからそこからさらに値引き、ということはPRIMARKはしていなかったそうです。というのも、旗艦店のオープンとはいえ、売り場の商品は、ロンドンのほかの店で既に売られているものばかりだったからだそうです。
 ところが、5ポンドのジーンズがさらに半額、更に、店にあるすべての商品が1ポンドで売られるというデマが流れたらしく、オープンに前にはオックスフォード・ストリートに溢れるほどの人が並びました。開店した時には警備員の制止を振り切って人が殺到し、怪我人が出たそうです。10ポンドのキャミソールは、ある人々にとっては、人生を左右するほど貴重なアイテムなのかもしれません。もしかしたら、5ポンドのジーンズを手にすることが、人生のゴール、という人もいるのかもしれません。僕がそれらの価値を知らないだけなのかもしれません。ちなみに、新聞に掲載されていた写真からだと、PRIMARK開店当日のキューの最前列にいた女性の大半は、有色人種でした。
 高かろう、安かろう、似合わなくてもいいから話題になっているものはすべて手に入れなければ、彼らにとって、それは人生の敗残者になることを意味するのかな、と。

 イギリスの個人負債の驚異的な総額は、このMust Haveカルチャーによるところが大きいでしょう。PRIMARKの時の混乱や、ケイト・モスのコレクションが発表になった時は、まだしばらく続くかと思っていました。が、先日のノーザン・ロックの取り付け騒ぎで、イギリスの実質経済が、報道されているよりずっと脆弱だということに気付いた人は多いはず。
 秋の深まりと共に、消費者の購買意欲が下がるのか。それとも、手がつけられないほど肥大してしまった貪欲な購買意欲は、これしきの経済混乱では衰えないのか。Must Haveカルチャーとは無縁の生活を送っている傍観者としては、興味がつきないです。

 残暑が厳しい上に、夏の疲れが出る頃。皆さん、ご自愛のほど。

ヨーロッパを襲うストの嵐

2007.09.20
秋が深まりを見せるイギリス。マークス・アンド・スペンサーのファッション・コーナーも秋一色です。

 そして秋の深まりと共に、ストの木枯らしがイギリスに吹き荒れる確率がどんどん高くなってきているようです。

http://www.guardian.co.uk/uk_news/story/0,,2167071,00.html
 このガーディアンの記事によると、先日の、72時間の地下鉄ストでさらに悪名を高めたボブ・クロウが、一層の権力を手に入れたらしいです。先日予定されていた2回目のストライキは、「中止」でなく「保留」なので、彼の権限が強まったことにより、年内にまたストライキがあるだろうな、と思えてなりません。一方で、記事の中で触れられている、ロイヤル・メイルの新たなストライキの日程が発表されました。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/business/7004918.stm
 このBBCの記事には日程は記載されていませんが、ロイヤル・メイルのウェブで確認した所、10月5日と6日に1回目が。そして週末をはさんで8日と9日に2回目のストが決行される予定のようです。2回に分けている、といいながら実質5日連続でイギリス全土の普通郵便のシステムが停まるわけです。組合側のいやらしい小賢しさしか感じません。まだ2週間ありますから、もしかしたら土壇場で労使の話し合いがついて中止、ということもありえると思いますが、現時点では、決行されるような気がします。
 で、この2回のストが行われると、見かけ上は5日間、でも2回目のスト終了後の10日に、たまりに溜まった郵便物の処理ができるはずもなく、郵便の遅配、最悪紛失はこの週いっぱい続くことは火を見るより明らか。なので、イギリス国内はもとより、日本からイギリスにエア・メールを送る予定のある皆さん、10月1日以降15日までの2週間、イギリスに普通郵便を送るのは、絶対に避けたほうがいいです。

 断言します。絶対に、なにも届きません。

 前回のストライキの時には、EMSを取り扱うのはロイヤル・メイルの中でも別会社だったので、問題ありませんでした。でも、今回も同じかどうかは、ウェブからの情報では判りませんでした。

 地下鉄のストライキのときに送ったメールへ頂いた返信の中で、ある方が「生活になくてはならない業務で、しかも危険で汚い仕事に従事している人たちに、政府がもっと報いるべきだ」、と送ってくださいました。僕も、これに賛成です。劣悪な環境で働く公共交通機関の運転手や職員、雨の日も(イギリスでは年の半分以上でしょう)も西風が吹き荒れる日も外にでなければならない郵便局員の皆さんへの報酬が高いのは必要なことだと思います。しかしながら、例えば、ロンドン地下鉄で働く組合員の年間報酬は、素晴らしいんですよ。確か、週35時間労働で、年収約800万円。年休はひと月分相当、さらに給与が払われる病欠勤、しかもロンドン市内とその周辺地域の公共交通機関を利用するのは半額以下、と言う特典まで。僕だって働きたいくらいです。
 自分たちに支給されるであろう、巨額ボーナスのことしか考えていない経営陣には何のシンパシーもないです。でも、既に生活レヴェルがかなりの高水準にあるにもかかわらず。さらにそれだけの高給、保証を受け取りながら、自分たちの仕事にまともに取り組まず、社会への還元という労働者の義務を怠る組合員への共感も薄れていくばかりです。

 ストの嵐が吹き荒れそうなのは、イギリスばかりではありません。お隣のフランスでも火種がくすぶり始めたようです。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/europe/7000095.stm

 フランスの公務員の年金はかなり手厚い、ということは聞きかじったことがあります。それが、国の予算を圧迫しているので、パッサリと切り捨ている、というのがサルコジ大統領がやろうとしていることのようです。言わずもがな、反発は必至で、組合はスト強行のカードをちらつかせることでしょう。
 サルコジ大統領、人間として尊敬できる方ではない、というのが徐々に明らかになってきているようです。彼のやり方次第では、国の機能が麻痺するほどのストの波がフランス全土に押し寄せるかもしれません。

 どれもこれも、実行に移されるには時間がかかるであろうことです。日本にいる皆さんにどれほどの悪影響をもたらすかも、今の段階では判りません。でも、皆さんのカレンダーの片隅にでも、ちょっとメモっておいてもいいだろうと思いました。

持てない者だけが苦労する時代

2007.09.18
9月18日付のThe Daily Telegraph紙のおなじみのカトゥーンと風刺イラストです。




 Mattのほうは、預金者が殺到して、3日間で£20億も引き出されてしまったノーザン・ロックの職員の気持ちをずばりと。末端の職員には、責任はないでしょうから。今朝の報道によると、2006年、ノーザン・ロックの経営陣の給料は軒並み10%以上もアップ、さらに成功報酬として多額のボーナスも支給されたとのこと。そんなことを知ってしまうと、パニックになった一般市民を政府が責めるのは、筋違いだと思います。



 
 二つ目が描いているのは、要するに、今回の金融市場の混乱を引き起こしたのは、不動産ローン会社、ヘッジファンドの経営者、そして資金運用会社にもかかわらず、迷惑を被るのは、市民だけ、というところでしょうか。

 今朝のBBCのラジオ4のニュースの解説者は、「ノーザン・ロックの混乱で見えなくなっているかもしれないが、この金融市場の混乱は、アメリカが大本なんだ」、と何度も強調していました。アメリカが責任を負うべき混乱で足下を掬われたとあっては、誇り高きイギリスにとっては耐えがたいことなのは確実。

 日本では、この混乱が日本に及ぼす影響があるのかどうかが報道されているのかは知りません。が、The Guardian紙の経済欄を斜め読みして理解した所では、東京市場で外国人投資家が安い円を購入し、それを欧米の市場で運用する「円キャリー・トレード」の旨味がなくなり、円が値上がりするであろう、と。この後続くであろう状況について僕が想像できる簡単なシナリオは、1)円が値上がりして輸出企業の業績が悪化、2)外国人投資家が東京市場への興味を失い、株価が暴落。

 額に汗して働くことが素晴らしいと思える時代が、またくればいいな、と。

Mighty Britainのつまずき

2007.09.17
親愛なる皆さん

 おはようございます。日本は残暑が戻ったそうですね。ロンドンは、冬も間近です。

 タイトル、「ブレア時代の鍍金(めっき)がはがれるとき」でもいいかな、とも思っています。不動産ローン貸付銀行業界、イギリス国内第5位のノーザン・ロックは、アメリカ発のサブ・プライム・ローン市場の破綻による金融市場の冷え込み(主に資金流動化の停滞)の影響をもろにかぶり、短期金融市場での資金調達が困難になり、先週、バンク・オブ・イングランドに緊急支援を要請しました。日本でも詳しく報道されています。
http://www.asahi.com/business/update/0914/TKY200709140340.html

http://www.asahi.com/business/update/0915/TKY200709150252.html

http://www.47news.jp/CN/200709/CN2007091801000077.html

 ゴードン・ブラウン首相、大蔵大臣、中央銀行総裁が揃って、「ノーザン・ロックは大丈夫」、と声高に叫び続けているにもかかわらず、今日、月曜日になっても、ノーザン・ロックに資金を預けていた一般市民のパニックは収まるどころか、悪化しているようです。連日、パニックになった人々の姿を新聞やテレヴィで見せ続けられれば、静観を構えていたであろう人々も徐々に不安になり、パニックが加速していく、そのような悪循環に入り込んでいるようです。万が一、ノーザン・ロックが本当に破綻しても、全額ではないけど、預貯金の大半は保護されることになっている、といわれても、既にパニックに陥っている人には届くわけもなく。当事者からでないからこそと言われればそれまでですが、大金を引き出した帰り道、強盗にすべて奪われるほうがシナリオとしては最悪だと思うので、パニックになる理由はないはずだと考えるんですけど。
 ちょっと話ずれます。今回、パニックになって、預金を引き出しに殺到している人々の写真を毎日見ていて気付いたことが一つ。行列のほぼ100%、白人のようなんです。有色人種がいないんです。写真には写っていない所にいるのかもしれませんが、ちょっと興味を惹かれる発見です。これが、社会構造の何らかの矛盾の象徴かどうか、というのはわかりません。

 このような金融市場の混乱を目の当たりにする状況になって、週末の新聞では、これまで多くのイギリス人が謳歌してきた「buy-now, pay-late」カルチャーは終わりを迎え、これからは如何にして無駄な支出を抑えるかが日常生活で重要なポイントになる、そのためにはどうすればいいのか、という特集記事が目につきました。でも、その内容のいくつかは、日本で住宅ローンを抱えている人には、知らないほうが珍しいと思ってしまうであろう初歩のことばかり。例えば、住宅ローンの負担を軽くする為には繰上げ返済という方法があるんですよ、知っていますか、なんて。繰上げ返済が何を意味するかを知らないと、日本ではローンを借りられないのではないかと思うんですけど。

 以前、以下のメールを書いたときにも強く感じたのは、イギリスは、消費者教育をかなり疎かにしてきた国なのではないか、ということ。消費活動を享受するには、常に高度な教育と最新の情報が必要ですから。
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-194.html

 ここで、金融用語口座。日本人の感覚では英語の「mortgage」は不動産ローンのみと考えられることが多いと感じています。確かに、今回、ノーザン・ロックの騒動の引き金となったアメリカのサプ・プライム問題は、不動産ローン市場の信用調査の杜撰さが根底にあります。しかしながら、英語で言う「mortgage」は不動産ローンも含みますが、学生ローンや他のローンも含みます。
 ローンとして資金を貸し出した金融機関はその貸し金を一まとめとにして、つまり債権(mortgage)化して他の金融機関に売却することで短期の資金、次の運転資金等を調達します。その債権化された貸し金を購入した金融機関は、金利を上乗せしたりしてそれをまた幾つかの金融商品(主にハイリスク・ハイリターン)にして金融市場で大口顧客(つまり企業などの機関投資家等)に販売し、巨額の利益をあげる、というのが今回の騒動の背景にある金融マーケットです。
 今回、アメリカで起きたサブ・プライム・ローン市場の破綻が起きた背景は、不動産ローン会社が貸し出したローンを債券化して金融市場で売ろうとしても、その金融商品のリスクが高すぎて、つまり資金回収の確約が取れない為に、他の金融機関が買いたがらない。そのために不動産ローン会社が金融機関の間で資金調達する為には、高い金利を払わなくてはならなくなった。そしてその状況が金融市場の資金の流動性を止めた、というのがかりそめにも金融市場の片隅に3年間いた僕の理解です。テレレートで一緒に働いた皆さん、もしくは金融機関にお勤めの方で、「その理解は間違っている」、といことであれば、是非、教えてください。

 ブレアの時代を象徴するイギリス人の一人、イギリスレストラン産業の寵児ともてはやされてきたゴードン・ラムゼイの威光に翳りがみえてきた、というニュースが先週報道されました。また、今朝のテレグラフには、こんなニュースが。

http://www.telegraph.co.uk/global/main.jhtml?xml=/global/2007/09/17/noindex/nvisas117.xml

 90年代初期の段階で、イギリスロック・ポップ音楽から遠ざかった僕にとっては、リリー・アレンもクラクソンズも、「誰それ?」、です。が、ヴィザを取得できるほど有名でない、という自嘲気味の説明が笑えます。

 で、漸くタイトルで何を言いたかったか、という所に到達しました。The Daily Telegraph紙に掲載されていたイラストが示すように、金融不安、口蹄疫の拡大不安にイギリスは揺れています。




飛躍しすぎかもしれませんが、トニー・ブレアという稀代の詭弁家が押し進めてきた「金持ち優遇、権力あるものが正義」という政治がイギリス社会と人々の感覚を歪め、そのゆがみを隠していた鍍金がはがれてきているのではないかと。社会は、そして人々は「イギリスは何でも出来る」、と思い込んでいたのではないか、と。たわんだ鋼が、耐え切れない所まで来た結果の一つが、ノーザン・ロックの危機であり、ラムゼイの失速なのではないかなと感じます。

 思いついたときの状況とは違いますが、今の状況、ここ数年、イギリスの多くの消費者が踊った「must-have culture」を書くにはもってこい。ということで、出来れば今週中にそれを。ケイト・モスの写真は、その予告代わりです。





兵馬傭展@ブリティッシュ・ミュージアム

2007.09.13
夏前から、あちこちで大きく取り上げられていたのは、中国の兵馬傭の大々的な展示が、大英博物館である、というもの。全然興味なかったんですが、先日、大学院からホルボーン駅まで歩いた時に、いつものように近道と称して博物館の中を突っ切りました。博物館の入場が無料というのは、素晴らしいです。こんな、博物館の中を通学路として利用するなんて、日本では出来ませんから。
 で、そのときにミュージアムの前庭に大きな看板を見て、なんか行きたくなった来たところで、今日、9月13日に開幕しました
http://www.thebritishmuseum.ac.uk/whats_on/all_current_exhibitions/the_first_emperor.aspx

http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/asia-pacific/6980040.stm

http://www.thisislondon.co.uk/arts/article-23411764-details/Terracotta+army+marches+in/article.do

 2008年4月6日までの開催。これまで、兵馬傭がどこの国で展示されてきたのか、それとも国外の展示が初めてなのかどうかは調べる気ありませんが、展示の規模はかなりでかいようです。既に、13万枚を越える前売り券が売れているそうで、大英博物館の底力を見る思いです。
 当日券は、毎日500枚発売されるそうですが、確実に見たいのであれば、前売り券の購入は絶対でしょう。前売り券は、大英博物館のウェブから購入できるそうです。僕は、ロイヤル・オペラ・ハウス、バービカン、サドラーズ、カドガン・ホールのチケットしかウェブで購入したことがなく、美術館・博物館のウェブの確実性は知りません。が、恐らく、さして難しいものではないと思います。旅行代理店を通すと、馬鹿らしいほどの手数料が加算されるようですから、自分で購入するほうがいいでしょう。
 これから毎日暗くなるロンドンに、誰が好きこのんでくるのかなとは思いますが、ロンドンで見る兵馬傭というのは、思い出に残るのではないかな、と。

 閑話休題。写真のアーカイヴを整理していた所、2003年の初夏に訪れた南スウェーデンのスコーネ(Skane、aの上には小さな○)地方の写真が埋もれていたのを発見。折角なので、写真サイトにまとめました。過去の旅行記と一緒にご覧いただければ幸いです。また、王様が愛したカフェで至福の時間を過ごしたいものです。

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-186.html

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-188.html

 政治家が日本を壊してしまう前に、国民が立ち上がることを信じています。

新聞の値上げ

2007.09.12
先週末、9月8日の新聞各紙が値上がりしていた。The Daily Telegraphは年間バウチャーを利用して半額近い値段で購読しているけど、The Guardian/The Observerは定価で購読している。後者の場合、値上がりしたのは、日曜紙のThe Observerを除く月曜から土曜までの分。8月までは、平日は、70ペンス、土曜日は1.40ポンド。週で、4.90ポンドだった。それがいまは、平日80ペンス、土曜日、1.50ポンド、合計5.50ポンド。それにThe Observerが1.80ポンドだから、いまや年間、£379.60-。230円換算で、9万円近い。テレグラフの年間購読料が、先払いで£188ー、ロンドンの夕刊紙、The Evening Standard紙が年間でおよそ£130-。約16万円?!

 現在、ロンドンでは、無料の朝刊、夕刊が各種発行されている。だから、わざわざこんな大金を出して新聞を買う人は減っていることだろう。でも、興味深い事象の背景を知るためには、有料新聞でないと判らないことのほうが多い。今日、9月12日のThe Guardianなんて興味深い記事が満載で、1時間では読み終わらなかった。だから、購入する意義はある。でも、高い。
 今日の報道では、外食の値段はロンドンが世界で一番高い、とのこと。でも、新聞購読料も世界一高いのではないかと思わざろうえない。土曜紙なんて、付録あんなにいらないから値下げして欲しい。

 写真は、写真アーカイヴを整理していたら出てきたもの。2003年の初夏に、スウェーデン南西部のスコーネ地方を訪れたときの1枚。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-186.html




 こんな赤い館に、住みたい。

怒ってばかりだった夏

2007.09.10
おはようございます。日本は、今年は残暑に悩まされていないようですね。

 まず、更新された9月号で、「チャコット・ダンス・キューブ」への定期寄稿は終わります。2年間、得がたい経験がたくさんできました。が、月いちでレヴューをみっちり書いて、自分で校正して、自分で写真を集めてという作業を、カウンセリングの研修・研鑚、カウンセラーとしての仕事と両立させていくのが難しくなってきたので。などと言いつつ、他の書く仕事は探していますし、ロイヤル・オペラ・ハウス通いが止まる訳では決してないです。
http://www.chacott-jp.com/magazine/around/uk_57.html
 この2年間、感想を送ってくださって、本当にありがとうございました。励みになりましたし、嬉しかったです。

 寒くて湿っぽかった今年の夏、自分が書いたことを読み返していたら、いつも怒ってばかりだったような。思うに、寒かったので、自分の中で怒りの炎を絶やさないようにしながら乗り切った、という感じです。
 この夏の一番の怒りは、やはり地下鉄のストライキを強行した労働組合に向いています。彼らの主な要求、「新しい会社が保守を引き継いだ後も、組合員の金銭的権利、特に年金が減らされることは絶対にないように」、というのは理解できます。でも、その確約を奪取する為に、ロンドンの都市機能を麻痺させ、特に他の労働者、通勤者に苦痛を与えつづけるというのは、現在のイギリスが置かれている資本主義社会では、暴力と取られても仕方ないでしょう。それに、僕個人の意見ですけど、今の世の中、現時点で支給の約束が交わされている年金が、将来払われるなんてないと思っています。年金システム自体が、食うか食われるかの資本主義社会では、機能しないと考えます。年金に頼らず、死ぬ直前まで楽しく働く。これが、僕の希望。
 で、さらに腹が立ったのは、RMTという組合の内情の報道を読んだとき。まず、この武闘組合を率いるボブ・クロウの年収が、£63,000―(230円換算で、約1,500万円)。毎日の通勤にロンドンの地下鉄を使う大半の労働者の収入は、彼の年収の半分にも満たないでしょう。更に、ニュース・ソースをなくしてしまったのですが、ボブ・クロウの指揮のもと、アフガニスタンやイラク戦争で潤っているイギリス、アメリカの武器開発・製造会社に投資して、RMTはその資産を増やしつづけている、という事実。組合だって労働者を雇用しているのですから、「企業」としてその資産を運用して増やしていく、というのは間違ってはいません。でも、僕自身が古臭い考えにこだわっているのかもしれませんが、「労働組合」の定義について、軌道修正をしなければです。「清く、正しく、つつましく」、という理想は化石なんですね。ちなみに、今週予定されていた2回目の72時間ストライキは、とりあえず「保留」だそうです。

 一方で、ロンドンの公共交通機関、特にバスがけっこう使い勝手が良くなってきている、と感じることが最近多くなりました。例えば、先日行ったグリニッジからさきの地域を結ぶ充実したバス路線。また、バス会社によってですが、車内で次の停留所の名前を電光掲示板で表示するなんて、車掌がいたころには僕が生きている間はロンドンでは実現しないと思っていました(大げさ)。
 先週末、友人の誕生日に招待されました。場所はチズィック(Chiswick、ロンドン南西部)の外れ。僕が住んでいる所からだと、地図上での直線距離は近いのですが、地下鉄で行くとなると、駅まで歩いて、のって、乗り換えて、のって、歩いて最短でも45分くらいかかります。ところが、本数は少ないんですけど、乗り換えなしでいけるバスがあり、しかも停留所が友人の家の前にあるという都合のよさ。このバス(272)、住宅街をうねうねと抜けるところでは、バス停がなく、乗りたければ手を上げて、降りたければ、次の角で停まってと運転手に伝える、という変なバスです。このバスだと、行程は20分。
 その夜は、生憎最終の一つ前のバスを逃してしまい、最終バスがくるまで30分。住宅街とはいえ、流石に深夜に近い時間に一人でバスを待っているのは嫌なもの。で、迂回、且つ乗り換えなければならない路線とはいえ、タイミングよく次のバスがすぐに来たので、それに乗り込みました。午前零時前ということもあって道路は空いていて接続の停留所まではあっという間。さらに運がいいことに乗り換えるバスがすぐに来て、友人宅を出てから帰宅するまでにかかった時間はたった15分。ちなみに、深夜近い時間帯にロンドンを歩き回るのは、お勧めしません。

 改めて思いました。ロンドン全域のバス路線、かなり充実してきたな、と。恐らく、インフラは人々が思っている以上に整ってきているように思います。
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-267.html
問題は、そこで働く皆さんの仕事への取り組む意欲、そして利用者の路線図を理解する自己責任の双方を如何に向上させていくか、という点でしょうね。バス運転手をやっていて良かった、と運転手の皆さんが感じることが多くなれば、仕事への誇りが高まると思うんです。ということで、バスに乗る時は、僕はたいてい「Good morning」、「Hello」というようにしています。正直、怪訝な顔をされることが多いかな。でも、やめるつもりはありません。挨拶は、一日の始まり。

オペラ界の薬物問題

2007.09.09
本当に久しぶりのエンタメ関連です。

 充実していた8月19日のThe Observer紙で報道されたのは、一人のオペラ歌手の告発による、オペラ界に蔓延する薬物問題。

http://www.guardian.co.uk/germany/article/0,,2151873,00.html

 告発したのは、エントリーク・ヴォットリッヒ。ドイツ人テノールで、ワーグナーを得意としているようです。

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ちなみに、4回も観てしまったロイヤル・オペラの「フィデリオ」にご出演。
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-476.html
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-479.html

 インディペンデント紙のインタヴューでも感じたことですけど、どうやらヴォットリッヒさん、かなりoutspokenな方のように感じます。オリジナルのインタヴューはドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙に掲載されたもののようです。
 話には聞いていましたが、今年のザルツブルク音楽祭は、大物オペラ歌手のドタキャンが相次いだそう。ドイツ語圏で絶大な人気を誇るロシア人ソプラノ、アンナ・ネトレプコは喉頭炎で、飛ぶ鳥を落とす勢いのメキシコ人テノール、ローランド・ヴィヤソンはディプレッション(鬱)で。




更に、ニール・シコフ、ヴェッセリーナ・カサロヴァ、エリナ・ガランチャ、マグダレナ・コジェナ等、名前だけで世界の名だたるオペラ・ハウスを満員にできるであろう歌手が、ストレスによる体調不良でキャンセルせざろう得なかった、と。そのことをうけて、恐らく歌手の皆さんへの批判が噴出したと。主催者からすれば、これだけキャンセルされれば、愚痴の一つでは収まらないでしょう。いずれにしろ、それに反論する為に、現在、オペラ歌手がないがしろにされている状況を訴えたかったのでしょう。オペラ歌手のありようが、「まるで娼婦」と表現しているくらいですから、本当に怒っているようです。でも、ヴォットリッヒ自身もキャンセルしているので、説得力には欠けますけど。
 彼曰く、かつてオペラの主役は歌手だった。が、今は劇場主導でオペラ歌手の体調や過密なスケジュールは全く考慮されない。しかも、劇場からのプレッシャー、例えば「あの音を必ず出せ」といった要求は酷くなるばかり。そんな状況で、歌手はストレスから逃れる為に薬物にたよらざろうえない。なんか、ロックの世界の話みたいです。
 誰がオペラの世界をこんな状況にしてしまったのか?オペラ劇場、レコード会社、演出家、観客、それとも歌手自身。明確な答えを持っている人はいないでしょうね。一人の観客からすれば、ネトレプコの「ラ・トラヴィアータ」、ヴィヤソンの「愛の妙薬」、そしてコジェナの「チェネレントラ」は観たいから、キャンセルしないで欲しいな、と。
 キャンセルがらみで一つ。来週から始まるロイヤル・オペラの2007/08シーズン通しての大きな話題は、久しぶりの「リング・サイクル」の上演。それに出演予定だったウェールズ人バス・バリトンのブリン・ターフェルがキャンセル、というニュースが先週大きく報道されました。下の息子さんがかなり酷い怪我をして、それが心配でオペラに集中できない、というのが理由のようです。彼は客を呼べる歌手だし、素晴らしいオペラ歌手です。でも、これはプロのオペラ歌手としての、彼の今後のキャリアに影響が出ることは必至でしょう。いつも、家族が一番と言っているターフェルですが、しばらく彼をロンドンで見ることはないかもしれません。以下のリンク、テレグラフ紙のオペラ・クリティクの方によるコラム。彼はとっても嫌いな批評家ですけど、芸術家は何を犠牲にするのか、という議論はいつも興味深いです。
http://www.telegraph.co.uk/opinion/main.jhtml?xml=/opinion/2007/09/06/do0604.xml

 ついでに書きそびれていたオペラの感想をいくつか。今年の1月と2月にロイヤル・オペラで上演されたドニゼッティの「連隊の娘」。先日なくなったパヴァロッティが、40年前にロイヤル・オペラでセンセイションを引き起こした演目です。主役は、フランス人ソプラノのナタリー・デッセィとペルー出身のホヮン・ディエゴ・フローレス。
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-461.html
フローレスの「ハイC」、噂にたがわず、素晴らしい歌唱でした。彼にかかると、この難易度の高すぎる歌唱も普通に聞こえてしまいました。で、このオペラを大成功に導いたのは、デッセィ。コケティッシュで、コメディエンヌとしての演技力も抜群。何より、ジャガイモの皮をむきながら、アイロンをかけながら、兵士達に抱えられてからだが横になっても、全く外れないコロラテューラ。オペラとはこうあるべき、という二晩でした。
 6月に、コンサート形式で上演されたマスネの「タイース」。タイトル・ロールは、ルネ・フレミング。一人だけドレスを替え、一人だけ暗譜で歌う彼女がいたからこその舞台でした。最高音が、それまでの柔らかな声から、いきなり鋼のような硬い音になってしまったのは残念でしたけど、初めて「タイースの瞑想曲って、通しで聞けばいい曲なんだ」、ということを知りましたし、いい曲ばかり。フレミングの本来の性格はかなりアメリカンなようですが、世俗を超越した役(タイース、ルザルカ)、もしくは他の登場人物とは次元が違う役(薔薇の騎士の元帥夫人)で彼女が舞台に生み出す緊張感は、オペラの醍醐味を感じさせてくれます。彼女の年齢では実際に演じるのは無理だと思いますけど、リヒャルト・シュトラウスの「ダフネ」をなまで聞いてみたいものです。
 もう一つ残念だったのは、コンサート・マスターの靴。コンサート形式だったので、オーケストラはステージに。そして瞑想曲を弾くのですから、コンサート・マスターは目立つわけです。にもかかわらず、彼の靴は普段履きのようなちょっとよれった黒の靴。オーケストラ・ピットにいるときは客からは見えないのだから、極端な話、サンダルでもいい。でも、ステージで、その夜の主役の横でソロを弾くのであれば、靴は磨き上げられたエナメルでなければならなかったはず。コンサート形式といえども、オペラはたった数時間、日常を忘れさせてもらえる総合芸術であって欲しい。コンサート・マスターにもその意気込みでいて欲しかったです。
 春先に上演されたのは、プッチーニの「ジャンニ・スキッキ」。主演のブリン・ターフェルの大きいこと。2メートル近い巨体ですから、他の歌手の皆さんと比べるとまるでトドのようでした。体の大きさだけでなく、演技も歌も素晴らしかったので、この唯一無二の歌手をしばらく観られなくなるかもしれない、という状況はとても残念です。

 趣味の話題でした。

テムズを越えて:グリニッジ周辺

2007.09.06
8月最後の月曜日は、(どうやら)スコットランドをのぞくイギリスはサマー・バンク・ホリデーにより連休。それまでのとても惨めな天気がロンドンから消え去り、奇蹟的にも三日間とも晴天に恵まれました。そうなれば、やはり外出したい。ロンドンでも未踏の地、長い間行っていないところがたくさんありますので、行きたいところはたくさんあります。でも、この連休、天気が良かったら行こうと思っていたのは、グリニッジ(Greenwich)。

 何度か書いていますが、テムズの南のロンドンは、北側に比べると、交通網が快適でなく、僕にとっては、「よし、行こう」、と自らを思いっきり奮い立たせないとなかなか足が向きません。同じく南側、南西に広がるウィンブルドン、リッチモンドなんていまだにまともに足を踏み入れたことはないです。
 そんな中で、グリニッジは、僕にとっては急に思い立っても行きやすいエリアです。何故なら、ドックランド・ライト・レイルウェイ(DLR)があるから。ロンドン中心地では、バンクとタワー・ヒルから出ているDLRはテムズの向こう、ロンドン南東部(郵便番号だとSEがつく幾つかのエリア)に住む人たちにとって、また、ロンドンの新しい金融街、カナリー・ワーフに勤務する人たちにとって、さらにロンドン・シティ・エアポートにもいけるようになり、とても利用しやすく信頼の置ける公共交通機関です。最近、日本では公民権を獲得したらしい「鉄道オタク」の皆さんにとっては、無人の交通システムということで興味深いだろうと思われます。また、建築物や都市の景観に興味がある方には、バンクからテムズを越えるまでの地域に立ち並ぶ、くすんだ、なんというか忘れ去られたように古臭さがにじむ住宅群と、ドックランド・エリアになった途端、奇抜でかっとんだデザインの新しい住宅群との対比は、知らなかったロンドンの側面の発見になるのではと思います。
 グリニッジ周辺探訪の写真は、こちらで。
http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/

 グリニッジ行きの目的の一つは、Thames Flood Barrierを見に行くことでした。これ、一度は直接見たいとずっと思っていたのですが、以前行き方を調べた時に、グリニッジからさらに奥のWoolwich(カタカナ表記だと、ウリィッチが近い発音です)まで行かなければならないことが判り、行きたいけど行きたくない、といった感じの遠さで、重い腰がさらに重く感じてしまって。
 久しぶりに「ロンドンA-Z」を片手に、グリニッジからバスに乗り込み、25分くらい揺られて、降りたバス停からさらに徒歩10分。土手を越えた向こう側に9基の銀色の塊が見えた時は、ロンドンって広いんだな、と単純に思いました。テムズの水位を管理するこのシステムの背後に見えるカナリー・ワーフの高層ビル群が遠くに見える風景は、まるでいつかみた幻、ってかんじがしました。体験型のアトラクションではないので一度行けばしばらく行かなくてもいいかな、というのが正直な感想です。でも、面白かったです。
 ロンドンは見飽きた、などと嘯く人にこそ行って欲しいです。それと、バスに乗って興味深く感じたことは、英語を喋る人が半分も乗っていない、ということ。数時間前まで自分がいたロンドンの別の地域とは、全く異なるロンドンが存在することを実感しました。グリニッジの中心はまだいいですけど、Thames Flood Barrierを見に女性一人、もしくは女性だけでバスに乗るというのは避けたほうがいいかなと思いました。
http://www.woodlands-junior.kent.sch.uk/riverthames/barrier.htm

 グリニッジ・パークは、ロンドンにいくつかある広大な公園の中でも眺望が素晴らしいです。添付の写真は公園の頂上から撮ったもの。




セント・ポールも、パーラメントも、ロンドン・アイも見ることは出来ませんが、眼下に広がる輝く芝生の緑、マリタイム博物館の静かな佇まい、きらめくテムズ河、日の光に陽炎う高層ビル群、これもロンドンです。急勾配を登ったあとに、目の前に広がるロンドンを眺めながら飲む紅茶は、薄かったけど、美味しく感じました。自分のことを差し置いて何ですが、カフェで働く外国人の皆さんには、まず、濃いー紅茶の淹れ方をきちんと学んで欲しいものです。
http://www.nmm.ac.uk/

 グリニッジにきたら絶対に外せないのが、旧王立海洋学院(Old Royal Naval College)。昔来た時に感じた荘厳さは薄らいでしまっていましたが、訪れるたびに、「この美しい絵に囲まれてアフタヌーン・ティーが出来たら幸せだろうな」、といつも思います。
http://www.oldroyalnavalcollege.org/

 ロンドンのバス網はかなり発達していますが、ロンドン中心地から直接グリニッジに乗り入れる路線はないはずです。1本か2本、ロンドン中心からグリニッジの南に位置するルイシャム(Lewisham)や、グリニッジの手前のペカム(Peckham)に乗り入れる路線はありますが、特に後者はロンドンで最も治安の悪い場所の一つ。なので、グリニッジに行くなら、ドックランド・ライト・レイルウェイ。それか、ウォータルーやエンバンクメントから船でというのも、違ったロンドンを見ることが出来る面白い体験ではないかと思います。

 良い週末を。

ロンドンの陰と光:地下鉄とユーロスター

2007.09.04
おはようございます。夏が来ないまま終わったと思ったら、今週はインディアン・サマー(小春日和)で、公園で座って過ごせるなら、全く文句のつけようがないロンドンです。ちなみに、僕だけが知らなかったのだと思いますが、イギリスでは、インディアン・サマーという表現は、あき、特に9月に使うものだと、最近友人から聞きました。英語にも「季語」があるようです。

 タイトルをみて「またか」、と思われている方がいることでしょう。予定通り、ロンドンの地下鉄12路線のうち、9路線が72時間のストライキに入り、ロンドン、大混乱です。日本で報道されていないのは、ストライキに突入した状況があまりにも馬鹿らしいからだと思っています。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/england/london/6977546.stm
 上記のリンクや他の情報を読んでいただくとおわかりいただけるように、今回、組合がストを強行したのは、Public Private Partnership(PPP)政策によって、9路線の地下鉄の保守・運営権を競り落とし、請け負ったMetronetという複合企業が7月に破綻したことがきっかけです。簡単にいってしまえば、予算を使い果たしてしまったということです。確か、そんな状況でも、昨年は経営陣に巨額のボーナスが支給されたように記憶しています。理由は、「運休する地下鉄の数を減らすことに成功したから」、などと言う噴飯ものの理由だったはず。それと、これは政府、行政の判断の誤りだと思いますが、12路線中九つの路線の管理を一つの会社に任せる、というの危機管理という点からして愚かなことことでしょう。
 最も強硬な組合が求めているのは、破綻処理中、そして処理後も、職員の解雇、削減、賃金の減額、年金の減額を「絶対」にしない、と約束しろということ。ロンドン交通当局、破綻処理をしている会社は、「破綻処理中」については職員を困難な状況に追い込むことはしないと明言していますが、処理が済んで、新しい会社が引き受けることになったあとのことまでは何も言えない、と。当然だと思います。が、組合は、それが約束できないならストだな、と。ありていに言えば、組合が要求している点が的外れだとは思いません。この点は、政府がずっと以前に想定しておくべき条件であったと思います。が、言ってしまえば、たった一つの企業と組合の交渉のこじれによって、何十万人もの人々の生活が脅かされる状況は、簡単には納得がいきません。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/in_pictures/6977978.stm
 1番目の写真に写っているのが、組合のトップ、ボブ・クロウです。数年前に、「現代のスクルージといわれていることは気にならないか?」、との質問に「スクルージのつもりだ」、と言い切った性格の持ち主。

 僕が現在住んでいるところは、動いている3路線(ジュビリー、ノーザン、ピカデリー)はかすりもしないので、ロンドン中心地に行くにはバスのみ。昨晩になって漸くストを知った多くの人たちが慌てたからでしょう、いつもはスカスカの早朝のバスが、今朝は乗り込んだ時には既にほぼ満員。ヒースロー・エクスプレスが発着し、イギリス西部やオックスフォードからの列車のロンドンの玄関口であるパディントン駅に着いた時に見た光景は、タクシー乗り場には長蛇の列、バス停には黒山の人だかり。世界有数の経済大国の首都とは思えませんでした。報道では、今日だけで、ロンドンの経済に与えた損害は、125億円になったそうです。
 BBCが後から写真を載せると思ってはいたんですが、自分でも撮影しておこうと思って、地下鉄のある駅の前で写真を撮った途端、駅職員(女性)が近寄ってきて、感情的に食って掛かってきました:「写真を撮ることは、私達のプライヴァシーを侵害しているのよ。そのカメラを私によこしなさい」。軽くぶちっと切れたので、「僕は年間の定期代を払っていて、地下鉄を使う権利がある。そっちが勝手に僕の生活を破壊しているんだろう」。あるところで、「ストはテロと同じような暴力だ」、との意見を読みました。今回に限れば、その意見になびいてしまう自分を感じます。

 そんな混乱の中、ロンドンのマイナス・イメージを払拭したかったのか、今日、BBCが躍起になって取り上げたのはユーロスターの話題。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/in_depth/629/629/6969116.stm
 ロンドンとパリの間が20分早くなったそうです。でも、そのニュースを素晴らしいと思えた人は、今日のロンドンではほぼ皆無だったことでしょう。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/6977211.stm
 どこの国でも起こりうる事だと思いますが、新しい駅、新しい路線の陰で、これからどのように活用していくのかが全く決まっていない用済みになった建物群が、新しいユーロスターの陰にあります。例えば、ウォータルー駅、またケントにあるアシュフォード・インターナショナル駅。特に後者は、ユーロスターが停まるという事で地価が上がり、多くの人が移り住んだ地域。何度かいったことありますけど、ユーロスターが停まらなければ、魅力に乏しい所です。日本だと新幹線の駅をどの県に置くか、ということでいつも揉めるのと同じです。英語で、このような役に立たないであろう建築物のことを、「White Elephant」と言います。

http://search.bbc.co.uk/cgi-bin/search/results.pl?q=st+pancras&x=74&y=12&scope=all&edition=d&tab=av&recipe=all
 今回リンクが多くなりましたけど、もう一つBBCから。ユーロスターのロンドンの発着駅になるセント・パンクラス駅がどのように改修されたかのヴィデオを見ることが出来ます。その中に、先日書いた時計を修復した男性のインタヴューがあります。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-524.html
 11月のオープニング・セレモニーに招待されたそうですけど、行かないそうです。恐らく、時計を修復したのは、自分がやりたかっただけで、誉められたかったからではない、ということだろうと想像します。それと、やっと写真を見つけました。鮮明ではありませんが、イギリスらしい、日常と非日常が入り混じった写真だと思います。




 地下鉄のストライキの話に戻ると。ろくでなしのボブ・クロウがこのままロンドンを振り回すと、来週もまた、9月10日の午後6時から、72時間のストライキが予定されています。ロンドンに行く予定の方がまわりにいるようでしたら、「止めなさい」と言ってあげてください。

ここで終わりに:故ダイアナ妃のメモリアル・サーヴィス

2007.09.02
今日の地下鉄のストライキがどうなるか、どきどきです。

 8月31日に催された、故ダイアナ妃のメモリアル・サーヴィス、終わってみれば、二人の王子の成長ぶり、とりわけハリー王子への好感度が高まった印象が強いです。

http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2007/08/31/ndiana1031.xml
テレグラフの特集ページ
http://www.guardian.co.uk/dianavideo/0,,2159086,00.html
ガーディアンのダイアナ妃の写真特集ページ

 数日前のテレグラフ紙は、クラレンス・ハウス(チャールズのロンドンでの公邸)の仕切りが悪い、とかなり執拗な論調の記事を掲載していました。曰く、当初は招待者リストから外れていたダイアナ妃が最も信頼していた彼女の秘書を直前になって招待者リストに加えた不手際。また、世界中から訪れるに違いない、故ダイアナ妃の熱烈な心棒者のために、教会の外に10台の巨大スクリーンを設置するべきだ。サーヴィスのあとに王室メンバーが教会の外で待っている人たちに、どうして挨拶しないんだ等々。更に、テレグラフ紙の調査では、回答した人の89%が、ダイアナ妃が亡くなったニュースを聞いたとき自分たちがどこにいたかを覚えているという結果には、笑いを通り越して呆れました。フロイトが指摘した集団ヒステリアの一例としか思えませんでした。
 翌日、9月1日のテレグラフ紙は、6ページに渡る特集記事(大満足)を組んでいましたが、トーンは低めになっていました。どうしてかというと、彼らが予想した状況とは違って集まった人々の数は少なく、また警察官が出動しなければならなくなるほどの混雑もなかったからだと思います。同じ日のガーディアン紙は第1面で、テレグラフが主張した「10台の巨大スクリーンが必要に違いない」、ということを揶揄していましたし、世界中から集まったメディア関係者の数のほうが教会や、ケンジントン宮殿に集まった人々より多かったようだ書いていました。新聞は、主張の違うものを読み比べたほうが、いいですね。
 ま、それほど静かなものだった。今回の彼女の死後10年という節目に行われたメモリアル・サーヴィスは、メディアの期待に反して、二人の王子が希望したように、まさに家族による故人を偲ぶ、そして残されたものが前に一歩を踏み出すためのセレモニーだったように思います。




 今回、一番の悪役になってしまったのは、チャールズとカミラ夫人ですが、僕からすると、その二人を攻撃した故ダイアナ妃の「友人」たちも、今後は影響力を行使できなくなるだろうと思います。無残なヒステリックぶりでした。カミラ夫人の出席を最も激しく攻撃したローザなんとかさんは、「ダイアナ妃が見たら」、とまるでダイアナさんが語ったように不快感をメディアに流しました。でも、例えダイアナ妃がそう感じたとしても、故人が語ることはもはやできないわけですし、結局、ローザさん自身の不快感以外のなにものでもない、と。さらに、故ダイアナ妃の功績を管理するチャリティ団体の代表の女性に至っては、「我々のこれからの一番の課題は、カミラを女王にしない、ということに尽きる。私達の女王は既にいる」。現在の法のもとでは、チャールズ皇太子が王位に就いた時、カミラ夫人には公式にQueenのタイトルが付くことが決まっているわけですから、この代表者が何をしたって変わらない。カミラ夫人が女王になると、貴方の人生に何の影響があるんですか?、と。何もないでしょう。

 ウィリアム王子とハリー王子は、こんな状況に幕を引きたかったのではないか、と僕は思います。サーヴィスの全部をみたわけではないですが、両王子のリラックスした振る舞いが、印象的でした。二人が彼らの母親のことを忘れることはないでしょう。彼らとしては、自分たちの母親の思い出を、自分たちの手の届く所に置いておきたい、それが二人の望むこと、と感じました。
 今回、10年前、故ダイアナ妃の葬儀のときの写真が再び大きく掲載されました。そこに写っているウィリアムとハリーの姿から、現在の彼らの成長ぶりから、10年という歳月が如何に長いかを改めて感じました。12歳、母親の亡骸が納められた棺のあとを、地面に消え入りそうに、悲しげに歩いていたハリー王子が、いまや22歳の青年。酒の騒ぎや、ナチスの腕章で世間の顰蹙を買った悪童ぶりは、この日、彼の振る舞いからは見ることはありませんでした。




 ハリー王子のスピーチを映像でご覧になった方もいると思いますけど、長くないので全文を。

William and I can separate life into two parts. There were those years when we were blessed with the physical presence beside us of both our mother and father.

And then there are the 10 years since our mother's death. When she was alive we completely took for granted her unrivalled love of life, laughter, fun and folly. She was our guardian, friend and protector.

She never once allowed her unfaltering love for us to go unspoken or undemonstrated.

She will always be remembered for her amazing public work. But behind the media glare, to us, just two loving children, she was quite simply the best mother in the world.

We would say that wouldn't we. But we miss her.

She kissed us last thing at night. Her beaming smile greeted us from school. She laughed hysterically and uncontrollably when sharing something silly she might have said or done that day. She encouraged us when we were nervous or unsure.

She - like our father- was determined to provide us with a stable and secure childhood.

To lose a parent so suddenly at such a young age - as others have experienced - is indescribably shocking and sad. It was an event which changed our lives forever, as it must have done for everyone who lost someone that night.

But what is far more important to us now, and into the future, is that we remember our mother as she would have wished to be remembered, as she was - fun-loving, generous, down-to-earth, entirely genuine.

We both think of her every day. We speak about her and laugh together at all the memories.

Put simply, she made us, and so many other people, happy. May this be the way that she is remembered."


 ヴィデオをみての第一印章は、野太い声だな、というものでしたが、全体からは彼のマチュリティが鮮明に感じられるスピーチでした。これで、世間のハリー王子への印象が変わったようです。

 タイトルは、司祭が言った言葉です。Let it end here.
 亡くなった人を偲ぶのは、残された人々が、それぞれのやり方で出来ること。でも、亡くなった人、ダイアナ妃を間違った偶像にしようとする他者の意思を止められるのは、ウィリアム王子とハリー王子だけ。今回、二人はそれを彼らの意思でやり遂げたように思います。
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