LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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2007年12月の記事一覧

ヨーロッパの西の島国はいつも大混乱

2007.12.31
ロンドンはまだ、2007年です。

 ブログを立ち上げたことが最大の理由だとは思いますが、今年もいろいろなニュースを読み、聞く機会がありました。日本とイギリスの共通の事象、逆に日本ではおよそ起こらないであろう、猛烈な勢いで変化し続けるイギリス社会が内包する社会問題などを自分の言葉で書き記していくことは、自己満足ですが、いい勉強になります。

 ブログの各月のエントリー数を見ると、「他にすることないのか」、と自分に突っ込みを入れたくなるほどですが、それでもまだ、興味を抱きつつもかけなかったことが幾つか有ります。新年に引きずっても仕方ないので、自分の記録用として、またもしかしたら興味を持たれる方もいらっしゃるかと思い、新聞記事をブログに移しました。オリジナルのリンクは各エントリーの上部にあります。The Daily Telegraph紙とBBCは記事に関連した写真がきちんと残されていることが多いです。それにしても、日本の各新聞社は、リンクの有効期間をもう少し延長する努力をして欲しいものです。

[日本の皇室]
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-654.html
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-653.html
 一つ目のThe Timesの特集記事は、良くかけていると思います。タイトルはいいえていますが、とても皮肉です。

[ヨーロッパの人種問題]
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-657.html
ベルギーで、黒人司祭が直面した差別
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-658.html
デンマーク国内の、イスラム教徒の境遇
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-659.html
EU議会での、有色人種議員の数は、785人中、たった9人という現実
 どこの国でも、報道されるニュースは自国のことが中心になる傾向に有ると思います。イギリスにいると、ヨーロッパ大陸で何が起きているか、何が起きそうなのかということを知るのはかなり難しいです。それと、背が高すぎる人も、ある意味、差別されているのかな、と。利き手、髪の色、肌の色、いろいろなことで人は区別したがりますから。
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-664.html

[Cheap Labour]
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-647.html
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-648.html
 一つ目、インディペンデント紙でバーバリーのウェールズの労働者への裏切りを痛烈に批判するエマ・トンプソンの言葉は、痛快この上ないです。他にもいろいろな記事があって、「世界は奴隷で動いている」というタイトルも考えてはいたのですが、僕にはでかすぎました。ちなみに、日本は先進国の中でも国内の「スレイヴ」、要するに外国人労働者、特に性産業に従事する女性の待遇が改善されない、という見方をされています。「内政に口を挟むな」と感情に走るのは簡単ですが、何も言っていないのと同じです。そういう評価を他国はしているという現状を知っておくのも良いと思います。

[子供達の苦境]
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-655.html
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-662.html
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-663.html
 イギリスで、世界で子供達が大人の勝手な都合で、逆境に追いやられている、というもの。最近、The Observer紙の特集で、ナイジェリア国内で「魔女狩り」の犠牲になる幼児たちの記事がありました。あまりにも悲惨で、記事に書かれていることを脳が理解することを拒否しまくりでした。

[Postcode Lottery]
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-651.html
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-652.html
 郵便番号に左右される人生は、突き詰めて考えると空恐ろしい気が。

[現代のママさんたちの苦悩]
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-669.html
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-670.html
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-671.html
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-668.html
 本当に、現代では「母乳の功罪」や妊娠中に食べてもいい食物リストが、極端な話一日おきにくるくる変わる状況ですから、お母さんになるのって大変なことだなと思います。イギリスで放映された、「我が子を愛せない母親達」を取り上げた番組(リンクは670と671)は、カウンセリングの勉強会、コースで議論がもの凄く盛り上がりました。4つ目は、化学物質が人体に与える影響で、男女の産み分けのバランスが崩れてきていることへの警鐘です。

[変わるイギリス、変わらないイギリス]
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-665.html
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-666.html
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-667.html
 今でも、イギリスには社会階級が確実に存在し、違った階級出身者同士が交流する事は、稀だと思います。一つ目はそんなことを。他の二つは、イギリス人以上にイギリスを愛するアメリカ人作家、ビル・ブライソンの、イングランドを美しくしよう、という取り組みです。どうしてイギリス人がしないのかな、と。

[エキセントリック・ブリティッシュ]
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-672.html
 度量衡は統一して欲しいんですけどね。

 ここまで挙げた記事をざっと見ると、なんか、暗いですね。でも、ロンドン、そしてイギリスの生活、有象無象の刺激に溢れていて楽しいです。イギリスは、いい意味でも悪い意味でも、人の期待を裏切る国だなと最近よく思います。皆さん怖気づかずに、2008年は是非お越しください。

 2008年の目標は、最後の記事に掲載されていた、下の写真のように「カントリー・ジェントルマン」のコスプレをしてイギリスの荒野を歩き回る、です。ちなみに、記事は、イギリスの狩猟に関する、とても真面目な内容のものです。イギリスのコスプレ・オタクの記事ではありません。



http://www.telegraph.co.uk/portal/main.jhtml?view=DETAILS&grid=&xml=/portal/2007/08/11/nosplit/ftfront111.xml

 A Happy New Year!



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変化と安定5:Doris Lessing、本を読める幸せを噛み締める

2007.12.29
今年度のノーベル文学賞受賞者が発表されるまで、僕はドリス・レッシィングの名前を聞いたことはありませんでした。まぁ、ノーベル文学賞受賞者なんてそんなものですよね?!

 その直後、日本でも報道された以下の発言で、彼女のことは強く印象付けられました。
http://www.telegraph.co.uk/arts/main.jhtml?xml=/arts/2007/10/23/bbolessing123.xml
 レッシィングのこの発言、日本ではきちんと報道されずに、ありがちですがセンセイショナルな面ばかりが強調されてしまったようです。が、ブッシュとブレアが嫌いな皆さんには溜飲が下がるものだと思います。ちなみに添付の写真は、1956年当時のレッシィングです。



 今月初め、ストックホルムでの授賞式は、レッシィングは健康を理由に欠席したそうです。88歳という高齢ですから無理ないでしょうね。で、受賞スピーチはロンドンで録音され会場で流されたそうです。その全文がThe Guardian紙に掲載されていました。

http://books.guardian.co.uk/nobelprize/story/0,,2224068,00.html
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/?q=doris+lessing

 たくさんのことを考えさせられるスピーチなので長さは気にならないと思いますが、恐らく、読み辛く感じる方がいらっしゃるのではないかと思います。僕もこんなに読み辛く感じる英語は久しぶりです。自分の下手な英語を棚に上げて何ですが、現在形と過去形が入り乱れているのが一因かと。思うに、レッシィング本人が過去に経験したことは、今の社会にも何らかのメッセージを発するほど強いものであり、普遍性という観点から過去の経験も現在形で表現しているのかなと考えます。

 スピーチを乱暴に大きく二つに分けると、レッシィングがジンバブエで経験したことと、現在の社会が抱える問題に気付かない人々へのメッセージ、もしくは警鐘でしょう。ただ、彼女のアフリカでの経験は、彼女のことを知りませんから、語る言葉を持ち合わせていないので何もいえません。

 レッシィングが糾弾する、インターネットによって多くの人々が本を読まなくなったという点に、僕は賛同しません。インターネットが有ろうがなかろうが、レッシィングが指摘する、「本を読まず、世界のことを知ろうとしない」人々は、本を読める環境にいることがどれほど恵まれているかということを、暴論ですが、恐らく一生理解できないと考えるからです。
We are in a fragmenting culture, where our certainties of even a few decades ago are questioned and where it is common for young men and women, who have had years of education, to know nothing of the world, to have read nothing, knowing only some speciality or other, for instance, computers.

 レッシィングのスピーチ全文を何度も読んで感じたのは、教育の重要性ということです。人生の初めの段階で、何が大切なのか、どういう方法を取ることが自分の人生を豊かなものにすることができるのか。それを見極めないまでも、何らかの指針を自分の中に保つ為には、本を読むことがどれほど有意義なことか。インターネットという「変化」が身近に有ろうとも、自分が何を必要としているのかを既に理解していれば、それに溺れることはないのではないか。理想論ですけどね。
 と言いつつ、レッシィングのペシミスティックな気分、理解できます。ジンバブエの人々の本への渇望、知識を得られないことへの焦燥は、恐らくイギリスに住む多くの、子供だけでなく大人ですら共有することは出来ないのではないかと思います。
 本を読むことは、僕にとっては喜びです。本当に面白い本に巡りあえた時は、未だ知ることのない世界へ一歩を踏み出すような高揚感に包まれます。が、もしかしたらある人々にとっては、苦痛なのかもしれません。何故なら、時に本を読むことは自分の価値観に変革を起こすほど強い衝撃をもたらすことがあるから。その衝撃から距離を置くすべを知らない、もしくは衝撃を吸収する方法を持ち合わせなければ、それは苦痛になるのではないかと思います。
 そうならないために、小さい頃から徐々に本を読むという習慣をつけていくのが理想でしょう。でも、現代では、忙しすぎて、時間がかかりすぎて、本を読むことに意味を見いだすことすら無駄と思う人々もいるであろうと思います。

 僕は普通の核家族の家に生まれ育ち、普通に人生を過ごしてきました。そのような環境でとても恵まれていたのは、両親が、そして祖父母がたくさんの本を与えてくれたことです。読みたい本はたいてい買ってもらえました。本当に、幸せなことだと、レッシィングのスピーチを読んで、今、改めて思います。
 現在は、プライヴェイトで読む本の大半は勉強の反動で、文系向けに書かれた数学や物理の本ばかり。でも、素数を探る熾烈な競争、目に見えない原子を発見した過程に物語が、歴史が、そして日常生活に連なることが書かれています。新しいことを知る喜びを身近に常にもてることは、幸せなことなのだと思います。
 読みたい本のページをめくるということは、自分への挑戦と言ってもいいのではないか。コンピューターのスクリーン上のカーソルを惰性でクリックするより、自分が何をしたいかが明確に判っているから。その挑戦という変化を知らなければ、安定を得ることはできない、というまとめは優等生過ぎますね。

 レッシィングのスピーチは個人的には、全体を通して「良い」スピーチとは思いません。でも、知る価値のあるスピーチだと思います。時間が有れば、是非。最後にとても心が動かされた段落を挙げておきます。スピーチの〆の部分です。僕の血となり肉となっているであろう、これまで読んできた本のタイトルが次々に浮かんできました。

but the storyteller will be there, for it is our imaginations which shape us, keep us, create us - for good and for ill. It is our stories that will recreate us, when we are torn, hurt, even destroyed. It is the storyteller, the dream-maker, the myth-maker, that is our phoenix, that represents us at our best, and at our most creative.

変化と安定4:金持ちとは

2007.12.29
イギリスでも日本でも、貧富の格差、というより収入の格差が広がっているという報道が頻繁にされたのが今年の特色ではないかと思います。ある調査で、日本の格差はイギリスなど他の国と比べるといわれているほど広がっているわけではないという調査結果をどこかで読んだあと、こんなニュースがありました。
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-611.html

 やっぱり日本でも収入格差による新手のビジネスが現れているのではないかと思っていた所に、イギリスではそれを上回るこんなニュースが。

http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2007/12/09/nrich109.xml

http://www.thisismoney.co.uk/investing/article.html?in_article_id=427356&in_page_id=166
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-612.html
 テレグラフの、「裕福と思えるのは銀行に預けてある現金が、£500万(日本円で約12億円くらいかな)を超えたとき」なんてニュースを読んで漏れた溜息は、「口座を開設するのに必要なのは、最低2,500万ポンド(約60億円?)」という、それこそメガリッチしか相手にしない金融サーヴィス会社の興隆、というニュースを目の当たりにして凍りつきました。さらにそんなPrivate Bankにとっての得意客になるには、2,500万ポンドでは足りない。その3倍の金額の運用を依頼して漸く上顧客として認められる。どこの世界の話?

 金は天下の回りもの、というのは21世紀にはもはや通用しないです。金は、金のある所にしか行かないんですね。そんな下々の嘆きが届いたのか、さらにこんなニュースが。

http://www.telegraph.co.uk/money/main.jhtml?xml=/money/2007/12/19/cngreed119.xml
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-614.html
 イギリスの金持ちは、その資産を充分に社会に還元していない。もっとするべきだと。The Cityのスーパー・ウーマン、ニコラ・ホーリック(写真)をはじめ、イギリスでは有名なフィランソロピストで知られるトム・ハンター(スコットランド人)が個人資産をいくら還元しても、結局イギリスを蹂躙している(と僕にはうつる)ロシアやインドのビリオネアーが何もしなければ、社会に、そして世界に還元されるCharitable Moneyの総額は微々たる金額のまま、ということなのかもしれません。



 クリスマスを前に、(きちんと読んでおけばよかった)The Evening Standard紙の主催で「シティはもっとチャリティに貢献すべきだ」という公開討論がありました。そこには、アブラモヴィッチも、ミッタルも誰もいなかったようです。ちなみにこの討論会が開かれることになった理由の一つは、クレディット・クランチの影響でシティのバンカー達が受け取ったボーナスの総額は減った一方で、20億円、30億円のボーナスを受け取ったスター・バンカー達はまだまだたくさんいる。そういう人たちが、もっとチャリティへ積極的にかかわるべきだ、ということをアピールしたかったようです。
 簡単なことではないですから、人々はいろいろと模索しているようです。
http://www.guardian.co.uk/money/2007/dec/29/children
 子供達に、フィランソロピストとは何かを教える裕福な親たち。それを横目に消費しつづける僕達。
http://www.guardian.co.uk/money/2007/dec/29/retail.highstreetretailers
 タイトルが秀逸。「Credit crunch? What credit crunch? UK spends like there's no tomorrow」。そして、パリス・ヒルトンは途方に暮れる?!
http://www.guardian.co.uk/usa/story/0,,2232742,00.html


 時代の変遷と共に、これまで不動のように思われた産業ですらその構造が変わっていくのは仕方ないことだと思いますが、最近の経済・資金報道で個人的に最も驚いたのが、音楽業界にまで、Private Equity会社の貪欲な牙が向けられたことです。
 古くはビートルズ、最近でもロビー・ウィリアムズやカイリー・ミノーグ等の売れるアーティストを多く抱える大手レコード会社のEMIは、最近、Terra FirmaというPrivate Equity会社の傘下に入りました。要するに、資金難でその建て直しの為に売られたということです。Terra Firmaのトップは、かつて野村ヨーロッパでその豪腕で名を馳せた人。彼は即座に所属アーティストに手紙を送ったそうです。
 「働かない歌手は要らない」。
http://www.telegraph.co.uk/money/main.jhtml?xml=/money/2007/12/10/cnemi110.xml

 この行動は、会社経営者としては正しいのでしょう。でも、人に喜びをもたらす音楽ですら、聞き手が喜びを得る前に経営者の判断次第では日の目を見ることが出来ないであろう現実は、音楽好きの一人としては悲しいです。

 最近、新しいCDをリリースしたジェイムズ・テイラーのインタヴューをBBCが掲載していました。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7137120.stm
 その中でテイラーが描く、アーティストと聞き手の幸せだった時代がまた戻ってくることを信じたいです。

How much has the recording industry changed over the last 40 years?

In the '60s it was a lot easier to get music heard. People who were in the music business were much more about the music and much less about the business. But as it became worth a lot of money, bigger and bigger corporate entities became involved.
It lost touch with its roots, essentially. It ceased to serve the public and the artists who depended on it.


Do you think that things can change?

There are greedy, short-sighted, self-serving people who grabbed hold of that business, and it's stopped being attractive to them. So it's shifting back to people who love music. It's an exciting time, but I wouldn't want to be getting started right now.

変化と安定3:罪の代償と時間

2007.12.28
これは、さらにもっとDepressingな上に、カウンセリングに興味がない、必要がない方に、添付の特集記事を読めと無理強いはしません。

 最近、新しい書く仕事を始めたとか、通訳をしているなどと書いているから、カウンセラーになるのはやめたんですね、と頻繁に言われます。いいえ、止めていません。それどころか、カウンセリングの勉強、歳を取れば取るほど、自分の人生を多面的に捉えることが出来るようになって来ているように感じ、落ち込むことも有りますがやり甲斐はつきません。始めた時に予想していたより時間がかかっているのも仕方ないか、と最近は思うようにしています。

 そんなことを感じていた今年の夏にめぐり合った記事です。とーーっても長いです。Counter-Transference(これは経験豊かなカウンセラーやセラピストにとっても説明が難しいものです)以外には、専門用語・技術用語はそれほど出てきませんが、犯罪者の内面に踏み込む箇所もあるので、幸せなときに読むほうがいいかもしれません。

http://www.guardian.co.uk/weekend/story/0,,2124677,00.html
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/?q=group+therapy

 僕もこの記事を偶然読むまで、こんな刑務所がイギリスにあるなんて知りませんでした。記事を読めば明らかですし、刑務所のウェブでも明記されていますが、受刑者にサイコダイナミック・カウンセリングを基礎にしたサイコアナリティック・サイコセラピーを施しているようです。
http://www.hmprisonservice.gov.uk/prisoninformation/locateaprison/prison.asp?id=397,15,2,15,397,0

 尊大に響くのを承知で書くと、カウンセリングを必要としない、且つ全く知識がない方々に僕が「七転び八起き」状態で学んでいるサイコダイナミック・カウンセリングについて説明するのは、最近はあまり気乗りがしません。というのも、時間がかかる上に、効果を数値化できないサイコダイナミックは、最近のイギリスでは一番人気のCognitive Behavioural Therapy(CBT)やコーチング、さらに僕にとって胡散臭いことのこの上ないスピリチャル・カウンセリングよりさらに判りづらいらしいので。それに、最近特に感じるのは、他者が言ったことを曲解したがる人が多くて、間違った認識をもってほしくないというのも有ります。

 それでも、ほんの少し。サイコダイナミックって、時間がかかるんです。「貴方の霊が見える」なんて言いません、見えないんですから。「貴方の人生の間違いはここです」なんて言いません、だって僕の人生ではないですから。サイコダイナミック・カウンセラーが多くの時間を費やすことの一つは、カウンセリングを受けにきた方の話を聞くこと。そして、聞き手が常にいるというその安定した環境が、カウンセリングを受けに来た方に、自分自身を見つめることができる時間と空間をつくりだす。重ねて言いますが、これだけではないですからね。
 一時期、日本で「自分探し」という言葉が流行ったように記憶しています。「自分探し」なんて、簡単なことではないと思います。でも、「自分探し」をしたい方は、おしなべてすぐに結果を欲しがっているように、僕には感じられます。例えば、10年という期間を経て失ってしまった「安定」や「自分」を、1回のクリック、1回のカウンセリングで本当に取り戻せると多くの人は思って、いるようです。そんなことが起きたとしたら、それは「啓示」であって「治癒」ではない、と僕は考えます。
 もう一つ。言い訳ととらえられるリスクは承知の上で、サイコダイナミック・カウンセリングは、万能ではないです。サイコダイナミックに限らず、心理カウンセリングを受ければ、「トラウマが消える」、「アダルト・チルドレンだった過去がなくなる」、ということはない、というのが僕自身の考えです。過去に向き合うことで、「今」が見えてくれば、と。
 身体の治療でだって、手術の痕が残ることがありますよね。時が経てば傷痕は小さくなっていくかもしれない、痛みは減っていくかもしれない、でも偶に傷痕がうずく。カウンセリングも同じです。トラウマになるような苦い、心の痛みを伴う経験は消えないかも知れない。でも、その痛みが「今」の自分にとって何を意味するのか、心に残った傷痕が自分の中にあることを理解して「これから」自分は何をすることができるのか、できないのか。出来ないのはどうしてなのか。

 すいません、脱線しすぎました。記事によると、Grendon 刑務所は望めば入所できる刑務所ではないそうです。自分の意思で自分の内面に立ち向かい、罪を犯した自分の中の暗闇に対峙できる、そして自分がその暗闇を抱えたまま、その暗闇を自分の一部と認識し、コントロールしながらこれからの人生を生きていくことを受け入れられる、そういう犯罪者でなければ入所が認められない。また、刑務所の説明にありますが、最低でも2年間は入所していなければならない。これは、サイコダイナミック・カウンセリングに基づくグループ・セラピーの効果を望むには2年という期間が必要、ということだと思います。
 でも、世間はその2年を我慢できないようです。記事の最後のほうに、CBTのように、短期間で終了し、かつ効果を「とりあえず」数値化できるカウンセリングに変更しなさいというプレッシャーが強まっているようです。別の極端な例ですけど、最近の世論調査では、日本では死刑制度の存続を9割の人が望んでいるそうで。正直、驚きました。人は、罪はすぐに償われるべきだと思っているのかな、と。
 ここで刑罰の期間について取り上げるつもりは有りません。イギリス、また恐らく西ヨーロッパ各国では、人権問題の視点から、頻繁にメディアが取り上げるトピックです。感情論、生半可な知識では議論が噛みあわない、というのが僕個人の感想です。

 以下のエントリの後半で書いた方が、償いを終えて出所し、その1週間後に、刑務所にいる人たちが作った作品の販売を行うチャリティ団体に就職したそうです。
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-251.html
http://www.thisislocallondon.co.uk/mostpopular.var.1848598.mostviewed.new_job_for_the_secretary_who_stole_4_3m.php
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-616.html

 美談というつもりではないです。ただ、希望することは、犯した罪の重さを受け入れたこの女性を、社会が再び暗闇に追い詰める事はしないで欲しい。

スロー・ロリスの悲鳴は届かない

2007.12.28
http://www.telegraph.co.uk/earth/main.jhtml?xml=/earth/2007/12/22/ealoris122.xml








 善人ぶるつもりはさらっさらない。自分の中に暗がりあることは判っているから。今はそれをどのようにコントロールするのか理解している。

 テレグラフのウェブで偶然見つけたこれらの写真。見ているだけで耳をふさぎたくなる。人間だって、覚醒したまま歯を否応もなく折られたら、失神する痛さに違いない。

 この写真を見ながら「人間は罪深い」という言葉をつぶやくだけでは、何もしないことに等しい。だから、何もできない自分にたった一つだけできることは、スロー・ロリスの悲鳴をここに載せることだけ。

変化と安定2:見捨てられるWhite British

2007.12.27
エリザベス女王の次が、とてもDepressingな話題というのもこのブログらしいかと。

 改めて声高に叫ぶ必要もなく、現在のイギリスが抱える大きな社会問題の一つは、押し寄せる移民によって、イギリス社会が、恐らく望んでいないであろう方向に変化することを余儀なくされていること。英語を話せない外国人をイギリスに適応させる為に、政府は莫大な予算を使いつづけています。例えば、学校で、病院で、そしてイギリス各地で通訳の為に割かれる予算は今のところ天井しらずの状況、という認識はあたらずとも遠からずだと思います。
 そんなこともあって、この夏、労働党のある議員から、通訳をあてがうのではなく、移民外国人に英語を教えることにもっと予算を使うべきだ、何故ならイギリスにきたのであれば英語を話すことが望ましいという発言がありました(個人的には、この意見には全く同意します)。また、東ヨーロッパからの移民が大挙して押し寄せ、新たな社会問題、これまでイギリス社会では見られなかった犯罪が増えつづける為に、現在の予算や人員ではこれ以上の対応は無理、と確かケンブリッジの警察の偉い方からの発言が波紋をよびました。

 そんな移民対策で手一杯のイギリス政府・社会から、もともとイギリスに暮らす、特に白人層が社会から見捨てられているのではないか、ということを感じ始めていた時に読んだのが以下の特集記事です。長いです。底なし気分です。でも、これもイギリスです。

http://www.guardian.co.uk/weekend/story/0,,2158873,00.html
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/?q=inescapable+poverty

 かつて炭鉱で栄えたイングランド北東部の街。炭鉱が廃れ、その後に続く産業もなく、そこに暮らすイギリス白人、特に若い世代は、麻薬、犯罪、貧困という悪循環にとらわれて一生を終える、そんな記事です。

 ブログに保存した記事には「Inescapable poverty in England」というタイトルをつけましたが、正直なところ、「避けることが不可能な」貧困とは思いたくないです。また、本当に長いですけどこの特集記事を読んで、これは個人の問題であって、社会の問題ではないという印象をもたれる方もいることでしょう。
 政府が、地域が産業を育成しなかったのが悪かったのか、社会保障に頼るだけの個人が悪いのか。どちらも正しく、またどちらも間違いかもしれません。鶏と卵の関係だと思います。ただ、個人的には、この記事で取り上げられている皆さんは、社会の安定からも、社会の変化からも置き去りにされているという印象が強いです。
 確か、今年のフランス大統領選の前に、こんな記事を見つけました。貧困地域で生まれ育った子供の多くは、彼らが生まれたときから、彼らの親たちが社会保障で暮らしている姿しか知らないから、働くこと、自立すること、自分の力で人生を切り開いていくことを想像できない。だから社会保障を受け取る以外の人生から抜け出せなくなるのではないか、というものでした。
 僕は哲学者でも、思想家でも、政治家でもなく、単にCounsellor-to-beですからこの状況を打破する為にはこうするべきだ、と声高に叫ぶつもりはないです。ただ、あとで書くつもりでいる、今年のノーベル文学賞を受賞したドリス・レッシィングの受賞スピーチを読んでから改めてこの貧困に喘ぐ白人イギリス人の生い立ちを読んで感じたのは、教育って、本当に大切なんだということ。教育を受ける側だけでなく、教育を与える側にもしっかりした考えや思想がなければ、社会の歪みが減少することはないのではないかと感じます。
 でも、雲行きは怪しいようです。BBCの報道によると、過去数年の間に、10万人以上もの教師が現場を去ったそうです。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/education/7161071.stm
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-640.html

 余談です。教育がらみで、イギリスの社会問題やホットな話題を読み解くキーワードの一つをご紹介します。それは、「Postcode Lottery」。人々がどこに住んでいるかは、イギリスの郵便番号にあたる「Postcode」ですぐに判ります。要するに、ポストコードによって、「この人は裕福な地域にすんでいるんだ」とか、「なんだ、こんなポストコードの場所に住んでいるようでは、融資するわけには行かない」とか。つまり、郵便番号によって人生が左右されてしまうかもしれない。この現象は、病院など、日常生活のいろいろな面で関わってきます。
 子供を抱える家庭にとっては、ポストコードによって子供が行くことのできる学校が決められてしまう。ですから、孟母三遷とまでは行きませんが、問題のある学校に行かされるポストコードの地域には住みたくない、そう考える親世代が増えているそうです。

Who wanted her blood?

2007.12.27


2007年10月、パキスタンに帰国したとき。




ヒラリー・クリントンは何を思うのだろう。




祈り?、希望?、それとも・・・。




暗殺される直前。

 今日、2007年12月27日に暗殺されたパキスタンの元首相、ブット女史の功罪を、僕は知らない。
 
 世界は何を失うのか?何を得るのか?

 憎しみを、時は癒せない。

変化と安定1:エリザベス女王

2007.12.26
クリスマスの数日前は、寒さも厳しく、また霧が濃かったので、ホワイト・クリスマスを期待したのですが、そこはロンドン、土砂降りでした。

 今年も、一年を通してたくさん面白いニュースを読む機会がありました。で、溜め込んでいた記事を整理しつつ、長い記事を改めて読んでいると、現在のイギリス(だけではなく日本やベルギー等他の国々も同様だと思いますが)が、国内に抱えるパラドックスのようのものを感じました。一元的な捉え方かもしれませんが、国外から押し寄せる圧力による望まない「変化」、国内から湧き起るべきであろう独自の「変化」の欠落。別の言い方をすると、安定と変化のせめぎあい。
 社会が「安定」しつづけることが最良であるとは思いませんし、社会が、人々が「変化」を望むのは必然だと思います。ただ、その変化が混乱を引き起こすのか、それとも結果として社会や文化の普遍性をより確かなものにするのかで、日常生活の質が変わってくるのだろう、と漠然と思います。僕の考えをだらだら書いても皆さんには退屈なだけでしょうから、幾つかのトピックに分けて、個人的にとても興味深かった記事をまとめてみます。

 イギリスの「安定」の象徴といえば、僕にとってエリザベス女王をおいて最適な人物、及び対象物を考え付きません。先月、11月20日にダイヤモンド婚式を迎えたことや、ヴィクトリア女王の記録を塗り替えたとかで、今月も女王に関して多くのニュースがメディアによって取り上げられました。
 その中で特に、女王の人となりを垣間見ることができるという点で面白かったのが、The Daily Telegraph紙による、14年間に渡り女王のPA(パーソナル・アシスタント)を務める女性へのインタヴュー。
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?view=DETAILS&grid=&xml=/news/2007/12/09/nroyal309.xml
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/?q=The+Queen+and+I%2C+by+Her+Majesty%27s+PA
(テレグラフやガーディアンのリンクは長期間有効ですが、念のため興味深い記事はブログに保存しておくことにしました)



 もちろんバッキンガム宮殿のプレスから検閲は入っていると思いますが、女王のそばにいることで感じるほかの人からの妬みをジョーク交じりに披露するなど、読み物として面白いものだと思います。
 ケリーさんのインタヴューの中で最も印象に残ったのは、女王による「 I think we are a good team」という言葉です。ケリーさんも誉め言葉と同時に、エリザベス女王がおかれている境遇について理解していると思います。
 ずっと前に歳上の友人から聞いた話によると、女王は生涯で一度も「学校」というものに行ったことがないそうです。昔のイギリスの王室・貴族階級では普通だったのだと思いますが、家庭教師が、多感な少女時代のエリザベス王女にとって唯一の教育だった。ということは、エリザベス女王には、普通の子供達が恵まれたであろう生涯のともとなったかも知れない他の子供との出会いがなかった。まして女王という立場であれば、のちの人生でそうそう新しい友人を得ることなどほぼ不可能でしょう。そんな女王にとって、「職場」での出会いとはいえ、「友人」がそばにいてくれる、というのが嬉しいことなんだろうな、と。
 イギリスという国の安定の象徴としてとらえられる女王にとって、日々の公務の中で女王自身が心の安定を共有できる人物を得ることを望んでいることを僕はこの一言から感じました。

 エリザベス女王には今年、新しい称号が送られました。(恐らくイギリス版の)ヴォーグ誌は「世界で最もグラマラスな女性」の一人に女王を挙げました。
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2007/11/04/nqueen104.xml
 女王のドレスが最先端、ということではありません。公務では、ティアラや伝統的な、社会が女王に望むであろう衣装。プライヴェイトでは、ウェリントン・ブーツを履き、スカーフをかぶってイギリスの荒野を歩き回る。その一貫した、変わらない姿が「グラマラス」だそうです。下の写真は、25日に教会を訪れたときのものです。



 既にご存知の方も多いと思いますが、英王室はYouTubeに映像を投稿することを始めました。
http://uk.youtube.com/theroyalchannel






 それと、以下のリンクに、女王のスピーチ全文を保存してあります。
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-637.html

 報道によると、若い世代をひきつける為、ということが大きな理由のようですが、このニュースと前後して、イギリス国内におけるカトリック信者の急増、女王がトップの英国国教会信者の減少に歯止めをかけなければ、という危機感もあるのではないかと推測します。ちなみに、エリザベス女王にYouTubeを勧めたのは、二人の孫娘、ベアトリスとユージン王女だったそうです。また、グーグルはこのページ作成を無料でしたそうで。
http://www.guardian.co.uk/technology/2007/dec/23/youtube.monarchy

 日本の宮内庁に同じことを望むこと自体が間違っているので比較しようもないです。エリザベス女王、及びバッキンガム宮殿が選択したこの「変化」が安定に結びつくのかどうかは暫く時間がかかるでしょうね。一つ間違いないのは、クィーンズ・イングリッシュを学ぶにはこれ以上に最良の教材はないということ。更に、バッキンガム宮殿も結局政治に組み込まれていると思ったのは、「ステイト・バンケット」の映像に、ロシアのプチン大統領がきたときのものを利用しているところ。こんな映像一つで、イギリスとロシアの関係改善が進むとは思えませんけど。英王室に続くとしたら、とりあえず国の分断を暫定的に回避したベルギー王室が次かなと期待しています。

ホーム・アローン(実話)

2007.12.23
日本は連休になっているようですが、今年はイギリスも暦の関係でこの週末は長い連休を取っている人が多いようです。最近特に、幾つかの社会事象から見て日本とイギリスって本当によく似ていると思います。ま、全部ではないですけど。
 本題に行く前に。19日、金曜日の夜から、ロンドンを含むイングランド南東部は、かなり深い霧に覆われています。イギリス人の友人に言わせると、「ヴィクトリアンっぽいクリスマスだね」、とのことですが、クリスマス休暇でこの鬱鬱なイギリスから逃れようとする人たちは飛行機がキャンセルになってしまって大混乱。人の気を挫くイギリスらしいというか。それと、2008年1月に、ヒースローを含むイギリスの空港職員による長時間ストライキが3回決行される状況です。イギリスに来られる予定の方お気をつけください。このストライキが決行されることを見越して、混乱を回避する為でしょう、ユーロスターのチケットが完売になりそうな勢いだそうです。

 本題。2007年の4月から住み始めた現在の家は、幾つかマイナーな問題は有るものの、普通に暮らせる家です。これは、ロンドンでは貴重です。ところが、そのマイナーな問題の一つが先日の金曜日に、突如、降りかかりました。
 夏の終わりごろに、そのときにシェアしていた別の日本人から言われたのは、玄関ドアのメインの鍵を外から完全に施錠すると、家の中ら開錠することが出来ない、ということでした。つまり、家の中に閉じ込められてしまう、と。気をつけていれば大きな問題にはなりませんが、今週初めに入居したスペイン人男性がそのことを知らなかったようで、クリスマス休暇で帰国する19日の早朝、施錠してしまいました。僕はそのことに気付きませんでした。
 で、いざ外出しようとした所、当然、ドアを中から開けることは不可能。表の通りに面しているのはそのスペイン人の男性が使っている部屋だけ。彼は既に帰国の途上。大家夫婦も既に数日前にドイツに帰国。ドア一枚隔てて、完全に外の世界から孤立してしまっていました。気分は1枚目の写真のよう。



ちなみに写真は、数年後に上海で開催されるエキスポのマスコットです。きぐるみって、倒れると起き上がれないんですよね。それと、どんなイヴェントでも、マスコットのデザインがダサいというのは世界共通のようですね。
 もしくは、映画の「ホーム・アローン」のよう。「まずい、最悪、大家夫婦が戻ってくる26日まで外に出ることが出来ないのか?!」。警察に電話することも考えましたけど、車で10分くらいの所に友人が住んでいることを思いだし、運良く、彼が出勤する前につかまえることが出来て何とか救助してもらいました。
 ロンドンに8年住んでいろいろなことを経験してきましたから、もうロンドンに驚かされることなどないと思っていましたが、まだまだ有りそうです。最初は友人達には笑い話として伝えましたけど、冷静に考えると、この状況は、建物の安全性管理の面から全く論外なわけで、大家さんがすぐに鍵を替えてくれる事を祈っています。

 丁度いい機会なので、過去ひとつきの間に知った、経験しなければ気付くことがなかったことを幾つか。先月、日本からきた方の業務に通訳としてアテンドしたときのこと。オックスフォードにある企業を尋ねたとき、先方の担当者の男性が、「Would you like a cup of tea or coffee?」と尋ねてきたので、僕は遠慮することなく、「Thank you, tea with milk, please」、と。インタヴューされる方は、「Thank you, for me, tea」。すぐに僕は違和感を覚え、かつ先方の男性もほんの一瞬でしたけど、ちょっと苦笑したような表情を見せました。なんだろうなと考えてすぐに気がついたのは、日本から来られた方が「Please」を、会ってからずっと使っていないことでした。
 誤解のないように書いておくと、アテンドした方はとても仕事熱心で礼を失するということはありませんでした。僕が思ったのは、「Pleaseという英単語に当てはまる日本語の単語って、ないんだ」、ということです。さらに誤解のないように書いておくと、日本語では「してください」、というのが語感の上ではPleaseと感じられると思いますが、これは文章であって「単語」ではありません。Pleaseという基本中の基本の「英単語」を知っていても、単語と文章という違いによって、Pleaseが通常の会話でどのような役割をもっているか判りづらいのかな、と。
 僕はイギリスでしか生活していませんから他の英語圏の事情はわかりません。僕が生活の中で学んだことからいえることは、イギリスでは、Pleaseって重要です。会話の中の潤滑油のようです。例えスーパーのレジでの会話ですら、Pleaseが有るかないかで会話の響きが全然違います。例え重要な意味がなくてもにっこり笑って「Please」と付け加えるだけで、ちょっと生活が楽になる気がします。イギリスに来られたら、Pleaseは必須ですよ。
 余談ですけど、通訳の仕事は楽しいし、勉強になることがたくさんあります。反対にコーディネイトは神経磨り減りまくり。仮に今後も通訳とコーディネイトの仕事がセットでくるのであれば、イギリス人相手のコーディネイトには最低4週間はいただかないと精神衛生上、全く健康的ではないです。

 この通訳の仕事の前に、久しぶりに子守りをしました。友人がミーティングに出席している間の数時間面倒を見てほしいというもの。5歳の女の子(Mちゃん)で家に篭ってはいられないので、ナイツブリッジに有る美術館に連れて行くことにしました。5歳だから地下鉄でも平気だろうと思い、Mを連れて友人宅から最寄の地下鉄の駅へ。改札を抜け、ホームに降りるくだりのエスカレーターの前に来てはたと僕の足は止まってしまいました。
 「こんな速い速度のエスカレーターに、5歳の女の子をのせていいのか?」。もし僕一人なら、そんな速度、気にかけなかったことでしょう。でも、「これって、5歳の女の子の身体能力で乗りこなせるような速さじゃないぞ」。
 「仕方ない、Mを抱いて降りるしかないか」、と。でも、5歳の女の子を抱えて降りるには、僕にとってもちょっと速かったです。片足をエスカレーターに乗せたところで、危うくバランスを失いそうでした。都市機能って、大人ひとりの身体機能にしか合わせて設計されていないんですね。これからは、子連れのお母さんにはこれまで以上に親切にしようかな、と。

 2枚目の写真は、リージェント・ストリートの今年のクリスマス・イルミネイションです。



世間の評判は芳しくないようですが、僕は結構好きです。アメコミのキャラクターを使うよりずっと創造性がありますし。他の写真は以下のリンクでどうぞ。
http://www.guardian.co.uk/uk/gallery/2007/dec/14/christmas?lightbox=1

 ということで、Merry Christmas!

師走の話題:サヴォイ・ホテル閉鎖、他

2007.12.17
ロンドンの冬で、特に嫌いな現象が二つあります。一つは、言わずもがな、この世が終わっても降り続いているような雨。二つ目は、いつもではないですが、一日の最高気温と最低気温がほぼ同じというとき。例え冬でも、温度差がないと普通以上に寒く感じます。

 日本は政治的混乱、社会的混乱が続いていて、昨日起きた事件は明日には忘れてしまうほど別の大きな事件が毎日起きているように感じています。イギリスも同じです。あれほどメディアを賑わせたカヌーで失踪、死亡を偽装した夫婦の事件は既に新聞の片隅に追いやられています。例えば明日、ある大企業がいきなり倒産しても、恐らく驚かないかもしれません。そういえば、稀代の詭弁家首相を引き継いでしまった為に政治的窮地にはまり込んでしまったゴードン・ブラウン首相には、福田首相の姿が重なります。

 でも、気分が沈むニュースの次には笑いを誘われる事柄もあるわけで、ここ数日見つけたちょっとしたニュースを幾つか。

 一つ目は、時節柄、クリスマス関連。ある調査で、特に若い世代のイギリス人が、イエス・キリストがどこで生まれたかを知らなかったと。クリスマスを商業イヴェントにしてしまったつけと言ってしまえばそれまでですが、アングリカン・チャーチは一応、キリスト教の一派であるわけですから、ちょっとこれは拙いのではないかと思います。

http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2007/12/08/nxmas108.xml

The questions

1. According to the story in the Christian Bible, where was Jesus born?

73 per cent correctly said Bethlehem. Of the 27 per cent who were wrong, 10 per cent said Nazareth and 9 per cent said Jerusalem.

2. Who told Mary that she would give birth to a son?

73 per cent correctly said an angel. Of the 27 per cent who were wrong, six per cent said the wise men, five per cent said the shepherds and four per cent said Joseph.

 ここまでは、僕もわかりました。が、次の二つ、特に3番はキリストに従兄弟がいたことなんて知りませんでした。
3. Who was Jesus' cousin?

48 per cent correctly said John the Baptist. Of the 52 per cent who were wrong, 12 per cent said Peter, six per cent said Luke and six per cent said James. 26 per cent said they did not know.

4. Where did Joseph, Mary and Jesus go to escape from King Herod when Jesus was a young child?

22 per cent correctly said Egypt. Of the 78 per cent who were wrong, 52 per cent said Nazareth, five per cent said Babylon and one per cent said Rome.

 僕も、これはローマだとばかり思っていました。でも、最初の質問でベツレヘムと答え、ベツレヘムがどこにあるかをきちんと理解していれば、答えはローマのはずもなく。地図を思い浮かべれば、イスラエルはエジプトからはそう遠くないわけで。乳飲み子を抱えてなら、ローマよりエジプトのほうが現実的です。ちなみに、エジプト人の知人(イスラム教徒)に、このエジプトへの逃避行は一般常識なのか尋ねたところ、「当然だ。イギリス人がこのことを知らないなんて、恥と知るべきだ」、と鼻で笑っていました。


 ロンドンのテムズ川沿い、ストランドに1889年に開業して以来営業を続けてきたサヴォイ・ホテルが、改築のために今日、12月15日に、その扉を閉めました。
http://www.guardian.co.uk/travel/2007/dec/15/hotels



予定では、最短16ヶ月の閉鎖とのことですが、まるまる2年くらい掛かるのではないかと思います。サヴォイ・ホテルには一度しか足を踏み入れたことがないので、思い入れなんて何もないですけど、アフタヌーン・ティーはもう一度くらいは味わいたかったな。


 次。これはイギリス人がしでかした失敗ではないですが。イギリスのノーフォークにあるクィーン・エリザベス・ホスピタルと、オーストラリアのアデレイドにあるクィーン・エリザベス・ホスピタルから、それぞれ別の医療用スキャナーを受注したオランダのメーカー、フィリップスが発送先を間違えたそうです。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/england/norfolk/7145664.stm

 イギリス国内の別の病院に、というのであれば僕がここで書くなんてことはなかったでしょう。でも、北半球と南半球を間違えるというのは、どのような思考プロセスを経て生み出された失敗なのか、間違えた本人に尋ねてみたいです。


 最後は、これもどこの国でも似たようなことが起きているんでしょうけど。イギリス人の親は、自分たちの子供達には、できれば地方の話し方をして欲しくない。代わりに、子供達の将来のためにクィーンズ・イングリッシュを身につけて欲しいとの調査結果。実はこのニュース、ロンドンの夕刊紙、The Evening Standard紙の小さな囲み記事だったので、リンクは見つからないと思ったら、それこそ結構訛のあるランカシャーとヨークシャーの地方新聞紙で見つけました。リンクは、Yorkshire Evening Postからです。いつまでリンクが有効なのか全くわかりませんので、本文も張っておきます。

http://www.yorkshireeveningpost.co.uk/latest-national-news/Parents-discourage-local-accents.3583162.jp

Parents discourage local accents

More than half of British parents discourage their children from speaking with their local accent for fear of harming their life chances, according to a survey.
The research showed 51% actively discouraged their youngsters from using an accent while 33% encouraged them to speak "the Queen's English".

The firm Combined Insurance asked a sample of more than 2,300 parents about the importance of keeping local accents and how this impacts on the community.

The respondents were asked whether they would encourage their children to speak with their region's local accent and what impact they thought this would have on their child's future.

They also indicated which accent they would most like their child to speak with.

One in five (20%) parents were worried their children might find it harder to get a well-paid job if they spoke in their local accent and more than one in six (17%) thought their child would be perceived to have a lower level of intelligence.

Almost one in 10 (8%) feared local accents would mean they would not be taken seriously in life.

Among the regional findings of the survey were that 27% of parents living in the West Country were worried their child might be teased and bullied in their future job for having a local accent and 26% thought their child might be considered to be not very bright.

And 14% of parents living in the Midlands believe their child might not be taken seriously in life because of their accent.

Across the UK, the Birmingham accent was the one parents would least like their child to use. In Birmingham, only 8% of parents said they would encourage their children to use the local accent.


 一番人気のないバーミンガムの話し方、僕は結構好きです。まるで歌っているような喋り方で、いいと思うんですけどね。でもある方から聞きました。バーミンガム方言は、間が抜けていると思われがちなんだそうです。また、スコットランド出身、第二次世界大戦中は、ヨークシャーで疎開生活を送っていたご高齢の友人ですら、「Such a terrible English」と決め付けていたので、人気がないというのは間違っていないようです。訛のきつい方言だと、外国人の僕にとってはコミュニケイションはとても難しいものになります。でも話し方一つも、その人の歴史なわけですから、恥じ入るべきものではないと思います。

くるみ割り人形by吉田都

2007.12.15
今週末のロンドン、最高気温と最低気温の差が小さいので、まるで一日中、冷蔵庫の中にいるようです。

 初日の12月8日に続き(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-601.html)、吉田さんの2回目にあたる11日の公演もキャンセル。同じ日、ご存知の方も多いとおもいますが、吉田さんにOBE(イギリスの勲章の一つ)が授与されるニュースが発表になりました(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-605.html)。

 話、前後します。正直、吉田さんが捻挫をして、東京での公演をキャンセルしたのとの知らせを聞いた時点で、8日には踊れないだろうと思っていました。8日のチケットは一応取っておいて、吉田さんがなんとしても踊るとしたら、11日ではなくて14日だろうと予想し、12月3日から毎日、ほぼ2時間おきにロイヤル・オペラ・ハウスのウェブでリターンの確認を始めました。そしたら、なんと始めて二日目の5日にかなり高額な席が一席、ぽつんと空いていたのを見つけました。「くるみをこんな高い席で見るなんて」、とナノ・セカンドほど逡巡しましたけど、これを逃したら14日のリターンはこれ以上もうでないだろうと思い購入。それ以降は、一枚たりともでなかったようです。

 13日は、ほぼ2時間おきにロイヤル・オペラ・ハウスのウェブでキャスト変更ページを確認。吉田さんが降板するという情報は出ませんでした。14日は、自分でも何をやってんだろうと思いつつ、1時間おきに確認。降板の知らせはありませんでした。
 ロイヤル・オペラ・ハウスの正面に着くと、初日の8日には一枚も張られていなかった、新制作の「くるみ割り人形」のポスターが張られていました。

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この時点で吉田さんが踊るだろうとの期待は50%を超えましたけど、それでもまだまだ。入り口で偶然一緒になった友人と、「本当に出ますかね?吉田さんが舞台に出るまで信じられない」、とお互い言いつつ、手にした当夜のキャスト表には吉田さんの名前がしっかり印刷されていました。ここで吉田さんが出演することは確信に変わりましたが、それでも心の片隅では、「休憩が終わって第2幕が始まるまでは」、と。
 1週間のうちに、「くるみ割り人形」を2回観ると、特にロイヤル・バレエが現在レパートリーにしているピーター・ライト版の場合、第1幕の踊りからは新鮮味を感じることはないです。代わりに、これまた特にロイヤルならではの舞台に奥行きと彩りを加えるキャラクター・ダンサーの仕種をじっと見ていると、本当に面白いです。特に、Philip Mosleyという方。以前、「マノン」や「リーズの結婚」で、モスリーさんが客席に顔を向けているときは瞬きをしないのを発見しました。今回はどうかなと思ってみていたところ、頻繁ではないにしても瞬きはしていました。でも表情の豊かさは一見の価値あり。僕は、あれだけマイムの表現は豊なのに、ロイヤル・バレエの若いダンサーの皆さんの表情の作り方があまりにも乏しいと思っています。表情の作り方のクラスなんてないのかな、と偶に疑問に思うことも。なので、モスリーさんあたりがもっと表情の作り方を教えれば良いのにと思うのですが。

 そんなこんなで第1幕は無事終了。ただ、1幕では、吉田さんが踊るシュガー・プラム・フェアリーの出番はないので、もやもやした気持ちのまま。休憩中に会った別の知人とも、「本当に踊れるんですかね?」、と。
 第2幕が始まって暫くして、薄い幕の後ろにフェデリコ・ボネッリと一緒に舞台の中央にいたのは、吉田都さんでした。第一印象は、「んー、いつにもましてチークが濃い気がする」。この時点で、捻挫は完全には治癒していないんだろうと感じました。吉田さんに踊る決意をさせたのは、授章の喜び、ロイヤル・バレエのファンの願い、そしてロイヤル・バレエで踊りたいという吉田さん本人の願いがあったのではないかと思います。

 時折、表情が強張っているようにも見えました。また、いつも吉田さんの踊りから感じる重力を感じさせない軽やかさは、この夜はちょっと欠けていたかなとも。ただ、ひとたび舞台に立てば、そこはプロフェッショナル。笑みを絶やすことなく、指先からつま先まで、古典バレエの神髄を観る想いの踊りでした。本人のソロ・ヴァリエイションの、特にスピンで軸がぶれたかなと感じた箇所もありましたが、グラン・パ・ド・ドゥでの圧倒的な美しさから、完璧な踊りからは、たった2週間前に捻挫をされたとは思えませんでした。
 8日に、吉田さんの代役で踊ったアリーナ・コジョカルはもうどうでも良いやなんて言う気は毛頭ないです。吉田さん、コジョカル両者から感じるのは、本人がプリマ・バレリーナとして踊る演目、舞台に相応しい「権威」を身につけていること。「くるみ」の場合、プリマ・バレリーナが踊るのは、後半の10数分間。彼女が踊る前に、たくさんのダンサーがその技術を披露します。仮にプリマ・バレリーナが権威を身につけていない、自分がどう舞台に居るべきかを理解していないまま踊れば、その舞台の主役は他のダンサーに奪われてしまうかもしれません。
 若手ダンサーがどれほど超絶技巧で観客の喝采を得たとしても、吉田さんやコジョカルのように、シュガー・プラム・フェアリーとしてどう踊るべきなのかを理解し、その理解を踊りでみせることが出来れば、舞台が終わって感じるのは、「比類なきシュガー・プラム・フェアリーがいたからこそ、今晩のくるみは素晴らしいものになった」、と。吉田さんは、技術も当然のことながら超一流ですけど、踊ることへのとても深い理解が、彼女のバレエ・ダンサーとしての素晴らしい資質だと思います。
 まるで、刺身のつまのような扱いですが。プリンス役のボネッリも大変素晴らしかったです。自身のソロは8日よりも格段に安定していました。また、吉田さんのサポートがごく自然で。吉田さん一人であの素晴らしい舞台を作り上げることは出来ないわけで。ボネッリの怪我からの復帰、本当に良かったです。

 そうだ。クラッシュ・ルームに大きなクリスマス・トゥリーが飾られていました。雰囲気はいいんですけど、本物ではありませんでした。顔見知りになったバトラーの一人に尋ねたところ、数年前までは本物を飾っていたそうです。ところが、本物だと片付けるのが大変、また毎年樅の木を購入するのが無駄だとかで、プラスティックになったそうです。ちょっと、夢が壊れました。

 年内は、恐らくロイヤル・オペラ・ハウスに行くことはないでしょう。ただ、12月23日に始まる「ペアトリクス・ポター物語」のリターンがあれば。

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吉田都さん、OBE授章

2007.12.12
多くのバレエ関連のブログで書かれているだろうけど、ロイヤル・バレエのプリンシパル・ゲスト・アーティストの吉田都さんに、イギリスの勲章の一つ、OBEが授与されることが発表になった。こういうことはいきなり決まることではないだろうから、昨日の願掛けが利いたわけではないことは判っているけど、嬉しい。素晴らしいニュース。

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http://www.47news.jp/CN/200712/CN2007121201000771.html

吉田都さんに大英帝国勲章 バレエで活躍、18日に授与

 【ロンドン12日共同】英国の文化・メディア・スポーツ省は12日、英バレエ界で長くプリンシパル(最高位)として活躍してきたバレリーナ吉田都さん(42)への大英帝国勲章授与が決まったことを明らかにした。同省での18日の授章式で、パーネル文化・メディア・スポーツ相が授与する。

 吉田さんは英国ロイヤルバレエ団から昨年、人気ダンサー熊川哲也さんが率いる日本のKバレエカンパニーに移籍。今年10月からは同カンパニーのゲスト・プリンシパル。昨年は大みそかのNHK紅白歌合戦の特別審査員を務めたほか、今年秋には紫綬褒章を受章した。

 吉田さんは東京都出身。9歳の時にバレエを始め、1983年に英ロイヤルバレエ学校に留学した。翌年、現在のバーミンガムロイヤルバレエ団に入団し、88年にプリンシパルに昇格。95年にロイヤルバレエ団に移籍した。

 現在、ロイヤルバレエ団の公演「くるみ割り人形」にゲスト・プリンシパルとして出演中の吉田さんは共同通信に「長い間の活動を認めてもらい本当に感激している。身が引き締まる思いで、今後の活動の励みになる」とコメントした。



 ここ最近、ロイヤル・バレエ関連では、シルヴィ・ギエム(CBE)、ジョナサン・コープ(CBE)、モニカ・メイソン監督(OBE)、ダーシー・バッセル(OBE、CBE)、リアン・ベンジャミン(OBE)だけだから、「日本人としては」とわざわざ強調しなくても、吉田さんの功績の素晴らしさがわかるというもの。ただ、エリザベス女王、またはチャールズ皇太子から授与されるわけではないらしいのがちょっと残念。「ロイヤル」バレエのダンサーなんだから、やっぱりロイヤル・ファミリーから授与して欲しい。

 一つ、リンクしたニュースも含めて日本のメディアが間違っているのが、吉田さんのロイヤルでのステイタス。どのニュースも「ゲスト・プリンシパル」としているけど正式タイトルは、「プリンシパル・ゲスト・アーティスト」。これは、ダーシー・バッセルやカルロス・アコスタ、またシルヴィ・ギエムのように、ロイヤル・バレエとは深い絆を保ちつつ、ちょっと距離を置いたダンサーの為の特別なタイトル。ファンの皆さんは、吉田さんがロイヤル・バレエで単なる「ゲスト」ではないことは判っているだろうけど。
 この授章で吉田さんの名前が一層広まるだろうから、来年7月のロイヤル・バレエの日本公演には、吉田さんが踊れる演目が追加される、なんてこともあると期待してもいいのでは。

 14日、まだ、望みを諦めるには早すぎるかな。

鱒の本能、そしてイギリスの新しい風景

2007.12.12


12日のThe Daily Telegraph紙の本紙第3面に大きく掲載されていたのが上の写真。ある鱒の養魚場でどうも産卵の時期になると鱒の数が減ることは気付いていたけど、原因を特定できずにいたそう。ところが、カメラマンがとらえたこの写真から判るのは、養殖池に、川から水を流し込むパイプの流れの川の溯上と勘違いして果敢に飛び込み川に逃れる鱒がたくさんいた、ということ。養殖されていても、野性の本能は失われないんだな。
http://www.telegraph.co.uk/earth/main.jhtml?xml=/earth/2007/12/11/eatrout111.xml


 下の写真は、暫く前にThe Guardian紙のサイトで見つけたもの。解説によると、リヴァプールの海辺に広がる風景とのこと。地球温暖化対策の一環として石油やガスに代わるエネルギーの確保を目指して、最近イギリスでは、こういった風景が特に増えているらしい。特にスコットランド北部や、観光地として人気の高いスカイ島等での建設計画がたくさんあるらしい。景観を守るのかという難しい選択を迫られている地域が増えているそう。
http://www.guardian.co.uk/environment/2007/dec/09/windpower.renewableenergy

 写真を見る限りでは当然判らないけど、この風力発電の施設が発する騒音は我慢できるものではないらしい。


 
 おちは、例によってThe Daily Telegraph紙のカトゥーン、MATTの出番。先週のイギリスの天気は、イギリスの惨めな冬をさらに惨めにする西風、Galeが吹き荒れた。例年、ノルウェーから贈られるトラファルガー広場のクリスマス・トゥリーが傾いたほど。これ以上の説明は不要でしょう。



バレエ・オペラ放映予定(BBC)

2007.12.11
今日、11日の「くるみ割り人形」も怪我の状況が思わしくないのであろう降板した吉田都さんの回復を願って。

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 ロイヤル・オペラ・ハウスのウェブサイトに、年末から元日にかけてBBCで放映されるバレエ・オペラ演目、また関連するドキュメンタリーの予定が掲載されました。見辛いですけど、赤字がバレエ関連、青字がオペラ関連の番組です。

Ballet and opera on TV over Christmas

BBC One, 30 December, 4.20pm: Rolf Harris on Art - Beatrix Potter
Rolf Harris visits the Lake District locations famously featured in Beatrix Potter's books and reinterprets her work in his own inimitable style, exploring her art and legacy. He also goes backstage at the Royal Ballet to meet the dancers and uncover the challenge of bringing such favourite characters as Peter Rabbit and Squirrel Nutkin to life. The following afternoon BBC1 One screens the Royal Ballet's special Christmas production of The Tales of Beatrix Potter


BBC One, 31 December, 1.15pm: The Tales of Beatrix Potter with the Royal Ballet
A screening of the recent performances from the Royal Opera House

Peter Rabbit, Jeremy Fisher and Jemima Puddle-Duck go dancing at the Royal Ballet in a sumptuous production for Christmas. Reviving the classic choreography by Frederick Ashton, and with spectacular costumes and sets, BBC ONE captures the magic of the acclaimed recent Royal Opera House revival for family viewing.


BBC Two, 24 December, 4.30pm: Pavarotti: A Life in Seven Arias
This profile examines the musical career of Pavarotti through the arias with which he was most closely associated, including his debut in La Bohème and his huge success in Donizetti's La fille du régiment, which won him the title 'King of the High Cs'. Archive of him performing his finest roles is accompanied by testimony from many of his closest associates, including José Carreras, Dame Joan Sutherland and Juan Diego Flórez.


BBC Two, Christmas Day, 3,55pm: The Magic of Romeo and Juliet
A documentary about the history of the ballet and the Royal Ballet's production presented by Jonathan Cope

The choreographer Kenneth MacMillan was a master storyteller in dance and in Romeo and Juliet he created a powerful piece of dramatic theatre. Created for the Royal Ballet in 1965 the work was an instant success and is now considered to be the definitive version of Prokofiev's orginal score. Dancer Jonathan Cope goes behind the scenes of the current production at the Royal Opera House and explores what makes this one of the most compelling of all ballets.


BBC Two, Christmas Day, 4.25pm: Romeo and Juliet with the Royal Ballet
A screening of the Royal Ballet's recent star-studded production

Kenneth MacMillan's magnificent interpretation of Shakespeare's enduring tragedy, one of the most popular works in the Royal Ballet repertory, is here brought to life by two of the world's greatest living dancers, Carlos Acosta (Romeo) and Tamara Rojo (Juliet). Prokofiev's music is instantly recognisable and here brought to life by choreography of beauty and touching fluidity, and with sumptuous costumes, lighting and design.


BBC Two: Andrea Bocelli: The Story behind the Voice, Christmas Day, 6.50pm
An intimate documentary about the life of one of the world's most celebrated tenors

Andrea Bocelli, the blind tenor who leapt to stardom in the UK with 'Time to say Goodbye' and Sarah Brightman, has become the most successful classical recording artist of all time. For the first time he reveals his musical and personal journey, talking intimately of his life's experiences including losing his sight as a child.


BBC Two: The Magic of Carmen, Boxing Day, 1.15pm
An introduction to Bizet's masterpiece

Evocative, dramatic and colourful - the opera Carmen is a tale of passion, betrayal and revenge which features some of the most popular music ever written. Antonio Pappano, Music Director of the Royal Opera, introduces us to Francesca Zambello's celebrated production and takes us through the process as the opera moves from the rehearsal room to the stage, where Spanish heat and human passion combine to create a steamy music drama.


BBC Two: Carmen, Boxing Day, 1.45pm
A screening of the recent acclaimed production from the Royal Opera House

Francesca Zambello's dazzling production of Bizet's enduring tale of passion, betrayal and revenge is on a massive scale with a huge international cast, lavish sets and live animals on stage. Full of favourite tunes, the opera is jam-packed with rousing choruses, sexy solos and Spanish dances. In the title role is Anna Caterina Antonacci as the fickle Spanish temptress and Jonas Kaufmann plays Don Jose, the soldier who is driven to murderous jealousy. Music Director Antonio Pappano conducts The Orchestra of the Royal Opera and presents an introductory documentary.


BBC Two: The New Year's Day Concert 2008: Live from Vienna, New Year's Day, 11.15am
The Vienna Philharmonic Orchestra perform the annual celebratory concert of waltzes, polkas, marches, conducted for the first time by George Pretre.

The second half of the concert is live on BBC TWO and the whole concert is broadcast later on BBC FOUR.


BBC4 Four: Darcey Bussell's Grande Finale, Christmas Day, 9.30pm
Three ballets performed by the great ballerina to mark her retirement from Covent Garden

Darcey Bussell is the greatest ballerina of her generation, but earlier this year she bowed out with a series of farewell performances at the Royal Opera House, Covent Garden. Here she presents a triple bill celebrating the work of three of the Royal Ballet's greatest creative figures, Ninette de Valois (Checkmate), Frederick Ashton (Symphonic Variations) and Kenneth MacMillan (Song of the Earth).

Song of the Earth - with Carlos Acosta and Gary Avis dancing alongside Bussell - was shown live on BBC TWO and included some of the emotional scenes of farewell that took place as she took an epic ovation from the crowd and the company as she hung up her Royal Ballet shoes. There is plenty of unseen footage from backstage capturing those poignant moments afresh, presented by the great ballerina herself.


BBC4 Four: Darcey Bussell's Ten Best Ballet Moments, Boxing Day, 9.55pm
A one-hour documentary in which the great ballerina presents the seminal dances in the history of ballet

With plenty of exquisite footage - including Bussell herself with such delights as the 'Dance of the Sugar Plum Fairy' from Tchaikovsky's Nutcracker Suite (her favourite role), and dances from Sleeping Beauty, Giselle, Sylvia, The Mayerling, as well as vintage clips of Fonteyn's and Nureyev's Romeo and Juliet - this is an hour of intelligent, dynamic and informative revelation into the great ballets. Supported by interviews from leading figures from the world of dance, including Matthew Bourne, Deborah Bull and Carlos Acosta, Bussell introduces each clip from a dance studio and demonstrates the steps and technical challenges of some of the featured dances.


BBC4 Four: Dance Britannia, 27 December, 9.00pm
A three-part series on the story of popular dance in Britain in the twentieth century

Using rare and unseen archive material of popular dancing, this three-part series tells the definitive story of popular dance in Britain in the twentieth century.


BBC4 Four: La fille du regiment, 30 December, 7.30pm
A broadcast of the celebrated recent production from the Royal Opera

Dawn French, who played a cameo role in the production, introduces this broadcast of Donizetti's great comic opera La fille du régiment. Staged to extraordinary acclaim at Covent Garden, earlier this year, the flamboyant production stars Natalie Dessay as the orphan Marie found and adopted by a regiment. Tenor Juan Diego Flórez hits the high 'Cs' as Tonio (the virtuosic role which first launched Pavarotti to stardom).


BBC4 Four: The New Year's Day Concert 2008, New Year's Day, 7.10pm
The Vienna Philharmonic Orchestra perform the annual celebratory concert of waltzes, polkas, marches, conducted for the first time by George Pretre.

Second half live on BBC Two. Whole concert later that day on BBC Four


 バレエ番組は、ドキュメンタリーのほうが面白そう。でも、個人的に一番楽しみなのは、12月30日に放映予定のドニゼッティのオペラ、「連隊の娘」。ナタリー・デッセィのジャガイモの皮を剥きながら、また多勢の兵士達に抱え挙げられようが全くぶれない驚異的、同時に人間味溢れるコロラテューラと、ロイヤル・オペラ・ハウスに笑いの洪水を引き起こした彼女の天性のコメディエンヌ振りをまた見ることが出来るなんて、本当に嬉しい。

レッド・ツェッペリン

2007.12.11
世界中で大きく報道されたようだけど、当然、本国のイギリスでも大々的に、今日の新聞各紙がこぞって取り上げた、12月10日のレッド・ツェッペリンの一夜限りの復活コンサート。

http://www.telegraph.co.uk/arts/main.jhtml?xml=/arts/2007/12/11/bmzep111.xml

http://music.guardian.co.uk/rock/livereviews/story/0,,2225612,00.html

 写真はテレグラフのウェブから拝借したもの。ちなみに、ヴィデオにはリンクしていません。



 ドラマーのジョン・ボーナムの急死で、ツェッペリンが活動を休止した1980年ごろは、彼らの熱烈な理解者の渋谷陽一氏のロッキン・オンを愛読していたので名前を知ってはいたけど、キング・クリムゾンやイエス等の英プログレを経て、ポスト・パンクの幾つかのバンドに流れてしまったので思い入れ全くなし。
 ところが、恐らく渋谷氏のラジオ番組で偶然聞いた「ホットドッグ」が気に入ってしまい、そこからデビューにさかのぼった変則ファン。だから、熱心な聞き手ではなかった。でも、レヴューを読んでいると、感情移入が甚だしいのもあるけど、影響力のあるバンドであり、音楽だったことを感じる。
 こういうバンドこそ「伝説」であって欲しいから、このまま復活ツアーになだれこむ、なんてことにならないことを願うばかり。

くるみ割り人形、開幕@ロイヤル・バレエ

2007.12.09
XMAS_Nutcracker_main[1]


12月8日は、ロイヤル・バレエのクリスマス定番演目、サー・ピーター・ライトがプロダクションを手掛けた「くるみ割り人形」の初日でした。今年で3年連続の上演。更に、プリンシパル・ゲスト・アーティストというポジションにもかかわらず、日本人プリマ・バレリーナの吉田都さんがやはり3シーズン連続で初日を飾る予定でした。

 当初は、「いくら吉田さんだからって、3年連続でくるみを観るのはやめておこう」、と思っていました。それに、年内上演の「くるみ」はいつも早々に完売してしまい、先行発売、一般発売の初日を逃すとチケットの購入が難しく、無理する必要もないだろうと思っていました。ところが、ある事情で観ておいたほうがいい状況になり、そうなれば、「そしたら、吉田さんで観たいぞ」、と遅まきながらチケット獲得に乗り出しました。
 覚悟はしていましたが、初日だけでなく、吉田さんが主演する3回の公演はすべて売り切れていました。これが10月下旬だったでしょうか。でも、まだ時間はたっぷりあるから毎日チェックしていれば1枚くらいは出るだろうと期待していました。そうしたところ、リターン・チケット獲得の行動を始めて数日後、完売していた8日の夜公演に、恐らく50枚くらいの空席が一気に表示されていました。席種は多岐に渡る上に、とてもいい席まで。恐らく旅行会社か企業が接待用に押さえていたものがキャンセルになって戻ってきたのであろうと頭の片隅で考えつつも、観やすい上にお手ごろ価格の席を購入することができました。
 こうなれば、後は吉田さんがロンドンに来るだけ。しかも、11月に入って、今シーズンの「くるみ」のために新しく作られたポスターの中心でにっこり微笑んでいるのは、吉田さんによるシュガー・プラム・フェアリー。否が応でも期待は高まりました。

 好事魔多し。今回の場合、僕自身ではなく、吉田さんがこう感じられているかもしれません。どうやら11月27日(もしくは28日)に、練習中に捻挫をしてしまったとのこと。その週末に東京で出演予定だった公演を降板したことまでは友人から聞いていましたが、「8日はどうなる?」。
 12月に入っても、一向にロイヤル・バレエのキャストは変更されず吉田さんのまま。「もしかしたら、驚異的に回復しているのかな」、と期待する半面、一つおかしなことに気付きました。11月30日くらいまでは、ロイヤル・オペラ・ハウスのウェブにアクセスすると、公演が近いから当然ですが吉田さんがにっこり微笑むポスターの画像が目立つ所にありました。ところが、確か12月4日以降は、このポスターをロイヤル・バレエの公演予定に関するページに見いだすことができませんでした。
 そして公演前日の7日、吉田さんの降板が正式に発表になりました。辛い思いをされているのは、ご本人でしょう。とは思いますが、溜息は止まりませんでした。代役は、今のロイヤル・バレエが誇るプリマ・バレリーナの一人、アリーナ・コジョカル。まだ、11日と14日のキャストが変更になるかどうかは発表になっていません。7日に、14日のリターンをゲットできたので、まだ諦めていません。

 氷雨降るなか、ロイヤル・オペラ・ハウスの正面に着いて真っ先に気付いたのは、その日がまさに初日の「くるみ割り人形」のポスターがただの一枚も正面玄関に張られていなかったこと。代わりにあったのは、前夜が最終公演だった「ジュエルズ」。そりゃね、正式団員のアリーナ・コジョカルやマリアネラ・ヌニェスを差し置いてプリンシパル・「ゲスト」・アーティストの吉田さんを新しいポスターに起用したロイヤル側の落胆も理解できますが、仮にこれが、ロイヤル・バレエの吉田さんへの意図的な仕打ちとすれば、ちょっと許せないです。
 本番の舞台以外で一つ面白いと思ったのは、プログラムの表紙。よほど特別な演目、またガラ公演でもない限り、ロイヤル・オペラ・ハウスのプログラムの表紙は赤。それが今回は、公式ポスターの図柄そのものが表紙に使われていて、当然のことながら表紙の真中には吉田さん。これは、特に「ロイヤル・バレエ」の吉田都さんが好きな方には、一生もののアイテムになるのではないかと思います。

 会場で会った知人には、「吉田さんがでないなら、くるみなんて観ない」と言い切ってしまいましたが、いざ幕が上がると、「あぁ、クリスマスなんだ」、としみじみ感じさせてくれるロイヤル・バレエらしい暖かい舞台でした。ダンサーの方ではないんですが、シュタールバウム家の家政婦役をやっている女性が、一昨年、昨年と変わらずに、なんか蟹の足みたいな突起物がついている白い帽子を被って舞台を右往左往しているのを観ていたら、ホッとしました。
 ドロッセルマイヤー役のギャリー・エイヴィスは相変わらずいい演技。「ジュエルズ」でとても美しい腕の動きを見せていたChoe Yuhuiさんの柔らかくて優美な踊りは群舞の中でも一際目立っていました。
 プリンスは、怪我による長いブランクのあとにやっと復帰したフェデリコ・ボネッリ。復帰後初の舞台ということで仕方ないのかもしれませんが、なんてことない跳躍の着地がぶれるなどらしからぬ不安定さがありました。でも、現在のロイヤル・バレエの男性プリンシパルの中では一番プリンス役がはまるボネッリの復帰は、舞台に安定感をもたらしていたように思います。
 コジョカルが吉田さんの代役をやるのって、これで何度目だろうと。前日の7日に「ジュエルズ」最終公演のダイヤモンドを踊ったばかりにもかかわらず、それともダイヤモンドの素晴らしい舞台でまた成長したのかもしれません、コジョカルの踊りは輝いていました。僕は、最近、コジョカルって実は古典バレエにはむいていないダンサーなのではないか、と思うことがあります。上手く表現できませんが、彼女のダンサーとしての貪欲さが古典バレエ以外の振り付けに向いているのではないかと思えてしまう舞台を、何度か観たからかもしれません。しかしながら、この夜のコジョカルは、とても華のあるシュガー・プラム・フェアリーでした。「くるみ」のグラン・バ・ド・ドゥって本っ当に短いんですが、彼女の比類ない技術、天性の存在感は、「吉田さんの降板は残念だったけど、いい舞台を観ることが出来てよかった」、と心の底から思えるほど素晴らしいものでした。

 12月公演分の「くるみ割り人形」はどの日もほぼ完売ですが、1月分は空席がまだかなりあります。1月上旬にロンドンに来られる予定がある方は、ロイヤル・オペラ・ハウスを経験してみては如何でしょう。

鳥だ、飛行機だ、いやおおこうもりだ!

2007.12.09
8年居ても、この時季のロンドン、一番嫌いです。

 昨日の土曜日、8日にThe Daily Telegraph紙のサイトで見つけた写真、数秒間、何が写っているのか全く理解できませんでした。



キャプションによると、オーストラリアの「Flying Fox」とのこと。まじまじと見つめて、やっとこうもりの一種であろうことは判りましたが、羽根を広げたその大きさと、コンピューター・グラフィックで製作された映画のワンシーンのような非現実的な物体、もしくは僕の日常生活には存在しないであろう光景から、暫くは目が離せませんでした。

 すぐに調べればいいものを、昨日は、ロイヤル・バレエの「くるみ割り人形」の初日のことを四六時中考えていて、和名を調べる気がおきませんでした。で、今朝、起きた直後の頭に浮かんだのは、「あれは、きくがしらおおこうもりに違いない」と。小学生の頃、図鑑少年だったので、この名前を覚えたいただけましですが、ググッてみたところ、本物の菊頭こうもりはかなり小型であると。ちなみに僕の頭の中では、写真のこうもりの顔から「黄狗頭」という漢字が浮かんでいました。
 漸く、英和辞書をきちんとひいた所、「Flying Foxはオーストラリアに生息するおおこうもりの総称」であるとのこと。グーグルは、きちんとした情報を得ていないと、わりと役に立たないことを知りました。余談ですが、グーグルの創設者の一人が、ヴァージン・グループの総帥、リチャード・ブランソンが所有するカリブ海の島を借り切って、結婚式を挙げたそうです。

 「おおこうもり、オーストラリア」といれてググッてみたところ、以下の素晴らしいサイトをみつけました。サイトを管理されている方には、リンクの許可をえています。
http://www2r.biglobe.ne.jp/~fruitbat/shashinkan/index.htm
写真館

http://www2r.biglobe.ne.jp/~fruitbat/index.htm
メイン・サイト

 なんというか、大こうもりもここまで愛されていれば、嬉しいでしょうね。それと、僕の心のふるさと、沖縄にもおおこうもりが生息していることを初めて知りました。おおこうもりは、どうやら果物を食べているようで、人間に危害を与えるたぐいのこうもりではないようです。が、目の前にいきなり現れたら、吃驚するでしょうね。

 以下のものは、以前紹介したanimaru.co.ukのコレクションから。



情報は、こちらをどうぞ。
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-571.html

ロイヤル・オペラ・ハウスの新しい試み

2007.12.08
映像製作会社を買収して、自分たちで、ロイヤル・オペラ・ハウスでの上演されるバレエ、オペラのDVD制作に乗り出すなど、最近目立って新しい分野に積極的な感じのROH。
 最近、年末の「くるみ」と「ベアトリクス・ポター物語」のリターンを求めて毎日毎日、ROHのサイトを見ていて気付いたのは、「YouTube」のサイン。なんだろうと思ってクリックしてみた所、ロイヤル・オペラ・ハウスでの演目についての映像を、ロイヤル・オペラ・ハウスとして公式に投稿し始めたらしい。
 プレス・リリースが今のところだされていないようなので、どのような経緯があってこの試みをはじめたのかは判らない。まぁ、宣伝と言うこともあるだろう。でも、ファンとしては嬉しい。


http://info.royaloperahouse.org/Education/Index.cfm?ccs=1087&cs=2944
これは、ロイヤル・オペラ・ハウスのウェブ内にある、ヴィデオのセクション。吉田都さんがスワニルダを踊る「コッペリア」や、ベートーヴェンの「フィデリオ」に主演したカリタ・マッティラのロング・インタヴュー、クリストファー・ウィールドンへの「DGV」創作についてのインタヴュー。インタヴュー映像は、ブリティッシュ・イングリッシュを学びたい人には、いい教材になるかな。

http://uk.youtube.com/royaloperahouse
こちらがYouTube。ロイヤル・バレエの常任振付家、ウェイン・マックグレガーへのインタヴュー、ROH2の「ピノッキオ(タケット作)」の舞台のヴィデオが投稿されている。ピノッキオは2年ぶりの上演が始まる。今ヴィデオを流さずとも、チケットはほぼ完売状態。

ロンドン治安情報

2007.12.07
以下のものは、イギリスにある日本総領事館から届いたものです。ブログに転載していいのかどうかは判りませんし、内容はイギリスで暮らしている日本人向けのもの。でも、年末年始、日本からロンドンに来られる方は結構いるだろうし、ロンドンで今どんなことが起きているかを知っておくのもいいことだと思います。

 ロンドンだけでなく、イギリス各地で凶悪犯罪が起きていることは、これまでも何度か書いて来ましたが、特にロンドンは、安全ではないと感じています。ポンドはいまだに高いし、鬱になることでしか乗り越えられないと思われるほど天気が悲惨な今の時季のロンドンに来られる方が、仮に皆さんの周りにいらっしゃるようでしたら、「余計な所には行かない」、「冒険をしようなどとは思わない」、且つ「旅の恥はかきすては、命にかかわることもある」というのが今のロンドンである、と。
 総領事館からのお知らせにある、St Johns Woodは、ロンドン中心部の地図で言うと、リージェンツ・パークの北に位置する、高級住宅街。日本人だけでなく、アメリカ人駐在員、裕福なジュウイッシュの皆さんが好んで住んでいるエリアです。これまで、比較的安全なエリアとのイメージがあったSt Johns Woodで、このような事件が起きていると言う事実が、ロンドンの治安がどれだけ悪化しているかを示しているように思います。
 もう一つ、特にここ最近強く感じていることがあります。それは「英語が通じない」、という事実。万が一事件に巻きこまれてしまったとき、周りに助けを求めようとしても、「日本人の英語が通じない」、ということではなくて、単純に「英語が通じない」ことが多々ある、ということも知っておいたほうがいいと思います。例えば、地下鉄で隣りに座った人がどこの国の人なんて判りませんし、皆さん首に、「英語、話せます」なんてカードをぶら下げているわけではないですから。



Subject: 日本総領事館からのお知らせ

※このメールは在留届をご提出いただいた方にお送りしています。

日本総領事館からのお知らせ

先般、冬場の安全対策につきお知らせしたところですが、ロンドンに在留する日本人の方が被害者となる路上強盗事件が、11月に4件発生しました。被害者の方全員が何らかの怪我をされており、救急車にて搬送された方もおりました。皆様も十分注意されていることとは存じますが、再度注意喚起をさせて頂きます。

1.報告された被害に関する情報は下記のとおりですが、事件の特徴は次のとおりです。
(1)2人組みによる犯行である。
(2)背後から襲われるケースが多い。
(3)持っている鞄が狙われているようである。
(4)職場からの帰宅時、自宅の近く(住宅街)を歩行中に襲われている。
(5)背後に注意を払って歩行していた方でも、被害に遭った事案があった。

事件1
場所:Hendon Central地区の路上
  時間:午後10時ごろ
  状況:背後から2人組みに襲われる。
事件2
  場所:St. John’s Wood地区の路上
  時間:午後8時ごろ
  状況:背後から2人組みに襲われる。
事件3
  場所:St. John’s Wood地区の路上
  時間:午後7時ごろ
  状況:2人組みに襲われる。
事件4
  場所:West End地区の路上
  時間:午後11時ごろ
  状況:2人組に静かな場所に連れ込まれ襲われる。

2.被害予防方策
 上記のような路上強盗予防策として在留邦人の皆様におかれましては、以下の諸点を念頭に引き続き御注意して頂きますようお願いします。
(1)「ロンドンは比較的安全だ」、「まず自分が被害に遭うことはない」という先入観は持たないようにする。
(2)外出時には、常に注意を払うとともに、家族、近隣、職場等でお互いに話し合うなどして、情報を共有し、各種被害に遭わないよう心掛ける。
(3)夜間帰宅する時は、近道を考えるより、まず安全と思われるコースを選択する。
(4)夜間、あるいは人通りのない道を歩くときは、常に前後に注意を払い、肩越しに振り向いて、ついてくる者がいないかを確認し、怪しい者が後方にいる場合には可能であれば速やかに人目につく場所に移動するようにする。また、高価な携帯端末やアクセサリー等をむやみに人目にさらさない。
(5)危険が感じられる場合、駅等から自宅までは、安全な方法で出迎えに来て貰う、またはタクシー等安全な交通手段を利用するようにする。
(6)防犯アラーム等を携帯する。
(7)新聞、自治体や警察のウェブサイト等を参考にして、地域の犯罪情勢等について常に関心を払う等被害に遭わぬよう細心の注意を払う。また、不審者がたむろする状況等が見受けられる場合は最寄りの警察に情報を提供することも防犯につながる。
3.当館としても当地警察等に連絡しつつ、情報収集に努め、必要に応じパトロールの強化等につき要請していきたいと思いますので、在留邦人の方で、犯罪被害に遭われた場合には、最寄の警察に届出て頂くとともに、差し支えない範囲で当館に報告いただければ、幸いです。報告のあった情報は、個人が特定できない形で、在留邦人の方への注意喚起に利用させていただきます。



 ロンドンに限らずですが、旅行を楽しいものにしたいのであれば、事前の治安情報の確認は、テロが横行する21世紀には、必須でしょう。
 言わずもがなですが、「ロンドンのここは安全でしょうか?」という質問には、返答しません。他にいくらでも情報を得る手段はあるでしょうから。



白熊のクヌート、1歳に

2007.12.04
The Daily Telegraph紙のウェブに、2006年12月にドイツのベルリン物園で生まれた白熊の子供、Knutが1歳になると言うことで写真が掲載されていた。



これは、2007年3月頃のもの。



 そしてこれは、10月。見た目はすっかり成獣。

 人間だって、成長と共に顔つき、体型が変わっていくけど、クヌートの変貌ぶりは凄い。動物園で生まれたのだから、自然に戻されることはないだろうと想像するけど、クヌートは自分が白熊であることを知っているのだろうか?

イギリス人よ、手を洗おう

2007.12.03
ロンドン、というかイギリスは冬至に向けて、天気はとてつもなくミゼラブルです。

 雨が降ろうが、雪が降ろうが、いくらロンドンが濡れそぼってはいても冬は冬。風邪、そしてインフルエンザの季節です。2006年の10月に久しぶりに罹ったインフルエンザに懲りて、今年は早々に9月から風邪予防をはじめました。ビタミンCのタブレット、数種類のミネラル・サプルメント、そしてどれだけ忙しくても、最低6時間の睡眠時間の確保。何とか乗り切れるかと思い始めた矢先。
 アルバイト先に、とても繊細なスロヴァキア人の男性社員がいます。物腰も低く、誰からも好かれていますが、僕からすると、僕とは違った次元でとてもお節介。更に、どうしてだか皆目見当つきませんが、会社を休みたがらない。そんな彼が、インフルエンザに罹り休んだのは先週の月曜日。ところが翌火曜日には出社してきました。周りは「帰ったほうがいいよ」と勧めているにもかかわらず、「いやー、やることあるから」、と。
 「インフルエンザに罹っている奴が役に立つか」、と心の中で毒づきつつ、あくる水曜日にオックスフォードで通訳の仕事があったので、彼には近づかないようにしていました。ところがこの愚かな青年は、歩き回るんですよ、用もないのに。しかも「ケホー、ケホー」と結核に罹った文学青年が大正時代のサナトリウムでしたであろうかそけき咳をしながら。切れそうになる心を抑えて、「咳するとき、手で口を確実に覆うようにしてくれないかな」、と頼んだ所、かえってきた返事は、「どうして?」。暴論ですけど、スロヴァキアには公衆衛生の概念が存在しないのだろう、という結論に達しました。

 以上の例を極端に思われる方もいると思いますが、ロンドンでは、咳やくしゃみをする時に、日本人のように口を覆うという光景を見ることはほぼ皆無と言っても過言ではありません。中には、一応口に手を当てている人もいますが、飛沫が飛び散るのを防ぐ類のものではないです。
 インフルエンザにはならなかったものの、見事に喉に来てしまったので、ある友人に愚痴った所、NHSが風邪・インフルエンザ予防を啓蒙するポスターを作ったということを教えてもらいました。以下のリンク・ページにあるPDFファイルの一つが、啓蒙活動に使われるポスターです。一応、この「Catch it, bin it, kill it」のキャンペーンは2008年の春まで続くようですが、いつまでリンクが有効なのかは判りませんので、興味のある方はお早めに。
http://www.dh.gov.uk/en/Publicationsandstatistics/Publications/PublicationsPolicyAndGuidance/DH_080839

Catch it, bin it, kill it

In a new campaign, the Department of Health is highlighting how important good hygiene is in preventing the spread of germs.

Annoyingly, no-one can avoid getting a cold. It's something that happens to all of us at least a few times in our lives.

But you can do several things to lower your chances of catching a cold or the flu. Plus, if you do catch something, you could help to prevent passing it to all of your friends and family. They'll certainly thank you for it!

You may not know that germs can live for several hours after they've left your mouth or nose. It's a grim fact, but germs are much tougher than we give them credit for. But don't worry, there are three simple steps to stop the spread of flu and cold germs this winter:

· Catch it - catch your cough or sneeze in a tissue.
· Bin it - get rid of your tissue in a bin or toilet as soon as possible.
· Kill it - clean your hands straight away to stop germs transferring on to anything, or anyone, else.

Washing your hands after sneezing and coughing will kill any germs that may be hanging around


Bug busting

To prepare yourself for bug-busting, always carry a tissue or two and have them ready to hand when you feel a tickle. Cover your nose and mouth completely with the tissue to make sure no germs can get out and waft into the air where they can be caught.

And always throw the used tissue away afterwards. Washing your hands after sneezing and coughing will also kill any germs that may be hanging around.

You can also prevent spreading germs by using your own plates, cups and cutlery, not sharing with other people. You should also always use your own face cloth and towels. Don't share these with anyone else either as germs love to breed in warm moist places.

Your body is much better able at preventing illness if you have a strong immune system. Give yours a boost by eating plenty of fruits, vegetables and wholegrain foods. Quit smoking and avoid drinking alcohol for a while until you're feeling better.

You should also get some exercise, as this really does wonders for your well-being. Just thirty minutes a day can help enhance your energy levels and combat colds and flu. Try to get plenty of rest as well so your body has time to get well and return to its healthy self.

Give your immune system a boost by eating plenty of fruits, vegetables and wholegrain foods


 日本人の感覚からすると、この内容、10年位前のものといわれても納得してしまうほどではないかと思います。それほど、「予防」という意識はイギリスでは一般には広まっていない、というのが現実でないかと思います。更に、今年の夏、院内感染で多くの患者が死亡したとのニュースが大きく報道されたあとひっそりと報道されたあるニュースには、呆れて笑うしかなかったです。何かと言うと、NHSで働く医師、看護婦に手洗いの大切さを説き、習慣を徹底させる為に、わざわざアメリカから公衆衛生の専門家を招聘したそうです。それって、イギリスには公衆衛生という学問がない、という恥を世界に晒してしまったのではないかと思います。
とりあえず、NHSはこの標語とポスターの出来に自信を持っているようですから、イギリスの公衆衛生のレヴェルが向上することを、1ミリくらい期待しています。皆さんも職場、ご家庭で使ってみては如何でしょうか。

 添付の写真は、The Guardian紙で見つけたものです。ロンドンのピムリコにある、テイト・プリテンに飾られた、今年のクリスマス・トゥリーです。今年で20回目とのことですが、芸術家に依頼し、飾りつけのテーマは毎年違うようです。



ロイヤル・バレエのジュエルズ

2007.12.02
11月23日、ロイヤル・バレエはレパートリーに新しい演目を加えました。作品は、ジョージ・バランシーン振付による「ジュエルズ」。1967年にニュー・ヨーク・シティ・バレエ団で初演されたもので、三つのパートからなります。順に「エメラルド」、「ルビー」、そして「ダイヤモンド」。この作品が生まれた経緯はかなり有名なようです。ニュー・ヨークの五番街にある、高級宝飾ブランド、Van Cleef & Arpelsのウィンドウで見たそれぞれの宝石に刺激を受けて創ったものとのこと。
 更に、それぞれの作品は、エメラルドはパリを、ルビーはニュー・ヨーク、そしてダイヤモンドは帝政ロシアのセント・ピーターズバーグをモティーフにしています。エメラルドは、フォーレ作曲のペリヤスとメリザンド、シャイロックの音楽にのって19世紀パリのロマンティシズムを(新聞記事からの受け売りです)醸し出す。ルビーは、ストラヴィンスキー作曲の「カップリッチョ」のテンポの速い音楽にあわせてニュー・ヨークの摩天楼を描く。そしてチャイコフスキーの交響曲3番からの音楽に合わせて紡がれるダイヤモンドは、バランシーンによる古典バレエへのオマージュ、というかんじでしょう。

 それぞれのパートについての感想の前に、周辺情報も面白かろうと思うので。この作品、春先にプログラムが発表になった時から、是非観てみたいと思っていましたが、カウンセリングの勉強のことなどで秋の予定が考えられなかったので、先行予約は諦めました。それと、「ロイヤル・バレエのファンは保守的で、新しいレパートリーには飛びつかないだろうから、直前でも買えるだろう」、と呑気に構えていました。
 ところが、やはりどうしても観たくなって10月初旬にロイヤル・オペラ・ハウスのウェブでチケットの売れ行き状況を確認したところ、初日だけでなく、ファースト・キャストの日はほぼ完売状態。けっこう残っていたセカンド・キャストのほうも、11月に入った途端に、残っていた席があっという間に売れてしまう状況。幾つかの理由が考えられます。まず、ロイヤル・バレエがこの「ジュエルズ」の三部作を上演するのが初めて。ここ数シーズン、バランシーンを精力的に取り上げているロイヤル・バレエの成果を知るファンの期待が高かった。そして、これが最も納得できる理由だと思いますが、企業による買占め。
 殆どリターンを諦めてはいたのですが、毎日毎日、ロイヤルのウェブを何回もチェックしていたおかげで、自分へのプレゼントということで、初日の23日は上演の4日前に、30日の分は前日にリターンを購入することができました。

 今回の「ジュエルズ」上演に、ロイヤル・バレエは最強のスポンサーを獲得しました。それは、この「ジュエルズ」が生み出されるきっかけとなったVan Cleef & Arpels(と、もう一つは金持ちしか口座が開けないらしい、さらにロイヤル・オペラ・ハウスのメイン・バンクのCoutts)。今回の上演にあわせたのかどうかは知りませんが、Vanは新しいコレクションを、「ジュエルズ」の初日でもあった11月23日に発売したそうです。その名は「Ballet Precieux」。そのデザインをあしらった特製の扇子を、入り口でストラップレスの黒のミニドレスを着たお姉さん達が配っていました。最初、女性だけかなと思っていたのですが、お姉さんの一人に「僕も貰っていいのかな?」、と尋ねた所、問題なくいただけたので、そのあと家族へのクリスマス・プレゼントとしてさらに数本頂きました。
 終演後には、あの夜はとても寒かったにもかかわらず、同じお姉さん達は、ファイナンシャル・タイムズの本紙で作った紙のミニドレスをまとって、FTの付録雑誌として有名な「金を使え(意訳)」を配っていました。その真中の特集写真は、Vanの宝石を身につけたヤナウスキー、アコスタ、ボネッリ(怪我で降板)等のポートレイト。特に、ヤナウスキー、アコスタ、ロホの写真は綺麗です。
 23日は、終演後に、ダンサー達とのディナーつきという、ファンド・レイジングのパーティーつきチケットが出回っていたので、イヴニング・ドレスとタキシードのカップルの方々がかなりいました。このパーティーが、どうやらロイヤル・オペラ・ハウス側の主催のようだ、ということを知ったのは30日に会場に行ってから。
 30日にオペラ・ハウスに行くと、23日以上にイヴニング・ドレスに身を包んだ方がたくさんいて、またドレスの豪華さは23日を上回っていました。更に、Crush Roomは貸切のカクテル・パーティー。顔見知りの係員に尋ねたところ、ファースト・キャストの二日目にあたる30日に、スポンサーのVan Cleef & Arpelsは彼らの上得意客を招待したようです。チケットが本当に取りづらかったらしく、初日にはわざわざ日本から観に来たのかな、という人はあまり見かけなかったのですが、この日、興味を惹かれる日本人のカップルを見かけました。
 女性は、60歳を少し超えたくらいのマダム。その方が、ショールを留めているブローチの位置を直そうとした所、傍らにいた日本人男性(30代後半)がかいがいしく直してあげていました。日本のVanが招待したマダムとその世話役、といった所じゃないかと想像しました。
 この30日、もう一つ何が凄かったかというと、Van Cleef & Arpelsが得意客をもてなすやり方のレヴェルの突き抜け方。二つ目の「ルビー」が終わって休憩中に外に出ると、オペラ・ハウスの正面には、大きなトラックが2台とまっていました。トラックの横に読めた文字は、「最高級家具のレンタル」。想像ですが、終演後の顧客へ饗するディナーの為にわざわざ、たった一夜それも数時間だけ、家具をロイヤル・オペラ・ハウスに持ち込んだようです。ロイヤル・オペラ・ハウスの調度品だっていいものを揃えているんですけど、彼らの基準には達しなかった、といことでしょうか。

 やっと作品に。ちなみに、熱心なバレエ・ファンの皆さんの意見によると、ロイヤル・バレエの「バランシーン」は、本来のバランシーンのそれではない、というのが大勢を占めているようです。僕自身は、ロイヤル以外でバランシーンを観たことがないので、比較のしようがありません。
 最初の作品、エメラルドのファースト・キャストは、タマラ・ロホ、リアン・ベンジャミン、エドワード・ワトソン、イヴァン・プトロフのプリンシパル・ダンサーの皆さん。正直な所、振付自体は、おっとりした感じ、且つ超絶技巧はほぼなし、というものでした。言い換えれば、ダンサーの技量が素のまま観客の前に提示されるであろう、ダンサーにとってはかなり難しいパートだったかもしれません。ロホをバランシーンで観たのは、恐らく「シンフォニー・イン・C」の第4パートのみ。このパートはテンポが速く、テクニックを誇るロホは大変見応えがあったように記憶しています。
 なので、このどちらかと言えばスロー・テンポで進む「エメラルド」は彼女にはあわないのではないかと思いました。ところが、ロホにしては珍しく、「タマラ・ロホ」という性格を全く舞台上に持ち込むことなく、振り付けが要求する美しく洗練された動きを、一人のプリンシパル・ダンサーとして忠実にみせていました。ロホの実力を改めて目の当たりにした、という感じです。また、カンパニー(恐らく)最高齢のプリンシパル、ベンジャミンは「至宝と言う言葉はこういうときに使うべきだな」と思わせる、なんと言うか幽玄の美しさでした。ワトソンがロホとパートナーを組んだことがあるかどうかは全く記憶にありませんが、プリンシパルの名に相応しい手堅いサポート振りで感心したことも付け加えておきます。

 初日にルビーを観終わってダンサーの構成から思い浮かんだのは、同じくバランシーンの「バレエ・インペリアル」。メインのカップルがいて、他にコール・ドを率いる女性ダンサーが居る、というものです。後述のダイヤモンドでも感じたことですが、この「ジュエルズ」自体、バランシーンの過去の振付けから優れた所を集めた集大成の趣が有るのでは、と思いました。
 ルビーのメイン・カップルはサラ・ラムとカルロス・アコスタ。コール・ドを率いるのは、「バレエ・インペリアル」でも同じポジションだった、セナイダ・ヤナウスキー。3人の技量が拮抗していて見応えがあった上に、もの凄い踊りをしているにもかかわらず、舞台にいる全てのダンサーが笑顔を絶やさない舞台が放つ力はとてつもなく強力でした。
 とりわけ、ラムとヤナウスキーの踊りは、「股関節平気なのかな」、と余計な心配を思わずしてしまうほど。特にヤナウスキーはその長身もあってか、コール・ドを従えて踊る時は、他のダンサーが彼女の勢いでなぎ倒されてしまうのではないかというくらいの迫力で舞台を支配していました。
 振り付けで一つ面白かったのは、スキップやジョギングをしているようなシーン。これは主にアコスタはじめ、男性ダンサーがしていました。このシーンを観て思い出したのが、今年の2月、アメリカン・バレエ・シアターがサドラーズ・ウェルズで披露したトワイラ・サープの「In the upper room」。アメリカにはアメリカの、バレエ振り付けの系譜があるんだろうな、と。

 最後のダイヤモンドは、古典バレエと言っても差し支えないくらい、バレエの美を堪能させてくれるものでした。ファースト・キャストは、アリーナ・コジョカル、彼女のパートナーは、ファースト・ソロイストのルパート・ペニファザーでした。プログラム発表当初、コジョカルのパートナーはプリンシパルのフェデリコ・ボネッリでしたが、怪我で降板。
 まず、ネガティヴなことを書くと、二人の身長差がありすぎて、見た目の調和という点が今ひとつという感じでした。また、初日は、コジョカルの悪い癖、踵を落としてしまうシーンが2回ほどあって、ちょっと心配しました。が、30日は完璧な踊りでした。もう一つ付け加えると、衣装の色。オフ・クリーム・ホワイトを基調にしたものでしたが、見た目や作品の見せ方を考えると、プラチナ・ホワイトのほうがよかったのではないかと思います。
 ペニファザーは、おそらく精進したのでしょう、体がかなり絞られていました。技術的には、アコスタやボネッリにはまだまだ及びませんが、ダイヤモンドの中盤、体力勝負の回転技の連続のシーンでは、思わず感心するほどの出来。一つ思ったことがあります。ロイヤル・バレエには、男性の素晴らしい古典バレエ・ダンサーって居たことがあるのかな、と。僕がロイヤル・バレエにはまったのはロンドンに来てからですから、ほんの数年。この範囲では、衆目の意見が一致する古典バレエと言えばロイヤル・バレエにはこのダンサーがいる、という男性プリンシパルって思い浮かばないです。
 30日のコジョカルの踊りには、何一つ文句はありません。先ほど書いた、中盤の回転技合戦のようなシーンでは、彼女のチュチュから光が零れ落ちているような錯覚を覚えるほど、輝いていました。できれば、ロイヤル・バレエの歴史を彩ってきた他の女性ダンサーでも観てみたいものです。

 写真は、The Guardian紙のウェブで見つけた、リハーサル写真です。中に写っている、赤のスウェットを着ている派手な女性は、バランシーンの振り付けを世界中のバレエ・カンパニーに指導している方。



初日は、この方をはじめ、他に二人の女性がカーテン・コールに応えたのですが、3人とも会場がどよめくほどのミニスカートにピンヒールで颯爽と現れ、ダンサー以上に注目を集めていたのは、面白かったです。

http://www.guardian.co.uk/arts/gallery/2007/nov/22/theatre.dance?lightbox=1

 それと、バレエがらみで。「バレエ・リュス」の映画の日本公開が決まったそうです。これ、ロンドンで観たとき、ロイヤル・バレエのコール・ドのダンサー達がたくさん見に来ていました。映画自体、バレエの歴史のみならず、普段知ることのない世界の歴史の側面を知ることが出来て、バレエ・ファンならずとも楽しめると思います。

http://www.balletsrusses.net

20億円(£900万)の卵、食べられません

2007.12.01
11月28日に、ロンドンのクリスティーズで、ロスチャイルド家が所有していた「ファベルジェの卵」が、900万ポンド(約20億円)で、落札された。購入者の詳細は明らかになっていないようだけど、オイル、または天然ガスの利権で潤っている、ロシア・リッチの一人だろうと想像する。
 


http://www.guardian.co.uk/international/story/0,,2218445,00.html



 写真はテレグラフから、記事はガーディアン。「ファベルジェの卵」の名前を知ったのはずっと昔だけど、どんな由来、歴史が有るのかは全く知らない。今回の記事で判ったのは、ファベルジェは生涯約50個の「卵」を創作した。主にロシア皇帝のためにだったそうだけど、今回のロスチャイルド家のものを含めて12個だけ外部の為に作った物があるとのこと。
 自分が「壊し屋」ということを充分に理解しているから、こういったものを所有したい、という欲望はない。それに、卵はやっぱり食べたいし。

 世界経済を席巻するBRIC(ゴールドマンサックスのあるアナリストが命名したとか)の一つ、ロシア・マネーは美術市場にもかなり幅を利かせている。素晴らしい美術品がロシアに集められて、人々が観る機会が減るなんて状況にならないことを祈るばかり。
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