LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
Home未分類 | Dance | Sylvie Guillem | Royal Ballet | Royal Opera | Counselling | Sightseeing | Overseas Travel | Life in London(Good) | Life in London(Bad) | Japan (Nihon) | Bartoli | Royal Families | British English | Gardens | Songs | Psychology | Babysitting | Politics | Multiculture | Society | Writing Jobs | About this blog | Opera Ballet | News | Arts | Food | 07/Jul/2005 | Job Hunting | Written In English | Life in London (so so) | Speak to myself | Photo(s) of the day | The Daily Telegraph | The Guardian | BBC | Other sources | BrokenBritain | Frog/ Kaeru | Theatre | Books | 11Mar11 | Stage | Stamps | Transport | Summer London 2012 | Weather | Okinawa | War is crime | Christoph Prégardien | Cats | Referendum 23rd June | Brexit | Mental Health 

2008年06月の記事一覧

11歳で振り分けられた人生:11Plus

2008.06.29
今週の金曜日、6月27日のThe Daily Telegraph紙に、面白い特集記事がありました。

http://www.telegraph.co.uk/portal/main.jhtml?xml=/portal/2008/06/27/fteleven127.xml
Are you brave enough to take the 11-plus?

 タイトルを読んでも、何一つ思い浮かびませんでした。本文を読み始めて、過去にイギリスで子供達が受けなければならないテストがあり、その名称が「11Plus」であることがわかりました。下に過去の問題と答のペイジのリンクを貼り付けてありますが、幾つか、月曜日の業務前に頭の体操でどうぞ。

General English
1. Black is the opposite of white; long is the opposite of short. Now write down the opposites of these words: (a) Wide (b) Bright (c) Unkind (d) Eatable (e) Visible (f) Evil (g) Quickly (h) Smooth (i) Cheap (j) Sour

Arithmetic
8. Three cases contain 789 tins of sardines. In one there are 267 tins and in another 63 more than in the first. How many tins does the third case contain?

General intelligence
6. The leader of a Guide Patrol is named Mary Jenkins; so her Surname is Jenkins, her Christian name is Mary, and her initials are M.J. There are 6 other girls in her Patrol; each has 2 initials.

Surnames: Brown, Smith, Evans, Clark, Jones.
Christian names: Molly, Celia, Gwen, Ruth, Sally.

Two girls have Surname and Christian names beginning with the same letter; two others are named Ruth. One of the Twins has the same initials as the leader, and the other has the same Christian name as Evans.
Write down each girl’s full name


http://www.telegraph.co.uk/portal/main.jhtml?xml=/portal/2008/06/27/fteleven227.xml
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-814.html
Pens down, no cheating: you may now start your own 11-plus exam

http://www.telegraph.co.uk/portal/main.jhtml?xml=/portal/2008/06/27/fteleven327.xml
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-815.html
The Answers


 教育システムなんて国によってばらばらであろうし、現在「ゆとり教育」からの揺り戻しが起きているらしい日本を例にするまでもなく、イギリスでも政権が変わるたびに、ゆとりだ、いやもっと厳しくすべきだとの議論が終ることがないようです。今回の記事、そして友人たちに聞いた話から推察するに、結局、繰り返される教育改革の犠牲になるのはまずは子供達、そして教師や親であって政治家にとっては自分の「議席」を守る為の手段でしかないんだな、と改めて思います。僕は、教育分野には全くかかわりがないので、的外れなのかもしれませんが。

 イギリスの教育システムというのは、興味がないと本当にわけ判らないです。例えば、Public Schoolは字面からすると「公立学校」と思ってしまいますが、イギリスでは、これは「私立学校」。なぜなら、高額な学費さえ払えれば、誰にでも開かれている(open to publi)からとは、友人の弁。
 で、「11Plus」は、1965年くらいまで実施されていたテストで、プライマリー・スクール(小学校)に通っていた子供達が11歳になると受けさせられていたそうです。このテストで優秀な成績を修めた子供達には、質の高い教育を受けるとことができるGrammer School進学への道が開かれ、成績が悪いと職業訓練的な性格付けだった、Secondary Modern Schoolに行くしかなかったそうです。
 問題をざっと見てもらえればお判りになると思いますが、いたって平易な問題から、11歳の子供にはちょっと引っ掛けがきついのではないかと思われるものまであります。11歳では知的成熟の程度などばらばらだろうし、このテスト一回きりでその後の人生が決められてしまっては、文句の一つは言いたくなるでしょう。廃止になった理由は、たかだか11歳で将来の人生設計図が力づくで引かれてしまう不公平さが問題になったようです。日本でいえば高度成長期時代、当然の成り行きだったのではないかと思います。
 この「11Plus」のことを尋ねた友人の一人が、面白い話を聞かせてくれました。彼女の亡くなられたご主人(仮に、Wさんとします)は、ウェールズの炭鉱の街の出身。平たく言うと、貧しい地域だったそうです。親からすれば、「11Plus」で優秀な成績を収めて、Grammer School(当時、学費は無料)で勉強して辛くない生活を送って欲しいと思ったことでしょう。勉強に身が入らないWさんは、ある日、父親が働く炭鉱の中に連れて行かれたそうです。そして彼の父親は、「見ろ、11Plusに受かればおまえはここに来なくても済むだろう。しかし、失敗すれば、おまえは一生をここで過ごすことになるんだぞ」、と諭したとか。多少の脚色は入っていると思いますが、説得力が有るなと。

 今、イギリスでは高等教育を受けるための試験、Aレヴェル試験をめぐって全く終わりの見えない議論が、延々と続いています。日本と似たようなもので、試験内容の簡素化・軽減化、それに伴う著しい学力不足とみせかけだけの成績優秀者の急増。イギリスの大学での学部教育(undergraduate)は日本より1年少ない3年が基本ですが、最近の報道では、特に数学教育の落ち込みが激しい為に、ロンドン大学の一部では、1年の準備期間を設けて、その1年で高等数学の基礎を最初から教えなけれならない状況になりつつあるようです。
 また、基本的にイギリスでは、目的の大学に合格する為に学生が受けるのは、Aレヴェルなどの全国共通の筆記試験だけで、後は願書の内容とインタヴューによって合否が決まります。ところが、「みせかけだけの成績優秀者」、言いかえると、比較的簡単な科目ばかりを選択して成績優秀となる学生が増えすぎた結果、オックスフォードケンブリッジを始めとした難関大学では、インタヴューの前に見せ掛けの成績優秀者をふるい落とす為に、独自で難度の高い筆記試験を課す動きが現実味を増してきているそうです。

 学生でいられる期間が、人生の中で一番勉強に集中できる時代だと言うことは、自分がこの歳になって痛切に感じます。ですから、学生の皆さんは勉強したほうがいいと、今になって思います。が、この世に生まれて20年くらいでその後の人生の半分以上をどう過ごすのかが決まってしまう社会の硬直性を如実に表しているのが試験制度、と言うのは遠吠え、なんでしょうね。



スポンサーサイト

自然の摂理:鴨のヒナを捕食する鷺

2008.06.26
昨日、6月25日にロンドンの夕刊紙であるThe Evening Standard紙に掲載された写真をみた時に吃驚したけど、今日になってThe Daily TelegraphThe Guardianのウェブで鮮明な写真を見て改めて自然が弱肉強食のルールによることを思い知った写真。撮影されたのは、アイルランド



親鴨が気付かぬうちに、ヒナに襲い掛かる鷺。鷺の表情が禍禍しく見えてしまう。



ヒナを取り戻そうと、果敢に飛び掛る親鴨。



でも、からだの大きさ、パワーの差は歴然。



親鴨の必死の攻撃も虚しく、鷺は鴨のヒナを嘴に咥えたまま、飛び去る。このあと、ヒナをひと飲みしているさまは、英単語の「Gulp」がまさに当てはまる。

http://www.guardian.co.uk/environment/gallery/2008/jun/26/wildlife.ireland?picture=335287431
Heron eats duckling

http://www.telegraph.co.uk/earth/main.jhtml?xml=/earth/2008/06/26/eaheron126.xml
How mother duck lost desperate battle to save duckling from heron
余談だけど、テレグラフガーディアン、どちらかが写真を裏焼きしているように見える。

 哺乳類の肉食獣が草食動物を捕食する場面は、変な言い方だけど見慣れている。蛇やワニなどの肉食爬虫類の捕食の場面の写真を見ることも多い。でも、鳥が別の鳥を食べる、しかも丸呑みするなんて場面、初めてみたように思う。かなり衝撃だった。

世界のニュースを動かす魚、それはエイ!

2008.06.26
以前、エイについては、こんなのを紹介したことがある。
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-590.html
 科学が進み、人類の知識が増えても自然の実態については殆ど知らないままなんだなと、このときも感心したけど、昨日The Daily Telegraphで紹介されたGolden Rayの大群の大移動の写真は、その荘厳、且つ美しい情景にただ呆然とするのみ。






http://www.telegraph.co.uk/earth/main.jhtml?xml=/earth/2008/06/24/earay124.xml
Golden Ray photos of amazing mass migration
 この場面に遭遇した人は、メキシコ湾でジンベイザメを探していたとのこと。撮影者のこの言葉が全てを語っている。
"I feel very fortunate I was there in the right place at the right time to experienced nature at his best."

 今日、6月26日の幾つかの新聞で紹介されていたのが、イギリス人がタイで巨大な淡水のエイを釣り上げたというニュース。



http://www.telegraph.co.uk/earth/main.jhtml?xml=/earth/2008/06/25/eastingray125.xml&CMP=ILC-mostviewedbox
British angler catches rare giant stingray

 僕の日常生活でエイが出てくるのは、海辺の街を訪れた時にフィッシュ・アンド・チップスの店で食べる「Skate」くらい。このような写真を見ると、マンタの姿を追い求める人たちの気持ちがちょっとわかるかな。

チャールズ皇太子経営のB&B

2008.06.24
実質は本人ではないけど、英王室、王位継承権第1位にあるチャールズ皇太子が、ベッド&ブレクファスト(B&B)をウェールズ西部のMyddfaiにオープンしたそう。
http://www.telegraph.co.uk/travel/2183268/Prince-of-Wales-unveils-bed-and-breakfast-fit-for-a-future-king.html
Prince of Wales unveils bed and breakfast fit for a future king



外観



いわゆる、レセプション・ルームかな。



寝室。イギリスにこだわる、チャールズ皇太子らしい質素な選択に思える。



ウェールズで作られた陶器。

 記事によると、昨年、2007年に皇太子の会社(the Duchy of Cornwall)が約2億4千万円で購入したあと、約3億6千万円の修復を終えて、6月23日の夜、オーナーご夫妻がはじめた宿泊したとのこと。
 皇太子とカミラ夫人が泊まらない時は、一般宿泊客に「有料」で開放すると皇太子は約束したようだけど、現段階では価格はまだ発表になっていないらしい。記事にある、一週間£500ーの予想価格は最低価格だろう。それでも、予約は殺到することでしょう。
 それにしても、チャールズのビジネスは、結構成功しているよう。今年の3月には食料品店をオープンしたし(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-742.html)。王様になるより、彼が愛するイギリスの「伝統」を世界に広めるビジネスマンに専念したほうがいいのではないかな。
http://www.duchyofcornwall.org/
The Duchy of Cornwallのウェブ。

http://www.telegraph.co.uk/news/picturegalleries/2183618/Prince-of-Wales-unveils-bed-and-breakfast.html
B&Bのほかの写真。




Wigmore Hall Midsummer Gala:ブリン・ターフェル・リサイタル

2008.06.22
Bryn Terfel (c)

ターフェルのマネイジメント会社のウェブから)

6月19日に、ロンドンの繁華街、オックスフォード・ストリートの後ろにあるウィグモア・ホールで催されたウェールズ出身のバス・バリトン歌手、ブリン・ターフェルのソロ・リサイタルにいってきました。
 このリサイタルの目的は、建物の長期賃貸契約を成立させる為に、日本円にして6億円以上を借りたウィグモア・ホールが、その借金の返済の足しにする為のファンド・レイズィング。当夜、全ての聴衆に無料で配られたプログラムによると、既に5億円以上の寄付の「約束」は取り付けてはあるけれど、借金返済をよりスムーズに進めるために、ということらしいです。ちなみに、ウィグモア・ホールがある一帯の大地主は、ハワード・ド・ウォルデンHaward de Walden)という一族。今では、会社名義になっていますが、一族支配に変わりはないです。ロンドンの大地主としては、4番目の規模だったと記憶しています。

 チケットのお値段は、今の僕の状況では、本来「買ってはならない」金額。ということで、特別な夜でした。日本では余り知られていないでしょうけど、英王室からも以下の二人が臨席。

In the presence of
HRH the Duke of Kent KG and HRH Princess Alexandra KG GCVO


 チケットを購入した時点で、「ブラック・タイ」コンサートであることを知りました。が、「21世紀になって、ブラック・タイのドレス・コードもそれほど厳しくないだろう」とたかを括っていました。ところがどっこい、リサイタルの数日前にボックス・オフィスに念のため電話して尋ねてみたところ、かなり厳しいことが判明。それでもフォーマルなスーツならいいと言われたんですが、ブレザーなら有るけどスーツがない。リサイタル前夜になって、イギリス人の友人に尋ねたところ、「ドレス・コードがブラック・タイのときはブレザーは不可」、ということが更に判明。
 で、慌てて探した所、10年以上も前に購入してから一度も袖を通していなかったヨージ・ヤマモトのほんのちょっとだけ奇抜なデザインの漆黒のサマー・ジャケットが、そして同じく一度も着たことがなかったイッセイ・ミヤケの漆黒のシャツが見つかり、ウィグモア・ホールに行く直前、オックスフォード・ストリートのマークス・アンド・スペンサーで黒のボウタイを購入してことなきを得ました。やりなれないことが有る時には、準備はきちんとすべしです。
 会場では、黒シャツは僕だけ。マオ・カラーのジャケット姿の方は4人ほど見かけましたけど、あとは男性のほぼ全員が、黒のディナー・ジャケットを着用。きちんとカマー・バンドをしている人もたくさんいました。

 これまでも、ロイヤル・オペラ・ハウスでの「ガラ・コンサート」は数回行ったことがありますが、全く趣の違うものでした。会場につくと、入り口では、ウィグモア・ホールのディレクター、John Gilhooly氏が一人一人に挨拶。特に、高額な寄付者、もしくはパトロンと思しき皆さんにはより丁寧に。丁度僕が入り口についたときは人が途切れていたので、彼と話す機会があったら言いたかったことを。
 「お願いします。どうか、もう一度、エディタ・グルベローヴァのリサイタル(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-743.html)を」。で、Gilhooly氏曰く、「彼女は一回きりといったけど、you never know」、と微笑みました。在イギリスのグルベローヴァ・ファンの皆さん、祈りましょう。
 中に進むと、無料のプログラムが手渡され、次に差し出されたのは、シャンペンのグラス。プログラムの記述によると、匿名の方が、その夜のシャンペンとワインを寄付。そのシャンペンとワインは、フォトナム・アンド・メイソンから取り寄せたもの。不味い訳がない。
 更に、ロイヤル・オペラ・ハウスの担当者には見習って欲しいと思ったほど美味しいカナッペも、食べ放題。キャビアとスモーク・サーモンのカナッペから始まり、ワイルド・マッシュルームのタルト、炙った鮭とキュウリのカナッペ(激美味)、のり巻き(可もなく不可もなく)、香草を巻きつけ串に刺したグリルした鶏肉(これまた激美味)、茹でた鶉の卵、春巻き等々。元が取れたとは思いませんが、インターヴァルが終る頃にはお腹いっぱいになりました。

 このような特別なコンサートでは、観にきているほかのオペラ歌手なんていないだろうなと思っていたら、昨年、ロイヤル・オペラの「フィデリオ」に出演していたアイルランド人ソプラノ歌手の Ailish Tynan を目ざとく発見。他のファンに囲まれていた彼女に近づき、話し掛けました。フィデリオを4回も観た(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-502.html)といったところ吃驚していたようでした。が、どうしてイギリスのオペラ・ファンは、ワーグナー以外のドイツ・オペラが嫌いなんでしょうねと続けたら、くすくす笑いながら、「私も不思議でならないのよ」、とのこと。

2122ashmore0359 copy

(ロイヤル・オペラのフィデリオから。右端がTynan

 会場では、寄付金集めの一環であるオークションの受付も。商品は、モロッコにあるアマン・ホテルの宿泊、サザビーズでのランチ、グラインドボーン・オペラのリハーサル鑑賞、ウィグモア・ホールでプライヴェイト・コンサートを開く権利、イギリス人バス・バリトン歌手のサイモン・キーンリーサイドによる彼自身が「魔笛」のパパゲーノを演じた時の自筆イラスト等々。
 リサイタル終了後には、一人一人にウィグモア・ホール録音のCDを感謝のしるしとして。まさに、至れり尽せりの夜でした。

 で、肝心のリサイタルです。

Bryn Terfel (bass-baritone)
Malcolm Martineau (piano)

John Ireland :Sea Fever; The Vagabond; The bells of San Marie
Peter Warlock :Captain Stratton's Fancy
Frederick Keel Port of Many Ships from 'Three Salt Water Ballads'; Trade Winds from 'Three Salt Water Ballads'; Mother Carey from 'Three Salt Water Ballads'
Ralph Vaughan Williams The Roadside Fire from 'Songs of Travel'; Silent Noon from 'The House of Life'
RogferQuilter Now sleeps the crimson petal Op. 3 No. 2; Weep you no more Op. 12 No. 1; Go, lovely Rose Op. 24 No. 3; Fair House of Joy Op. 12 No. 7
Interval
Franz Schubert Liebesbotschaft from 'Schwanengesang' D. 957; Wandrers Nachtlied II D. 768; Litanei auf das Fest aller Seelen D. 343; An Silvia D. 891

Loch Lomond; Passing By; Danny Boy; Ar Hyd Y Nos; Molly Malone


 このリサイタルにどうしても行きたかった理由の一つは、ターフェルのソロ・リサイタルを聴いたことがなかったことです。それに、昨年、ロイヤル・オペラの「リング・サイクル」をドタキャンしたとはいえ、オペラ界のスーパースターであることに変わりないターフェルが、キャパ600人くらいのウィグモア・ホールで歌うなんてこと、これを逃したらないだろうとも思ったからです。聴衆はブラック・タイでしたが、ターフェルとピアノのMartineauは濃紺のジャケットにノータイという、カジュアルないでたちでした。

 プログラムの前半は全く知識のないイギリスの歌曲ばかり。なので技術的、声楽的な判断は出来ませんが、ターフェルの声が持つ響き、深みは彼が一流のリーダー歌手であることがわかるものでした。特に、ヴォーガン・ウィリアムズの「Silent Noon」での歌唱は、前半のピークだったように思います。
 休憩後は、シューベルトから。破裂音がとても弱い発音だったように感じたことを除けば、彼のドイツ語の発音、ほぼ完璧。それに、ターフェルの陽性の性格からでしょう、歌を聴くことは本当に素晴らしいこと、という想いで身体が満たされていくようでした。
 そして本編の締めくくりは、ケルトの歌。「ロッホ・ローモンド」をターフェルで聴けるなんて。更に最後の「Molly Malone」では、聴衆全員を立たせてコーラスに参加させ、これには会場中が沸騰しまくり。アンコールも4曲。その内の一曲では、ステージから降りて、何人かの女性の前で膝まづくサーヴィスぶり。オペラ歌手として、エンターテイナーとしてまさに超一流でした。

 家路につく地下鉄の中、ボウタイしていてもなんの違和感もないのがロンドンらしいところかなと思いつつ、夜は更けていきました。



(これはネットで見つけたもの。ウィグモア・ホールではターフェルはマイクを使っていませ)

*こういった限定的なコンサートだとレヴューが載らないことの方が多いですが、今回、The Daily TelegraphThe Evening Standardに掲載されました。食べ物中心の僕のものよりも詳しくリサイタルのことがわかるはずです。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-795.html
Bryn Terfel, an unbridled force of nature

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-794.html
Big-Hearted Bryn's sensitivity and showmanship

Songs    Comment(4)   ↑Top

ナクソス島のアリアドネ:デボラ・ヴォイトの凱旋

2008.06.22
6月16日、四年ぶりの再演となるリヒャルト・シュトラウスRichard Strauss)の「ナクソス島のアリアドネAriadne auf Naxos)」の初日を、ロイヤル・オペラで観てきました。

Composer: Richard Strauss
Libretto: Hugo von Hofmannsthal

Conductor: Sir Mark Elder
Director: Christof Loy

Ariadne: Deborah Voigt
Bacchus: Robert Dean Smith
Zetbinetta: Gillian Keith
Harlequin: Markus Werba
The Composer: Kristine Jepson (前半部分のプロローグのみ)
A Music Master: Thomas Allen (前半部分のプロローグのみ)


 クリストフ・ロイ演出によるこのプロダクションは、現ロイヤル・オペラ音楽監督のアントニオ・パッパーノが、就任1作目に選んだオペラで初演は2002年9月でした。そのときも、ツェルビネッタを歌う予定だったナタリー・ドゥセがキャンセルしたりと波乱はあったのですが、それまでCDで聴くしかなかったこのオペラの舞台には大満足しました。
 この演出の再演は、2004年の初夏。この時は、予想外のことが勃発して大変盛り上がりました。それは、タイトル・ロールのプリマ・ドンナ/アリアドネを歌う予定だったアメリカ人ソプラノ歌手のデボラ・ヴォイトが、そのふくよか過ぎる体型はアリアドネが後半の「オペラ」で着る黒いドレスに合わないことを理由に降板させられたことを、メディアに流してしまったからです。
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-270.html
 このオペラ自体が大好きなのと、2004年の上演時のツェルビネッタを若手コロラテューラ歌手の中ではだんとつに巧いディアナ・ダムラウで聴けたので、僕としては満足の行くものでした。ちなみに、下の写真は、そのときにアリアドネを歌ったドイツ人ソプラノ歌手の、 アンネ・シュヴァネヴィルムス(Anne Schwanewilms)です。
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-313.html



でも、シュトラウス・オペラの第一人者といわれているヴォイトで「アリアドネ」を聞いてみたかったという思いは残りました。

 で、今回の上演で知ったのは、降板させられたことも理由の一つでしょうが、健康上のこと、特に膝への負担で減量を真剣に考えていたヴォイトは、降板になったとはいえロイヤル・オペラから支払われたギャラで歌手生命を架けて胃を小さくする手術を受け、減量に成功。ロイヤル・オペラは今回の再演に際しヴォイトに出演を再び依頼し、ヴォイトは快諾した、と。以下のYouTubeのリンクで写っているドレスは、実際の舞台で使われたものとは違います。

http://uk.youtube.com/watch?v=kQqPauyGiVU

 昨春、今回の上演が発表されたあとにバービカン・ホールで催されたヴォイトのリサイタルに非常に満足したので(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-491.html)、「ナクソス島のアリアドネ」は僕にとっては今シーズン、一番心待ちにしていたオペラ。そして結果として、満足という言葉では言い尽くせないほど、そして長く記憶に残るであろう素晴らしい舞台でした。

 オペラの粗筋は、2004年に「英国ニュースダイジェスト」に寄稿した紹介記事の一部を使って。N編集長、ご快諾いただきありがとうございます。

喜劇?!、それとも悲劇?!
「ナクソス島のアリアドネ」(Ariadne auf Naxos)

 ウィーンの資産家の邸宅の一室、主(あるじ)からの依頼で、その夜催されるOpera Seria (悲劇)を仕上げようとしている作曲家の元に知らせが届く。時間の都合上、オペラと笑劇を一緒に上演することになったと。作曲者は煩悶(はんもん)するが、笑劇の出演者の1人ツェルビネッタは、「Opera Buffa (喜劇)にすれば」とそそのかす。プリマドンナやテノールら、出演者のエゴがぶつかる中、オペラの幕が上がる――。


 ここまでが、前半の「プロローグ」。後半の「オペラ」の部分は、テーセウスと一緒にアテネを目指してクレタ島を脱出したアリアドネhttp://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-767.html)がナクソス島に置き去りにされたあとの場面から始まります。死を司るヘルメスによって導かれると諦めていたアリアドネの前に現れたのは、バッカス。互いに惹かれあい、アリアドネバッカスの愛を受け入れる、という感じだと思います。

 今回、ヴォイトも素晴らしかったですが、他の歌手の皆さんも水準以上の歌唱・演技でした。前半部のプロローグのみの出演となる「作曲家」を演じたアメリカ人メゾ・ソプラノのクリスティーン・ジェプソンは、「え?、作曲家のアリアってこんなにも聴き応えあるものだったんだ」と思うほどの熱唱。イギリス人歌手が降板して代役出演となったオーストリア出身のマークス・ヴェルバのハーレクィンも歌・演技共に大満足。でも、どうしてモヒカンではなかったのかな、と。
 僕の中で唯一の「やや」外れだったのが、ツェルビネッタ。この役には、後半の「オペラ」の中で、オペラのピークの一つである7分超のアリアがあります。コロラテューラ・ソプラノ歌手にとっては、技術の見せ所。新聞各紙のレヴューでは大絶賛なのですが、ジリアン・キースのコロラテューラは僕にとってはシャープではありませんでした。細い体から発せられる声量は他の歌手の皆さんと遜色ないくらいでそれはよかったんですが、肝心の最後の超高音域部分、声を転がすというより伸ばしているようにしか聞こえませんでした。言い換えると、一つ一つの音の切れが充分ではなかったように感じました。コロラテューラの声楽「学」的な定義は判りませんので、僕の聞き方がよくないとは思うんですけどね。



ツェルビネッタ役のジリアン・キース

 指揮をしたマーク・エルダーは、初日を迎える前の週末に、サーの称号の授与が発表されました。それに影響されたかどうかは判りませんが、素晴らしい指揮ぶりに、これまた大感動。どうしてそう言い切れるかというと、今回、彼のほぼ真後ろの席を取ってしまいました。ロイヤル・オペラの場合、最前列でしかも指揮者の後ろの席はちょっとお安いんです。
 前半の「プロローグ」では指揮棒を吹っ飛ばしてしまうほど。あるレヴューによると、エルダーの指揮は、「チャンバー・オーケストラ」の何たるかを理解していると表していました。普通のオペラの時と比べるとオーケストラはやや小編成でしたが、日ごろがっかりさせられることの多い管楽器からも素晴らしい音を引き出していました。

 これまでの過去2回の上演で、実は一番がっかりしていたのは、テノール/バッカス役。例えばホセ・クーラのようでなくてもいいから、もう少し舞台栄えする歌手を、と思うことしきりでした。今回、初日を含めて4回は、アメリカ人テノール歌手のロバート・ディーン・スミス。5年前の同じ時季に上演されたワーグナーの「パルシファル」のタイトル・ロールを歌えるほどの歌手ですから、期待していましたが、期待以上でした。アリアドネが良くても、最後のデュエットでバッカスが彼女を受け止めるほどでなかったら、オペラの魅力は半減になることでしょう。

 デボラ・ヴォイト。痩せたとはいえ、それはオペラ界の基準であって、世間一般からはまだまだふくよかな彼女。膝まづく場面や、舞台に横たわる場面ではちょっと億劫そうでした。それと、通信社のロイターによるインタヴューの中で、痩せてから声質が少し変化し、また減量に成功してからアリアドネを歌うのは今回が初めてだったので発声にいつも以上に気をつけなければならなかったと言っています。
 そんなことを知った後でも、ヴォイトの歌は素晴らしかったです。最後のバッカスとの二重唱、ヴォイトの立ち位置はほぼ僕の目の前。身じろぎできませんでした。3回目にして、漸く「ナクソス島のアリアドネ」というオペラの醍醐味を十二分に味わえた思いです。




ロイヤル・アスコット:帽子狂奏曲

2008.06.20


 今週の火曜日、6月17日に、恒例のロイヤル・アスコット競馬が開幕。いつも、はっきり言って、女性の帽子が話題を集めるアスコットだけど、今年は初日を控えてドレス・コードの徹底がニュースになった。
 数年前、流行語にまで選ばれたCHAVSがアスコットにまで進出し、肌の露出、ニセの日焼け等が台頭し往時のエレガントさが急速になくなりつつあることへの警鐘だったよう。特に、「Royal Enclosure」と呼ばれる初日は、1)背中が空いているドレス厳禁、2)スカートの長さは膝上2センチまでは認めるがそれ以上短いミニ・ドレスは駄目、3)下着を見せるなどもってのほか、4)ホルターネックやストラップレスのドレスも入場させない等々が、来場者に厳しく伝えられた。
 結局、初日は主催社側が眉をひそめるようなファッションはそれほどではなかったように報道からは感じた。でも、そのあとはリンクをみての通り。









 上の三人に望むのは、「お願いだから、そんな帽子をかぶってロイヤル・オペラ・ハウスには来ないでね」、と。


 今日、6月20日の新聞各紙のトップ・ニュースの一つは、5月のイギリス国内の消費活動はもの凄かった、というもの。
http://www.guardian.co.uk/business/2008/jun/20/retail.economics1
Mystery of Britain's great spring shopping spree

 世界大恐慌が起きてもおかしくない状況で、一生のうちでたった数時間しか使わないであろう帽子に時間と金をかけるイギリス人は、逆説的な意味で世界を救ってくれるかもしれないと思わなくもない。

http://www.telegraph.co.uk/news/2124535/Royal-Ascot-fashion-faux-pas.html
過去、顰蹙をかったファッション

http://www.telegraph.co.uk/news/picturegalleries/2146264/First-day-at-Royal-Ascot.html
Royal Ascotの初日

http://www.telegraph.co.uk/news/picturegalleries/2152299/Royal-Ascot-hats-off-for-day-two.html
二日目

http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/gallery/2008/jun/19/fashion.horseracing?picture=335141378
http://www.telegraph.co.uk/news/picturegalleries/2159036/Ladies-Day-at-Royal-Ascot.html
Ladies Day at Royal Ascot

http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/gallery/2008/jun/18/fashion.horseracing?picture=335108073
Hats off! Ascot fashion through the ages

イギリスのカップ・ケーキ:Eat Me Cakes

2008.06.15



 抜けるような青空に誘われてリージェント・パークに薔薇を楽しみに行った帰り、近所のマリルボーン・ハイ・ストリートMarylebone High Street)で年1回催される大規模な青空マーケットで見つけたのは、イギリスらしいカップ・ケーキを売っているストール。
http://www.eatmecakes.co.uk/



詰め合わせの一例。



結婚式のレセプション用。



昇進祝い。

 甘いもの、特にケーキは好きだけど、この手のアイシングがたっぷりかかっているのは実は苦手。どうしても砂糖を食べているようにしか感じられないことの方が多いから。
 買おうかどうしようか迷っていた所、ここの常連になっているらしい友人が来合わせて(ラッキー!)、ご相伴させていただく。日本のケーキと比べることは出来ないけど、色から予想していたほど砂糖の味が強くなくて結構いける。ただ、スポンジはもっと努力して欲しい。イギリス人には、受けるだろうと思う。

 ただ、ビジネスとしてみて、いつまで続けられるだろうか?家族経営のようだからあくせくしてはいないのかも知れない。でも、バイオ燃料のあおりで高騰を続ける麦の価格を値段にどう反映させていくのかな、と。

 そんなことは脇にほっぽり出して、今日のような青空のした、薔薇をはじめ様々な花が咲き乱れる初夏のイギリスの庭で、カラフルなアイシングで彩られたカップ・ケーキを食べて過ごす午後は、イギリスにいる楽しさかな。

正統:英国のスーツ

2008.06.12
いくら明るい色が好きな僕でも、着こなせるとは思えないし、ま、着たいと思うこともないだろうな、と。こんなのを着ようと思うだけでなく、着てしまうのがイギリス人たる所以か。




Licensees from the Roy Lowe & Sons British Sock Company wear matching Union Jack suits during the 2008 Licensing International Expo in New York

Picture: AFP/GETTY


 写真は、2008年6月12日付のThe Daily Telegraph紙のウェブの、「今日の写真」の一枚。更に、タイトルの「英国のスーツ」は、The British suitではなく、The Suit of the UKの意味をもたせたつもり。

5月31日、6月1日:過去、現在、未来?

2008.06.02
[5月31日]
お昼前に宅配会社がトランクを引き取りにくるので、朝食後、せっせと荷造り。レトルト・カレーを買いすぎ。

 ロンドンに戻るBA便のチェック・イン・チケットの印刷をさせてもらうべく、友人宅に。駒込駅前にある洋菓子の「アルプス」で、ショート・ケーキマンゴー・ムースを購入。

 軽いランチをいただき、持参したケーキとムースを自らも食べる。友人曰く、「こんなに美味しいマンゴー・ムースなんてはじめて」。同意。僕が駒込近辺に住んでいたら、毎日一つは食べるだろう。
 
 BAの事前チェック・インの操作は本当に簡単。座席の空き状況で見るかぎり、かなり空席があるようだ。

 友人宅を辞し、有楽町へ向う。夕方から、会社員時代、最後の3年間を過ごした営業部門の同窓会が催される。偶然、今回の帰国と日程が重なり、長いこと会っていない人にも会えるようなので楽しみ。
 有楽町駅について、「あ、まだ蕎麦を食べていない」。蕎麦屋って、探すとなるとなかなかみつからない。仕方なく、交差点そばの阪急の地下の飲食店街の蕎麦屋へ。
 そば粉が今どれくらいの価格になっているかは知らないが、結構高く感じる。天せいろを注文。音を立てて蕎麦をすすれることに、こんなにも開放感を感じるとは。

 勤務していた営業部門が扱っていたのは、金融情報をオンラインで顧客のコンピューター・スクリーンに提供する商品で、名前は「テレレート」。競争の激しい金融情報営業の中で、テレレートブリッジに売却され、そのブリッジロイターに買われた。そしてそのロイターも今やカナダ資本のトムソンに吸収されている。テレレートの名前は今は、残っていない。

 会場であった元の同僚と話していると、自分にとっては天職の職場ではなかったけど、改めて素晴らしい人たち、珍しい人たちと働いていたことを実感。
 会場で、働いていたときは殆ど話したことがなかったイギリス人男性と長く話す。日本が好きで日本に住んでいる彼曰く、「君、どうしてロンドンに住んでいるの?」、と。自分でもいまひとつよく判っていない気がしなくもない。そんなことを話していると、「British Englishだね」、と言われる。そういわれるのは、誰かが認めてくれたようで、やはり嬉しい。

 最後まで居たかったけど、ロンドンに戻る前夜は実家で家族と食事をしたかったので、帰宅。なんてことないことを話しながらの食事に、心のそこからホッとする。


[6月1日]
今朝も、朝ご飯が美味しい。

 訳もなく日暮里駅が面倒くさく感じてしまい、結局、また成田エクスプレスで。満員。

 空港についてBAのカウンターに。前日チェック・インしておいたおかげでカウンターでの所要時間は5分。気さくな女性で、「今日は、空いているみたいですね?」、と尋ねると、「いいえ、満員ですよ。足を伸ばせる席が取れて良かったですね」、と言われる。

 うどんを食べていないことに気付く。空港では余り期待することもなく、うどんの喉越しを楽しむ。デザートに白玉ぜんざいを。うどん屋でまとまな白玉が食べられると期待した自分が愚かだと。

 12時間の飛行時間、ひたすら数独。機内は満員。キャビン・クルーもかなり忙しそう。帰国便でも感じたけど、BAの皆さん、とてもよく働いている。危機意識の高まりかもしれない。

 搭乗機が着陸してからヒースロー空港を後にするまで1時間かからなかった。ターミナル5、随分改善されたようだ。

 帰宅途中、牛乳を購入。到着後、すぐに紅茶を淹れる。もちろん、ビルダーズ・ティーにして、たっぷりのミルク。ロンドンに戻ってきたことを実感する。熟睡。
Template by まるぼろらいと

Copyright ©LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン All Rights Reserved.