LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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2008年12月の記事一覧

イギリスの「質屋(のような店):Pawnbroker

2008.12.30
ロンドンの街中を歩いているとふと目尻の端に引っかかっていた「金色の三つのボール」のような飾り。何かの印だとは思いつつ、調べるのも億劫だったのであえて考えないようにしていた。



 この三つの玉が意味することが急に判ったのは、クレディット・クランチのおかげ。

Rising costs of borrowing and gold bring pawnbroker record profits
http://www.telegraph.co.uk/finance/newsbysector/industry/3062355/Rising-costs-of-borrowing-and-gold-bring-pawnbroker-record-profits.html
Squeeze forces small firms to pawnbrokers
http://www.guardian.co.uk/business/2008/dec/21/small-business-banks-pawnbrokers-recession
The pawnbrokers are back!
http://www.bbc.co.uk/southyorkshire/content/articles/2008/10/23/pawnbroker_feature.shtml

 或る日のThe Daily Telegraphの経済面のトップの写真がこの飾りで、記事の内容はクレディット・クランチの嵐が猛威を振るう中で業績を伸ばしている業種の特集だったはず。ロンドン生活9年目にして、Pawnbrokerという業種とその「紋章」が結びついた。
 日本の質屋とは違って、鞄や洋服等の服飾品は扱わないようだけど、時計や宝石などの貴金属・装飾品を預けることによって現金を借りることができる。最近では、会社として全国展開をしている企業もあるようで、そのようなところだと預け入れられた貴金属の価値や店頭での売出価格をデータベイスに保存・共有することで盗品等の貴金属を扱わないようにしているそう。

 一つ、日本の質屋と大きく違う点は、今でもイギリスの生活ではかなり使われている「小切手(Cheque)」を、手数料を取る代わりにその場で現金化してくれるところだろう。通常、ポンド小切手をポンド立ての個人口座に振り込んだ場合、現金化されるまでに確か3営業日は係るはず。当然、手数料は取られないが、その3営業日の間は利用可能残高(もしくは引き出し可能残高)には反映されない。
 この大不況の折、とりわけ個人経営の小さな会社にとっては、その3営業日ですら待てないこともありうるだろう。ということで、知人に尋ねたところ、今年の夏以降「小切手」の現金化の需要が突出しているとのこと。



 イギリスで、日本で、世界中で大不況が深まる中、気分が高揚する話題ではないけど、経済の混乱に翻弄されたままの2008年の〆にはふさわしいかな。

 キアヌ・リーヴス主演のどうしようもなく酷い映画らしい「地球が静止する日」のタイトルに触発されて最近、考えていること。可能だとは全く思えないけど、でも仮に全人類がある一日、起きて食事して、日中はだらだら過ごす以外何もせず、ご飯を食べて寝てその日を終えた翌日、少しは地球は暮らし易くなるのだろうか、と。

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始まるW、消えるW:ウェストフィールドとウィッタード他

2008.12.23
10月30日、ロンドン西部のシェパーズ・ブッシュ駅とホワイト・シティ駅の間の地域に、ヨーロッパ最大規模のショッピング・センターがオープンしました。一人で行っても仕方ないしと思っていたところ、丁度日本から来られた方の案内を兼ねていってきました。

Westfield London
http://uk.westfield.com/london

 ヨーロッパ最大と謳っているのも大げさではないなというくらい広大なショッピング・センターでした。建物の外観はロンドンでありがちな、じっと眺めていてもどうしてこんなデザインにゴー・サインを出したの全く理解できないほど非効率的に見えましたが、内部はロンドンとは思えないほど清潔で明るい雰囲気でした。インフォメイション・デスクが要所要所にあり、また建物の四隅に当る場所などにカフェ・エリアが設置されているのは、ロンドンではこれまであまりなかったことだと思います。


(ウェストフィールド内部)

 店舗は、玉石混交といったところ。ロンドン中心地の繁華街以外で初めて店舗を出すことが話題になっていたルイ・ヴィトンフェラガモはいまだにオープンしていませんでした。名前を聞いたことがないようなコスメ・ショップが並んでいたり、やる気のない店員で溢れている店がある一方で、まだ日本にはないらしい「Zara」のホーム・ショップなどがあります。
 ウェストフィールドができるまでは、シェパーズ・ブッシュに行く観光客なんていなかったことでしょう。他に何もないところですし、ロンドン屈指の高級住宅街の一つであるホランド・パーク地域からそれほど離れていないにもかかわらず、ほんの数年前までは治安も良くなかったはずです。ロンドン観光の一環でウェストフィールドに行くのは面白いと思いますが、夜遅くにシェパーズ・ブッシュに行くのは避けたほうがいいかな、と。

 日本と同じくらい経済が破綻しつつあるイギリスでこれほど大きなショッピング・センターはどうやって生き残っていくのかなと思っていた所に、今日、12月22日に報道されたのは、紅茶とコーヒーの小売老舗のウィッタードWhittard)が破綻の危機に瀕しているというニュース。



ウィッタードの紅茶を世界一愛しているのは日本人のように思うので、衝撃を受ける方も少なからずいるかなと思います。

Whittard of Chelsea on brink of administration
http://www.telegraph.co.uk/finance/newsbysector/retailandconsumer/3902431/Whittard-of-Chelsea-on-brink-of-administration.html

 ウィッタードの紅茶が、イギリス人にどれほど求められているのか常々不思議に思っていたのと、若年層の紅茶離れによる売上不振でこうなるのも仕方ないと思いましたが、最大の要因は、国自体が破産した(らしい)アイスランドの銀行がこけて資金繰りが悪化したからとのこと。クレディット・クランチから逃れられない業種って、ないのではないかと思います。

 自分でもどうやって暮らしていられるのか不思議に感じることはよくあります。イギリスの経済は奈落の底にはまだ到達していないけど、どこまで落ちれば奈落が終るのかも判らない、そんな印象をもちます。


(12月5日のガーディアンから)

更に、ポンドの価値がユーロとほぼ同じ水準になったことで、イタリアに虚仮にされてしまい、大英帝国の誇りもずたずた。

Mamma mia! Has the financial crisis really made us poorer than the Italians?
http://www.guardian.co.uk/world/2008/dec/19/italy-beats-britain-currencies

 そして、ウォール街だけでなく、世界に衝撃が走った超巨額詐欺の被害にあったイギリス人投資家は数知れず。

Victims of Bernard Madoff's fraud
http://www.guardian.co.uk/business/gallery/2008/dec/17/bernard-madoff-celebrities?picture=340813490

 シティの「スーパーウーマン」と呼ばれるニコラ・ホーリック女史や、ユマ・サーマンの婚約者も損失を被ったようです。昨日の勝者は、今日の敗者。


(12月19日のテレグラフから。これは傑作だと思う)

 保守党の党首、デイヴィッド・キャメロン氏は「クレディット・クランチをひきおきした銀行役員は逮捕されるべきだ」、と。そのとおりだと思うのですが、長い間政権政党を経験していない保守党はどうもぱっとしなくて、この勇ましく筋の通った発言も雲散霧消。


(12月21日のテレグラフから)


 クリスマスを前に、暗いまま〆るのも味気ないので、クスリと笑えるであろう話題を二つ。

Bestselling calendars for Christmas
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/gallery/2008/dec/17/bestselling-calendars-christmas?picture=340813792

 日めくりの「トラクター」のカレンダーが売れている事実より、365車種ものトラクターがあるかもしれないことのほうが驚きでした。



 そして、これからイギリスに来られるみなさん、英国人へのお土産は風呂敷がよさそうです。

Government recommends people to replace wrapping paper with pieces of old cloth
http://www.telegraph.co.uk/earth/earthnews/3901591/Government-recommends-people-to-replace-wrapping-paper-with-pieces-of-old-cloth.html



[追記:12月24日]
 ウィッタード、買い手が見つかったそうです。

Whittard sold to private equity
http://news.bbc.co.uk/1/hi/business/7796751.stm

声で描ける:バルトリのリサイタル

2008.12.21
12月17日に、バービカン・ホールでのチェチーリア・バルトリのリサイタルに行ってきました。彼女のリサイタルは、いつ行っても「今夜、この場所に来れたことを誰に感謝しよう?」、というほど歌を聴く喜びに包まれます。17日のプログラムはロッシーニベッリーニドニゼッティ等の小品ばかりのプログラムでしたが、バルトリの声の美しさが、そして彼女が歌い上げる歌の物語がじんわりと心を包み込んでくれるものでした。

Soiree Rossiniana

Rossini “La regata veneziana”, Three songs in Venetian dialect

“Anzoleta avanti la regata”
“Anzoleta co passa la regata”
“Anzoleta dopo la regata"

Bellini "L’Abbandono", anon.: “Il fervido desiderio”, anon.: “La Farfalletta”, anon.: “Dolente immagine”, Maddalena Fumaroli: “Malinconia, ninfa gentile”, Ippolito : Pindemonte: “Ma rendi pur contento”, Metastasio

Rossini "Or che di fiori adorno", anon.: “Beltà crudele”, anon.: "Canzonetta spagnuola”, anon.: La danza, Carlo Pepoli

Donizetti “Il barcaiolo”, L. Tarantini: “Amore e morte”, G.L. Redaelli: “La conocchia”, Canzone napoletana: “Me voglio fà ‘na casa”, Canzone napoletana

Rossini “Ariette à l’ancienne”, Jean-Jacques Rousseau: “L’Orpheline du Tyrol”, Emilien Pacini: "La grande coquette”, Emilien Pacini

Viardot “Havanaise”, Louis Pomey: "Hai luli!", Xavier de Maistre

García “Yo que soy contrabandista”, caballo from the monodrama “El poeta calculista” (1805). anon.
Malibran “Rataplan”,chansonette.anon.

Cecilia Bartoli: mezzo-soprano
Sergio Ciomei: piano


 バルトリが舞台に出てきてあれと思ったのは、着ている青いドレスをどこかで見たような既視観。すぐに判りました、昨年のバービカンでお召しだった赤いドレスの色違いで、施されている刺繍は全く同じでした。


(昨年の写真。これも含めて、写真は全てネットからかき集めたもの)

いつもどんなドレスで驚かせてくれるのか期待しているのでちょっと拍子抜けしましたが、それを補って余りあったのは右手に輝く一際大きなダイヤの指輪。インターヴァル後は、昨年と全く同じドレス、でもアクセサリーは前半と全く別のダイヤのブレスレットをしてでてきたので、それなりに気を遣ってはいたようです。



 でも、歌が始まれば、ホールを満たすのはバルトリの声だけ。絶好調でした。小品ばかりなので、彼女の超絶コロラテューラはそれほど出てきませんでした。でも、そんなことは全く気になりません。「歌」になりきったバルトリの、歌うことが彼女にとってどれほど幸せなことなのか、バルトリが彼女自身の喜びでホールを満たすにつれ、僕自身が幸せすぎて言葉が出てこない、そんな気分でいっぱいになりました。ピアニストの男性は、技術的に飛びぬけていたとは感じませんでしたが、バルトリとのコンビネイションがとても自然で、好感が持てました。

 バルトリ本人の気質としては、恐らく「コメディエンヌ」なのだと思います。彼女の素晴らしい所は、悲しい歌では、歌われる「悲しみ」を彼女本人の悲しみとして伝えることが出来ることだ思います。今回のリサイタルで僕にとっての白眉は、ロッシーニの「チロルのみなしごの女の子」。歌の最後、15歳の女の子が神に慈悲を乞う場面での静かな、同時に慟哭のような祈りの声は、ホールにいた多くの聴衆の心を揺さぶったと思います。

 11月に、The Sunday Telegraph紙の付録雑誌に、プレヴューという形でバルトリのインタヴューが掲載されていました(ウェブには転載されていません)。声が小さいので本国イタリアではあまり歓迎されていないとかの話等々。そしてインタヴューの最後で、今、彼女の声は最高のコンディションにあると語り、こう続けます。

 Vocally, I am definitely at the peak of my career. I can really now paint with my voice: I can make more colours than 10years ago, I can make more shadows. It's very exciting.

 この「Soiree Rossiniana」、東京でも予定されていたようですが、キャンセルになったそうです。でも、ロンドンでも、いつもバルトリの生の舞台を観ることが出来るわけではないです。ロイヤル・オペラにも既に3シーズンくらい出ていないはず。彼女が出るオペラを観たいのであれば、拠点にしているチューリッヒ・オペラまで行くしかないでしょう。新年早々、ヘンデルの「セメレ」でタイトル・ロールを歌うようです。


(写真を探していたら見つけた、チューリッヒ・オペラでの「Clari」というオペラのシーンから)

 毎日聴いても飽きるとは思いませんが、たまに聴けるから更にいいのだろうし、バルトリの歌声を再び聴く機会が確実にあるなら、まだ戦える、とも。バルトリ自身も、コンサートを楽しんだようでした。最後のアンコールの歌を終えて舞台から去るとき、聴衆に向って大きく手を振りながら、満面の笑顔。ドレスが同じだっていいや、と。素晴らしいクリスマス・プレゼントになりました。


(あまり宣伝されていないけど、バルトリの新譜。写真へのコメントは差し控えます)


(同じく、宣伝用の写真らしいです)

そうだ、ヨークに行こう4:国立鉄道博物館(National Railway Museum)

2008.12.20
友人たちが「鉄ちゃん」なので、いく前は渋々だったのですが、行ってみたら自分でも驚くほど楽しめたのが、国立鉄道博物館National Railway Museum, http://www.nrm.org.uk/home/home.asp)。



 正直な所、鉄道の歴史は全くしりません。鉄道は、時間通りに運行して、快適ならそれで充分なので、鉄道を追っかける皆さんの気持ちは僕の理解は及びません。しかしながら、この博物館内に展示されている、かつて線路を走った本物の鉄道の数々を目の当たりにすると、「人間の発明って、凄い」と単純に感心しました。

 個人的に一番興味を惹かれたのが、ヴィクトリア女王のお気に入りだった最後の「お召し列車」。恐らく繊細な素材を装飾に使ったからでしょう、内部をこれからも長く保存する為に客車内部に入ることは出来ません。しかしながら、贅をつくし、当時の最高水準のホスピタリティを追及した客車内部は、それはそれで「イギリスの歴史の一部」だなと。
 この、ヴィクトリア女王の客車だけでなく、展示されている客車や蒸気機関車の多くは内部へ入ることが出来ないようなので、「乗り鉄」の皆さんには不満があるかもしれないです。また、日本の交通博物館にはあるらしい、運転手の気分を味わうことが出来る疑似体験運転席なんて洒落たものもないようでした。



 イギリス鉄道が主体の博物館ですから、展示物のほぼ全てはイギリスのもの。例外は、日本の「新幹線」。



こちらが嬉しくなるほど丁寧、且つ熱のこもった展示です。展示されている車両の中では、新幹線についての解説ヴィデオが流されていて、座席に座ってみることができます。
Shinkansen 'Bullet Train' exhibition
http://www.nrm.org.uk/exhibitions/shinkansen/start.asp
(これは、数年前の特別展示の案内ですが、今は、常設になっているようです)



 本館、新館、ワークショップエリアに分かれているので、鉄道が好きな方なら、一日いても飽きないでしょう。ざっと見て回るだけでも、一時間はかかると思います。僕が行ったときはトーマス仕様の蒸気機関車はありませんでしたが、お土産売り場はかなり充実していました。残念だったのは、カフェが並。ま、中心部に行けば、Bettyshttp://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-959.html)があるから問題ありませんが。その1(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-958.html)で書いたように、ここだけは城壁の外にあるので、ヨークを離れる前に訪れる、というのもいいかもしれません。

Tornado: the first steam train in Britain for 50 years
http://www.telegraph.co.uk/travel/travelnews/3385724/Tornado-the-first-steam-train-in-Britain-for-50-years.html



そうだ、ヨークに行こう3:ヨーク大聖堂(York Minster)

2008.12.20


ヨークに行くことを決めてから、「さて、何を見よう?」と考えるまでもなく絶対に訪れよう、訪れなければと思っていたのは、ヨーク大聖堂です。

http://www.yorkminster.org/
http://www.yorkminster.org/languages/japanese/
(日本語)

 世界に幾多あるほかの宗教と同様、内部のことはよくわからない英国国教会ですが、Archbishop of Yorkは、カンタベリーにつぐ第二位にあります。影響力の強いその地位にあるのは、John Sentamu博士。



この方、発言も強力なら、行動も派手なことで有名です。
Archbishop Sentamu takes 12,500ft parachute plunge for army veterans
http://www.dailymail.co.uk/news/article-1024692/Archbishop-Sentamu-takes-12-500ft-parachute-plunge-army-veterans.html



 それはともかく、今年の夏、幾度となく新聞で報道されていたのは、イギリス各地の大聖堂や歴史ある教会が、資金難で建物の維持に四苦八苦しているということです。ヨーク大聖堂も日本語のペイジでアピールしています。実際、ヨーク大聖堂の内部では、世界的に有名な東側のステンド・グラスの大掛かりな保全・改宗工程が進められていて、実物を見ることは出来ません。また、建物外部の北東側の改修工事も進められていました。
 実物を目の当たりすると判ることだと思いますが、あれほどの大規模建造物を保持することにかかる資金は、地方自治体の予算を凌駕するほどではないかと思います。それを自分たちで調達しようとするのは、やはり難しいことではないかと。



 ヨーク大聖堂の見所は、観光であれば内部の装飾や建築の規模、更に塔に登るのはお勧めです。入場料には、自由に参加できる大聖堂内のガイド・ツアーの料金は含まれていますが、塔への入場料は追加になります。
 ガイド・ツアーは当然英語ですし、歴史的なことに興味がなければ退屈かもしれません。実際に参加しましたけど、話の半分以上は聞いている振りだけしていました。面白かったのは、ヨークだけどうして「Minster」と呼ばれるのか、ということ。しっかり覚えていませんが、「キリスト教徒が住む場所・地域」という意味があるそうです。「Cathedral」は偉い人が座る場所という説明だったような。



 先に書いたように、東側のステンド・グラスを今は見ることができません。が、あの壮大な建物の中にいるだけで、「非日常」と「日常」のはざ間にいるような不思議な感覚を持ちました。また、南側にある、晩秋の弱い光に輝く「ローズ・ウィンドウ」は殊のほか美しかったです。



 高い所がお好きなら、ヨークを高い場所から眺めてみたいのであれば、塔に登ることは旅の記憶として長く残ると思います。ただし、注意すべきは、1)履き心地のいい軽い靴(ハイ・ヒールなど言語道断です)、2)閉所が苦手な方、階段内部はとても狭いです。僕は普段は閉所は気になりませんが、最後はかなり息苦しさを感じるほどの狭さでした。



 不謹慎な感想かもしれませんが、宗教って「権力」でもあるんだなと改めて考えたヨーク大聖堂訪問でした。

男の魅力は、髭:ウィリアム王子

2008.12.16


空軍の訓練の合間の週末、狩猟に興じるウィリアム王子の顔には、髭。

Bearded Wills triggers new sporting talent as girlfriend Kate Middleton takes aim in hunting session
http://www.dailymail.co.uk/news/article-1094515/Bearded-Wills-triggers-new-sporting-talent-girlfriend-Kate-Middleton-takes-aim-hunting-session.html

Prince William grows a beard
http://www.telegraph.co.uk/news/newstopics/theroyalfamily/3759482/Prince-William-grows-a-beard.html

 テレグラフの記事によると、彼が所属する空軍では髭は禁じられているそうなので、既にいつものつるっとした顔に戻っているのかもしれない。髭の永久脱毛に汲々としているらしい日本の男性の皆さんはどうみるのだろう。



 この狩猟が動物保護団体の反発を呼ぶ所など、チャールズ皇太子の血はしっかりと流れているようだ。

 イギリス王室メンバーの暮らし振りを見るにつけ、自由を、そして基本的人権を取り上げられたまま、国を挙げての虐めに晒されているらしい日本の皇太子夫妻の心中はどんなだろと思う。

そうだ、ヨークに行こう2:Bettys Cafe Tea Rooms

2008.12.10
今回ヨークに行きたかった最大の理由は、「Bettyshttp://www.bettys.co.uk/)」でお茶をしたかったからです。ヨークに行ったら「Bettys」に行く、ではなく、「Bettysがあるからヨークに行く」、です。「Bettys」を知らなかったとしても、いずれヨークには行ったと思いますが(例えば、デイヴィッド・ホックニーが描いたヨークシャーの風景を体験しにとか、http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-454.html)、「Bettysでお茶」、これが長年の夢でした。

 ロンドンやイギリスの地方に行くと、「ティー・ルームでアフタヌーン・ティーを」と考える方はたくさんいると思います。大多数の皆さんは、ティー・ルームは紅茶とサンドウィッチ、それとケイキだけを楽しむ場所と思われているのではないかと。そういうティー・ルームも、確かにあります。しかしながら、アフタヌーン・ティーだけでなく朝から夜までしっかりした食事を出すティー・ルームもかなり残っているはずです。後者を代表するのが、Bettysです。
 Bettysをいつどのようにして知ったのかは思い出せません。が、ウェブサイトに掲載されている店の写真を見るたびに、「アガサ・クリスティが著作の中で描いたティー・ルームはこうであったに違いない」、と勝手に「理想のティー・ルーム」と思い込んでいました。で、実際に行ってみると、期待を裏切られるどころか、僕が描いていた「理想像」をはるかに超えるもの。久しぶりに、「イギリスで暮らしていて良かった」、と心の底から幸せを噛み締めました。2泊3日のヨーク滞在中、毎日通いつめ、トータルで6時間超をBettysですごしました。

 ヨーク駅に到着し、ホテルに荷物を預けて友人の一人とすぐさま向ったのは、Bettysヨーク本店(http://www.bettys.co.uk/cafe.asp?storyid=%7B943046B3%2D90DB%2D4D02%2D9940%2DEA4DCA0737DA%7D)。土曜日の遅めのランチ時間だったので、行列が出来ているだろうと思っていました。店に到着すると、店の前の歩道に20人ほどが待っていました。


(店の前の行列)

 数日前、珍しく10月に降雪があり、その影響で体の芯から凍えそうな日。寒風が吹きすさぶ屋外で長いこと待つのは嫌だなと思いつつ、初日の予定は「Bettysでまったりと過ごす」ことしか考えていなかったので、友人を説得してとりあえず30分は待とうということに。
 待ち始めて5,6分経った時に、フロア・マネイジャーの女性が外に出てきて、行列の先頭から人数を尋ね始めました。家族連れや観光客グループばかりだったようで、「4人」とか「5人」ばかりだったらしく、誰も店内には案内されませんでした。マネイジャーが僕たちのところまで来たので二人と伝えたところ、「お二人でしたら、テイブルが丁度一つ空いています。お入りになりますか?」。これに「NO」と言えましょうか、いや言えません。小躍りしたいくらいの嬉しさを抑えつつ、突き刺さる羨望の視線を背中に感じつつ(かなり誇張しています)店内へ。
 店内の装飾は特別に派手なものではありませんでした。が、常に二人は居るフロア・マネイジャーの目が行き届いているようで、清潔感のある明るい雰囲気。また、テイブルの間をきびきびとサーヴして回るウェイトレスの皆さんの働きぶりに、「このティー・ルームはあたりだ」と確信しました。

 体が冷えてしまったので、温かい食事にしようということに。友人は、Fried Fillet of Haddock(簡単に言えば、フィッシュ・アンド・チップス、目当てのラム・シチューが既に売り切れ)、僕は熱々の料理のように思えたParmesan Chickenを。料理が来るまで、地元ビールを飲みつつウェイトレスの皆さんの楽しそう、且つ自分の役割をきちんと理解している働き振りに、「まだこんなイギリスが残っているんだな」、と。

 注文してから10分くらいして料理が運ばれてきました。皿に盛られている分量(友人のハドックはまるで草鞋のよう)を見て吃驚している僕に向って友人は、「知らなかったのかい?ヨークシャーでは一皿の量が多いんだよ」、とこともなげに。先に言って欲しかった。食事のあとにアフタヌーン・ティーも楽しむつもりだったので。


(料理の写真は難しい。チキンの上に玉葱、ジャガイモ、チーズ、マッシュルームが山盛りになっていて、厚さは2cmくらいでした)

 食後は、友人はコーヒーだけ。店内のあちらこちらに運ばれるアフタヌーン・ティーのサンドウィッチとスコーンの盛り付けを見て、あの分量はさすがに無理と判断し、クリーム・ティー(紅茶とスコーン)に変更し、ケイキを一つ(結局同じ)。
 二日目は、Little BettysBettys Sandaeの分量に再び驚くも、久しぶりに高品質の生クリームを堪能。そして、三日目にやっとアフタヌーン・ティーに到達しました。至福の時間でした。

 Bettysには、当然ですがマイナスと捉えられる点もあります。観光都市のランドマーク的な飲食店としての自負とそれを保つ為に、どのようなタイプの顧客を受け入れることに重きを置いているかという視点から考えると、特に歩行に障害がある皆さんには利用しづらい店舗構造です。例えば、Little Bettysのティー・ルームは1階(日本風に言うと2階)にあり、狭い階段を登らなければなりません。また、歴史ある、つまり古い建物を利用しているので、床が歪んでいます。それと、ウェブのメニューをご覧になると判ると思いますが、値段設定はロンドンのそれと大きな差はありません。
 企業としてどの客層をターゲットにしているのかは明らかであり、その客層を惹きつける為にしている努力には感心しました。ヨーク本店ではお手洗いは地階にあります。これもまた、足が不自由な方には厄介な点でしょう。しかしながら、「地方の一企業がここまでしているのか」とちょっとふいを突かれたのが、男性トイレに赤ちゃんのおしめを替える為のベビー・ベッドが設えてあったこと。ロンドンですら、家族連れをターゲットにした飲食店で男性トイレに「も」ベビー・ベッドを置いている店なんて、かなり少ないと思います。また、安定雇用を提供する優良企業として、地域経済への貢献度は高いのではないかと思いました。

 食べ物ついでに、ヨークで利用したレストランをご紹介。一つはMelton'shttp://www.meltonsrestaurant.co.uk/)で、もう一軒は31Castlegatehttp://www.31castlegate.co.uk/)。宿泊したホテルのレセプションのお姉さんも、メルトンズのマダムも何度も強調していましたが、「観光都市」ヨークは、競争がとても厳しい街とのこと。ちょっとでも手を抜くと、顧客はすぐに離れていくそうです。
 そんな中で、両レストランとも、主な客はローカルの皆さんとのことでした。正直、メルトンズは、最初は予約を断られたので驚きました。で、行ってみて納得。土曜日の夜とはいえ、ほぼローカルの客層で満員、しかも料理の質も上等。ついでにお値段も「ロンドン」に遜色ないくらいでした。ここでもウェイトレスの皆さんの楽しそうな働きぶりは見ていて心地よかったです。
 31Castlegateは、ヨークでは数少ない日曜日の夜も営業しているまともなレストランとしてホテルや長期滞在の観光客からは重宝されているようでした。僕はハロゲイトからきてくれた友人と一緒に日曜日の午後8時近くに行ったのですが、そんな時間でもまだ「EarlyBird」メニューがあり、とてもお得でした。一つ残念だったのは、ウェイターの男の子(と言っても二十歳くらいかな)が最後にしたこと。
 確か、ニュー・ヨーク・タイムズオブザーヴァーの付録雑誌で読んだと記憶しています。クレディット・クランチの影響が目立ち始めた頃、倣岸で偉そうなインヴェストメント・バンカーの客を困らせる為に、支払いの時に、「すいません、お客様のカードがカード会社から拒否されました」と言って、客が慌てふためく姿を見て楽しむウェイターが増えているという記事でした。で、ヨークシャーの若者は僕たちにそれをかましたわけです。そんなことはこちらは百も承知なので、慌てふためく代わりに睨み付けてあげたところ、慌てて「I am sorry, I am joking」と。誰彼なくこんなことをやっているとしたら、愚かなことです。

 Bettysに話を戻すと。ウェブに明記されているように、ヨークシャーの外に支店を出すつもりはないようです。その代わりかもしれませんが、通販専用のサイト(http://www.bettysbypost.com/)はかなり充実しています。また、ハロゲイトでは料理コース(http://www.bettyscookeryschool.co.uk/、写真で微笑んでいる方、日本人に見えます)を開設しています。ティー・ルームのテイブルにあったパンフレットによると、料理のほかに「ナイフの研ぎ方」教室なんてのもありました。

 もう一つ体験したいことがあるので、ヨークには機会があればまた行きたいと思っています。できれば、イングランドの自然が輝く初夏に。もしBettysが引き受けてくれるなら、ピクニック・ハンパーをこしらえてもらう。それをもってヨーク郊外に行き、丘の頂上に座ってサンドウィッチを頬張り、そしてビルダーズ・ティーを飲みながら、Yorkshire Dalesの美しく輝く緑の丘陵地帯を日がな一日眺める。これをいつか、実現させたいです。



そうだ、ヨークに行こう1

2008.12.06
The Daily Telegraph紙の2008年度読者投票で、「イギリス国内で行きたい都市」の堂々一位を飾ったのは、イングランド北部にあるヨーク。行ったのは、この投票結果が発表される前、11月の最初の週末。時代の先をいっているように思います。

Telegraph Travel Awards 2008
http://www.telegraph.co.uk/travel/3520300/Telegraph-Travel-Awards-2008.html
http://www.telegraph.co.uk/travel/3520170/Telegraph-Travel-Awards-2008-the-winners.html

 ヨークに行きたかった最大の理由(あとでみっちり)は「ヨーク」という都市への興味ではなかったのですが、結果として大変楽しい滞在でした。

 ヨークの中心は、城壁に囲まれた観光区域という感じですが、城壁の内側、外側のどこに行っても白人が大多数。多文化・多人種が渦巻くロンドンと比べると、列車で2時間の距離ながら、まるで別の国に行ったようでした。中世の香りが漂う、イギリス「白人」のための都市、良くも悪くもそんな印象を持ちました。



 その印象は正しかったようで。滞在中に、ヨーク北部にあるハロゲイト在住の知人と食事した時に、街の雰囲気から感じたことを伝えると、その通りだと。近隣のリーズと比べるとその違い明らかだそうです。リーズは、プチ・ロンドンといえるほど多人種化が進み、治安が悪化している。その結果、そういったところを敬遠する裕福な白人層がヨークに住みたがる。
 研修仲間でヨーク出身の女性からも同様のことを聞きました。イングランド北部在住の裕福な人たちの多くがヨークに住みたがるので、市の中心域の住宅価格は一般の労働者階級が購入できないほど高騰する。結果として、イギリス人が郷愁を求めて来るのよ、とは同僚の意見です。
 もう一つ印象に残ったのは、人が優しい。ホテル、カフェ、レストランなどどこに行ってもホスピタリティは高く、そして道行く人たちに道を尋ねると、「尋ねてよかった」と思える安心感。観光が主要産業であれば当然なのかもしれないですが、ロンドンが変なのであって、イギリス人はもともと働き者なのかな、と思うほどでした。何度か利用したタクシーでも、運転手の皆さんは気さく。ただ、ヨークシャー訛の英語を早口で喋られると、何を言ってるんだかまったく判りませんでした。

 きちんと調べたわけではありませんが、ヨークの現在の主要産業は観光。ヨーク駅に隣接する「国立鉄道博物館National Railway Museum)」以外、多くの観光スポットは城壁の内側にあります。ヨーク大聖堂、中世の街並みの一つである「Shambles」、小石が敷き詰められたとても歩きづらい歩道等々。どうしてだか判りませんが、通りごとに少なくとも2軒は宝石店があり、イギリスの伝統のお菓子(必ずしも美味しいとは限りません)を売る店はいつも人でいっぱい。


Shambles

 ヨーク大聖堂の後ろに広がる街の通りは、ちょっとした迷路のようで、一つ角を間違えると目当ての場所になかなかたどり着くことができない。一緒に行った友人の一人曰く、傍から見ると無秩序に思える中世の都市計画のことを、「Higgledy-piggledy」と言う単語で形容することがあるそうです。昼間はその「Higgledy-piggledy」な街並みは面白いですが、街が夕闇に沈むとどの曲がり角も同じに見えて。で、道に迷って偶然見つけたのが、和雑貨のお店。
http://www.thejapaneseshop.co.uk/
 イングランド北部で和雑貨の需要がどれだけあるのか、どれくらい日本人が住んでいるのかは全く知りませんが、10年くらい営業しているそうです。

 ロンドンからヨークへ列車で行くとき、出発駅はキングス・クロス駅になります。チケット購入はこちらのサイト(http://www.nationalrail.co.uk/)で簡単に。かなり前に書いたはずですが、往復切符を購入するより、片道扱いで「往復」を購入したほうがずっとお得、と言うのは今回も同じでした。往復の「普通席」が£250で、「片道往復」の「ファースト・クラス」がネット予約割引で£105なら、迷わずファーストです。
 行きは、イングランド北部、及びスコットランドへの長距離鉄道の大手、Great North Eastern Railway (GNER)で。割引ファースト切符では、キングス・クロス駅構内の特別ラウンジは使わせてもらえませんでしたが、快適な座り心地のシートに身を沈め、イングランドの田園風景を眺めながら飲むウェルカム・ティーは、ティー・バッグでしたけど美味しかったです。
 ロンドンに戻る時は、ヨークからさらに北にあるサンダーランドSunderland)に本社を置くGreat Central Trainhttp://www.grandcentralrail.co.uk/)という会社が運行する列車であることを、迂闊にも予約のときに気がつきませんでした。大変、がっかりしました。
 食堂車が何らかの理由でついていないといことで、紅茶もコーヒーもなし。更に、乗務員が足りなくて車内販売もなし。そのくせ、乗務員一堂は、ファースト・クラス車両の片隅に座って、ロンドンに到着する直前まで世間話に興じたまま。
 サンダーランドは、クレディット・クランチの影響をイギリス国内で最も酷く受けている都市の一つで、失業率も突出しているはず。職を失わない為にも熱心に働こうという危機感は、微塵も感じられませんでした。車両の不備は乗務員の責任ではないですが、最後でちょっとがっかりしました。

生きること、生かされること2:高度医療と人類という「種」

2008.12.04
高度医療の是非に判断を下すなんてことを書くつもりではないですし、またそのような知識も持ち合わせていません。慎重に言葉を選ぶつもりですが、おかしい点があったらご教示いただけると嬉しいです。

 その1(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-956.html)で引用させてもらった朝日新聞の記事には、もう一つ小さな間違いがあります。ハンナ・ジョーンズさんは、白血病治療の為の化学療法のために心臓に穴をあけたのではなく、あまりにも過酷な治療のために心臓に穴があいてしまった。そのために、少しでも生存期間を伸ばすために心臓移植が必要だけどハンナさんは断った、というのが正しい解釈のはずです。

 イギリスでは、ハンナさんの決断が報道される前に、尊厳死を望む女性が「死ぬ権利」求めて提訴したということが何度か報道されていました。そのような下地があったからか、13歳の少女が本人の命にかかわる治療の選択の決断を下せるかどうかという論点を含めて、臓器移植医療の現状と問題点を取り上げた特集がかなり組まれました。

 情報ソースに偏りがあるかもしれないですけど、The Guardianがとても興味深い特集記事を掲載しました。現在のイギリスにおける、臓器移植がどのように進められるかの一例です。記事をじっくり読んでいただけると判ると思いますが、臓器を提供した側と受けた側にいる人々のインタヴューが内省的であるのに対し、医療側の人々のインタヴューは機械的ということではないんですが、理路整然としているように感じました。

The organ donation chain
http://www.guardian.co.uk/society/gallery/2008/nov/18/organ-donation-health?picture=339752796
http://www.guardian.co.uk/society/video/2008/nov/18/organ-donation

 東京で働いていた頃、科学系の報道に携わっている方と何かの折に臓器移植治療について話をしたことがあります。10年以上も前のことなので、今はご本人の考えも変わっているかもしれないですが、その時は「臓器移植にはちょっと距離をおいている」とのことでした。僕は単に、「人が助かるんだから良いことじゃないのかな」、と。でも、ガーディアンの記事を読むと、そんなに単純なことではないですね。
 で、移植医療を含めて、最先端、もしくは高度医療って人類にとってどのような意味があるかなと考え始めた時に、スペインから飛び込んできたニュース。

Transplant first a giant leap for surgery
http://www.guardian.co.uk/society/2008/nov/19/stem-cell-transplant-claudio-castillo
Windpipe transplant breakthrough
http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/7735696.stm

 患者本人のステム・セルから作った気管を移植した、というものです。日本ではあまり大きく報道されなかったようですが、イギリスでは、ブリストル大学がこの「創造」に携わっているからか、かなり詳しく報道されました。


1 Trachea is removed from dead donor patient
2 It is flushed with chemicals to remove all existing cells
3 Donor trachea "scaffold" coated with stem cells from the patient's hip bone marrow. Cells from the airway lining added
4 Once cells have grown (after about four days) donor trachea is inserted into patient's bronchus

(BBCの記事から)

 神の領域の侵害とか、いや人を救う為に医療技術は発達して行かなければならない等、様々な、そして相容れない意見がたくさんあることでしょう。不謹慎であることは承知の上で高度医療についてふと思ったのは、「人類という種族間で、本来であれば淘汰されていくであろう弱い遺伝子をもって生まれた人たちの苦しみを引き伸ばしていることになっている可能性もあるのではないだろうか」、と。傲慢でしょうか?
 誤解されないでください。こんなことをかいていますが、自分自身が重い病に冒されたら、また家族や友人が難病にかかったら、死に物狂いで治療法を探し回ると思います。「生きたい、生き延びたい」、「生きて欲しい」。必死になって足掻くに違いないです。

 医療によって救われる命なら、救われるほうがいい。でも、治癒されるであろうはずの「命」の存在を脅かすほど過酷な治療の場合、受けるかどうかの選択は誰にあるのか。また、そのような医療は、地球上の「生物」の一種にすぎない人間の本来の生存能力と生体機能を踏み越えてしまっているのではないだろうか。そんなことを、ハンナ・ジョーンズさんの報道から思った次第です。

 「AERA」の12月1日号にも同様な記事がありましたが、以下のリンクは、「cystic fibrosis」という、現段階では完治させる方法が全くない、肺を冒す先天的な病気をもって生まれた少女が選んだ生き方についてです。

'We told her we loved her. She said, "Thank you for everything"'
http://www.guardian.co.uk/society/2008/nov/12/health-childprotection

 ゴードン・ブラウン首相の下のお子さんも、同じ病気です。

Brown confident on son's disease

http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/6158479.stm

 この世界に生まれることは、あらゆる意味で「平等」ではないのかもしれないです。だからこそ、自分自身が「誰かを助けることのできる立場」に居られる間は、出来ることをやることができればと願います。

生きること、生かされること1:子供の為に機能しない「児童保護」政策

2008.12.01
11月14日に、朝日新聞のウェブで報道された以下のニュース、ご覧になられた方も多いと思います。

最期は家族といたい…13歳少女、延命手術を断る 英国
http://www.asahi.com/international/update/1114/TKY200811140114.html

【ロンドン】半年の命と宣告された英国の13歳の少女が、延命策としての心臓の移植手術を拒否した。病院側は手術の実施を求めて法的手段を試みたが、少女自らが説得して断念させた。病院ではなく自宅で家族に囲まれ、普通に暮らしながら死んでいく権利を勝ち取った。

 英メディアによると、英中西部ヘレフォード近くに住むハンナ・ジョーンズさんは5歳の時、白血病を患った。心臓に穴を開けて化学療法を受けるなど入退院を繰り返し、過去2年間で数回の手術を受けた。それでも心臓の10%しか正常に機能しない状態で、今年7月には医師から余命半年と告げられた。

 病院側が勧める心臓の移植手術は、成功する可能性は高くなく、白血病が再発する恐れもあった。ハンナさんは失敗して病院で死ぬより、家族と暮らすことを選び、移植手術を拒否、自宅に戻った。ところが、病院側は手術の実施こそがハンナさんの命を助ける手段と思い、裁判所に提訴して家族からハンナさんを引き離す意向を伝えてきた。

 これに対して、ハンナさんは「小さい時からずっと病院で、ひどい思い出ばかりだった。家族と離れたくない」と訴え、病院側に提訴を断念させたという。

娘の決断について、元集中治療室の看護師だった母のカースティさん(42)は「親にとって軽い決断ではなかった。でも、彼女の意思をかなえてあげたい。娘は、親が思うより成長していた。心から誇りに思う」と話している。



 このような社会ニュースが日本でも報道されたことは、現在のイギリスが抱える社会問題を知るよい機会だと思います。朝日新聞の記事の9割以上はイギリス国内で報道された内容を正確に伝えています。しかしながら、朝日新聞のこの報道は、イギリスでこの少女のことがどうして社会問題として取り上げられたのかの医療問題と同じくらい大事な点が欠落しています。
 欠落しているのはイギリスの「Child Protection:児童保護政策」が機能不全に陥っている点です(移植手術等の高度医療については別項で)。

Hannah's choice
http://www.guardian.co.uk/society/2008/nov/12/health-child-protection

 The Guardian紙の記事によると、ハンナさんと彼女の家族のことを知らなかった医者が、彼女が移植手術を受けないのは、彼女の両親による「虐待」の可能性があるから、ハンナさんを保護しその結果として「移植手術」を受けられるよう、「ハンナさんを虐待」している両親から引き離す為に、「Child Protection」を発動させた、と。当然、ハンナさんの決断を断腸の思いで受け入れ、彼女の幸せを優先させていたご両親には寝耳に水。


 ハンナさんのことがイギリスで報道されたのは11月12日。同じ日、イギリスでは「Child Protection」の機能不全によって引き起こされた悲劇への慟哭がやむことはありませんでした。ロンドン北部のHaringey区で、母親、彼女の恋人、さらに同居人の三人の大人によって虐待されつづけた挙句、17ヶ月の幼児が死んだ、いや「殺された」と。
 殺された男の子の名前は、「Baby P」としか報道されていません。彼は、「虐待」されている可能性が高いから要保護との話し合いが何度も何度も、何度も何度もHaringey区の児童保護・社会福祉の担当部署でされたにもかかわらず、ソーシャル・ワーカーは彼の虐待の事実を見つけられず、彼の死の数日前に診察した医者は「問題ない」との診断。そしてBaby Pは血まみれの子供ベッドで、痛みしかなかった17ヶ月の短い生涯を閉じました。

http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/baby-p/
http://www.guardian.co.uk/society/baby-p
http://news.bbc.co.uk/1/hi/england/london/7733627.stm

 この事件の裁判のニュースが報道された12日は、「ゆりかごから墓場までのイギリスはもはや過去のイメイジだな」、とあまり深く考えずに読んでいました。が、日を追うごとに明らかになる虐待の真実は、読みつづけられませんでした。いい人ぶるとかのレヴェルではなく、Baby Pが受けつづけた痛みを思うと涙がとまりませんでした。「なんの為に生まれてきたの?」、と。

 当然、政府の不手際も責められましたが、メディアと人々の怒りはHaringey区に向けられました。その怒りを煽ったのが、「Child Protection」を含む社会福祉部署のトップの女性による発言。

The child(Baby P) was killed by members of his own family and not by social services. The very sad fact is that we cannot stop people who are determined to kill children.

 今日、12月1日、政府による緊急調査の結果が提出され、不手際はなかったと頑なに辞任を拒んでいたこの女性は、政府の強権発動により解雇され異動させられました。

Baby P report: Balls removes council child protection chief
http://www.guardian.co.uk/society/2008/dec/01/baby-p-childprotection1

 今日のガーディアンの報道では、イギリスだけではないようですが。

After Savanna
http://www.guardian.co.uk/society/2008/dec/01/child-protection-baby-p-netherlands

 両親から愛されているハンナを親から引き離そうとした「Child Protection」と、虐待を続ける母親の元に戻しつづけた挙句、Baby Pを見殺しにした「Child Protection」は、全く同じ児童保護政策です。


Baby P

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