LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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2009年07月の記事一覧

7月28日のコラム

2009.07.28


*著作権は日本経済新聞社に帰属します。


 日本では毎年抽選があることを、こちらの園芸好きの友人たちに話したところ、帰ってきたコメントはまったく同じ。

 「1年なんて、長期計画が立てられないじゃないか」。

 理に叶っていると思った。

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イタリアは、イギリス人より日本人が好き

2009.07.26
ロンドン、寒いですけど、昨年や一昨年と較べると一日中雨の日、というのが少なくて快適といえば快適です。

 今月中旬、朝日新聞が掲載したイタリアが日本人観光客を呼び戻そうとがんばっているという記事、大変面白く読みました。朝日新聞様、転載ご容赦のほどを。

イタリアの日本人観光客激減 「サービス悪い」指摘も
http://www.asahi.com/international/update/0718/TKY200907180084.html

【ローマ】イタリアを訪れる日本人旅行者が減り続けている。今年はピーク時の半分ほどになる見込みだ。ユーロ高や新型インフルエンザの流行など、要因はいろいろあるが、豊富な観光資源にあぐらをかいてサービスの水準が低い、といった構造的な原因も指摘される。観光は大きな収入源だけに、伊当局もようやく外国人旅行者呼び込みに本腰を入れ始めた。

 イタリアは、世界遺産(文化遺産)の数が世界で最も多い。かつては日本人にとって欧州で最も人気のある旅行先だった。しかし、伊政府観光局によると、イタリア国内の空港に到着した日本人は約147万人(07年)で、97年の約217万人をピークに減り始めた。09年は100万人前後まで急減すると予想されている。現在、日本人にとっての欧州の人気観光地はフランスとドイツで、イタリアは両国に水をあけられている。日本の旅行客は減っているが、イタリアにやってくる世界からの旅行者の総数は増えている。

 さまざまな要因が指摘されている。

 西欧では物価が安いことで有名だったイタリアだが、02年の統一通貨ユーロの流通で物価水準が上がった。日本政府観光局の統計などによると、イタリアを訪れる日本人が急減したこの数年間は、中国を訪れる日本人が急増した時期と重なる。また最近では、ユーロ高や原油高に伴う燃料サーチャージ値上げなどで日本人観光客減に拍車がかかった。ユーロ高と原油高は今春一段落したが、新型インフルエンザの流行がゴールデンウイークを直撃した。

 ローマの外交関係者は「ホテルやレストランなどのサービスが非常に悪いことも背景にある」と指摘する。世界遺産などの観光資源をあてにした「殿様商売」をしてきたため、サービス面の充実を怠ってきたというのだ。また、レストランやタクシーで法外な料金を請求される「ぼったくり」などの影響で、「何度も訪れるリピーターが減った」(旅行会社)との見方もある。

 ダボス会議を主催する世界経済フォーラム(WEF)の09年版「旅行・観光競争力リポート」ではイタリアは28位で、日本(25位)を下回った。同リポートによると、サービス業の人材訓練や観光関連の物価などの評価が低い。

 観光大国の地盤沈下に危機感をもったベルルスコーニ首相は「私の在任中に観光収入を国内総生産(GDP)の20%に倍増させる」と表明した。特に日本人旅行者の減少が激しいことから、ローマ市は日本語の公式観光ウェブサイトを初めて開設(http://jp.turismoroma.it/)。クトルフォ副市長は「今年の夏はいつもと違う視点でローマを発見してほしい」と呼びかけている。


 日本人、これほどイタリアから愛されているなんて、イギリス人にとっては羨ましいことだと思います。この朝日の記事が掲載された同じ週に、The Guardian/ The Observerは一週間、イタリア語学習教材を毎日無料付録として購読者全員にプレゼント。新聞についてくるものですからたいしたものではありませんが、CD2枚に、毎日トピックを変えて「こんな時には、この言い方をすべし」、という用語集。その一回目は「旅と宿」についてで、イタリア在住のイギリス人ライターの愛憎入り混じったイタリア人気質紹介には大笑いしました。

Moving in the right circles

http://www.guardian.co.uk/travel/2009/jul/13/learn-italian-phrases-travelling

 曰く、

Similar nightmares are the slow train with no air conditioning and the airport bus that has to take you all of 50 yards to your plane but inexplicably never moves.
 友人(http://fumiemve.exblog.jp/)の日々の交通機関との果てしない格闘は事実だったことに改めて気付き、カフェで働く皆さんにとって、一見の客は、

A person they will never see again is not a person but a chore
.(二度と現れない客は、人ではなく雑用)。「人」として認知されたければ同じ場所に少なくとも3度は通うべし(you appear on an Italian's radar as human about the third time they see you. So stick with the same place)。イタリア人に貴方の存在を認めさせるには、貴方自身の空間(直訳)を獲得しなければ(Your space is never yours until you take it)。

 そして何故イタリアの列車は酷いけど、これこそ「イタリア」そのものなのは、

But the classic Italian travelling experience is the train. Italians are so attached to family and their home town, they will undertake the longest of commutes rather than move. This has forced the government to keep train prices down. A regionale – the slow train – from Venice to Milan will cost you only €14.50 . It's shabby, there's no air conditioning, but you see Italian life as it is lived: the chattering telefonini; the paunchy labourers in their white vests; the adolescents talking 10 ways to prepare a lasagna; and the ticket collector negotiating fines with all the people who haven't stamped their ticket.

 こんなにまでしてイタリアを理解しようともがいているイギリス人が、「イタリア政府は日本人観光客のほうが大切」という態度であることを知ったら、暴れだすのではないかと。

 日本は既に蒸し暑い夏が始まっているとのこと。みなさん、夏ばてすることなく夏を楽しまれますように。

葡萄畑の下草刈りは羊の仕事

2009.07.26
イギリスの話題ではないけれど、25日のThe Guardianにニュー・ジーランド発の面白いニュースがあった。

The low-carbon wine baa
http://www.guardian.co.uk/environment/2009/jul/22/wine-animals

 1000ヘクタールのワイン用の葡萄畑を持つ農家の悩みは、雑草刈りでかかるトラクターの燃料費。ものは試しに、昨年ジャイアント・ギニー・ピッグを畑に話した。彼らはよく働いたらしい。が、鷹にとっては降って湧いたようなご馳走。あっという間に平らげられてしまったとのこと。合掌。
 記事によると、葡萄畑の下草刈りに羊を使うのはよく行われているらしい。問題は、葡萄が花をつけ、実ったときに羊はそれすら食べてしまうこと。


(これは普通の羊)

 そこで考えたのが、本来ペット用に増やされてきた「Babydolls」という小さな羊を使うこと。この羊は、成長しても体高が60センチにしかならないので、110センチ以上の所に実る葡萄を食べることはない、らしい。だから、実ったときに追い払う必要もない、ということらしい。


Babydolls

 メリノ・サクソンという種と掛け合わせて肉も売ろうという計画らしい。ま、葡萄畑の雑草を食べた羊の肉が「ワイン」の味がするということないだろう。

美味しいラム・ステイキが僕の口に届くまで
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-950.html

 最初に目にしたニュース・ソースを見つけられなかったけど、最近、イギリス国内ではウェイルズでもワインが生産されていることを知った。イングランド南東部のケントで生産されていることはかなり前から知っていたけど、ウェイルズというのはとても意外。

The sparkling future of English & Welsh wine
http://www.spectator.co.uk/wine-club/features/3674278/the-sparkling-future-of-english-and-welsh-wine.thtml

http://www.englishwineproducers.com/index.htm

 BBCの報道では、既に日本にも輸出されていて人気が高まっているそう。

秋津が飛ぶ国、イギリス:トンボ・センター開園

2009.07.26
ロンドン中心部では滅多に見ることはないけど、郊外、特に湿地帯ではイギリスでもけっこうトンボを見かける。今日、7月26日に、ケンブリッジシャーからサフォークにかけて広がるWicken Fenhttp://www.wicken.org.uk/index.html)にあるナショナル・トラストが管理するエリア(http://www.nationaltrust.org.uk/main/w-wickenfennationalnaturereserve)内で、The Droagon Dragonfly Centreがオープンする。



One in three dragonflies under threat, says National Trust
http://www.telegraph.co.uk/earth/wildlife/5900420/One-in-three-dragonflies-under-threat-says-National-Trust.html

Dragonflies in danger of extinction seek sanctuary at new rescue centre
http://www.guardian.co.uk/environment/2009/jul/25/dragonfly-sanctuary

A celebration of the British dragonfly
http://www.guardian.co.uk/environment/gallery/2009/jul/23/uk-dragonfly?lightbox=1

 絶滅の危機に瀕している昆虫はトンボだけに限らないけど、国内に多くの湿地帯があるイギリスにとって、トンボがいなくなってしまうという状況はなんとしても避けたいのだろう。



 Wicken Fenには行ったことはまだないけど、ウォーキングや自然観察の場としてかなり知られている。イースト・アングリア地方は、Big Sky Countryという別名で呼ばれるように平坦な土地が広がるところで、地域内にFenと呼ばれる湿地帯があることでもよく知られている。新潮社の「クレストブック・シリーズ」の一冊、「ウォーターランドhttp://www.shinchosha.co.jp/book/590029/)」はフェンを舞台にした小説。

ロンドンの地上鉄(オーヴァー・グラウンド)

2009.07.23
最近、新型車両を導入したり、2012年開催予定のロンドン・オリンピックのために整備を勧めていることもあって、トランスポート・フォー・ロンドンhttp://www.tfl.gov.uk/)が頻繁に宣伝しているのが、London Overground


(新型車両のCG。例えば東京の通勤電車と較べれば10年は遅れているかもしれないけど、ロンドナーにとっては「オオッー!」という感じらしいです)

 ロンドン・オーヴァーグラウンド(以下地上鉄)自体は以前から存在し、全く新しい形態の交通機関ではないです。ただ、下の既存のネットワークをご覧になれば判るかと思いますが、観光だけでなく、国際ビジネスでロンドンを訪れた人が利用するようなものではない路線図と断言できるのではないかと思います。地下鉄の駅との接続も機能的ではないし。ロンドンに住んで約10年ですが、まだ2回しか利用したことがないです。観光でロンドンを訪れて使うとすれば、ロンドン北西部のハムステッドやフィンチリー周辺に滞在し、そこからロンドン南西部のキュー・ガーデンやリッチモンドに行こうという時には、ロンドン中心地を経由して地下鉄を乗り継いで行くよりずっと手軽です。



 どうして地上鉄の整備を進めているかの最も大きな要因は、やはりオリンピックだと思います。選手や観客の移動手段を増やす、ということでしょう。ただ、オリンピック開催の中心地となる(はずの)ストラトフォードと、幾つかの競技の予定地となっているグリニッチを直接つなぐルートがない状況では、ロンドンの都市機能を高めるという印象は薄いです。



 上の図は、2010年にはこうなっているであろう(でも絶対になっていないに違いない)路線図です。新しい点は、ロンドン南部、テムズの南側の新しい路線です。ウェスト・クロインドンへはヴィクトリアからもいけるはずですから目新しさはさほど感じませんが、何が凄いって、デンマーク・ヒルとクラッパム・ジャンクションがつながること。地理に詳しい地域ではないので間違っているかもしれませんが、この二つの駅の間を通勤するとなると、現在では乗換えが生じるはず。
 テムズの南側のロンドン南部は、本当に公共交通機関のネットワークが貧弱。というよりも、使い勝手が全く考慮されていない。ロンドン南部と言ってもかなり広いです。例えば、東のグリニッチから西のウィンブルドンまで直行するような路線はありません。そういう不便さのことを思うと、クリスタル・パレスからリッチモンドまでの地上鉄ルートがあれば、ロンドンの東西南北を結ぶ大きな環状公共交通路線が確立されて、理想的な交通機関になるのではと素人は思います。



 上の図にあるのが、地上鉄のロゴ・マーク。地下鉄は赤です。



 この図の一番上にあるロゴは、英国鉄道のもの。ロンドン市内でいろいろな交通機関を試したい時は、駅に表示されているロゴによってどの交通機関があるのかが判ります。

 ちょっとだけ観光情報。ウェスト・ハムステッドから左に下った所にあるケンサル・ライズの駅前にあるイタリアン・デリは、けっこういけました。

老齢の友人

2009.07.19
ロンドンから西にいったバークシャーのある村に住む友人に電話。友人は86歳。第二次世界大戦中にイギリスに来たポーランド人。普通の人。今では立派なイギリス人であるけど、勿論ポーランド語を忘れたわけではない。残念なことに、彼の今の体力では故郷に戻れることはほぼ不可能。

 50年以上連れ添ったイギリス人の奥さんを9年前になくしてからは、息子家族から離れて一人暮らし。以前は数か月に一回くらい訪ねていたけど、ここ2年くらいは年に1回くらい。その代わり、毎月一回は電話している。

 心臓の具合が悪いし、年齢だから仕方ないけど白内障。電話するたびに、「死んでいない」ことを祈る。で、彼が受話器を取ると、ホッとする。

 やっぱり心臓の具合はよくないらしいけど、待望の曾孫が相次いで生まれることを凄く喜んでいた。
 
 「じゃ、まだ死ねないね」。

 「死ぬときは死ぬだけ。でも、頑張るさ」。

 今年の夏は何も予定がないから、8月になったら一年ぶりに訪ねたい。訪ねても、別に彼の心臓の具合を良くすることなんて出来ない。ただ、お茶を飲みながら彼の体調がどんなだかを聞くだけ。それだけ。でも、それが楽しみ。

 最近になって、「彼もいつ死んでもおかしくない」、ということを漸く受け入れている自分がいる。友人に何かをしてもらいたいわけではない。ただ、ロンドンで暮らしてきた年月が、友人の人生の最後と重なり合うことが、わけもなく嬉しい。

 それに、彼の畑で取れる夏野菜をいただけるのも、楽しみの一つ。

名前は語る

2009.07.19
ダウンズ夫妻の「尊厳死」の報道で、興味を惹きつけられたのは夫妻の「死」の選択でなく、彼等が子供につけた「名前」の選択でした。息子の名前は、Caractacus、娘はBoudicca。イヴニング・スタンダード紙の報道の最後に、彼等の名前の由来が説明されていました。

Children named after ancient british warrior chiefs

Sir Edward and Lady Downes named their children, Caractacus and Boudicca, after two ancient British warrior leaders who fought the might of Rome: Caractacus was the courageous chieftain who led resistance to the Roman invasion in the first century. After losing the battles of the Medway and Thames, he fled to south Wales where he led a successful guerrilla campaign. He was eventually defeated in AD50, captured and taken to Rome where Emperor Claudius, impressed by his bravery, spared his life. Edward Elgar composed a cantata based on the story.

Boudicca was the warrior queen who led an uprising against the invading Romans. They flogged her and raped her daughters after seizing control over the Iceni people in East Anglia. Boudicca's forces launched a counter attack, defeating the Romans and destroying Colchester, London and St Albans. She was later defeated and probably poisoned herself.


http://www.thisislondon.co.uk/standard/article-23719250-details/BBC+conductor+and+wife+die+in+suicide+clinic/article.do

 最近、日本ではとんでもない名前をつけられてしまった子供が増えているそうですが、この二人の名前のように古臭くても何かを語れる名前のほうがまともなのではないかと感じます。ま、二人が名前を理由にいじめにあったかどうかは判りませんが。日本の場合、「この漢字は名前で使えるかどうか」なんて益体もない井戸端会議が延々と続いていることに、常識と言葉を組み合わせる能力の衰退に拍車が掛かっている現実を見る思いです。

 名前に関してもう一つ。日本国内でも、「この苗字はどこそこの地方から」と名前がどのように移動してきたかという視点から歴史や文化の流れを考察することができると思います。最近、ある友人からジュウイッシュの名前で面白い話を教えてもらいました。調べてみると、僕が知らなかっただけでよく知られた事実のようですが。

 ウィキペディアでざっと読んで得た情報は、友人が教えてくれたものとほぼ同じでした。スペイン・ポルトガルに移住したユダヤ人のグループを「セファルディム(Sephardim)」系、ドイツ語圏・東欧諸国に移住したグループは「アシュケナジム(Ashkenazim)」系。アシュケナジムというのは「ドイツ人」と言う意味だけど、「アシュケナジム」姓を名乗るのはセファルディム系である、と。ここから考えたのは、「ピアニストのアシュケナージの先祖はどんな旅をしてきたのだろう?」と言うこと。「名前」の移動で歴史を考察するのって、かなり楽しいです。

君の名は
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-338.html

ある指揮者の最期の選択:尊厳死

2009.07.19
7月14日に、イギリスを代表する指揮者の一人、Sir Edward Downesが亡くなったニュースが大きく報道されました。記事によると、イギリス国外ではそれほど名を馳せた方ではなかったようですが、ロイヤル・オペラとの関わりは大変深かったようです。
 どうして彼の死が大きく報道されたかというと、ダウンズ氏と彼の奥様は「尊厳死」を選択し、チューリッヒにあるクリニックで一緒に人生の幕を引いたからです。

Conductor Sir Edward Downes and wife end lives at Dignitas clinic
http://www.telegraph.co.uk/culture/music/music-news/5823704/Conductor-Sir-Edward-Downes-and-wife-end-lives-at-Dignitas-clinic.html
ロイヤル・オペラ・ハウスのプレス・リリース
http://www.roh.org.uk/uploadedFiles/Press_and_Media/Press_Releases/pressstatement-siredwards%5B1%5D(1).pdf

 二人が尊厳死を選択した(恐らく)最大の理由は、奥さんが末期の癌に冒され余命数ヶ月、もしくは数週間と診断されたからのようです。ダウンズ氏本人は、重篤な病に冒されてはいず、寿命を全うしたかもしれなかった。では、何故、彼も自らの意思で死ぬことを選択したかというと、聴覚・視覚をほぼ失っていた彼は日常生活の大半を奥さんに頼っていたから。死を選択した奥さんを一人で行かせるくらいなら、自分も共に、ということだったのかと想像します。19日の日曜紙にこのことに関する記事が掲載されました。

I watched as my parents faced their dignified, peaceful death - together
http://www.guardian.co.uk/society/2009/jul/19/dignitas-assisted-suicide-edward-downes
Why I took my wife to die at Dignitas
http://www.telegraph.co.uk/comment/personal-view/5859234/Why-I-took-my-wife-to-die-at-Dignitas.html

 オブザーヴァー紙はダウンズ氏のお嬢さんへのインタヴュー、テレグラフ紙は同じクリニックで奥さんを看取った男性へのインタヴューです。常に報道されているわけではないですが、イギリスでは「尊厳死」を巡る議論、そして報道が延々と続いています。テレグラフ紙のインタヴューでは簡単に触れられているだけですが、今回のダウンズ夫妻の選択で議論をよびそうなのが、「末期患者以外の尊厳死は認められるべきか」、ということではないかと思います。

 「尊厳死」の是非がイギリス国内で問われるたびに、人生の最期をどうするか、どうできないのかが話題になります。同じ14日にガーディアンが掲載したケア・ホームについての特集記事に、「ゆりかごから墓場まで」はもはや遠い過去のことと多くの人が悟ったのではないかと思います。

A day in the life of an old people's home
http://www.guardian.co.uk/society/2009/jul/14/older-people-care-home

 さらに今週は、日本の「後期高齢者何とか」制度にも通じる、「老後のために個人が負担しなければならない資金はいくら」ということが政府から発表されました。イギリスの少子化は日本のように逼迫した状況ではないです、数字上では。問題になるであろう点は、恐らく心理面。出生率を押し上げているのは「イギリス人」ではなく「移民」。彼らに頼れるのか、彼らは「イギリス人」の老後の面倒を見てくれるのか。

カルカッタ・レスキュー@フジ・ロック・フェスティヴァル

2009.07.18
ロンドンで知り合った友人の一人(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1033.html)が深く長く携わっているカルカッタ・レスキューhttp://www.calcuttarescue.org.uk/Calcutta_Rescue_Fund/home.htmlが、7月24日、25日、26日に開催されるFuji Rock Festivalにブースを出すことになり、翻訳を頼まれ、以下の画像はそのパンフレットです。友人は、ブログに載せてくれていいはずよ、とのことですが何か問題が起こるようでしたら友人に迷惑をかけたくはないので、あとで削除することもあります。





 このパンフレットを会場で手にされるかもしれないみなさん、手にした後で捨てることは絶対にしないでください。パンフレットに書いてある通り、カルカッタ・レスキューの予算は限られていますし、このパンフレットの印刷費用も全て寄付の中から賄われています。
 今回、翻訳のプルーフ・リーディングでは友人のOさんに、またブログに載せる画像処理は瓜生聖さんに毎度のことながら助けていただきました。この場でお礼を。

 友人は会場にいますので、気軽に話してみてください。来週、マッドネスのザックスと一緒に日本に向う予定らしいです。

兵士の物語:「門外不出」の舞台

2009.07.12

(初演のときのポスター)

2004年にロイヤル・オペラ・ハウスの地下にあるリンベリー・スタジオ劇場で世界初演された「兵士の物語」が来る9月に新国立劇場で上演されます(大阪公演もあり)。

http://www.heishi.jp/

 レアな舞台であるとは思いますが、「門外不出」と言うのはかなり事実とは異なっているかな、と。以前、某デボラ・ブル女史にインタヴューしたとき、リンベリーで上演されるロイヤル・オペラ・ハウスのオリジナルの舞台を積極的に輸出したいと言っていました。「兵士の物語」の演出家、ウィリアム・タケットの舞台は特にどこに輸出しても、ロイヤル・オペラ・ハウスの独自演目のクォリティの高さを示すものだと思います。ただ、僕が知っている範囲では、リンベリーでの舞台演出がイギリス国外に輸出されるのは、恐らく今回がはじめてかもしれません。

 5年前のプロダクションを持ってくる割に、キャストはオリジナル。4人とも何らかの形でタケットの舞台には頻繁に登場するので安心して観られるだろうと思います。イギリスでも、2005年以降全く上演されていないので、もしかしたら、イギリスからも熱心なファンが駆けつけることもあるでしょう。

 招聘もとの売りはアダム・クーパーウィル・ケンプのようですが、ヤナウスキーハートだって凄いんです。特にハートは、日本では絶対に存在しないタイプのダンサーだと思うので、観る価値は大いにあります。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-302.html

初演のときの感想

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-969.html
マシュー・ハートが爬虫類に見えた舞台

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-563.html

ヤナウスキーがニキヤを踊った舞台(波乱あり)

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-424.html
ケンプハートが共演した「ピノッキオ

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1004.html

全く誉めていないですが、最近観たクーパー

Big Brother is phoning YOU!!

2009.07.11

(こんな画像がすぐに見つかるんだからネットって凄いのか、怖いのか)

研修を一緒にしている同僚から送られてきたニュースは、ある会社が、イギリスで利用されている携帯電話の番号のうち、1500万件をデータベイスに登録しそれを外部に公開するというもの。

Mobile phone directory to launch
http://news.bbc.co.uk/1/hi/programmes/working_lunch/8091621.stm

 イギリスは、世界でも抜きん出た「Big Brother Country」。確か、国民一人あたりのCCTVの数が世界一らしいというニュースを読んだ記憶があるので、取り立てて驚きはしませんでした。



 ただ、普通に暮らしている多くの皆さんには、寝耳に水でしょう。この「サーヴィス(なのか?)」を行う会社のウェブは現在、アクセスできない状態です。

http://www.118800.co.uk/service_suspended.html

 ペシミスティックに響くと思いますが、僕はこの時代、個人情報が売買されていることはもはや止められない動き、もしくは事実なんだと思います。個人では、個人情報を守り抜くことはほぼ不可能なのではないかと思っています。政治の流れが変わらないかぎり。
 僕が一番恐れるのは、僕が知らない会社、知らない人々が僕個人の情報を操作して、最悪の場合、「犯罪者」に仕立てられてしまう。誰も守ってくれない、自分で自分を守れない。自分が自分でなくなる社会。それが一番怖いです。

 ジョージ・オーウェル、進んで読みたくなる作家ではないですが、彼にはイギリスという国が落ちていく闇が既に見えていたのかもしれないです。


グーグルストリート・ヴューなんて公表している分、可愛いものなのかも)

車椅子のロジーナ:セヴィリャの理髪師@ROH

2009.07.11

(7日のカーテン・コールで)

10日に、ロイヤル・オペラ・ハウスで再びロッシーニの「セヴィリャの理髪師」を観てきました。いろいろな点で違いはありましたが、初日同様、素晴らしい舞台でした。

 その初日の大きな話題、右足首の腓骨を骨折したディドナートhttp://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1047.html)は、自身のブログに書いていたとおり、7日にあった2回目の舞台には車椅子に乗って登場、舞台を務めただけでなく素晴らしい歌唱を披露したそうです。

Joyce DiDonato sings at Royal Opera House in wheelchair
http://www.telegraph.co.uk/culture/music/opera/5778789/Joyce-DiDonato-sings-at-Royal-Opera-House-in-wheelchair.html

All-star cast: Opera fans to see DiDonato perform with plaster
http://www.guardian.co.uk/music/2009/jul/06/opera-rossini-joyce-didonato

 足首の骨折ですから、それが直接声帯に影響を与えることは考えられませんが、少なくとも立って歌うことが普通の歌手の方が、ずっと座ったままで歌うことはやはりいつもとは違うプレッシャー等が有るのではと思います。10日は、幕が上がる直前、指揮者のパッパーノがマイク片手に舞台上に現れたので、「直前でキャンセルか」と思ったのですが、観客にディドナートが車椅子で登場することを知らせるためのものでした。パッパーノの「Joyce is somthing else(ジョイスは違うから)」とのコメントに、会場は大受けでした。

 既に新聞や2日目をご覧になられた方のところ(http://ameblo.jp/peraperaopera/entry-10296226017.html)、またディドナート本人のブログで車椅子がどんなだったかを見ていましたが、やはり実際の舞台を観ると、本来の演出よりもずっと活発に動いているのではないかと思えるほどアクティヴ。今回のプロダクションの舞台では、セットの前方、ステイジの端に横一線の空間があるので、縦横無尽という訳には行きませんでしたが、車椅子を回転させながら、骨折の元凶であるピンクのハイヒールをはいた左足で床を蹴って加速しながら、ほぼ完璧なコロラチューラと溌剌とした演技。それに、怪我の功名といったら本人には失礼かもしれないですが、身体的に「囚われている」という状況が、望まない結婚をさせられそうな状況にあるロジーナの精神的に「囚われている」状況と重なり合って、単なるコミカルなオペラと思われているであろう「セヴィリャの理髪師」の舞台に心理的な深みをもたらしたように思います。

 指揮者のパッパーノ、そして歌手の皆さんも今回のような難しい状況を拒否するのではなく、「楽しんじゃえ」という感じで受け入れているように思います。ロイヤル・オペラの場合、本番の舞台の前のリハーサル期間は大体3週間。その3週間のリハーサルが一人の歌手の骨折で大幅に変更されたわけですから「やだよ」と言うことだって出来たはず。彼等の理解と協力、そしてロイヤル・オペラ・ハウス側の理解がなければ。ま、ロイヤル側は今回のアクシデントは、結果としていい宣伝になったことでしょう。

 10日の舞台では、バルトロを演じたアレッサンドロ・コルベッリがやや精彩を欠いた印象がありましたが、他の出演者は絶好調。初日、フローレスディドナートに食われた印象だった「主役」のフィガロを演じたスパニョーリ、余裕綽々。
 バジリオのフルラネットは、「近づいてはいけない、絶対に心が危ない人に違いない」と確信させられる演技にさらに磨きがかかっていました。ガーディアンで見つけた彼のインタヴューでは、このバジリオ役は「Too much of a grotesque」で好きではないと発言していますが、舞台での彼の姿を観たあとでは信じません。

Ferrucio Furlanetto hits his prime

http://www.guardian.co.uk/music/2009/jul/08/ferruccio-furlanetto

 フルラネットのインタヴューで一つ不可解なのは、この発言。

"Italians can sing most easily in Italian and Russian because of the vowels," he says. "In German, the consonants get stuck in your throat."

 イタリア人にとって、ドイツ語の発音が難しいらしいというのは友人のブログ(http://fumiemve.exblog.jp/)でよく読んでいるので知っていますが、イタリア語とロシア語の間に共通項があるなんてすぐには信じられません。イタリア人がロシア語、というか他のいかなる外国語でオペラを歌う姿は、俄かには想像できないです。

 フローレス、難癖つけたら、つけたほうがおかしいと思われるに違いないほど、文句のつけようがありません。"Cessa di piu resistere"の後は今夜はアンコールに応えるかなというほど拍手と歓声が長く続きました。しませんでしたけど。
 フローレスの完璧、というか他を寄せ付けない歌唱に今年のウィンブルドンで優勝したフェデラーが重なりました。男子決勝、フェデラーを心底憎みました。何故なら、He did not play in order to win the game, but he did in order not to lose it、と感じたので。
 ただ、タイムズでのインタヴューを読むと、フローレスが「守り」に入っているということはないようです。長く歌っていけるために、そして彼の歌を聞きたいと願う多くの人に彼の歌を届けつづける為に、進む道を慎重に見極めている。

Juan Diego Florez, the tenor of the times
http://entertainment.timesonline.co.uk/tol/arts_and_entertainment/music/classical/article6603712.ece

 興味があったので、パッパーノが弾くハープシコードを幕間に観てきました。調律師の男性が愛おしむような動作で調律しているのを眺めていた時に、ハープシコードにクラッチが2本も立てかけてあるのに気付きました。調律を終えた男性に、「マエストロ・パッパーノも捻挫したの?」、と尋ねたところその男性のものでした。そこから、パッパーノが弾いているハープシコードは、ロンドンにたった2台しかない素晴らしいハープシコードの一つであること、パッパーノの腕前は「かなりいい」らしいこと、今回のような大きなオーケストラの指揮者がハープシコードを弾くのは珍しいことではないということを教えてもらいました。

 「35年調律をしてきて、聴衆の人から質問されたのは今夜が初めてだよ。ありがとう」、と。嘘です。僕の次の人にも同じことを言っていたようですから。

 最後にオペラに戻ると。素晴らしい歌手のみなさん、そしてパッパーノがオーケストラから引き出した見事な演奏で、ロッシーニのオペラの素晴らしさを堪能できました。昨年の秋に観た「マティルド・ディ・シャブラン」のときにも感じたことですが、ロッシーニの魅力は、スター歌手に要求する超絶技巧だけでなく、思わず聞き惚れてしまうアンサンブルを生み出す美しい声を更なる高みに上げる繊細な旋律が有るから、そんな印象を今回の舞台で強く持ちました。


(左からスパニョーリディドナートパッパーノコルベッリフローレス

子供から大人へ:ハリポタの3人

2009.07.11
ハリー・ポッターは、第一巻の数頁で自分に合わない事を悟って以来、全く興味の圏外。正直、シリーズが終ったことを知っているだけで、それぞれのタイトルは知らない。
 
 書籍に関してはそんなものだから、最近公開された映画がシリーズの何本目になるのかも知らないけど、主役3人の顔くらいは認識できる。で、「発達心理学」やカウンセリングでの「人生の段階」についての幾つかの書籍を読んで以来、彼ら三人の成長ぶりにはいつも驚く。

 写真は、ガーディアンから。

Harry Potter stars then and now
http://www.guardian.co.uk/film/gallery/2009/jul/07/harry-potter-daniel-radcliffe-photos?picture=349903153



 子供時代から、潜在期(latency)、思春期、そして大人への過程でどれほど「顔」のつくりが変化していくかの好例。どのソースだか忘れたけど、最近では、美術品を購入し始めたらしい。 



 頬のあたりの成熟振りが特に目立つ。アメリカのブラウン大学への進学は確定したようだな。



 赤毛の人たちは、子供時代その髪の色でいじめに遭うことが多いらしい。それを考えると、彼が映画界に入れたことは幸運だったのかも。彼がハリポタ以外の仕事をしたというニュースを聞いたことがないけど、役者としての力量は?

セヴィリャの理髪師:ディドナートのプロ魂

2009.07.05
昨日までのねっとりした暑さから一転、爽やかな暑さのロンドンです。月曜日、ロンドン如きの「暑さ」で脱水症状になってしまったほど身体はイギリス化しています。

 昨日初日を迎えたロイヤル・オペラの「セヴィリャの理髪師」は、チケットを取れた幸運、観にいけた幸運を誰に、何に感謝すべきなのか、少なくとも今後数年間は決して忘れない舞台になりました。

Directors:Patrice Caurier、Moshe Leiser

Conductor:Antonio Pappano

Figaro:Pietro Spagnoli(スパニョーリ)

Rosina:Joyce DiDonato

Count Almaviva:Juan Diego Flórez

Doctor Bartolo:Alessandro Corbelli

Don Basilio:Ferruccio Furlanetto(フェッルッチョ・フルラネット)

Berta:Jennifer Rhys-Davies

 今回のプロダクションは、2005年にロイヤル・オペラ独自の演出で初演されたものの4年ぶりの再演。当初、アルマヴィーヴァ候にフローレス、ロジーナにディドナート、そしてフィガロにはイギリス人バス・バリトンのサイモン・キーンリィサイドがキャストされていました。これまた、「ロイヤル、どうしちゃったのこの豪華なキャスト?」、と言うくらい本当に豪華。これまたチケット争奪戦に参加することは端から諦めていたのですが、6月中旬に初日のリターンが取れてしまい、「やった、最高のキャストの椿姫、セヴィリャで今シーズンを締めくくれることが出来て嬉しい」、と思っていました。ところがリターンが取れた直後に、キーンリィサイドの降板が発表になり代わりは、ピエトロ・スパニョーリ。全く聞いたことがなかった歌手でしたが、さすがイタリア人、この交替は吉とでました。

 オペラ・ハウスについて何に驚いたかというと、オペラ・ハウス中を飛び交うやかましいイタリア語。昨晩のイタリア人聴衆の比率は、恐らく1割強というところだと思いますが、聞こえてくるのはイタリア語ばかりという感じでした。会場を眺めていると、プレゼンターのジェレミー・パックスマンや、ロイヤル・オペラ・ハウスの総支配人、トニー・ホール氏の姿もありました。

 「理髪師」は有名ですし、聴き所のアリアがたくさんあるオペラ。一度は舞台で観たいオペラということで、初演も観にいきました。が、全く印象に残っていません。初演は、ありていに言えばミスキャストだったのではないかと、今回の素晴らしい歌手陣を観て改めて思いました。ディドナート以外、思い出せないくらい。

 シーズン最後に向けてロイヤル・オペラの音楽監督であるアントニオ・パッパーノは超多忙。ベルクの「ルル」、ヴェルディの「ラ・トラヴィアータ(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1040.html)」、そしてこの「理髪師」という全く異なるオペラを連続で振るというもの。更に、今回はレチタティーヴォのところでは、指揮台の前にハープシコードを置いて自らが弾くという大活躍。体大丈夫?、早死にしないでね、と心配したくなるほど。今回のプロダクションがパッパーノにとって「理髪師」の指揮デビューでしたが、いい音楽でした。

 キャスト発表時は、主要三役の豪華さにばかり気を取られていましたが、脇を固めるイタリア人ヴェテラン歌手のコルベッリフルラネットの味わい深い歌唱。そしてやはりイタリア人気質とでも言うのか、コミカルな役でのまるで息をするのと同じくらい自然なコメディアンぶり。フルラネットなんて、ヴェルディの「ドン・カルロ」で演じた重厚な役で大絶賛を浴びたことはいまだに記憶に新しいですが、「もしかして、ちょっと心を病んでいます?」という感じのドン・バジリオには大爆笑でした。


(左がフルラネット。ロイヤルのドン・カルロから)

 フローレス。第一幕の最初のアリアで、声に紗がかかっているような印象をもち、ここしばらく彼に対して持っていたネガティヴな気分がもやもやと。現代のベル・カント・テノールの最高峰、今後フローレスを語るのにパヴァロッティやドミンゴの名前を引き合いに出す必要は全くないでしょう。技術的には、これ以上のことが出来たら「神」の領域だろうというくらいの完璧さ。
 昨夜の舞台を、アクシデントとはいえ、会場にいた聴衆の多くに人にとって忘れらないものにしたディドナートの姿と較べて感じたのは、「フローレス、ガッツが足りないな」。基本的に、彼は「いい人」だと思いますし、それが悪いと言う気はまったくありません。でも、もう少し野蛮な面も出せるようになればと。
 が、そのアクシデントのあとは、彼のプロ魂にも火がついたよう。フローレスの声はまるで天使に祝福を与えられたような響き。勿論、第一幕から彼がアリアを歌うたびにオペラ・ハウス内は大興奮でしたが、第2幕大団円の直前のアリア(難しすぎて、滅多に歌われないそうです)、"Cessa di piu resistere"をフローレスが歌い終わったときの会場は何が起きたんだというくらいの大騒ぎ。拍手、歓声、床を踏み鳴らす足音は3分くらい鳴りやまず、バルコニー席では立ち上がって拍手し続ける人々までいました。その間、ディドナートとフローレスは顔を寄せ合った姿でとまっていました。囁きあっているのは判ったんですが、結局拍手には応えることはなく、そのままオペラの終わりへと。

 で、ここまでひっぱてきて、何が起きたかというと、ロジーナを歌ったアメリカ人メゾ・ソプラノのジョイス・ディドナートが第一幕でのロジーナの有名なアリア、Una voce poco faを歌って数分後に、舞台上で右足首を骨折しました。僕は、捻挫だと思っていたんですが、本人がブログで「骨折」としています。

http://yankeediva.blogspot.com/2009/07/and-show-went-on.html

 この舞台、傾斜がきつい上に、ロジーナの靴はいかにも安定の悪そうなもの。アリアを歌い終わったあとに、ディドナートは舞台の左手後方で蹲りました。演技なのかアクシデントなのかは判りませんでした。が、舞台から去るとき、階段を下っていく設定のところで歩くのではなくて、手すりで身体を浮かび上がらせるような不自然な姿だったんです。その時点で、足首を捻ったなと思いました。問題は、このあとさらに舞台は2時間超もあるという事実。
 暫くロジーナは舞台に出てきませんが、次に出てきた時には、ディドナートはステッキを手にしていました。さらに疑念・心配は深まるも、本人歩いているし。でも、確かこのプロダクションは第一幕の最後、舞台は上下・左右に揺れ動く設定だったはず。はらはらしながら観ていました。

 第2幕が始まる直前、トニー・ホール氏がいたボックス席を見ると誰もいず。これはもしかするとキャスト変更かと思いはじめたところで会場は暗転し、舞台にスポットライトが。男性が袖から歩み出てきて、「既にお気づきの方もいると思いますが、ジョイス・ディドナートは第一幕で怪我をしました。痛みは大変強いものです」。会場から諦めの溜息。「しかし、彼女は歌います」。会場、大歓声。
 第2幕が始まって数分後にロジーナは舞台右手から登場。ディドナートは既に右手にクラッチをしっかりにぎり歩み出てきました。クラッチの中ほどにはピンクの造花が。この場面でのオペラの筋書きは、ロジーナが想いを寄せるアルマヴィーヴァ候(変装)と彼女に結婚を強いるバルトロが部屋で対峙しているのを見て思わず声をあげます。バルトロの「どうした?」、との問いに、「E`un grachio al piede (It is cramp in my foot)」との台詞にまたも会場中が大歓声。

 痛そうでしたけど、演技を続けるディドナート。驚異的なことに、声は全く荒れませんでした。彼女は怪我の痛みと不安に打ち勝って舞台を務めましたが、共演者と指揮者の苦労も相当だったことは想像に難くないです。ディドナートは怪我をしているけど、「ロジーナは怪我をしていない」、そんな風に歌い、演技しつづけ、音楽を紡ぎ出せた出演者の素晴らしさ。だからこそ、ハウス内にいる全ての人、歌手、オーケストラ、聴衆がこの舞台をやり遂げるという意思を共有したのだと思います。
 最後の6重唱が終わり、オペラの最終場面で6人は舞台前面に横一列で並び、ポーズをします。左手でスカートをたくし上げ、右手のクラッチを高々と差し上げ嬉しそうに微笑むディドナート。思わず、「ジョイス姐さん、どこまでも追っかけます」。

 カーテン・コールは当然、凄まじかったです。拍手、歓声、足踏み。歌手の最後でディドナートが出てきたとき、オペラ・ハウスが揺れたかと思うくらいでした。痛みからなのか、やり遂げたことに感極まったのか、ま、両方だと思いますが、ディドナートは半泣き、半笑い状態でした。

 怪我をしても歌手は絶対に歌い続けるべきとは言いません。が、昨夜は、オペラではない「オペラ」を観ることが出来た、そんな想いを噛み締めています。


(2005年の初演のときの写真)

合衆国にもコミュニスト・パーティはあるんですよ、Y新聞さん

2009.07.02
今日、ある情報サイトで見つけた、読売新聞の記事の一つ。

「米帝国主義」から転向?共産・志位委員長、今や親米派

  今や政界随一の親米派--。そんな評さえある共産党の志位委員長は2日、都内のホテルで開かれた米独立記念日を祝う米大使館主催のレセプションに出席した。
 共産党委員長が招かれるのは初めてで、志位氏はズムワルト臨時代理大使に「独立記念日は人類にとって重要な日。世界で初めて民主共和国を作り、人権宣言を発した」と語った。
        ◇
 核廃絶を唱えたオバマ米大統領と志位氏の間で書簡が交わされたことから、志位氏と米国の距離は縮まった。
 共産党は「米帝国主義は世界の平和にとって最大の脅威」と主張してきただけに、「手紙1通で“転向”するとは共産党らしくない」(自民党幹部)との声もある。
 だが、志位氏は記者団に「良いものは良い、悪いものは悪いという対応をしたい」と強調、共産党委員長初の訪米にも意欲を示していた。

- 読売新聞 [07/02(木) 21:58]

 なんだか、鬼の首を取ったような書き方に感じるけど、志位委員長が本当にアメリカを訪問してオバマ大統領に会うことになれば、それは「共産主義」ということではなくて「民主主義」について語ることになるのではないかと想像する。さらに、会見が簡単に実現するとは思わないけど、仮に実現したら、それは日本の政治史の中でも画期的なことになるはず。もっとポジティヴに捉えられないのは、日本国内の「民主主義」が停滞しているからだろうか。ま、イギリスも既に民主主義国家とは思えないけど。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-513.html
(アメリカのコミュニスト・パーティー)


(うえのエントリーで触れたピート・シーガーの若かりし頃の写真。今年、90歳のシーガーはまだ現役)

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-763.html
(スペインの赤い貴婦人)

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-823.html
(歌は誰のために)

伝統を貫くヘンリー・ロイヤル・レガッタ

2009.07.02
さて、ヘンリー・レガッタ会場への入場を拒否されたのは、どちらのドレスでしょう?





 今週、ヘンリーで開催されている伝統のレガッタ競技会の会場に、女学生がその服装を理由に入場を拒否された、というニュースが報道された。

Student's 'degrading' catwalk for Henley Regatta stewards because her dress was too short
http://www.dailymail.co.uk/news/article-1196839/Student-refused-entry-Henley-Royal-Regatta-enclosure-dress-short.html

Student falls foul of Henley Royal Regatta dress code wearing Ascot outfit
http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/5712444/Student-falls-foul-of-Henley-Royal-Regatta-dress-code-wearing-Ascot-outfit.html

 記事によると、アスコットでは誰からも咎められなかったストラップレス、かつ膝より上のドレスでレガッタ会場に入ろうとしたところ、入り口で拒否されたこの女性は、「アスコットでは平気だったのよ」と抵抗したようだけど、ヘンリーの皆さんは、「膝上は駄目」と貫いたそう。

 彼女のドレス・センスについてのコメントは控えるけど、このニュースで、3年前に一度だけ経験したレガッタ会場での「イギリスのよき伝統」漂う雰囲気を思い出した。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-443.html

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157594188329701/
(写真)
 
 幸運なことに、今日までは、イングランド南部の天気はBoiling

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