LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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2012年09月の記事一覧

2012.09.30 ロイヤル・バレエの舞台を映画館で
2012.09.30 ガーディアン読者は日本が好き:2年連続日本が一番行きたい国
2012.09.29 Back to normal:ロンドン地下鉄の運休予定
2012.09.28 グレイト・ブリティッシュ・ベイク・オフ:BBC2の人気番組
2012.09.26 Time Out誌、今週から無料に
2012.09.23 歌の力:ロット、アレン、ディドナート、ドミンゴ、バフィ
2012.09.23 ロンドン・メトロポリタン大学のその後と、欧州の大学へ進むイギリス人学生
2012.09.21 Seeking Silence in a Noisy World: 静寂を求めて
2012.09.19 ABC予想解明の報道に刺激されて:数学って、外国語より難しい
2012.09.18 イギリス・デザインの新しい一歩が刻まれた日:ロンドンの新しいデザイン博物館
2012.09.17 HIVアップデイト・トレイニングに参加して
2012.09.16 世界があれているのは平和ぼけだから?!
2012.09.16 左利き用のカメラ
2012.09.14 ロンドン・デザイン・フェスティヴァル開幕
2012.09.12 ラファエル前派:ヴィクトリアン・アヴァンギャルド@テイト・ブリテン
2012.09.09 猫は夢を見るのか?:ロンドンの好天も今日まで
2012.09.06 嫌いな英語:win win situation 永久機関をつくれないのと同じ
2012.09.05 配達できなかった郵便物は、売りさばきます:ロイヤル・メイル
2012.09.04 世界の話題:9月4日
2012.09.04 7/7 で大怪我を負った男性に国外退去の危機:国籍に優劣?!
2012.09.04 I will miss you all:さよならウェンロック、マンデヴィル
2012.09.02 人とは違って当然と理解することは素晴らしい
2012.09.02 ロンドン・メトロポリタン大学の騒動から感じる、イギリスにおける国籍の軽さ

ロイヤル・バレエの舞台を映画館で

2012.09.30
せっかく教えていただいた情報なので、バレエを観たことがない人にも知ってほしく。

RB Cinema1

RB Cinema2

http://www.theatus-culture.com/

http://cinema.pia.co.jp/news/0/48204/

http://www.roh.org.uk/

 シーズン開幕の「白鳥」の話題は、タマラ・ロホの引退に伴い、アコスタのパートナーとして踊るナタリア・オーシポワの客演だけど、ヤナウスキィのオデットは、ぜひ多くの人に観てほしい。オディールのあの有名な32回のフェッテは若手と比べると物足りない可能性もあるけど(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1330.html)、オデットは比類なき美しさ、儚さ。

 有り体に言えば、現在、心はバレエからちょっと離れている。でも、ロンドンまで観に来れない人に、ロイヤル・バレエの舞台が観られる機会があるのは嬉しい。欲を言えば、メイン・オーディトリアムでのバレエだけでなく、地下にあるリンベリィ劇場での「The Wind in the Willows」なんかもいつの日か上演されてほしい。今年の年末、久しぶりの再演で、初日と楽日に最前列で観られるのが今から楽しみ。

バグダッドの盗賊
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-969.html

ピノッキオ
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-426.html

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ガーディアン読者は日本が好き:2年連続日本が一番行きたい国

2012.09.30
昨年に続き、2012年、ガーディアンとオブザァヴァーの読者が非ヨーロッパの国で最も訪れたい国のトップは、日本。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1465.html

 昨年は3月に起きた東日本大震災、福島原発の事故の直後ということで励ます意味もあったのではないかと思うが、2年連続ともなれば、それはやっぱり誇らしく、そして嬉しく思う。

Travel Awards 2012 winners
http://www.guardian.co.uk/travel/2012/sep/29/travel-awards-2012-winners

The full list of winners announced at the Guardian, Observer and guardian.co.uk Readers' Travel Awards 2012

Best overseas city

Tokyo retains its title for the third year running, despite the fact that it faced one of the biggest challenges in its history, persuading tourists to return in the wake of last year's devastating earthquake and tsunami which hit the north-east of the country. The policy of the city's hoteliers to cut rates and run promotions appears to have paid dividends in winning back the confidence of visitors. Elsewhere, Seville enters the top 10.

1 Tokyo
2 San Francisco
3 Seville
4 Berlin
5 Cape Town

Favourite long-haul country

We're delighted to see that Japan has won this category for the second year. Japan saw a 28% fall in the number of visitors arriving in the country in 2011 compared with a year earlier, as a result of the earthquake and tsunami. But despite gloomy predications, by January 2012 the numbers were just 4% below those for the previous year, an extraordinary recovery in large part thanks to the tireless efforts of the Japan Tourism Agency to promote the country abroad and to welcome back tourists with the "Japan: Thank You" campaign. Cambodia, with its magnificent Khmer temples at Angkor Wat, takes the runners-up spot.

1 Japan
2 Cambodia
3 South Africa
4 Argentina
5 Peru


 日本、「2冠」だ。

 穿った見方をすれば、まだまだ良く判らない「エキゾティシズム」の国なのかもしれない。多くの困難な課題を抱えている日本に、様々な刺激が与えられるのは良いことなのかもしれない。で、ガーディアンはコラムニストの一人を日本に送り込んだのだけど、このレポートがあまりいただけない。

Raw passion in Japan: Charlie Brooker's home cookery lesson
http://www.guardian.co.uk/travel/2012/sep/29/charlie-brooker-kyoto-japan-cookery-lesson

 この記事への読者のコメントの中で、日本人女性がロンドンで料理教室を開いていることを知った。

http://www.yukiskitchen.com/

 興味深いけど、クリスタル・パレスは遠い。さらに、今日のサンディ・タイムズの付録雑誌で「Chrysanhttp://www.chrysan.co.uk/)」という、金融街のシティのど真ん中で営業を初めた懐石料理店のレヴューが掲載されていた。これ、今年の春先に話題になった、京都の「菊乃井」のロンドン店のよう。

http://www.squaremeal.co.uk/restaurants/london/view/108917/Chrysan

http://online.wsj.com/article/SB10000872396390444813104578014294243927494.html?mod=googlenews_wsj

http://jp.wsj.com/Business-Companies/node_520729

 値段からは、気軽に行ける価格帯ではないな。これほどの値段を払うなら日本に一時帰国した方が、と感じるのが本音と言えば本音。でも、例えばミラノでもしっかりした和食料理の店(http://fumiemve.exblog.jp/16459912/)があるらしく、日本料理の本質がきちんと海外に伝わり始めたようにも感じる。

Back to normal:ロンドン地下鉄の運休予定

2012.09.29
オリンピックもパラリンピックも夢だったのか現だったのかというほど、日ごとに秋が深まるロンドン、そしてイギリス。なにげに、ロンドンの地下鉄の工事予定のペイジを開いてみたら、見事に普通に戻っている。

Tube Calendar

http://www.tfl.gov.uk/livetravelnews/planned-works/calendar/default.aspx

 ロンドン地下鉄の名誉のために言っておくと、工事によって全線が運休になる訳ではない。短い区間の路線補強などで、とても身勝手な書き方だけど、ロンドン中心部に影響が出る様なものではない(はず)。

 週末しかまとめて工事をできる時間がない状況、その必要性は、先のBBCの番組(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1588.html)でよく判った。とはいえ、ロンドン地下鉄の線路工事は永遠に終わることがないだろうとしか思えない。

グレイト・ブリティッシュ・ベイク・オフ:BBC2の人気番組

2012.09.28
2010年から始まっているので、既にご存知の方もいるだろうし、料理系のブログでは取り上げられていると思いますが、BBC2で、現在3クルーめが放送されている、「グレイト・ブリティッシュ・ベイク・オフ」という番組の人気が急上昇中。

Great British Bake Off
http://www.bbc.co.uk/programmes/b013pqnm

BGBO1.jpg
(メイン審査員の二人、メアリィ・ベリィとポール・ホリウッド)

BGBO2.jpg
(プレゼンターの二人を交えて)

Great British Bake Off takes the cake
http://www.guardian.co.uk/media/2012/sep/21/great-british-bake-off-hit

 ケイキ、パン作りを得意とする素人を集めて、毎回課題を出し二人の審査員が審判を下すというもの。と書くとなんだか既に日本でも同じ様な番組がある様な、あった様な気がしますが、とっても面白いです。普通に知っているケイキやパンだけでなく、イギリス伝統のものが登場すると、「一体何が出来上がるんだろう?」という興味をかき立てられます。
 ガーディアンの記事によると、視聴者は450万を超えたというのだから結構な数だと思います。現在放送されている3クルーめでは、ブレンダンという初老の男性が抜きん出ていますが、病院で働く女性がどんどん差を縮めている印象があります。また医学生や子育て中のお父さんなど挑戦者の人間模様も隠し味で紹介されるなど、ドラマとしても面白いです。おそらくYou Tubeで観られると思うので、ケイキ・パン作りに興味がある方は、イギリスではどうやってつくられるのかも判る番組ではないかと。BBCのウェブには課題で出されたレシピが紹介されています。

http://www.bbc.co.uk/food/recipes/chocolate_marshmallow_60410

http://www.youtube.com/watch?v=wm6AXrBrg1k

Time Out誌、今週から無料に

2012.09.26
予告されていたより一週間早いような気もするが、ロンドンの情報雑誌、タイム・アウトが今週から無料になった。

Free Time Out

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1737.html

 紙質が薄くなり、雑誌の厚さがかなり薄くなった印象が強い。ペイズ数を大幅に減らすことはないとのことだったけど、減っている。毎週火曜日の朝、地下鉄や鉄道の駅で無料で配布されるようだ。

 英国ニュースダイジェストも発行の形態が、10月から変更になると先週号にお知らせがあった。

http://www.news-digest.co.uk/news/

 友人が送ってくれたカレンダー。

Kaeru calendar

 2013年までまだ3ヶ月、もう3ヶ月。

歌の力:ロット、アレン、ディドナート、ドミンゴ、バフィ

2012.09.23
ロイヤル・オペラ・ハウスのシーズンが終わる前後に行った、コンサートの記録です。

 6月23日、ロイヤル・オペラ・ハウスはゲオルジューとアラーニャのオペラ界お騒がせカップルが「ラ・ボエーム」で共演すると言うことで、チケット争奪戦は熾烈を極めたようでした。その様子はブログ仲間の皆さんのポストで。

http://miklos.asablo.jp/blog/2012/06/23/

http://blog.goo.ne.jp/bigupset39/e/90d199747879f4d421e25bf31858b733

 元からこの争奪戦に参加する気は全くなかったものの、他に行きたいコンサートが重なってしまいました。一つは、バービカンで、60年代バーバンク・サウンドの立役者であるヴァン・ダイク・パークスがグリズリィ・ベアとフリート・フォックスのメンバーのサポートを得てコンサート。もう一つは、ウィグモア・ホールでイギリスのオペラ界の至宝、フェリシティ・ロットトーマス・アレンのリサイタル。どちらも良い席は売れてしまっていて、リターンで席がでた方に行こうと思っていたら、後者のリサイタルで最前列がとれてしまったので行ってきました。

http://www.wigmore-hall.org.uk/whats-on/productions/dame-felicity-lott-soprano-sir-thomas-allen-baritone-eugene-asti-piano-29773

 細かいところまではもはや覚えていませんが、ロットもトーマスも余裕綽々の上にオペラ歌手としての優美さを失うことは全くありませんでした。特に、ロットが英語で歌ったサン=サーンスの「チェリィ・トリィ・ファーム」は絶品。彼女は、四度も衣装を変えるなど自分に期待されていることをしっかりと。アレンも素晴らしかったのですが、寄る年波には逆らえないのか、最後のアンコールで3度も出だしを間違え、ロットがたまらず笑い出す場面も。ちなみに、このよるの聴衆の平均年齢の高さは、これまでのウィグモアでのリサイタルの中でもほぼダントツ。それに反比例するかのように、皆さんのドレス・アップをしようとする意欲のあまりの低さに唖然としました。

 最近、リターン・チケットを購入することにかけてはかなり運が強いのですが、コンサートの2日前まで全くリターンに巡り会えず、ほとんど諦めていたのが、アメリカはカンザス出身のメゾ・ソプラノ、ジョイス・ディドナートのウィグモア・ホールでのリサイタル。

http://www.theartsdesk.com/classical-music/joyce-didonato-wigmore-hall-0

Joyce Didonato: mezzo-soprano
David Zobel: piano

Programme
Vivaldi: From Ercole sul Termodonte, Onde chiare che sussrrate, Amato ben

Fauré: Cinq mélodies ‘de Venise’

Rossini: La regata veneziana

Schubert: Gondelfahrer

Schumann: From Myrthen: Zwei Venetianische Lieder

Head: Three songs of Venice

Hahn: Venezia – Chansons en dialecte vénetien

About this concert
Named as Gramophone’s Artist of the Year in 2010, DiDonato, a committed recitalist, here celebrates her love of the baroque and 19th-century bel canto, but extends it outwards in a programme themed around another of her passions, Venice.


 初日の7月4日には、開演前にボックス・オフィスによったところ、6日の分のリターンがでたばかり。迷わず購入し、同じプログラムを2回聴きました。

 内容は、2006年にウィグモア・ホールで歌って以来になるというヴェネツィアを歌った歌曲ばかりを集めたもの。ロッシーニとヴィヴァルディの曲は以前、別の歌手で聴いたことがあるものでしたが、他の曲は全く初めてでした。シューベルト、シューマン、ヘッド、そしてアーンの歌曲では、ディドナートの表現力の豊かさを存分に味わいました。
 ディドナートが明るい性格ということは知っていたのですが、一人の作曲家による歌曲が終わる旅に、あっけらかんとしたアメリカ英語で曲についての想い、音楽学校時代、初めてこれらの歌曲を歌うように指導されたときの新鮮な驚きを生き生きと語るディドナートに、ホールは笑いに包まれました。
 前半は真っ赤のイヴニング・ドレス。後半は、あとで写真のリンクを貼りますが極彩色のドレス。思わず冗談かと思ったほどのこのドレスは体にぴったりとフィットする素材だったので、オペラ歌手がどのように呼吸するかを観ることができて面白かったです。アンコールではピアノ演奏で、ロッシーニの「チェネレントラ」からあの有名アリアで見事なコロラテューラを披露して、フィール・グッド・ファクターであふれた良いコンサートでした。

舞台で骨折したときの「理髪師
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1047.html

 本当は、めっぽう評判の良かった「オテロ」の最終日のリターンを狙っていたある日、安い席のリターンがばんばん出始めたドミンゴ・ガラをふとのぞいたら、最前列、ほぼど真ん中の席が売りに出ていて、即クリック。とれちゃったので、こんな豪華なガラ・コンサートはロンドンではかなり稀なので、楽しむつもりで行ったのですが、出だしは最悪でした。というのも、ロイヤル側が読みを間違えてプログラムが売り切れてしまい、さらに当夜のプログラムはその売り切れたプログラムにしか掲載されていなかったので、前半は歌手の皆さんが何を歌うのかいっさい判らないままでした。幸い、会場で会った友人からちょっと見せてもらえたのですが、気が殺がれたのは事実。さらに、インターヴァル中に、確約はできないけど再印刷が決まったら連絡するからというので連絡先を残したものの、全くなしのつぶて。なんだかロイヤル・オペラ・ハウスへのロイヤリティが一気に失せています。で、当夜の演目は、その友人のブログで観られます。

http://ameblo.jp/peraperaopera/entry-11362212668.html

 友人が書いているように、最も輝いていたのは、カレイヤとディドナートでした。特に、ディドナートの1曲目、ロッシーニの「湖上の美人」からのアリアは、来年初夏に上演予定の同演目への期待がいっそう高まる素晴らしい歌唱でした。
 カレイヤは今年のプロムスの最終日に出演を果たすなど、飛ぶ鳥を落とす勢い。にもかかわらず、自分の声を維持することにはとても慎重なようで、ある新聞のインタヴューでは、今の彼の実力ではそれほど難しい役ではないであろう、でも本人曰く彼の声には良い経験になるとの理由で、ベッリーニの「カプレティとモンテッキ」のティボルトを歌う予定とのこと。また別のインタヴューでは、世界を飛び回るオペラ歌手の宿命として子供たちと過ごす時間が少ない。そこで、彼の子供たちは、テディ・ベアを持ち歩くことを頼み、スカイプで子供たちと話すときは必ずそのテディ・ベアを子供たちに見せているそうです。オペラ歌手とテディ・ベアと言えば、川原泉さんの「笑う大天使」。漫画の方は悲しい終わりですが、カレイヤのテディ・ベアにはぜひ、世界を何周もしてほしいものです。

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157630751912632/
(ディドナートのドレスは、ウィグモアでのリサイタルと同じ)

 ドミンゴ先生は、好々爺然としていました。できれば、彼をウィグモア・ホールで聞いてみたいです。

 8月、サウス・バンクで催された「メルトダウン・フェスティヴァル」に、カナダ出身のバフィ・セント=メアリィが出演しました。僕にとっては、「プロテスト・フォーク・シンガー」としてまさに伝説の存在。まさか生を観られるとは思っていなかったので、楽しみにしていたのですが、「伝説」は「伝説」のままにしておくべきだった、そんなコンサートでした。
 楽しみにしていた「サークル・ゲイム」は歌われず、歌われた中で知っていたのは「ユニヴァーサル・ソルジャー」だけ。バフィは舞台上で、「私はフォーク・シンガーじゃないわ。シンガー・ソング・ライターなのよ」、と。僕が勝手に期待して自分で作り上げた「伝説」ではありましたが、もやもやした気分のまま帰宅の途につきました。反動で、現在、ピート・シーガーを聴きまくっています。

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ロンドン・メトロポリタン大学のその後と、欧州の大学へ進むイギリス人学生

2012.09.23
昨日、9月22日は、イギリスの初秋の美しさが輝いた一日でした。この素晴らしい天気を無駄にしてなるものかと、キュー・ガーデンズへ。

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157631596039340/

 今日からは、台風並みに強力な低気圧が来襲し、イングランドの天気は大荒れです。

 8月下旬、日本だけでなく多くの国で報道された、ロンドン・メトロポリタン大学から非EU圏からの留学生への学生ヴィザ発行の免許をイギリス国境局が剥奪したニュース。新規の留学生だけでなく、まじめに学業を全うしている在学生の留学資格まで剥奪される事態になりました。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1754.html

 ロンドン・メトが司法に訴えて以降、状況がどうなっているのか気になっていました。週末、BBCのラジオ・ニュースで、裁判所が在校生、そして今年の入学が決まっている学生はそのまま勉強を続けられることが認められたとのこと。

London Metropolitan University: temporary reprieve for students
http://www.bbc.co.uk/news/education-19663108

London Metropolitan University has been given permission to challenge a ban on its recruitment of overseas students.

The High Court also ruled that existing students with full immigration status should be allowed to continue their studies for now.


 司法関係の報道は、事実関係がよくわからないのですが、現在の状況は、ロンドン・メトロポリタン大学が、イギリス国境局がヴィザ発行免許を剥奪したことへの提訴を裁判所が認め、その間、在校生はそのまま勉強を続けられるということだと思います。
 免許剥奪が撤回されたのではなく、とりあえず学生が陥った難しい状況は打開しよう、ということでしょう。と言うことで、ロンドン・メトが2013年以降、非EU圏からの学生を受け入れられるかどうかは、不透明のままです。

Third year London Met student Donna Marie Winstanley, from Hong Kong, told the BBC News website she was pleased by the ruling.

"It's really good," she said.

"I have not applied to any other universities. I had a feeling that the university was going to win the case. Most of my classmates have already applied. I didn't want to pay any more money. I had already paid £16,000 in fees for my first two years."

Third year computer science student Ashiqur Rahman from Bangladesh said: "I am very happy if it's true that I can continue my studies at the university, but I am waiting for confirmation".

The National Union of Students has welcomed the ruling. It says the case has huge implications for international students in the UK and others thinking about coming to Britain to study and had asked to give evidence in the case.


 インタヴューに答えている香港とバングラデシュからの留学生のように、他の大学への移籍を実行に移していなかった学生には朗報でしょう。しかしながら、既に移籍先を見つけ、仮にその新しい受け入れ大学がロンドン以外の場所にあるという学生の皆さんは、予想外、且つ高額な出費を既にしていることも考えられるので、この救済措置もまた、完全に留学生の助けにはならないこともあるかと思います。

 ご存知の方もいると思いますが、イギリスの大学は、2012年9月から授業料が昨年より3倍弱、最高額£9000−までになりました。また、今年の夏は、大学入試資格試験のAレヴェル試験や、義務教育修了試験のGCSEで、特に英語力、英文学試験の採点が急に厳しくなり、合格と予想していた多くの学生が必要な点数に到達できなかった不公平感が大きな議論になり、イギリスの教育関係者、学生、そして家族にとってはとても難しい夏になりました。

 イギリス人の学生にとって、年間£9000−の学費は、即卒業時に抱える負債になります。イギリス人学生(それとEU圏からの留学生もかな)は学生ローンを申し込めますが、これはあくまで「ローン」。今回の大幅な学費値上げの救済措置として、連立政権は、ローン返済の条件をほんの少しだけ緩和しましたが、学生が抱えるであろう卒業時の「負債」額は、大幅に増えます。大学に進み、卒業することは今の学生にとっては、社会に出る前に既に数万ポンドの「負債」を抱えむこと。卒業しても、16歳から24歳の若年層の就職率が向上しない現在、社会に出る前に返済がいつ終わるかも判らない「負債」を抱えることに大きな不安を感じる学生は多いです。そのような状況で、イギリスの大学に進学するのをやめて、金銭的に負担の少ないEU圏内の大学へ進学するイギリス人学生が増えているという報道がありました。

Save £25,000 at university and join the 'tuition fee refugees'
http://www.guardian.co.uk/money/2012/aug/17/save-25000-university-tuition-fee-refugees

 記事の冒頭部分で書かれているように、大学卒業時に5万ポンドの負債を持つことになるというのは、少しでも今の社会状況を理解している学生であれば、大学進学を手放しで喜ぶことはできないでしょう。また、もはや21世紀の貧困層である「中流家庭」ではこの負債をサポートすることはかなり難しいのではないかと推察します。

 記事の中では、学費の安さを理由に欧州の大学に留学することは意味がないと強調されています。例えば、多くのコースが英語で進められるオランダのフローニンゲン大学では、初年度を乗り越えるためには猛勉強が要求されるようです。

British 18-year-olds are fleeing the prospect of a £50,000 bill for studying at home – and finding they can save as much as £25,000 over three years by studying abroad as well as enjoying a life-changing experience.

In Denmark, tuition fees for students from within the EU are zero. In the Netherlands, they are around €1,700 a year (£1,330), and it's even possible to access Dutch state grants worth around €500 (£390) a month (see page 5). Irish institutions such as Trinity and UCD, ranked among the top universities in Europe, charge just €2,250 a year (£1,760) to EU citizens.

It has also emerged that a significant number of UK students have applied to universities in the EU as an "insurance" against failing to achieve the grades they want and having to go through clearing. Many British "Russell group" universities now demand A-level scores of AAB and above, while similarly-ranked Dutch universities accept lower grades – though they are much tougher (almost brutal, say some) about weeding out underperforming students in their first term.

"It's not exactly a flood of students fleeing the new tuition fees in Britain, but we are seeing much more interest," says Mark Huntington, who runs astarfuture.co.uk, which has since 2006 offered a free advisory service to British students and parents considering higher education opportunities abroad. There are now more than 1,200 degree courses in Europe (not including Ireland) taught entirely in English, while in the Netherlands alone 20 universities are teaching in English.

"The overall cost of a three-year course in Holland, taking in tuition fees, accommodation and living costs, will be around £24,000 compared with the £50,000 or so it now costs in the UK," says Huntington. But, as he warns on his website, "we don't believe you should go abroad just to save money and there are lots of other reasons why studying abroad is a good idea.


 日本の大学を20世紀に卒業した僕とは、環境も条件も全く違うので比較することは意味がないとは思います。が、大学で勉強するということは、社会に出る前に、脳が柔軟なうちにたくさんの知識と経験を積める貴重な時間。そんなときに、入学と同時にローンを抱え、そのローンの返済完了が見えない今のイギリス人学生の苦境には同情を抱かざるを得ません。

 日本では子供の数が減少し、選ばなければだいたい大学に入れる時代だそうで。目的なしに留学をすることは勧めませんし、イギリスの大学へどうぞとも言えないです。でも、太平洋を通してつながるオーストラリアやニュー・ジーランドへ留学してみるのも競争を勝ち抜く経験をする点で、考慮しても良いのではないかと根拠もなく考えます。

[追記:9月24日]
 いただいたコメントへの返信を書いている途中で、切り抜いておいた記事を思い出しました。

Cambridge rejects call for universities to admit poorer students with lower grades
http://www.telegraph.co.uk/education/educationnews/9530337/Cambridge-rejects-call-for-universities-to-admit-poorer-students-with-lower-grades.html

 要点を短くすると、オックスブリッジ等の上位校は、大学側が要求する合格点に足りない、社会的に買いにある家庭の学生をもっと合格させるべきだという批判に対し、合格点に達していない学生を合格させるのは、「落第」させることに目をつぶってしまうことで学生に公正でない、と反論しているというもの。

The university said it would resist pressure to make "adjusted offers" to working-class candidates.

The institution's outgoing admissions director even warned that such a move would be a "cruel experiment that could ruin lives".

Geoff Parks, who has led the Cambridge admissions office for the past ten years, said that students who have failed to achieve top A-level results could flounder in the academic hot house of the university and be doomed to failure.


Seeking Silence in a Noisy World: 静寂を求めて

2012.09.21
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友人から、時間が空いたときに読むと良いかもと薦められた本。騒がしい現在の社会を生きていく中で、静寂の中に自分をおくことについて書かれている。How to本は読まないようにしているのだが、これは押しつけがなくて、のんびり読んでいる。イントロダクションを紹介。

The pleasure of silence has to be one of the most democratic of experiences - available to everyone in a noisy world; young or old, rich or poor, religious or secular. Silence is alwasy tehre, hovering quietly in the wings of our lives waiting to be enjoyed. It can be a solace in times of stress, helping to regenerate our spirits; it can also be a source of great creative energy, as artists and writers have found down through the ages.

 第1章の始め、20年ほど前は「静寂」が必要なんて言うと奇異の目で見られたけど、現代では多くの人が(金を払ってまでも、時間を犠牲にしてまでも:これは僕の言葉)静寂を求めるのが普通になった、云々で始まる。友人の一人は、毎年、北ウェイルズにある僧院に一週間滞在して、静寂の中で過ごすことを楽しみにしている。

 読んでいる途中だけど、本の後半で著者は、森や野原のウォーキングを通して自然の中での静寂の効用を語っている。

 静寂の中に身を置くことは楽しいし、雑音が暴力的に耳に流れ込んでこない環境は、都市での生活で持つことは難しいだろう。それを否定する気はない。でも同じくらい、雑踏の中を一人で歩いたりベンチに座って行き交う人々を眺めているのも僕には静寂の時間。静寂って、自分への優しい時間ということかと思う。

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ABC予想解明の報道に刺激されて:数学って、外国語より難しい

2012.09.19
昨日、京都大学の望月新一教授が整数学の難問の一つ「ABC予想」を解明したかもしれないとの報道が日本、アメリカであった。

数学の難問「ABC予想」解明か 望月京大教授、驚異的の声
http://www.47news.jp/CN/201209/CN2012091801001993.html

現代の数学に未解明のまま残された問題のうち、「最も重要」とも言われる整数の理論「ABC予想」を証明する論文を、望月新一京都大教授(43)が18日までにインターネット上で公開した。

 整数論の代表的難問であり、解決に約350年かかった「フェルマーの最終定理」も、この予想を使えば一気に証明できてしまうことから、欧米のメディアも「驚異的な偉業になるだろう」と興奮気味に伝えている。

 ABC予想は85年に欧州の数学者らによって提唱された。AとBの2つの整数とこれらを足してできる新たな整数Cを考え、それぞれの素因数について成り立つ関係を分析した理論。


A Possible Breakthrough in Explaining a Mathematical Riddle
http://www.nytimes.com/2012/09/18/science/possible-breakthrough-in-maths-abc-conjecture.html

 ニュー・ヨーク・タイムズの記事に、望月教授のサイトのリンクが貼られていたので、どんなものだか興味を惹かれて発表された論文を読もうとしてみた。

Abstract. The present paper is the first in a series of four papers, the goal of which is to establish an arithmetic version of Teichmu ̈ller theory for number fields equipped with an elliptic curve — which we refer to as “inter-universal Teichmu ̈ller theory” — by applying the theory of semi-graphs of anabelioids, Frobenioids, the ́etale theta function, and log-shells developed in earlier papers by the author. We begin by fixing what we call “initial Θ-data”, which consists of an elliptic curve EF over a number field F, and a prime number l ≥ 5, as well as some other technical data satisfying certain technical properties. This data deter- mines various hyperbolic orbicurves that are related via finite ́etale coverings to the once-punctured elliptic curve XF determined by EF . These finite ́etale coverings admit various symmetry properties arising from the additive and multiplicative structures on the ring Fl = Z/lZ acting on the l-torsion points of the elliptic curve. We then construct “Θ±ellNF-Hodge theaters” associated to the given Θ-data.
(論文の出だし、アブストラクトの最初の部分を転載)

 一つ一つの英単語は判るのに、文になったものの何一つとして理解できない。ま、僕なんぞがすぐに理解できてしまっては数学者の皆さんは苦労のし甲斐がないというものだろう。ヒエログリフやギリシア語のアルファベットを読んで理解する方がずっと簡単。

 インターネット時代って、ある意味、本当に素晴らしい。この論文、ポワンカレ予想を解き明かした論文、そしてフェルマーの最終定理の解法ですらすぐにダウンロード、印刷して自分の手元に。
 理解できない論文を印刷するのは紙の無駄と言われるかもしれない。でも、自分の知っている言語なのに、何一つ理解できないという経験って、かなり脳の刺激になるのでやめられない。それに、自分の生活に何ら影響がないとはいえ、努力しても全く報われないという体験をたまにするのは打たれ強くなるための布石になるかもしれない。

イギリス・デザインの新しい一歩が刻まれた日:ロンドンの新しいデザイン博物館

2012.09.18
ロンドン中心部の東側に、デザイン・ミュージアムがあるのは知っていましたが、行ったことはありません。さらに、1989年にオープンしたそのデザイン・ミュージアムがロンドンの東から西側、ケンジントン・ハイ・ストリートへ移転する計画は、今日、9月18日の起工式(Groundbreaking Ceremony)があることを知るまで全く知りませんでした。起工式って、日本だけではないんですね。

 配られた資料によると、新しいデザイン・ミュージアムは、ホランド・パークの南の端にある、旧コモンウェルス・インスティテュートの建物を改築、2015年のオープンを予定しているそうです。新しいデザイン・ミュージアムができることで、ケンジントン・アンド・チェルシィ区のこの一角には、ヴィクトリア・アンド・アルバート、自然史博物館、科学博物館等がそろい、特にV&Aがあることでイギリス・デザインのアーカイヴとして世界に発信するという想いが区側にはあるようです。

 デザイン・ミュージアムの現ディレクターのあとにスピーチをしたのは、イギリス、日本だけでなく世界で最も人気の高いデザイナーの一人に違いない、テレンス・コンラン卿。80歳を超えているのは知っていましたが、予想していた以上に老けているように感じられ、外見には驚きました。
 しかし、長かったものの、スピーチの内容は、現代イギリス・デザインを20世紀から牽引している実力者、深みのあるものでした。特に、現在の不況の中で、若いデザイナーが大学を卒業しても、また自分でビジネスを起こそうとしても、活躍の場が全くないことを心苦しく思うと言っていた点には、彼自身がデザイン界でどのような立場にあるのかをしっかり理解していると感じました。

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(Sir Terence Conran)

 記念に埋められたタイム・カプセルに入れるものを提供したのはコンラン卿の他に、ポール・スミス、マーガレット・ハウエル、ヴィヴィアン・ウェストウッド(3人ともイギリスのファッション・デザイナー)、建築家・デザイナーのジョン・ポーソン、トーマス・ヘザウィック(後述)等、錚々たる顔ぶれ。
 コンラン卿がカプセルに入れたのは、iPhone4S、アンチョビの缶詰、Burgundyのボトル。電球(ヘザウィック)、自身のロンドン・ファッション・ウィーク2012の記念品(ウェストウッド)自分がデザインしたロンドン五輪の記念切手(スミス)。

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157631566266261/

 タイム・カプセルを埋める(ふりの)写真撮影が終わり、参加者が話したい人を目指して散らばる中、僕がアプローチしたのは新しい博物館の内装を手がけると紹介されたジョン・ポーソン氏。

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/7999681725/in/photostream

 記憶違いでなければ、ウェイン・マックグレガーがロイヤル・バレエの常任振付家に任命されるきっかけとなった「クローマ」の舞台装置をデザインした人のはず。
 新しいデザイン・ミュージアムの教育部門への資金援助をしたスワロフスキィの担当者と話し終わったところで、本人と確認してから、「If I remember correctly, you created the stage set for Croma of the Royal Ballet?!」と尋ねたところ、その通りとのことで一安心。もう7年も前の作品ですが、ポーソン氏によると、楽しい挑戦だったとのこと。
 逆に、どこから来たのか訊かれたので日本からだというと、「沖縄で(カフェかなにかの)デザインをした来たばかりだよ」、と。「今年の4月に沖縄にいったばかりです(http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157629820365179/)」と返すと、驚いた表情で、「I didn’t expect to see anyone who has been to Okinawa」。沖縄の印象を尋ねたら、「気候が素晴らしいよ。また機会があったら訪れてみたい。でも、料理は京都が最高だね」だそうです。
 で、沖縄でのデザインをググってみたのですが、残念ながら何もヒットしませんでした。ご存知の方、教えていただけると嬉しいです。

 出口に向かおうとして振り返ったら、セレモニィの間、コンラン卿の手助けをしていた女性が正面に。コンラン卿の秘書の方かと考え、今後のコンタクト先を尋ねようと思い「コンラン卿の会社の方ですか?」と。
 楽しそうに笑いながら、「会社というより、私は彼に属しているのよ。I’m his wife」。とっさに仕事の話はしないで、世間話モードに切り替えて和気あいあいと。

 会場をあとにして向かったのは、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館(博物館と呼ばれることもあるようですが、僕個人では美術館と)。先週の金曜日の初日、ばたばたしてじっくり見られなかったロンドン・デザイン・フェスティヴァルと「現代のレオナルド」と称されるトーマス・ヘザウィックの特別展示を。

 ロンドン・デザイン・フェスティヴァルが委嘱した作品の中で、今回は日本にルーツを持つ二人のデザイナーが作品を制作しています。佐藤オオキさんと、Keichi Matsudaさん。

http://www.nendo.jp/profile/

http://www.keiichimatsuda.com/

 佐藤さんが代表のデザイン会社による、「Mimicry Chairs」は特に中心展示と思われるタペストリィ・ルームの作品からは、子供の頃にやったかくれんぼや椅子とり遊びを連想しました。Matsudaさんの「プリズム」は展示を完成させるのに2週間かかったそうです。素材は和紙に近いもののようでした。
 「プリズム」は作品自体も興味深いものですが、展示される部屋がまた普通でないところ。今回初めて一般に公開される、V&Aで最も高いところにあるクーポラ。今週末、ちょうど重なっているロンドン・オープン・ウィークでも公開されたことがない部屋だそうです。今回の「プリズム」公開が終われば、再び一般に公開されるのは全く未定とのこと。ロンドンの建築、デザイン等に興味があってロンドンにいる方にはお勧めです。

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(この眺めを写真に撮れるのは、今週の23日まで)

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 メンバーシップを持っていたのをすっかり忘れいたものの、なんとかカードを発掘してヘザウィック展へ。ヘザウィックって誰?という方には、ロンドン・オリンピック、パラリンピックの聖火をデザインした人です。また、ボリス市長肝いりの新しいロンドン・バスのデザインもこの人。

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/7686792226/in/photostream

 この特別展示は写真撮影が禁止でした。デザインに関しては語る言葉を持っていないので、興味がある方は9月30日までです。

 2012年はまだまだ続きますが、今年は年初からイギリスの美術、芸術、デザイン、そしていつものオペラやダンス、バレエなどたくさんのことを体験することができて本当に幸運であることを実感します。同時に最近、このたくさんのインプットをしっかりと自分のものにするための時間が欲しいとも感じています。


[追記:9月19日]
 タイム・カプセルに入れたもののリストがメイルで送られて来たので、転載。

Time Capsule contents:

Cecil Balmond
European Union Flag
One Euro Coin
2p Stamp
USB containing images of jazz and blues music album covers, including John Coltrane and Bing Crosby

Sir Paul Smith
Isle of Man, London 2012 Olympic Games Stamps designed by Paul Smith

Sir Terence Conran
iPhone 4S
Tin of Anchovies
A good bottle of 2012 Burgundy

Deyan Sudjic
London 2012 Olympic Torch designed by BarberOsgerby
Badoiiing game, 2012 winner of the museum’s Design Ventura competition for 13-16 year-old D&T students

Margaret Howell
Image of Battersea Power Station

Zaha Hadid
Model of the MAXXI museum in Rome
Book by Patrik Schumacher, The Autopoiesis of Architecture, Vol.1: A New Framework for Architecture

John Pawson
1949 Wish Bone Chair (miniature model) for Hans J. Wegner for Carl Hansen and Son

Kenneth Grange
Cylinder Line Coffee Pot designed by Arne Jacobsen

Marc Newson
Mini Lockheed Lounge

Thomas Heatherwick
with
Ingo Maurer
Standard light bulb

The Mayor for London
Artists Tube Maps


HIVアップデイト・トレイニングに参加して

2012.09.17
シルヴァー・ウィーク、世界中が内憂外患という印象を持ちます。

 11日に、ヴォランティアとして参加しているテレンス・ヒギンス・トラストhttp://www.tht.org.uk/)の本部で、ヴォランティア向けのHIVについての新しめの情報を話し合うワークショップがあったので参加してきました。皆さんの日常生活の中で、どれほどの頻度でHIVのことが話題になるか判りませんが、こんなことを気軽に読めるブログがあっても良いかなと思います。僕が参加した理由はいくつかあります。一つは、HIVポジティヴの人と直接会うコミュニティ・サポート・ヴォランティア活動をずっとしていないので、自分の知識をリフレッシュしておきたかった。それと、自分のカウンセリング活動や他の関わりの中で、60歳以上のグループの感染率を知りたかったというのも理由です。

 本来は一般に配布することを想定した資料ではないので、イギリスの現状の一部という程度で読んでください。

[UK statistics]
Estimated over 100 000 adults were living with HIV at the end of 2011.

27% were unaware of their infection.

Over 6,000 new diagnoses in 2010.

One new infection every 80 minutes.

55,000 people were diagnosed late.

1/5 PLHIV(People living with HIV) over 50.


 数字としては、最後のHIVポジティヴの2割が50歳以上というのの詳細を知りたかったのですが、そこまでの数字は用意されていませんでした。この50歳以上の感染率は、ポジティヴになってから既に長期間経っているのか、それともつい最近になって感染が判ったのか。その辺りのことを知りたかったです。
 どうして興味を抱いたかというと、50歳、60歳以上の感染率が上昇しているのは、ネット・デイティング等でこの世代の性感染症への知識が低下しているのかどうかということ知りたいからです。

[HIV in 2012]
Long term chronic illness

More women infected (children infected and affected)

Optimism around treatment but uncertain future?

Vaccine and Cure ? - long way off?

Social implications of HIV still big issue (Criminalisation, DDA/ESA, Treatment, Employment,
Travel)

Co-infection increasing

Mental health issues very common

 このセクションは、世界的に観た全般の情報です。HIVへの間違った印象が全く改善されない一方で、完全な治癒を実現する治療法が確立されるのではと煽る情報が後を絶たない。この根拠のない情報によって感染防止の方法を知ろうとする人、国が減っているのではないかという危惧を持っているようです。

[HIV & Children]
Vertical transmission (from mother to baby) is now very rare when proper medical procedures are followed (less than 1%).

Most often happens when a women has undiagnosed HIV infection, or if birth is abroad.

HIV treatment for children has dramatically improved.

Adherence to HIV medications big problem.

Generation of young people infected at birth reaching adolescence and entering sexual relationships.


 母子感染については、イギリスでのサポート活動の結果からです。強調されているのは、きちんとした医療サポートを受けていれば、母子感染の確率は1%にもみたないということ。言い換えれば、母子感染だけでなく、HIVに感染しない、感染させない知識を持っていれば、感染する確率は低くなるということ。
 ワークショップの中で講師が何度か強調したことは、HIV自体の感染率の弱さ。C型肝炎のヴァイルスは空気に触れても4週間弱サヴァイヴするのに対し、HIV派空気に触れるとすぐに死滅する。それほど弱いヴァイルスだから、限られている感染ルートとその防止策をしっかり知るのは本当に大切なこと。
 
[Travel and HIV]
Having HIV will impact on ability and opportunity to travel

Many countries do not allow you to emigrate if you are HIV positive

Many countries place restrictions on visitors who have HIV

There are no restrictions on EU nationals travelling within the EU

Before travelling outside EU it is worth checking with Embassy as things do change


 個人的に驚いたのがこのセクション。今でもこんなにHIV感染者を拒絶する、言い換えればその存在を認めたくない国があるのかと。中でも最も驚いたのがカナダ。
 講師曰く、HIVポジティヴで就労ヴィザを持っている人は受け入れる。しかしながら、ポジティヴの移民希望者の受け入れは拒否だそうです。講師は続けて、カナダほどの先進国であれば、HIV感染者への医療費は巨額ではないはずだから、この措置は悲しいことだと言っていました。僕が考えたのは、治療を受ける目的ではなく、例えば家族で、また夫婦で移住したいとしても、家族の一員やパートナーがポジティヴだと離ればなれになるのか、それとも移住を断念しなければならないことになることもあるのではということです。

 ワークショップが始まる前に、ウォーム・アップのための質問が配られました。その中で、「Who you MUST tell your HIV status?」と言うのがありました。
 もちろん、「義務」ではないです。しかしながら、例えば海外出張でドバイにとなったとき、HIVの確認を要求されます。本人が隠したくても、隠し通せない、そんなこともあり得るのではないか。

 この「隠す」、「隠さない」についてもやもやした気持ちを引きずったので、翌日、健康問題にも詳しい先輩セラピストの考えを訊いてみました。「例えば、がんの治療を回りに隠そうとする人もいるよね。それと同じだと思う。HIVだけが最も忌み嫌われる症状であるという認識を社会が変えなければと思う」、と。

 ここまで読んでくださった皆さん、一つ気づかれたかと思いますが、AIDSという単語を使っていませんし、今後も使わないようにするつもりです。THTでも、できるだけAIDSを使わないようにしていくであろうとのこと。なぜなら、この単語を使うことで、HIVの認識をスティグマタイズする可能性を看過できないからの様です。やはり、言葉の持つ力は大きいです。些細なことに思われるからも知れないですが、HIVのカテゴリィをSTD(sexually transmitted disease) からSTI(Sexually transmitted infections)へ移行する流れもあります。これは、disease がもたらすであろう心理的な印象を、より現実的なinfection(感染症)の方に近づけようとのことだそうです。

 もう一つ、HIV感染の抑制・撲滅にかかわるチャリティや医療関係者の懸念は、国によって感染者が利用できる薬の「質」に大きな差があること。例えばイギリスではもはや使われなくなった、腎臓や肝臓への副作用が大きい薬が、アフリカ諸国では未だに使われている。なぜなら、薬価が最新の薬と比べて遥かに安いからだそうです。

 HIVを完全に治癒する薬や治療法は未だにありません。しかしながら、感染したら即死ぬという感染症ではありません。

世界があれているのは平和ぼけだから?!

2012.09.16
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(ガーディアン、9月15日に掲載されていたのを拝借)

明日から、イギリスではバゲット不買運動が起きるだろう。

 なんだか、世界中が、人類すべてが他人を憎しまなければ生きていけなくなって来ているように思う。

 隣人が良い隣人であるとは限らない。

 「歴史」の意義は、蒸し返すことではなくて、学ぶこと。


左利き用のカメラ

2012.09.16
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この写真を撮ろうと思ったとき、この「リーフ」を右手に持ち、さて写真をとカメラに左手を伸ばしたときに気づいた。シャッター、右だ。右手は一つ。

 ウン十年生きて来て初めて気づくことはまだたくさんあるだろうけど、これほど身近なことを全く気に留めていなかった。左利きの人は、写真を撮るとき、どう感じるのだろう。シャッターが左についているカメラはあるのだろうか。

 そう考えると、スマートフォンって、画期的なのかと思う。自分では持っていないけど、この夏、あちこちで写真をと頼まれ、そのうちの何台かはスマートフォン。記憶違いでなければ、シャッターが真ん中についているのがあったはずだし、アプリだったら、画面上の位置を変えられるのではないかと想像する。

 左利きの人の苦労を、一瞬、感じた日常。

ロンドン・デザイン・フェスティヴァル開幕

2012.09.14
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今日、9月14日、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館(博物館)をメインに、10周年を迎えてロンドン・デザイン・フェスティヴァルが開幕。250を越える関連イヴェントは、ロンドンの至る所で開催されるらしく、全部を観るのは不可能かもしれない、とは担当者の弁。

http://www.vam.ac.uk/content/exhibitions/london-design-festival-2012/london-design-festival-v-and-a-displays/

http://londondesignfestival.com/content/london-design-festival-2012-unrivalled-showcase

 V&Aでのインスタレイションで注目を集めそうなのは7作品くらい。そのうちの2作品が日本をルーツとするデザイナーによるもの。一つは、nendoの中心、佐藤オオキさん。もう一人はロンドンをベイスに活動しているKeiichi Matsudaさん。

 佐藤さんによる「Mimicry Chairs」は館内のいくつかの場所に分かれて展示されいている。そのうち見応え、感じ応えのあるのはレヴェル3のタペストリィ・ルーム。タイトルの意味を考えるにはもってこいの環境。

 Matsudaさんによる「プリズム」は、まずその展示場所が非常にまれなところ。美術館の一番高いところにある小さな部屋で、普段は立ち入りができない。そこでほのかに明かりを暗闇に広げる展示には、静かに引き込まれる印象が湧いた。本人はロンドン、ヨーロッパを中心に活動しているようだけど、日本的な闇と光の調和を感じる。プリズム鑑賞は、特別な展示場所ということで予約が必要。これは美術館のサイトからできる。注意すべきは、ハイヒールでの参加は不可。

http://www.keiichimatsuda.com/

http://www.nendo.jp/profile/

 短い時間だったが、二人に話を聞くことができた。二人とも聞き惚れるほどきれいな英語で作品のことを話してくれ、世界で活躍するにはここまでの英語が必要なのかと。頑張ろう。

 もう一つ、個人的に面白く感じたのは、これ。

Sweet Instruments of Desire
Studio William

Foyer 1, Sackler Centre

Four leading universities, 54 students, one national design competition: Responding to a unique challenge set by design-led cutlery company, Studio William, Sweet Instruments of Desire showcases 54 innovative and practical new cutlery forms designed by students to transform how dessert is experienced.
Sweet Instruments of Desire demonstrates how creativity and innovation can impact the sensory experience of dining.


DSCN3153.jpg

 かなり画期的なカトラリィで、既に商品化されてジョン・ルイスで購入できるとのこと。

http://www.studiowilliam.com/en/shop/leaf-satin.html

 23日まで。「プリズム」を見たい人は、予約を早めに。ワンスロットに参加できる人数がかなり限られているので。

ラファエル前派:ヴィクトリアン・アヴァンギャルド@テイト・ブリテン

2012.09.12
先週末の素晴らしい天気も過ぎ去り、秋まっしぐらのロンドン。

 9月12日に初日を迎えた「ラファエル前派:ヴィクトリアン・アヴァンギャルド」展を、初日を前に見る機会に参加してきました。当日は僕のスケジュールがかなり詰まっていてすべての展示(180点以上)をじっくりと鑑賞する時間がなかったので、簡単に。

http://www.tate.org.uk/whats-on/tate-britain/exhibition/pre-raphaelites-victorian-avant-garde

 展覧会のサブ・タイトルが示すように、テイト・ブリテンでも1984年以来となったラファエル前派の展覧会のテーマは「ラファエル前派の存在意義」とでも言うのか、この芸術グループが何を目指したかということを、絵画だけでなく、写真、タペストリィ、家具、ステンドグラスを7つのテーマに分けて説明します。

 4年前より(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-760.html)ラファエル前派のことを学んだとはいえグループの思想を理解したかには自信を持てなかったので、資料をかなり読みあさりました。同時に、新聞等で報道された注目作品の背景説明を読んで、ラファエル前派に持っていた偏見が瓦解しました。ごくごく簡単に表現するとラファエル前派というのは、緩やかな思想グループであり、だからそれぞれの画家、芸術家の作風が違うということを学びました。
 で、その偏見が瓦解して、どうしてラファエル前派に熱心になれなかったのかも、今回よく判りました。作品の背景、本人の熱意を知ってなお、中心人物の一人、ロセッティの画風への違和感は拭えません。これは、僕の嗜好などでどうにもなりません。

 ヴィクトリア時代、抑圧されていた性への関心を絵画のそこかしこにシンボルを散りばめた作品や、キリストをまるで一般市民のように描いたことで、社会からの反発を引き起こした作品など見所満載です。全部をしっかり見ようと思ったら、2時間では足りないでしょう。
 今回の注目作品の一つは、1951年を最後にイギリスで公開される機会のなかった、グループ創始メンバーの一人、ウィリアム・ホルマン・ハントの「レイディ・オブ・シャロット」。

hunt_shalott.jpg
(ネットから。一見、写真のようなリアリズム。見れば見るほど、なんだかすごい絵だ)

これは展示の最後の部屋、「神話」のカテゴリィの中で展示されています。同じ部屋には、8月まで東京で開催されていた「エドワード・バーン=ジョーンズ展」で日本初公開だったらしい「ペルセウス」を題材にした連作の油彩ヴァージョンがシュットゥットガルトから(日本で公開されたのは別ギャラリィ所有のもののようです)。

 今年はいくつかの美術展でキュレイターの方々と言葉を交わす機会があり、話すたびに感じるのは、それが仕事とはいえ、彼らの知識の膨大さ。今回も、テイトのキュレイターの方に質問すれば、僕の知識を遥かに超えた新しい学びがありました。また、(確か)BBCがアメリカの大学の教授(おそらく今回の展覧会のキュレイター・メンバーの一人)にインタヴューしていたのを横で聞いていたときも、僕が見向きもしなかったバーン=ジョーンズの絵について雄弁に語っていました。
 大学のときの指導教授がこの辺りの専門家。教授がロンドンまで来てくれたら、一緒にテイトに行って講義を聴きながら作品を観たいです。

 こんなアマチュアの説明なんて役に立たないという皆さん、是非、テイト・ブリテンへ。「オフィーリア」ももちろん展示されています。テイトでは2013年1月13日まで。その後、ワシントンDC(2013年の春)、モスクワのプーシキン美術館(2013年初秋)を巡回予定になっているそうです。と言うことは、来年は、テイト・ブリテンを始め、ラファエル前派のコレクションを持つイギリスの美術館やギャラリィではラファエル前派の絵は長期貸し出し中ということになるでしょう。つまり、「オフィーリア」をテイトで観たいのであれば1月13日までに展覧会に行くか、さもなくば巡回が終わるまでは観られない可能性が高いということです。

猫は夢を見るのか?:ロンドンの好天も今日まで

2012.09.09
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(朝ご飯が待ちきれない状態)

 忙しいときに、大家の猫の写真を撮るのが最近の息抜き。猫がこちらの思うように動いてくれないのが難点。

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157631463289220/

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157631476860028/

 今日、パラリンピックスが閉会し、ロンドンの夏も終わり。好天が続いているけど、秋の気配を感じる。

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157631467291752/

嫌いな英語:win win situation 永久機関をつくれないのと同じ

2012.09.06
ぼやき漫才だと思ってください。

 過去数年、経済人はだけでなく、普通の日常生活の中でも多くの人が使い始め、使いすぎている印象を持つのが、win win situation という表現。大嫌いです。Dislikeなんてものではなく、 Hateです。

 と言うことを先日、アメリカ人の友人に、「win win situation なんてあり得ない。勝者がいれば、敗者がいるのが資本主義の根本なのだから、人がwin win situationと言い始めたら、僕はその話を信じるのはやめる」と言ったところ、友人曰く。

 「win win situationと言うのは、例えば取引の結果として双方が利益を受けることが確実な状況のことだから、間違ってはいない」。

 「もしかしたら投資銀行の巨額取引の中ではあり得るのかもしれないけど、その恩恵に預かれるのは立った一握りの人間だけ。そんな一握りの人間がwin win situationと浮かれている外にいるのは敗者だけ。目くらましにしかすぎない」。

 「なんだか、コミュニストみたいだね」。

 「違う、これはコミュニストであるとかではなくて、機会の均等性がこの社会から奪われている状況から目をそらさせているだけだと思うな。
 「例えを変えてみると。多くの科学者が永久機関を作り出すことを夢見ているけど、叶わないことは今の科学理論の中では自明のはず。確か、エントロピィがどうのこうのだったような。win win situationを言い出す心理はそれと同じだと思う。あり得ないけど、夢に踊りたい、夢で踊らせておいて現実を忘れさせる。まやかしにすぎないから、この表現は嫌いだ」。

 と言うことを話し終わってからしばらくして、世界中、どんな社会、どのような時代になっても被害が減らない「ねずみ講」、英語表現だと、pontiff schemeを考えました。覚えていらっしゃる方は今でも多いであろう著名な例だと、Bernard Madoff。メイドフが作り上げたwin win situationが虚構ではなかった、間違いではなかったと反駁できる人はいないと思います。

 最近とてもがっかりしたのがあります。けっこう面白いことを書くなといつも読んでいる新聞の人生相談の回答者が、成人した子供たちの反対を説き伏せて、年老いた母親との同居を決めた女性の不安の相談の返答の中で、同居の決断は「win win situation」になるだろうと書き記していたこと。
 励ます意味で使ったのだろうとは思うのですが、家族の暮らしの取り決めにwin win situationと言うことに強い違和感を僕は感じます。どこかに幸せな家族はいるのかもしれないですが、それなりの苦労だってあるはず。きれいごとでは済まされないのが家族という社会形態。そこにwin win situationを持ち込んでは、その時点でその社会はもはや終わっているなと思ってしまいます。お金同様、幸福は世界を巡っているように思うことがあります。いつもいつも幸福をつなぎ止めておくためにwin win situationが必要と思い込むのは、不自然に感じます。

 「win win situation」と言う表現、とても理論的な表現だと思われる方もいるのではないかと考えます。でも、僕はこれほど感情的で、発言者の心理的葛藤を隠そう隠そうとする足掻きを鮮明に感じる表現はないのではと感じます。

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(ネットで見つけた画像)

 で、そのアメリカ人の友人と話の流れでパラリンピックスについて。Disabledという形容詞の代わりに、最近、アメリカでは「differently abled」と言い表すことが増えているとのこと。友人曰く、多分にポリティカル・コレクトネスの議論に発展する表現だとは思うけど、パラリンピンアンの活躍を見ていると、differently abledはその通りだと思う、と。一理あるなと思いました。参考までに、オブザーヴァ紙に掲載された関連するであろう記事です。

Drop the word 'disabled' from Games coverage, demands Paralympics committee president
http://www.guardian.co.uk/sport/2012/aug/26/paralympics-philip-craven-disabled-disability

 パラリンピックスに出場する選手を単にdisabledとは呼ばないでほしいという趣旨なので、広義の意味では語られていません。しかし、パラリンピックスに出場している選手たちがやり遂げていることを見れば、differently abledという表現の方が、まやかしという印象はなきにしもあらずですが、「できない」と言い切るよりは的確なのではと考えます。

配達できなかった郵便物は、売りさばきます:ロイヤル・メイル

2012.09.05
今日、イギリス人の友人から、ロイヤル・メイルについての記事を教えてもらった。掲載先はサンディ・エクスプレス。自ら買うことはない新聞。

ROYAL MAIL CASHES IN
http://www.express.co.uk/posts/view/343518/Royal-Mail-cashes-in

 誤配とか、不在だった受取人が集配所にとりにこなかったりして、且つ送り人の住所がなくて戻せなかった郵便物をオークションで売り、売り上げはロイヤル・メイルのものになるというもの。

A mountain of letters and parcels which cannot be delivered, costing millions in postage, is amassed at the company’s National Returns Centre at a rate of almost 60,000 items a day.

These are opened by staff and items of value are held for four months before being sold at Surrey-based Wellers Auction House, with all the profits going to the Royal Mail. In the past financial year it shredded more than 21 million letters and auctioned off birthday and Christmas presents, laptop computers, mobile phones, artwork and even bagpipes.

The profit was a 25 per cent increase on the previous year, when £900,000 was raised from the auctions.

Shadow Postal Affairs Minister Ian Murray said the public would be disappointed with the drop in standards, given the stamp price rises and a major bonus awarded to Royal Mail’s chief executive Moya Greene just weeks after the increase. Ms Greene received a £371,000 cash bonus to take her annual salary to £1.1million, despite a year of criticism over customer service.

 
 この部分は、最高経営責任者の職にある女性は、今年4月の大幅な郵便料金値上げのおかげで伸びた収益がターゲットに達したとしてボーナスを支給されたというニュースを裏付けるもの。

The Sunday Express can reveal that the controversial practice of auctioning “lost” valuables has netted £5.1million for the firm’s coffers since 2005. In response to a Freedom of Information request, Royal Mail said it does not keep a record of the items being auctioned, so could not provide details of even the most valuable items sold.

A spokesman for Wellers Auction House said it could not disclose details of the items sold due to confidentiality agreements with Royal Mail, but most of the items were valued at under £20.


 オークションで売りさばいた物品の記録はないから、何を打ったかはロイヤル・メイルは知らないとのこと。また、オークション会社は、ロイヤル・メイルとの取り決めで何を売ったかを公にすることはできないと。

 ロイヤル・メイル、これまで何度もいやな経験をしてきたけど、今回ほど驚いたことはない。「倫理」という言葉とその理念は、ロイヤル・メイルには存在しないのかもしれない。

 公平に書けば、郵便物の大半はきちんと配達されている。このオークションも法的に間違ったことをしているとは断言できないと思う。つきつめれば、この記事で書かれていることは、ロイヤル・メイルという企業の活動の中では小さなことなのだと思う。しかし、ロイヤル・メイルを信頼できるかと問われたら、肯定の即答はできない。

ロイヤル・メイルのご近所配達計画
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1749.html

郵便局廃止の流れ
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1231.html

世界の話題:9月4日

2012.09.04
*著作権は日本経済新聞社に帰属します。

日経夕刊9月-1


7/7 で大怪我を負った男性に国外退去の危機:国籍に優劣?!

2012.09.04
オリンピックス、パラリンピックスは好天に恵まれたものの、春先の大雨による洪水、そしてその洪水による二次災害の影響はけっこう甚大らしいイングランド。

 先日のポストで少し触れたニュースは、2005年7月7日の同時爆発テロに巻き込まれ大けがを負い、その写真が世界中を駆け巡った「インド生まれの白人イギリス男性」が、イギリス国境局の方針で国外退去になる危機に直面しているというものです。

July 7 survivor faces deportation from Britain
http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/immigration/9514323/July-7-survivor-faces-deportation-from-Britain.html

Prof John Tulloch, 7/7 London bomb survivor, fights to stay in UK
http://www.bbc.co.uk/news/uk-wales-19455691

 おそらく、多くのイギリス人ですら理解できないであろうことを、たかだか10余年しかイギリスで暮らしていない僕が理解できることではありません。全く理解できない点を、テレグラフから。

What makes Prof Tulloch’s plight so hurtful to him is that it is a direct consequence of his family’s very service to this country.

He was born to a British Army officer in pre-independence India. Unknown to him, this conferred a lesser form of British nationality known as a “British subject without citizenship”.

He was, he says, never told about this status and was issued with a British passport in the normal way.

“Neither I nor my parents ever received information from the Government that this was somehow an inferior passport,” he said. “In particular, the passport itself explicitly said that you could take out dual nationality without risking your British nationality.”


 第二次世界大戦中に、インドに赴任していた両親の元、インドで生まれた彼のステイタスは、British subject without citizenshipであると。市民権のないイギリス人、って差別ではないんですかね。

 真っ先に取り上げたテレグラフやデイリィ・メイルの読者によるコメント欄では、イギリスの大学を卒業後、オーストラリアで職に就き、そこで市民権を獲得したのだから当然だ、という意見もあります。また、国境局による、

“It is the responsibility of an individual to check that they will not lose a previously acquired nationality or citizenship on acquiring an additional one.”

これが正論なんでしょう、移民法からすれば。でも、イギリスって、こんな国なのかとの思いが湧き上るのは止められません。テレグラフの記事の後半では、テロリストとして収監されてなお、母国に強制送還すると命が脅かされる危険があるとしてイギリス国内にいることを許されている外国人犯罪者との対比が書かれています。

The Tulloch family’s service to the country might seem to qualify them for special treatment. In fact, it causes them to be treated worse than anyone else.

Indeed, as British immigration law stands, Prof Tulloch would almost certainly have more chance of staying here if he had been a perpetrator, rather than a victim, of terrorism.

Last year, Ismail Abdurahman, a Somali convicted of providing a safe house for the would-be 21/7 bomber, Hussain Osman, was excused deportation after serving his prison sentence on the grounds that his human rights would be at risk if he was returned to Somalia.

Abdurahman is one of at least 11 convicted foreign-born terrorists allowed to remain in the UK under such provisions.


 彼がテロリストだったら、もっとましな扱いを受けたことだろう、と。

 ロンドン・メトロポリタン大学から学生ヴィザ発行のスポンサー資格剥奪のニュースと前後して、2011年度のイギリスの移民統計が発表されました。イギリス国外へ移民するイギリス人の数が2010年度を上回ったそうです。イギリス国外への移住を決めたイギリス人のグループがどのようなグループなのかは判りません。いろいろな要因を知らないまま僕の偏見を交えて書くと、仮にこの移住グループの大半が「生粋」のイギリス人だとしたら、イギリスという国は、自国を誰のための、どのような国にしたいのか、という疑問が渦巻きます。

 イギリスはアフタヌーン・ティーとキャスだけの国ではない、ということです。

I will miss you all:さよならウェンロック、マンデヴィル

2012.09.04
DSCN2967.jpg

 全部を撮りきれなかったけど、いくつか追加した。

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/collections/72157631253593700/

 僕と同じように、印刷したルート・マップを手に彼らを探しまわっている家族連れにたくさん遭遇した。

 僕のように寝返ってしまった人もいれば、頑に「不気味だ」と受け入れない人もいる。いろいろ議論を巻き起こしたウェンロックとマンデヴィルのデザインだけど、オリンピック、パラリンピックのマスコット史にあらゆる意味でしばらくは語られる存在なのかなと思う。

DSCN2974.jpg

人とは違って当然と理解することは素晴らしい

2012.09.02
今日、9月2日のサンディ・テレグラフは自分とは政治的立ち位置が違う新聞を読む意味はあると改めて感じる記事が二つありました。一つは、インドで生まれ、人生の大半をイギリスで暮らして来た70歳になるイギリス白人男性が国外退去を迫られているというもの。二つ目は、アメリカ発ですが、耳が大きいとか鼻の形等の身体的理由でいじめに合う10代の子供たちが、いじめられなくなるように形成手術を受けているという報道。

American teenagers resort to plastic surgery to beat bullies
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/northamerica/usa/9514215/American-teenagers-resort-to-plastic-surgery-to-beat-bullies.html

When Nadia Isle returns to school she won’t just be toting a new bag, or uniform. The high school pupil is preparing to return to classes with a new-look nose, chin and ears after undergoing plastic surgery, aged 14.

The teenager from Georgia, who has been haunted by taunts of “Dumbo” and “Elephant Ears” since the age of six, had the surgical treatment in an attempt to curtail the abuse and end her misery.

“I feel beautiful, I feel better about myself,” she declared, before returning to face her classroom tormentors. “It’s going to be nervous at first, but I think I can pull it through and that they’ll realise what they’ve done and that they’ll stop.”

Nadia’s story, revealed on CNN, sparked a debate over whether a surgeon’s scalpel is an effective or ethical weapon against bullying.

 14歳になるナディアは、その耳のかたちから「ダンボ」とか「象の耳」と6歳の頃から言われ続けていた。そのような(言葉による)いじめを終わらせるために、ナディアは耳、端、そしてあごの整形手術を受けた。「私は、自分のことをもっと良く感じる。私を見て、彼らが私に何をして来たのかを理解するだろうし、彼らは(いじめを)やめるでしょう」。

 記事を読めば判る通り、これはティーンエイジャーに美容整形を奨励する事象ではないです。人とはちょっと違う形の鼻や耳を持って生まれた所為で、いわれのないいじめにあう子供たちのことを考えてのことです。インタヴューに答えている医療従事者は、整形手術がいじめを克服する、終わらせるための唯一、最良の解決策では「ない」といことを強調しています。

 現在、日本でも、そして世界の多くでいじめが大きな課題になっています。今回のアメリカ発のニュースから考えるのは、いじめはいつの時代にもあったこと、あることでしょう。でもその理由として「体のある部分のかたちがマジョリティと違っているから」という理由は、なくせないものなのだろうか、という疑問。
 人種が違えば、肌の色、骨格の大きさが違うのは当然だろうし、同じ国籍でも、生まれた地域や家系の背景によって、一人一人が違うのは当然のこと。それをなぜ、今になっても克服できないのか。子供たちにそして大人たちに教えられないのか。

 9月1日、日本から報道された「出生前診断」に少なからずかかわることだと思いますが、生まれる前に不備があって間引き、やっと生まれても、何が起きるのかは判らない。

 現在、パラリンピックが大きな注目を集めているイギリス。人は違って当たり前。その違いを受け入れることは強制できないことかもしれない。でも、違いを受け入れることができないのであれば、手を出すな、口を出すな。
 いじめを回避するための整形手術、そして出生前診断双方から感じるのは、表面だけを繕うだけで、本当に取り組まなければならない課題の根幹部分を倉庫の奥にしまい込んでおくだけ、そんな印象があります。

 ひと月前に、ラベリングについての簡単な考察を書きました。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1725.html

 マーケティング目的で無理矢理張り付ける、張り付けられたラベルで人を判断するのをやめてみませんか、と。ガーディアンのファミリィ・セクションにパム・セント・クレアという俳優の方のインヴューが掲載されました。複雑な家庭環境で育ったそうです。インタヴューの中で、育つ家庭で人と違っていてもそれがその人の一生を縛るものではないと。

The former EastEnders actor talks about her family
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2012/sep/01/pam-st-clement-family-values

I get annoyed when people say, "Oh well, they had a bad upbringing," or "They had a bad background and that's why they behave like that." What happened to you in the past does not have to be the eternal stamp on your personality.

 過去、あなたに起きたことが、あなたの人格に生涯つきまとうものではない。

ロンドン・メトロポリタン大学の騒動から感じる、イギリスにおける国籍の軽さ

2012.09.02
既にセントラル・ヒーティングが稼働するロンドン。酷暑の日本から避暑で来られるのも良いかと。

 当事者であるロンドン・メトロポリタン大学すら知らなかった、イギリス国境局によるヴィザ発行資格剥奪のニュースは8月26日にサンディ・タイムズがすっぱ抜いて(それとも国境局から流してもらったのか、http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1748.html)以降、日本からの留学生が100人を超えることで、日本でも大きく報道されました。

留学生受け入れ免許はく奪 英大学、日本人に影響も
http://www.47news.jp/CN/201208/CN2012083001002210.html

英国の大学、留学生受け入れ免許取り消し 日本人も影響
http://www.asahi.com/international/update/0901/TKY201209010132.html

英国国境局は8月30日、ロンドン・メトロポリタン大学に対し、欧州連合(EU)域外の留学生受け入れに必要な免許を取り消したと発表した。在籍中 の留学生も講義を受けられなくなり、約2700人の外国人学生に影響が出るとみられている。大学のウェブサイトによると、日本人学生も約150人在籍して いる。
 英国のグリーン移民相は、同大学について、滞在許可証を持たない学生が学び、出欠の確認もずさんだったなどと指摘した。政府は留学生を支援する特別チー ムを設けたが、60日以内に新たな受け入れ先が見つからない場合、国外退去処分になる可能性がある。学生たちは、首相官邸前で抗議デモをした。
 英国の大学にとって、高い学費を支払うEU域外の学生は貴重な収入源となっている。今回の措置で、留学先として英国の人気が落ちないかと心配する声も出ている。(ロンドン=伊東和貴)


 日本での報道を読むまで、日本ではロンドン・メトロポリタン大学はどの程度知られているのかを全く知らなかったので検索してみたところ、ロンドン・メトロポリタン大学がかなり日本で宣伝を打っていることを知りました。

http://www.londonmet.jp/

日本学生支援機構
http://www.jasso.go.jp/study_a/news.html

今回のことだけでなく、イギリスの高等教育についてとても詳しく書かれているブログ
http://ameblo.jp/tekkanomaki/entry-11341715257.html

 もちろん、イギリス国内では大きく報道されています。どの媒体かによって、今回の資格剥奪の混乱で責められるのはロンドン・メト、イギリス国境局、それとも政府なのかは大きく分かれています。また、報道を読めば読むほど、今回の問題は、ロンドン・メトロポリタン大学がスケイプ・ゴートになった印象が、個人的には強まります。

 一つ、日本語に訳されてイギリスへの留学を考えている皆さんに動揺を引き起こしただろうことは、イギリスが「非EUからの留学生を排斥する方向に進むのでは」ということだと思います。僕は、今の連立政権の元、国境局が排斥したいのは留学生だけではなく、イギリスで生まれ育った人ですら、隙あらば国土から追い出したいのではと感じています。今日のサンディ・テレグラフで、世界中で多くの人が知っているであろう一般市民が強制的に国外退去を迫られているという記事を読み、国境局は国民のために存在する政府機関ではない、と。そのような印象を持ちながら読んだ以下のガーディアンの記事はかなり興味深い考察でした。

London Met and Paralympics 2012: a tale of hypocrisy in international policy
http://www.guardian.co.uk/higher-education-network/blog/2012/aug/30/london-met-paralympics-opening-ceremony

 この記事を読むと、今回の免許剥奪の経緯には、必要な討議が必要な大臣たちの間で充分になされなかったのではという疑問が浮かんできます。

The revoking of LMU's licence for international students will have a number of far-reaching consequences, not least financial. What looks like a political decision, or even scapegoating of LMU to satisfy right-wing immigration rage, will have unforeseen consequences across the university and for the individual students within it.

 この国境局の迷走ぶり、そして信念のなさを確信する記事。

London Met students will get three months to find another course
http://www.guardian.co.uk/education/2012/aug/31/london-met-three-months-course

 当初の発表、報道で60日で別のコースを見つけてヴィザの再発行を受けなければ強制国外退去になると留学生を恐怖に陥れた舌の根も乾かないうちに、10月に手紙を受け取ってから60日、つまり3ヶ月の猶予だよと。追い出すと脅しておきながらのこの発表は、結局学生の心配をさらに先延ばしにするだけ。イギリスの高等教育機関の年間スケジュールで1月から始まるコースはほぼあり得ないことは、大学教育にかかわっている人であればよくわかっていること。日本と違って、カリキュラムによっては2月に始まるコースはあるけれども、影響を受ける学生すべてがそれらの限られた条件に合う可能性は限りなく低いとおもいます。
 「外国人留学生の排斥」ではなく、国境局のやり方に従わなければ出て行けと言っているように感じます。このような印象を多くの人が持ち始めたら、教育関係者が懸念しているように、そんな国に留学生が来るでしょうか?
 
 日本での報道に興味を持ってロンドン・メトロポリタン大学のことを調べた方もいるでしょう。ランキング自体は誉められるものではないです。でも、あり得ないとは判っていても、名門と言われる大学で同じことが起きたら、同じ強権を発動するか?絶対にしないと思います。

 ロンドン・メトロポリタン大学で今自分がイギリスで暮らしていくために必要な知識と経験を獲得した僕としては、この状況は「やっぱり」と思うと同時に「残念」でなりません。ガーディアンに、匿名で教師の一人が「やっぱり」という印象を書いています。

London Metropolitan University has been given a double wake-up call
http://www.guardian.co.uk/higher-education-network/blog/2012/aug/30/lmu-student-recruitment-teaching-learning

 僕が心理学の学位を終えたのは、前身のギルドホール大学。IELTSのスコアもきっちりと調べられ、さらに統計学に取り組む必要があるために簡便なものであるものの数学の試験を受けた上で、入学を認められました。上位大学の売りであるマン・ツー・マンの指導は少なかったですが、卒業論文を書き上げるための指導は満足のいくものでしたし、結果としてイギリス心理学協会の正会員になることもできました(これ、けっこう基準が厳しいんです)。
 コミュニティにおけるメンタル・ヘルスのあり方についてのワークショップ・コースでは、逆に、ガーディアンに書かれているように、「このレヴェルの英語でどうやってイギリス国内のメンタル・ヘルスに携われるのか?」と感じる学生がいたのは事実。大学運営の為に、無理矢理に留学生を受け入れたのだろうかと感じることが多々ありました。

 一つ、日本からだと判り辛いロンドン・メトロポリタン大学の特色は、若い頃に大学教育を受ける機会がなかった、経済的に無理だったであろう社会人が受けられるコースが充実していること。そのようなコースに非EU圏からの留学生が興味を持つかどうかは判断できませんが、運営のための予算獲得のために留学生を受け入れているだけの大学ではない、ということは理解してほしいと思います。日本の大学とは違った目的・意義があるということです。

 今回のロンドン・メトロポリタン大学のことで改めて感じるのは、イギリスで社会をそして人々の心をがんじがらめに縛り付けている階級、つまり社会階級、大学ランキング(階級)を覆すのは不可能ではないかということです。

[追記:9月4日]
政府内の新しい人事が発表されて、今抱える課題、今後の課題をキャメロンがどうしきっていくのか。ロンドン・メトロポリタン大学の免許剥奪は、政府が予想していた以上に影響を及ぼすのではないかと。

London Metropolitan University: Overseas students react
http://www.bbc.co.uk/news/uk-19422234

 修士の卒論を書き上げている学生まですべてを失う状況というのは、常軌を逸していると言われても仕方ない。

London Metropolitan University starts visa legal action
http://www.bbc.co.uk/news/education-19468774

It's 20 years since polytechnics became universities – and there's no going back
http://www.guardian.co.uk/education/2012/sep/03/polytechnics-became-universities-1992-differentiation

 今日のガーディアンに掲載されたコメント記事。一定の年齢より上の世代でないと、イギリス人ですらロンドン・メトロポリタン大学を含めて多くのイギリスの大学の前身形態であるポリテクニィクのことを知らないのではないだろうかと推察する。にもかかわらず、あの大学はポリテクニィクだからという偏見を多くの人は現実を知らないまま抱き続ける、というのが現実の様に思う。

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