LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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2012年10月の記事一覧

芸術が存在する意義はどこに

2012.10.31

(Lucian Freud’s Large Interior, W11 (after Watteau), 1981-3,今年観た絵画の中で最も衝撃を受けた作品)

ここに書くことは、自分でもなんて小賢しく、全く消化されていな戯れ言に終わると思うのですが、2012年、これまで触れたことの無かった芸術を様々なかたちで体験し、それが自分の血肉になる過程での混乱と衝突の現れかと思っています。

 10月、ガーディアン紙とオブザーヴァ紙で現代美術の動向に関する興味深い記事を読みました。中旬に掲載されたのは、現代美術(主にヴィジュアル・アートで、舞台芸術関連、音楽全般は含まれていません)を牽引する100人のリストについてでした。

ArtReview's Power 100 list reveals art-world battle for supremacy
http://www.guardian.co.uk/artanddesign/2012/oct/18/artreview-power-100-list-world

 僕自身、現代美術のすべてに通暁していることは全くなく、知らなくて当然と言えば当然です。しかしながら、100人のうち顔を思い浮かべられるのは10人も居ないということに、「現代美術って、まず、誰のためにあるのだろうか?」という自分への質問を考えました。リストは、記事の最後に掲載されていますので、是非、眺めてみてください。

 この記事で圧倒されたのは、キュレイター、そしてディーラーの絶対的な存在。むかしから芸術を擁護し、発展させて来たのはパトロンであり、その芸術を売り込むディーラーがいてこそなのだろうことは理解できます。でも、記事を読むと彼らの活動規模、そしてそのディーラーたちが取り上げ、集め、展示する美術へのアクセスが、普通に美術に接したい人には昔以上に困難になりつつあるのではということを感じます。

Second, fourth and fifth place on the list, however, are occupied by the macho blast of the world's most dominant art dealers: Larry Gasgosian, Iwan Wirth and David Zwirner. US dealer Gagosian this week added a new Paris space to his already huge portfolio of galleries, spanning Los Angeles, Hong Kong, London, Rome, Athens, Geneva and New York. The new gallery, in the north-east outskirts of Paris, is in the grounds of Le Bourget airport, the most important hub for private aviation in the city – the billionaire equivalent of providing a carpark. In September, the Art Newspaper reported that the combined floor area of Gagosian's 13 premises is set to overtake that of Tate Modern.

 リストの2位にランクされたラリィ・ガゴシアンは最近パリにギャラリィを開いた。(中略)ガゴシアンが所有する13のギャラリィの総床面積は(ロンドンの)テイト・モダン以上になる。

http://www.gagosian.com/

 テイト・モダンって、広いんです。その広い美術館を、いち個人(もしくは会社)が所有するギャラリィが凌駕するという事実。ガゴシアンは、ロンドンではキングス・クロス駅から至近の場所にあり、物理的なアクセスが限定されている訳ではないです。

Paul Noble
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1512.html

村上隆
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1420.html

 自分で観に行っておいて言うべきではないかもしれないですが、もしかしたら多くの人にはクズに映るかもしれないけど、こんな面白い展示をどうしてもっと広く宣伝しないのか、と。一部の好事家、蒐集家だけが来れば良いんですか、と。

 記事の中程で紹介されているカタール王族の女性メンバー。

Despite the global economic crisis, the continued expansion of such high-end galleries reflects, according to Rappolt, the strength of the top end of the contemporary art market, bolstered by the desire among tycoons to "enter the weird social elite that collecting art creates". This elite is small but highly international, and this year is registered on the ArtReview list by the meteoric rise of Sheikha Al-Mayassa bint Hamad bin Khalifa Al-Thani, who has shot up nearly 80 places since last year to No 11 on the list. A daughter of the emir of Qatar, she is the chair of the Qatar museums authority, and is rumoured to have spent, with her family, over £600m on western art over the past decade, including works by Damien Hirst and Mark Rothko.

 記憶違いでなければ、ドーハで開かれた村上隆さんの展示を実現させたのはこの女性だと思います。この部分の出だしを読むと、もてはやされる現代美術の潮流は、一部のコレクターとディーラーによってつくられているのではないかと思えて来ます。現代美術はパワフル・マイノリティにためにあるのか、それともパワレス・マジョリティがその流れを変えることはできるのか、と。

 今年は、オリンピックと平行して開催されたカルチャラル・オリンピアード、そしてロンドン2012フェスティヴァルのおかげで、それ以前の単なる美術館通いと言う視点から、展示される絵画や彫刻などがなぜ美術館にあるのかという視点で美術展を体験することが何度もありました。自分が感動したという純粋な想いを慈しみ反芻する同時に、絵画が生み出された状況を多角的に考える貴重な機会を何度も経験しました。
 もちろん、どの展示も素晴らしい体験であったことは疑問の余地はないです。しかしながら他方、本当に本当に自分が心の底から何かを感じ取りたいと願った芸術だったのか、という小さな疑問が夏の終わり頃から芽生えました。簡単に言ってしまえば、消化不良だと思います。

 そんな小さな逡巡を抱えていた先週に読んだのが以下の記事。

Doyen of American critics turns his back on the 'nasty, stupid' world of modern art
http://www.guardian.co.uk/artanddesign/2012/oct/28/art-critic-dave-hickey-quits-art-world

Dave Hickey, a curator, professor and author known for a passionate defence of beauty in his collection of essays The Invisible Dragon and his wide-ranging cultural criticism, is walking away from a world he says is calcified, self-reverential and a hostage to rich collectors who have no respect for what they are doing.

"They're in the hedge fund business, so they drop their windfall profits into art. It's just not serious," he told the Observer. "Art editors and critics – people like me – have become a courtier class. All we do is wander around the palace and advise very rich people. It's not worth my time."

Hickey's outburst comes as a number of contemporary art curators at world famous museums and galleries have complained that works by artists such as Tracey Emin, Antony Gormley and Marc Quinn are the result of "too much fame, too much success and too little critical sifting" and are "greatly overrated".

"Money and celebrity has cast a shadow over the art world which is prohibiting ideas and debate from coming to the fore," he said yesterday, adding that the current system of collectors, galleries, museums and art dealers colluding to maintain the value and status of artists quashed open debate on art.

As a former dealer, Hickey is not above considering art in terms of relative valuation. But his objections stem from his belief that the art world has become too large, too unfriendly and lacks discretion. "Is that elitist? Yes. Winners win, losers lose. Shoot the wounded, save yourself. Those are the rules," Hickey said.


 超端折った訳ですが、現代美術はヘッジ・ファンド・マネイジャーが余った資金で作品を買い漁るだけ。批評家やディーラーはまるで彼らの買い物の指南をしているだけの存在になってしまっている。
 トレイシィ・エミンやアントニィ・ゴームリィ等の現代美術家は、過大評価されすぎている。現代美術の世界は、肥大化し、そしてとても冷淡になっている。

At 71, Hickey has long been regarded as the enfant terrible of art criticism, respected for his intellectual range as well as his lucidity and style. He once said: "The art world is divided into those people who look at Raphael as if it's graffiti, and those who look at graffiti as if it's Raphael, and I prefer the latter."

 この段落の最後の、「美術界は、二つのグループに分かれている。一つはラファエルを落書きのように観るグループ。二つ目は落書きをラファエルのように観るグループ。僕は、後者でいたい」。前者は、現代美術の価格をつり上げるスーパー・リッチを皮肉っているのだとは思いますが、ちょっと薄いですね。

He also believes art consultants have reduced the need for collectors to form opinions. "It used to be that if you stood in front of a painting you didn't understand, you'd have some obligation to guess. Now you don't," he says. "If you stood in front of a Bridget Riley you have to look at it and it would start to do interesting things. Now you wouldn't look at it. You ask a consultant."

 かつては、目の前にある絵画を理解できないときには、自ら(その意味を)考えることが要求された。しかし今では、目の前にある絵画を観ることすらしない。すぐにコンサルタントに尋ねるだけだ。

 このデイヴ・ヒッキィさんという方を、そして彼の業績を僕は知りません。有り体に言えば、彼の発言を負け犬の遠吠えととらえる人もいると思います。また、生きていくことがとても難しくなって来ている現代社会で、現代美術のプライオリティが日常生活の中で占める割合は縮小しているであろうとも考えます。

 でも、購入する資金も、鑑賞する時間の余裕は無いかもしれないけど、美術館やギャラリィに通うサイレント・マジョリティを無視するような芸術は時代を切り開けないのではという希望を捨て去ることはできないです。最初の記事のリストに戻りますが、リストのトップは普通の人々であるべきなのではないかと言うのは、ナイーヴすぎるかもしれないですが。

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サドラーズ・ウェルズの業績と新しい演目

2012.10.30
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アメリカ西海岸にはハリケーンってあるのでしょうか?

 ロンドンの、というより既にイギリスを代表するダンス・パワー・ハウスと表するべきであろうサドラーズ・ウェルズ劇場で、同劇場の2011/12シーズンの実績と、2013年の春のシーズンに上演が予定される注目演目の発表がありました。

 モダンやコンテンポラィ・ダンスに興味の無い方にはサドラーズ・ウェルズ劇場の実績と言われてもピンと来ないかもしれません。かくいう僕も、手元にある資料を読むまでサドラーズがどれほど世界のダンス・ワールドに貢献しているのかは具体的に走りませんでした。
 資料によると、2011年から2012年にかけてサドラーズが輸出した演目は10を超えます。シルヴィ・ギエムとラッセル・マリファントによる「PUSH」はイタリア、ロシア、セルビア、オーストリアとポーランドで。シルヴィ・ギエムの「6000 Miles Away」はギリシャ、シンガポール、日本、オランダ、そしてフランス。ラッセル・マリファントの「アフターライト」はルクセンブルク、オーストリア、ハンガリィ、そしてドイツで。シェルカウィ振り付けの「TEZUKA」はベルギィ、オーストリア、イタリア、香港、日本、オランダ、ニュー・ジーランドとルクセンブルク。
 概算で、サドラーズ発のダンス演目は世界の28都市で上演され、公演回数は136回、聴衆の合計は13万人を超えたそうです。

PUSH
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-410.html

6000 Miles Away
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1414.html

Afterlight
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1144.html
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1549.html

TeZukA
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1446.html

 6000とTezukaが日本に行くのは当然としても、モダン・ダンスでもその質が良ければ異国の壁が低くなると感銘を覚えるのが「PUSH」。これの世界初演は2005年9月。7年経った今でも世界で上演され続けているという事実にダンスが人々に、そして社会に与える力を感じます。この7年の間に、世界の名だたるバレエ団がつくっては失敗した新作バレエの数はいくつのあるのやらです。

 2013年は、サドラーズが今の新しい建物になって15周年、さらにストラヴィンスキィの「春の祭典」が初演されて100周年ということで、それを記念する演目が3作予定されています。

 僕自身の関心が低い順から行くと、6月8日には、サドラーズ独自のクリエイティヴ・ラーニング・プログラムのイニシアティヴで最大80人のノン・プロフェッショナルの参加者によるRIOT Offspring。これには、The Company of Eldersから60歳以上のメンバーも参加するらしいです。

 4月11日から13日には、Michael Keegan-Dolan振り付け、Fabulous Beast Dance TheatreのダンサーによるThe Rite of Spring/ Petrushkaのダブル・ビル。面白そうだけど、あいにく両者ともに未見なので何とも言えません。

 三つの新しい「春の祭典」の中でもこれほど冒険してそのリスクを負えるのかと他人事ながら心配してしまうのが、アクラム・カーンによる全く新しい春祭、「iTMOi (in the mind of igor)」。
 滞在先の台湾から今朝戻って来たばかりのアクラム・カーンによると、オリジナルの「春の祭典」からの触発はもちろんあるが、ストラヴィンスキィではないだろうと。その一例として、音楽は3人の現代音楽家による共作になるとのこと。スポルディング芸術監督にどうして3人に依頼するのかと尋ねられたカーンの答えは、「I would like to make it more difficult」。
 カーンは2011年の「DESHhttp://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1466.html)」でオリヴィエ賞を獲得し、ロンドン・オリンピックの開幕セレモニィで素晴らしいパフォーマンス(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1723.html)を披露して全国的な知名度が高くなっているように思います。公演は2013年5月下旬。

 スポルディング芸術監督のスピーチの中で印象に残ったことが一つあります。それは、現連立政権が決めた、2015年以降、義務教育のカリキュラムや高卒試験、大学入試試験の内容からダンスを削除する方針にサドラーズだけでなくイギリス全国のダンス・パフォーマンス団体が反対の声を上げ続けるということです。スポルディングさん曰く、「The career of dancing is under threat. Education is more important than money」。素晴らしい。最近、モダンやコンテンポラリィより、ハンブルク・バレエとか、パリ・オペとかロンドンに滅多に来ないヨーロッパのバレエ団を呼んで来てほしいとは思っているのですが、彼のダンスにかける情熱は本当に素晴らしいと思います。
 質疑応答の中である記者が、「他のダンス・カンパニィやバレエ団と「春の祭典」のオリジナルの共同上演とかは考えていないのか?」の問いに、「他の劇場の計画は聞いているけど、「オリジナル」を上演するのはサドラーズの課題ではない。僕は、新しいものを観たい」、と明快に答えていました。

 他にモダン・バレエに興味のある人に朗報なのは、今年の夏の成功を受けてヴッパタールとサドラーズの間で新しい取り組みが決まり、来年以降ほぼ毎年、ヴッパタールの上演があるそうです。早速2013年2月にTwo Cigarettes in the Dark (1985)Vollmond (2006)が上演されます。ギエムの6000が再びロンドンで公演されるのは来年の秋頃。スポルディングさんとちょっと立ち話できたときに、「歌舞伎はもう呼ばないんですか?」と尋ねた所、「誰が来られるかはまだ判らないけど、既に話は動き始めているよ。歌舞伎はもっと頻繁に上演したいけど、予算がかかるから慎重に進めないとならないから。今の所、これ以上は何も言えないんだ」、とのことでした。

2010年6月の松竹大歌舞伎

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1214.html

ティム・ノーブル&スゥ・ウェブスター:がらくた?

2012.10.30
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夏の終わり頃に知り合ったカナダ人カップルから教えてもらった展示。ギャラリィの場所は、昔、日本食品の店があった所。

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157631887477791/

http://www.blainsouthern.com/exhibitions/2012/tim-noble-and-sue-webster-nihilistic-optimistic

Tim Noble And Sue Webster | Nihilistic Optimistic
10 October 2012 – 24 November 2012
London Hanover Square

Nihilistic Optimistic is Tim Noble & Sue Webster’s first major solo exhibition in London since 2006. Featuring six large-scale works, the show builds upon the artists’ sustained investigation into self-portraiture, further deconstructing the relationship between materiality and form which has been so intrinsic to their practice.

Constructed principally from discarded wood and other materials, the artists describe these sculptures as ‘street compositions’. Each work appears abstracted or even unfinished as the debris of the artists’ studio – gathered sawdust, wood shavings and tools – lie scattered around the sculptures. A sense of urban chaos is implicit within the construction of the surrounding gallery environment; this is not an isolated white cube space, but one which remains connected to the studio and the streets – to the source of these artworks.

“There was a kind of deliberate choice not to use such recognisable objects any more, and to start fracturing things up - splintering things. So the mind has to wander in a different way, like you’re giving and taking, and it’s as much about the gaps and holes in between.” Tim Noble

When illuminated, a number of works cast shadow portraits upon the wall; the artists are represented both together and alone, as a unit and as individuals. In My Beautiful Mistake (2012), this light source is poignantly omitted, throwing the focus on the tentative material composition of the sculpture itself, and its sense of impending destruction.

The exhibition’s dualistic title, Nihilistic Optimistic, responds to the oppositional forces present within these works, and indeed within the artists themselves; the show is at once constructive and destructive, hopeful and despairing. Light and shadow, form and absence, figuration and abstraction all inform one another and exist in a constant state of tension.

A catalogue accompanies the exhibition, featuring contributions by Gustav Metzger, Hans Ulrich Obrist and Jon Savage. In collaboration with The Vinyl Factory, Tim Noble & Sue Webster have also produced a limited edition artwork in the form of a 10-inch record.


 好きとか嫌いではなくて、これは芸術?これも写真撮り放題です。

 閑話休題。件のカナダ人カップル、2年間のワーク・スカラシップを獲得してロンドンへ。「どうしてイギリス人は、まず、アメリカ人と思うんだ!僕たちはカナダから来たんだ!」、と言うことが毎日だそう。仕方ないよね。

鬼畜:政治家がこれを言ったら、政治家ではない

2012.10.23
鬼畜集団」発言を陳謝 事実誤認と橋下代表
http://www.47news.jp/CN/201210/CN2012102301002243.html

日本維新の会代表の橋下徹大阪市長は23日、自らの出自記事を掲載した週刊朝日を含む朝日新聞グループを「鬼畜集団」と非難したことについて「完全な事実誤認だ。訂正とおわびをしなければならない」と陳謝した。

 事実関係については、親族が買ってきた出自記事掲載の週刊朝日を、編集部が取材のために母親の元に送り付けてきたと誤解したと釈明した。市役所で記者団の質問に答えた。

 これに先立ち橋下氏は自身のツイッターに「実母の話を早とちりし、勘違いした」とする訂正とおわびの文書を投稿。

 ただ、週刊朝日側への対応については「ツイッターのおわびで十分だ」と記者団に述べ、直接謝罪する必要はないとの認識を示した。


2012/10/23 21:26 【共同通信】

 今夜、素晴らしいレクチャーに参加して高揚していた気分が吹っ飛んだ。

 しょっぱなは、朝日新聞側に大きな非があったのだろう。それを罵るために、大阪市長という「公職」にある政治家が「鬼畜」という言葉を公に発し、それを謝罪して済むとこの人は思っているのか。

 僕の理解では、「鬼畜」という言葉を日本の政治家が使って日本という国を、そして多くの国民を犬死に追いやったのはたった67年前の第二次世界大戦。この橋下氏も、僕も実際にこの戦争を経験した訳ではない。でも、日本が「鬼畜米英」と国民を盲信させた歴史を彼が知らないはずがない。

 陳謝して済むことではない。この言葉を怒りに駆られても使わない自己統制ができない人間が政治家と名乗るのは、決して受け入れられないこと。この男性、本当に弁護士だったのか?信じられない。

翻訳こんにゃくは既に夢ではないのか:NTTドコモ他

2012.10.22
BBCのニュースサイトのトップペイジに、日本発の技術ニュースが掲載されていた。

Phone call translator app to be offered by NTT Docomo
http://www.bbc.co.uk/news/technology-20004210

 NTTドコモが10月1日に発表した電話での(ほぼ)同時通訳サーヴィスについて。

NTT DOCOMO to Introduce Mobile Translation of Conversations and Signage
http://www.nttdocomo.com/pr/2012/001611.html

TOKYO, JAPAN, October 1, 2012 --- NTT DOCOMO, INC. today announced that on November 1 it will launch the world’s first commercial mobile service for translation of conversations between people speaking Japanese and other languages, called Hanashite Hon’yaku (automatic voice translation service). DOCOMO also announced today the October 11 launch of Utsushite Hon’yaku (AR translator with word recognition camera), which translates foreign menus and signage by simply placing a smartphone camera in front of text.

Hanashite Hon’yaku provides translations between Japanese and the receiver’s language, currently English, Chinese or Korean. Translations are provided both as screen text and voice readouts. The DOCOMO subscriber simply dials the other party using an Android app for DOCOMO smartphones and tablets running Android 2.2 or higher. Calls can be placed to any mobile or landline phone, either in Japan or overseas.

Hanashite Hon’yaku also can be used for face-to-face conversations in which the two speakers share one smartphone. French, German, Indonesian, Italian, Portuguese, Spanish and Thai will be added for this application in late November, raising the number of non-Japanese languages to 10.

Fast and accurate translations are possible with any smartphone, regardless of device specifications, because Hanashite Hon’yaku utilizes DOCOMO’s cloud for processing.

The app will be available free of charge. Users pay call and data charges for phone-to-phone conversations and translation data for screen text and voice readouts. Only data charges apply for face-to-face conversations,since no call is required. Subscription to DOCOMO’s “sp-mode” or “moperaU” connection service is required.

Utsushite Hon’yaku translates short written text between Japanese and either English, Chinese or Korean. Translation is virtually instantaneous after the device’s camera captures the text. This commercial version of Menu Translator, which DOCOMO is trialing in Japan until October 31, will translate words and phrases not only in menus, but also street signs, signboards and more. Translation from Japanese also is possible, so DOCOMO expects the app to be quite useful for foreign people visiting Japan.

The Utsushite Hon’yaku app will be available free for download (data charges may apply). Usage will not incur any transmission fee since the translation process does not require network connection. It can be used on any smartphone or tablet equipped with an outer camera and running Android 2.3 or higher.


 BBCの報道だと、この翻訳技術の開発を競う会社が世界にあるようだからドコモの独壇場という訳ではないようだけど、国政が既に失速して機能不全の日本から、このような気分が上向くニュースが届くのは嬉しい。

安くて度数の強いビールの販売禁止の動き

2012.10.22
今朝は、未だに多くの人が信じている、「霧のロンドン」。よく言えば幻想的、でも、交通渋滞が甚だしいです。

 2010年の最後に、安くて度数の強いビールが引き起こす中毒性の飲酒により、ホームレスの人々が亡くなっていることを書きました。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1301.html

 以来、何度かこれに関する報道を目にしてきましたが、9月下旬、イングランド東部、サフォーク県のイプスウィッチでsuperstrength beerの販売を禁じる動きが報道されました。最も熱心なのはインディペンデント紙。

Ipswich shops asked to ban super-strength beer and cider
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-suffolk-19700304

Ipswich tries to curb street drinkers by banning super-strength cider and beer
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/25/ipswich-bans-superstrong-alcohol

Special report: Super-strength lager 'causing more harm than crack or heroin'
http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/special-report-superstrength-lager-causing-more-harm-than-crack-or-heroin-8200242.html

Walk into almost any off-licence and supermarket and you will find cans of Special Brew and Tennent's Super. Their appeal to Britain's teenagers and tramps is simple: cheap, ultra-strong alcohol.

But they are becoming less appealing to the politicians, health workers and police who have to clean up the mess created in their wake.

Last month police and health workers in Ipswich persuaded two supermarket groups to ban the sale of super-strength lagers and ciders locally. The Coalition has raised tax on beer above 7.5 per cent and there are plans to introduce a minimum price of 40p per unit to raise the cost of ultra-cheap beer, cider, gins and vodkas.


 日本でも全く同じだと思いますが、イギリスで酒税の話題がでるたびに、政府、企業、そしてアルコール中毒に取り組む団体、ホームレス支援団体の間で非難合戦が繰り広げられます。しかしながら、いつも最後に得をするのは企業のように思います。

With 9 per cent alcohol, super-strength lagers resemble home-brewed hooch in their crudeness and potency. And they are causing more damage to vulnerable people than heroin or crack cocaine, according to a leading homeless charity. Thames Reach's chief executive Jeremy Swain told The Independent: "We are not talking about people dying at 68 or 69. We are talking about people dying in their late 30s.

"The fact that alcohol is half the price it was in the 1980s is causing the problem. You can buy a can of super-strength lager for just over £1. It's a legal drug, but it's the most damaging."


 現実は、アルコールの価格は、1980年代と比べて半額になっている。今では、スーパーストレングスのラガーを£1ちょっとで買える。これは合法は麻薬だ、そして最も危険な麻薬だ。

 これまで何度かイギリスにおけるアルコールがかかわることを書いてきましたが、アルコールによる健康被害の大きさについては、政府がもっと強力な方針を示す時期に来ているように感じます。でないと、イギリスはテロリズムの脅威よりも、アルコールによって崩壊する方が先なのではという印象が強まるばかり。
 
 インディペンデントの記事の最後に、体験談が掲載されています。アルコール中毒の怖さ、そして現在の連立政権が導入しようとしている福祉政策の実現性のなさがよくわかります。

Case study: 'The only people who drink it are problem drinkers'

Dennis Rogers, 53, from south London, is a reformed alcoholic

When I was homeless, I was drinking 15 cans of Tennent's Super a day – at least. If I didn't have a can to wake up to, I wouldn't be able to walk. I would have to crawl to my off-licence and I would get a crate. They would quite happily hand it over to me. They would hold on to my benefit book for me and come down to the office to cash it in with me. At that time, I was quite prepared to drink myself to death – I was in a dark tunnel and I couldn't see any way out of it.

I've never seen anyone drink a super-strength lager socially. The manufacturers won't admit it, but the only people who would drink it are people who have a problem with alcohol. The alcohol content shouldn't be that high.

I feel like a hypocrite because I used to drink it, but I think now that it is poison – it is canned brain damage. The money the manufacturers must be making out of this is unbelievable.

In 2003, I was stabbed and found myself in intensive care. I was registered to rehab and managed to turn myself around. I work for the charity Thames Reach. We go round to hospitals advising on health issues for homeless people. We take people to hospital appointments and try and empower them to make decisions. It is hard. Alcohol is a killer: a good friend of mine died only this week. I have seen as many 300 people I know die from drink over the years. The youngest was 32.


 前半部分で、アルコールをホームレスに売る業者が、彼らのベネフィットをコントロールして売り続けたことが記述されています。

120,000 troubled families could be legally banned from spending benefits on alcohol and tobacco
http://www.telegraph.co.uk/news/politics/9605858/120000-troubled-families-could-be-legally-banned-from-spending-benefits-on-alochol-and-tobacco.html

 テレグラフで報道されたのは、生活支援の福祉をすぐにタバコやアルコール購入につぎ込んでしまう問題のある家庭には、現金でなく、特定の店でしか使えない、オイスターの様なチャージ・カードで生活必需品しか購入できないようにするというのを、保守党のイアン・ダンカン・スミス氏が検討しているというもの。
 ロジャーズさんの経験を知らなくても、なんと現実的でない計画と。スミス氏、以前、保守党の党首だったとき(野党時代)、名前のイニシャルをIn Deep Shitと揶揄されたことがあります。良い人なのかもしれないですが、政治家には向いていないと強く思います。

Voice Lift:声の再生、または若返り

2012.10.22
9月下旬に、「ヴォイス・リフト」という声の再生、または若返り施術がイギリスでも本格的に動き出すというニュースをガーディアンで読みました。興味を惹かれたのですが、僕にとっては全く未知の分野。なので、記事からの抜粋を簡単に。翻訳、ものすごい手抜きですので、興味を持たれ方は記事をじっくり読んでください。

Voice lifts: something to shout about
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2012/sep/23/voice-lift-vocal-cord-treatment

The term "voice lift" was coined by Dr Robert Sataloff in 2004 to describe the techniques used to repair a damaged or ageing voice. Sataloff, professor and chairman of the ear, nose and throat department at Drexel University College of Medicine in Philadelphia and one of the leading specialists in voice surgery, gives an exaggerated sigh when I ask if he regrets inventing the phrase. "I haven't thought of a better term," he says, "but I have certainly spent more time than I would like explaining that it's not just like dropping in and having an operation like a facelift. It's complex and requires a multi-disciplinary approach."

 ヴォイス・リフトという言葉は2004年に、アメリカ人医師、ロバート・サタロフ氏による造語。同医師はこの呼称ほど最適なものはないと考える一方で、(リフトという言葉によってフェイス・リフトの様な簡単な手術と誤解する人が多いので)ヴォイス・リフトはふらりと病院に立ち寄って簡単にできるものではないという説明に長い時間を割いている。

And in older people? "During the ageing process, the vocal folds become thinner and they don't come together, causing the voice to sound weak, shaky or breathy. An older voice is very easy to recognise. The first thing we do is send the patient to our speech therapist and we also get them involved in gentle exercise. Often that is enough to make the voice sound younger and more fit. If that doesn't work satisfactorily, then we may suggest a little augmentation."

 原則、ヴォイス・リフトは、甲状腺がんや喉頭がん等の手術で声帯を失った人への施術であるが、加齢のために声を発することが難しくなった人への適用もある。しかしながら、すすぐに施術するのではなく、言語療法士との訓練で効果が出なければ適用を考慮する。

In the US, where the treatment is more common, Sataloff says there has been a "huge increase" in the number of older people – the baby boomer generation – seeking voice rejuvenation. He also insists it is not a trivial, or cosmetic, procedure: "As people age, they have real quality of life problems – their voices are getting softer and breathier, while all their friends are going deaf. It becomes harder for people to have conversations or interact and eventually it gets to be such a struggle they stop trying."
 
 アメリカでは既に、ベイビー・ブーマー世代を中心に声の若返り術への需要が高まっている。加齢に伴い、声の力が弱まるのは、生活の質の課題につながる。

He also points out that – sad for us as a society – we are quick to judge people by their voices, and older people can fall victim to this: "As people's voices become unsteady, they become less convincing to us," he says. "So older people, who are often the most experienced and wise, have voices that begin to sound infirm and people unconsciously infer that those people are infirm, and their spoken opinions don't have the weight they should. Correcting these problems is worthwhile for people in many professions, but also for those who are interested in being able to continue to interact socially."

 サタロフ医師は、「悲しいことだが、社会は老いた声で人を判断する。加齢による声の衰えで人々が社会から阻害されいく状況を改善できるのは行動するに値する」と強調する。

Those worried by vocal ageing start coming to him in their 50s, he says, though most common are people in their 60s and 70s. The majority are worried about how their voice is affecting their career: "It's not even primarily singers. Business people, clergy, attorneys, politicians, secretaries – you don't want somebody who sounds feeble and unpleasant answering your phone and being your first interaction with the public. There are also people who are retired but don't want to sound like an old woman or man, wants to be able to sing in the retirement community choir, wants to be able to have conversations with people without yelling."

 60代、70代でプロフェッショナルな職業に就いている人々は、自分たちの声の老化がキャリアに影響することを懸念している。

 10月1日に、世界中で年金世代が増加するという国連の発表が報道されました。

UN report calls for action to fulfil potential of ageing global population
http://www.guardian.co.uk/global-development/2012/oct/01/un-report-action-need-ageing-population

 2050年には、世界中で60歳以上の人口は20億人に達する試算だそうです。そのような時代になっても、歳を重ね、それに伴う身体の変化は「弱さ」として認識されてしまうんですかね。

母国語の力:Vaginaと女性器

2012.10.21
いつもブログを訪問する人をドン引きせてしまうかもしれないタイトルですが、僕自身のサイコ・バブルです。

 9月初旬、アメリカ人フェミニスト(らしいです)のNoami Wolfさんの最新の著作、「Vagina」がイギリスでも発売になり、主にガーディアン紙が大騒ぎになりました。

Naomi Wolf: 'Neural wiring explained vaginal v clitoral orgasms. Not culture. Not Freud'
http://www.guardian.co.uk/books/2012/sep/02/naomi-wolf-women-orgasm-neural-wiring

Vagina by Naomi Wolf – digested read
http://www.guardian.co.uk/books/2012/sep/16/vagina-naomi-wolf-digested-read

Naomi Wolf's book Vagina: self-help marketed as feminism
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2012/sep/05/naomi-wolf-book-vagina-feminism

 僕にとってガーディアンが主要新聞なので記事はだいたい読みました。そこからの理解は、この本は、セックスを楽しめなくなったのは精神的な問題ではなく、身体的なことに起因するということを、ウォルフ女史自身の体験を元に書いたものらしいです。
 先に書いた通り、ガーディアン紙の取り上げようは、もう、ヒステリカル。特に女性コラムニストの多くが、ウォルフ女史への嫌悪感をあらわにしていたのはとても興味深かったです。ちなみに、ウォルフ女史は、昨年のオキュパイ・ウォール・ストリート・ムーヴメントでも果敢な行動をとったようです。

 で、この本の直後に、ガーディアン、さらにテレグラフやタイムズも大喜びで取り上げたのは、アメリカ発の映画でした。壮年期後半に差し掛かったセックスレスの夫婦をメリル・ストリープとトミィ・リー・ジョーンズが演じる「Hope Springs」。イギリスではかなりヒットしたようです。

hopesprings_hero-1344276838.jpg

It’s not too late to save our marriage
http://www.telegraph.co.uk/women/sex/9530133/Its-not-too-late-to-save-our-marriage.html

The bedroom blues
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2012/sep/08/sex-problems-marriage

 僕にとっては、サッチャー元首相を演じた後に、倦怠期を抜け出したいと願う主婦役をやるストリープは、受ける役をどうやって判断しているのかということが興味のあるところですが、新聞の取り上げ方を読むと、50代を迎えた夫婦のセックスの問題って洋の東西を問わないんだな、と。

 で、ここからが本題。特にウォルフ女史の本のレヴューや批判のコラムを読んでいるとき、Vagina やPenis等の単語がたくさんでてきました。口にしようが、頭の中でこれらの単語を思い浮かべようが、何ら思うことはありませんでした。単に、体の一部にしかすぎないので。
 しかしながら、これらの単語を日本語に訳してみると、ちょっと違った感情がわいてくるのを感じました。で、ネイティヴ・スピーカーにとって、Vagina とかPenisって、もちろん公の場で大声で言う言葉ではないですが、口にするのがはばかれる感覚があるのかを回りの友人たちに尋ねてみました。

 友人と言っても、心理関係、カウンセリングに携わっている人が多いので、皆一様に、「Vagina、Penis は基本、Technical termsだから」。テクニカル・タームズを日本語にすると、技術用語。
 もちろん、宗教関係、育った環境の違いでこれらの言葉を普通に使うことなんて不可能とする人もいるでしょう。でも、言語心理学関連で、体の部位を表す言葉によって、どの言葉が最も心理的に影響が大きく、どの言語が最も無味乾燥なのかと言う統計があればと思いました。
 
 友人たちから言われたことで一つ面白く感じたのは、language dissociation。言葉の無関連性とでも言うのか。同じ事象を表す言語でも、その事象と言葉の関連性を知らなければ、無意味でしかない、ということ。このことを言われたときに思い出したのは、フランスでの経験。パリのサン・ジェルマン地域に、「」というそばをメインにした日本料理のレストランがあります。
 流暢な英語を話すフランス人の友人たちと行ったときのこと。レストランの日本人女性に料理の説明を頼みました。その女性は滑らかな「フランス語」で僕たちの前に並べられた日本料理を説明してくれました。友人たちはわくわくとした表情で説明を聞いていましたが、僕には耳に入ってくるフランス語と目の前にある和食が一致しませんでした。まるで、目の前の料理が、自分が知っている日本食とは別物の様な印象を持ちました。そのときは深く考えなかったのですが、ドイツ語やイタリア語、ロシア語で和食を説明されたら、僕はどう思うのだろうと。

 サイコ・バブルでした。

離島の暮らしは楽じゃない:シリィ、ヘブリディーズ、シェトランド

2012.10.21
何を今更の夏時間が28日未明に終わるのは仕方ないとして、2013年の夏時間の始まりが3月31日って、遅すぎ。

 どこで暮らすかは、仕事、家庭、子供がいれば義務教育の機会等々、様々な条件によって人生の中で都市で暮らすのか、田舎で暮らすのかの選択を考える人は多くいると思います。中でも、離島で暮らすことによって、静かな環境を手に入れられると期待する人は日本に限らず、イギリスにもいると考えます。僕にとっては、たまにいくから良いのであって、離島で今すぐ暮らせるか、と問われれば答えはNoです。

 日本同様島国のイギリスには、大小多くの島があることをご存知の方はいると思います。今年は、念願だったシリィ諸島への再訪が叶ったからかもしれないですが、島の暮らしは楽じゃないと痛感するニュースにかなり敏感になっています。と言うことで、まずはそのシリィ諸島のごたごたからご紹介。

Plan to axe Scilly helicopter service puts islanders in a spin
http://www.guardian.co.uk/uk/2012/sep/10/scilly-islanders

 これは、シリィ諸島本土を結ぶヘリコプター便が廃止されるかどうかというニュース。記事にありますが、3時間のフェリィ便よりずっと快速なヘリコプターを頼っているのは観光客だけでなく、島民の皆さんも緊急のときにはなければ大変というもの。この話は、6月にシリィを訪れたときにあった地方議員のマリアン・ベネットさんからも伺っていたのですが、どうやら本当にヘリコプター便が無くなることになりそうな雲行き。飛行機は残るようですし、フェリィも運営されていますが、前者は冬季は減便、後者は10月から2月までは運行されません。ヘリコプターによる人の移動が無くなると、島で暮らす人々の生活への影響は、観光に頼るシリィにとっては甚大だと思われます。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1695.html

 しかし、シリィ諸島のことでもっと悲しかったのは、以下のニュース。

Isles of Scilly split over toxic school saga
http://www.guardian.co.uk/uk/2012/sep/23/isles-scilly-toxic-school-saga

 シリィ諸島を実質「牛耳る」地方議員たちと、公立学校の校長の間で何かがあったらしく、結果として生徒たち、親から信頼の篤かった校長が「更迭」されて大揺れというニュース。
 このニュースこそ、実際に離島という限られた空間で、限られた人の移動の中で暮らすことが抱える「負」の面を魅せているように思います。が、書いていてなんですが、このニュースはシリィ滞在を楽しんだ僕には悲しいニュースです。

シリィ諸島の写真
http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/collections/72157631208639110/

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/collections/72157631208707874/

 次のニュースは、スコットランド西海岸に散らばる島々の一つ、カナ(Canna)島の人口流出が止まらないというニュース。

Couple abandon dream of a new life on tiny Scottish island of Canna
http://www.guardian.co.uk/uk/2012/mar/09/scotland

And then there were none...
http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/scotland/9589576/And-then-there-were-none....html

 人口流出の原因は、島の自然が厳しいからではなく、島を管理するナショナル・トラスト・スコットランドが派遣している島に常駐する管理者による、精神的ないじめに嫌気をさして、新しい生活を期待して島に移り住んで来た新しい人たちが定住しないというもの。
 新聞報道を読んでいるだけですから、どちらの言い分が正しいのか、正確なのかには判断を下せません。しかしながら、新しい人が移り住んでほんの数ヶ月で離れる、また新しい家族が来る、離れるを繰り返している事実があるのであれば、小さな島ですから、人間関係の根本に問題があるとみる方が妥当のように感じます。
 ちょっとずれますが、スコットランドの島巡りで検索してみると、日本からたくさんの人が訪れているんですね。かなりの数のブログがアップされています。

 最後は、島の存亡というよりも、政治的に島の将来を見極めようとしているニュース。

Shetland asks if independence vote is chance to break away from Scotland
http://www.guardian.co.uk/uk/2012/jun/30/shetland-independence-vote-scotland

 意外なことに日本ではそれほど大きく報道されなかった印象がありますが、先週、キャメロン首相と、スコットランド独立を目指すアレックス・サーモンド氏の間で、2014年末までに、スコットランド独立を問う投票を行うことが正式に調印されました。これからウェストミンスターとエディンバラの間で凄まじい駆け引きが始まるのかと想像します。
 そんな中、どちらにつくかを見極めようとしているのが、スコットランドのさらに北、シェトランドとオークニィの島々。記事から推察されるのは、豊富な海洋資源があることで経済的には他のスコットランド地域に頼っていない状況を維持するために、エディンバラ(スコットランド議会)の影響を最小限にしたいとするシェトランドの人々は、仮にスコットランドの独立が決まったとしても、エディンバラには属さずにユナイテッド・キングダムに残ることもあるだろう、というものです。特にシェトランドは、最近では食通の間でも人気が高い諸島。条件次第では、スコットランドに残る必要がないこともあるのかなと。でも、記事の最後が笑えます。

In a bar overlooking the harbour, the tennis is on. "Aye, Andy Murray, he's British until he starts losing and then he'll be Scottish again," says the barman.

"Much like Shetlanders, they'll want us British until we're in trouble and then they'll be crying [calling] us Scots," said an old fisherman, tipping his pint at the screen with a grin. "Ocht, in the end maybe we'll away to join Norway."


 シェトランドがノルウェイになるなんてこと、考えつきもしなかったですが、あり得るんですかね。

 日本の政治家の皆さんも、くだらない内輪の権力闘争に明け暮れるのではなく、外からもっと学べることがあるはず。

日本、核非合法化署名を拒否

2012.10.18
日本の政治家には、学習能力、そして交渉能力はもはや一片たりとも残っていない。

日本、核非合法化署名を拒否 国連委の16カ国声明案
http://www.47news.jp/CN/201210/CN2012101801001519.html

ニューヨークで開催中の国連総会第1委員会(軍縮)を舞台に、スイスやノルウェーなど核兵器の非人道性を訴える16カ国が「核兵器を非合法化する努力の強化」を促した声明案を作成、日本にも署名を打診したが、日本政府が拒否を決めたことが18日、分かった。複数の日本政府関係者が明らかにした。

 日本は米国の核戦力を含む「抑止力」に国防を依存する政策をとっているため、核の非合法化を目指す声明案に賛同すれば、論理上、政策的に整合性が取れなくなることが理由。「核の傘」への影響を懸念して、唯一の被爆国政府が核の非人道性を強調する意見表明に同調しなかった格好だ。

2012/10/18 22:29 【共同通信】


 整合性がとれないことがなぜいけない?整合性がとれない理由をアメリカに納得させる交渉をしたのか?

 1945年8月6日、8月9日に核のために多くの人が命を奪われ、福島原発の事故後、今でも多くの人が核への不安に苛まれている国がとる姿勢ではない。

 2011年1月以下の様なことがあったことを、日本の政治家・役人は忘れてしまったよう。
 
http://www.47news.jp/CN/201101/CN2011012101000025.html

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1311.html

Great British Bake Off Final:イギリス中は大騒ぎさ

2012.10.16
スクリーンショット 2012-10-16 21.27.22

今夜、BBC2の超人気番組、「Great British Bake Off」の決勝が放映された。先週の準決勝は、500万人以上の視聴があったそうで、今夜は一体どれくらいの人が観たのやら。

 心理ドラマとして、もう最高の決勝戦だった。最年長のブレンダンが、ソフトな面をかなぐり捨てて優勝を口にし、冷静なジェイムズが一つのミスでどんどん窮地に追い込まれていく様、そしていつにも増して今にも泣き出しそうなジョン。

 メディアも大騒ぎ。放送終了直後に、インディペンデントとガーディアンは記事を速攻でアップ。優勝者が判りますから。

Great British Bake Off: John Whaite is surprise winner
http://www.guardian.co.uk/tv-and-radio/2012/oct/16/great-british-bake-off-john-whaite

Cake king John Whaite crowned winner of the Great British Bake Off
http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/tv/news/cake-king-john-whaite-crowned-winner-of-the-great-british-bake-off-8213818.html

 オーストラリア、フランス、そしてポーランドへの同じフォーマットの販売にまで成功したこのプログラムをBBCがやめるなんてことはなく、シリーズ4の出場希望者を募っている。

http://www.bbc.co.uk/showsandtours/shows/beonashow/great_british_bake_off4

 日本で放映されることになったら、吹き替えでなく、是非、英語放送で字幕の方が良いと思う。出場者がぽろっとこぼす本音の英語を日本語に訳すのは味気ない。

世界の話題:10月16日

2012.10.16
*著作権は、日本経済新聞社に帰属します。

日経夕刊10月


複雑怪奇なイギリス鉄道の経営権:ヴァージン・トレインズを例に

2012.10.16
書くタイミングを計っていたら、めまぐるしく状況が変わり、一度は理解したつもりだったイギリスの鉄道経営権利の複雑さは、もはやだれ一人として絡んだ問題をほぐせないのではと思っています。

 イギリス人の友人に確認したところ、かつて国有だったイギリスの鉄道が民営化(こちらでは路線権のことをフランチャイズとしています)されたのはジョン・メイジャー首相のとき。つまり、保守党時代のときだそうです。以来、駅舎や線路の保全・管理はナショナル・レイルという会社が引き継ぎ、イギリス全国に広がる鉄道網の運営は、コンペティションによって決められ、そのコンペも数年に一度行われ、コンペの結果次第では、ある日を境に鉄道会社の名前が変わる、というのはイギリスでは既に目新しいことではありません。

 オリンピックとパラリンピックの端境期の頃、この鉄道コンペで大きな動きがありました。リチャード・ブランソン卿率いるヴァージン・グループの鉄道部門、ヴァージン・トレインズが1997年3月から運営していた、Inter City West Coast franchise(手短に、ウェスト・コースト・ライン)の新たな運営権のコンペに敗れ、当時の契約、2012年12月9日をもって鉄道事業からの撤退を余儀なくされるというもの。検索してみたら、ブルンバーグが日本語で報道しています。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M8SFN36JIJUZ01.html

 内容はあっていますが、見出しはちょっと違う気がします。というのも、ブランソン氏は入札に負けた直後からその経緯に不透明な部分あったと主張し、法廷闘争も辞さない発言をしていたからです。
 しかしながら、連立政権は間違いはなかったとの強硬姿勢を崩さず、さすがのブランソン氏も万策尽きたかと多くの人が思い始めたとき、このドラマは茶番になりました。

 2週間前、労働党の党大会の真っ最中に発表になったのは、このウェスト・コースト・ラインの入札には覆しがたい間違いがあることが判り、ヴァージンを負かしたファースト・グループの勝利は無くなり、その時点では、どこの会社が12月10日以降にウェスト・コースト・ラインを走らせるかは全くの白紙になりました。すごいですよね。イギリスの鉄道網の中でも最も著名な路線を経営しなければならない会社が、契約が切れるまで残り2ヶ月にもかかわらず存在しなくなる可能性が生じるなんて。

 ここからは連日責任のなすり合い。運輸省の上級管理職3人が無期限停職になり、そのうちの一人が自分はその入札にかかわっていないと公に反論し、契約を勝手に取り上げられたファースト・グループは、その損失を取り戻すために国庫からの負担(つまり税金)を要求する動きを始めました。
 そして昨日、10月15日の報道では、政府はヴァージン鉄道に、12月10日以降も路線の運営を依頼しました。しかしながら、期間は最長で13か月。その間に、まずヴァージンに依頼した期間が終了してから2年間という超短期の経営権の入札をし、それと平行して、その後10年以上の経営権の入札を行う方向で調整するというのが最新の動きです。

 なんと言う混乱。そして、この混乱に最も翻弄され、且つ税金を無駄遣いされる国民、利用者への配慮の完全な欠落。労働組合から鉄道を国営に戻せという強い発言には、賛同する人は多いと思います。

 このセクションに時系列でたくさんニュースがあるので、興味を持たれた方にはかなり役立つと思います。
http://www.guardian.co.uk/uk/rail-transport

 次のリンクは、これから先、どのフランチャイズの入札がいつあるか等の情報です。
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_companies_operating_trains_in_the_United_Kingdom

 フランチャイズの経営権自体はそれぞれ長いようですが、オブザァヴァーに掲載されたリストによると、2013年から2017年の間に、どこかしらで入札が行われるようです。他の国のことは全く判りませんので、日本とイギリスの比較ですが、例えば、「明日から山手線の経営はJR東日本から別の会社になります」という様な入札、今のところあり得ないだろうし、起きてほしくないです。

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(8月19日付けのオブザァヴァーから)

 イギリスの鉄道に関して、もう一つ大きな問題なのは、毎年のように、インフレ率を大幅に上回る料金の値上げ。食料品等ではイギリスより高い欧州の国はあるようですが、こと鉄道料金に関しては、イギリスが一番高いのではないかと推測します。
 毎年の値上げの背景の一つとしてあげられる理由は、いくつかの鉄道会社の経営に外国企業が深くかかわっているということ。報道からの受け売りなので、確実に事実かどうかには不透明な点はありますが、イギリス国内の鉄道の経営にかかわる外国企業は、イギリス国内の高額料金から得た利益を自国の鉄道料金を低く抑えるために使うのではないか、と。

 ここから、流れがぶっ飛びます。この茶番ドラマをどう書こうかと思っていたとき、新潮社のPR雑誌、「波」で「日本、買います 消えていく日本の国土http://book.asahi.com/reviews/column/2012101500017.html)」という本の書評を読みました。書評者は、安田喜憲(やすだ よしのり)さん。
 不定期にいくつかのメディアで情報を目にしていたのですが、対馬は韓国資本に買い占められているとか、日本の多くの森林地帯も既に外国人によって買い進められているとのこと。その外国人が買った土地を彼らの国に売ったらどうなるんでしょうね。
 安田さんは書評の最後で日本政府の無策ぶりを、「滅びのプロセスに入った(波、2012年10月号、P.37)」国としています。この部分を読んだとき、政府が守れない九州や沖縄は、日本から独立した方が良いのではないかと思ってしまいました。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1317.html

 でも、この滅びのプロセスは、日本だけではないように思います。カタロニアでの独立機運の高まり。バスク出身の友人に「カタロニアってスペインの半分の大きさなのかな?」と訊いたら、「カタロニアって、本当に小さな領域。そこが独立しても何も起きないわ」、と。カナダのケベックでは、フランス語圏のカナダからの独立の動き。そしてイギリスでは、昨日10月15日に、政府とスコットランドの第一党の代表者の間で、2014年までにスコットランド独立の意思確認投票を行うことに署名がされました。スコットランドの方がカタロニアよりずっと大きいですが、既にシェトランド諸島では仮に独立が決まっても、イギリスに残るという動きが盛んになっているそうです。

 飛躍しすぎて上手くまとめられませんが、鉄道経営権の大失態に戻すと。鉄道を国営に戻す決断を下せない、鉄道を運営する会社の値上げを止めることもできないイギリスは、日本と同様に衰退期に深く入り込んでいるように感じています。一つの国が、すべて自国でまかなえる時代ではないと考えます。その流れにあらがえる国は既にないのではないかと思います。しかしながら、今回、イギリスのおける鉄道経営権の入札の失敗、その後の収拾がつかない混乱を見ていると、結局、すべての混乱を収拾させるためにあくせく働かされるのは、いつも、いつも、いつも、いつも、そしてずっと国民なのかなと。

アニッシュ・カプールの新作展示@リッソン・ギャラリィ

2012.10.16
アニッシュ・カプールって誰?と思われる人も、ロンドン五輪パークのあの塔を設計した人、と言えばまだ記憶にあるのではないかと思う。2009年には、ロンドン中心のロイヤル・アカデミィで大規模な展示があった。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1099.html

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157622481456811/

 そのカプールの新作、および過去数年の作品を集めた展示が、ロンドンのリッソン・ギャラリィで10月10日から11月10日まで開催されている。行って来たのだが、笑うしかなかった。呆れたというネガティヴな意味では決してなく、人類が芸術作品と称されるものをつくるときの、プリミティヴな衝動ってどれほどのものだろうということを考えた。

http://www.lissongallery.com/#/exhibitions/2012-10-10_anish-kapoor/

 写真を観てもらうのが一番判りやすいけど、作品の完成度には感心しつつも、「誰が買うんだ?誰が欲しいんだ?どこにおくんだ?どうやって保存するんだ?」が頭の中でこだましながら、ついつい笑いがこぼれてしまう、そんな邂逅。

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 鮮やかな色で塗られた円状の物体や、隕石の様な物体を観ていると、左右・上下を気にすることのない自由さを感じた。地球外空間に最適のアートの様な気がする。

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 写真とり放題なので、アート関連の写真道を極めたい皆さんには良い経験になるかもしれない。受付の女性に尋ねたら、既に半数の作品は売約済みとのこと。

展示の写真
http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157631783375153/

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157631783654166/

白鳥の湖@ロイヤル・バレエ

2012.10.14
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(2011年1月の公演から。テレグラフから拝借)

 タマラ・ロホの引退(というか退団)により空席となったアコスタの相手がオーシポワと発表されたときにはまだかなりチケットが残っていたロイヤルの「白鳥」も、シーズンが始まる前には全公演が売り切れ。バレエを観に行きたいという高揚感が、個人的な理由で盛り上がらないこともあるし、ダウエル演出のこのプロダクションの古くささにはいささか辟易した気分もあるので、観に行かなくてもいいや、という気分はあった。
 が、ヤナウスキィは観たいかなと、10月10日の午後遅い時間にロイヤルのHPをのぞいたら、12日の公演のオーケストラ・ストール最前列、指揮者の真後ろの席がリターンになっていた。双眼鏡を使うのがはばかれる席なので、視覚の弱い僕にはちょっと厳しい席だけど、雰囲気を楽しめればいいだろうという気分で購入。

 7月以来のオーケストラは、ホルンは相も変わらずひどいものだったが、きびきびした演奏を目の前で聞いていると、バレエを楽しみたいという気分が次第にわき起こって来た。

オデット・オディール:セナイダ・ヤナウスキィ
プリンス:キッシュ
ロットバルト:ギャリィ・エイヴィス


 主要3役の他に目立ったのは、第一幕のパ・ド・トロワでの崔由姫さん。観客に彼女を魅せたいというオーラが弱い印象があるけど、動きの優美なこと。プリンシパルになるには、何か突破口になる舞台が必要なのではと感じた。

 キッシュ、やっぱり可もなく不可もなく。無色透明。エイヴィスの演技は、役所を心得ていて、破綻が全く感じられない。

 ヤナウスキィ。オデット、本当に白鳥が踊っていたよう。高い身長のことをいつも言われるヤナウスキィだけど、白鳥そのもの。重力から見事に解放されていた。
 オディール。前回のフェッテの失敗を、僕自身が未だに引きずっていたのでハラハラしながらその場面を待ち受けた。一度だけ2回転を織り込んだけど、後は1回転に徹したのが良かったのかバランスを崩すことなく回りきった。ほっとした。本人も晴れやかな表情をみせていたので、日本での24日のライヴ上映でも上手く行くだろう。

 隣の席には、いつも会場で見かける東洋系の男性。しょっちゅう見かけるけど、席が隣になったのは初めて。話しかけて判ったのは、香港在住のビジネス・パーソンで、仕事でロンドンにいるときにロイヤル・バレエの上演があれば必ず見に来ているとのこと。「オペラ・ハウスに住んでいるのかと思っていました」と言ったら、嬉しそうに笑っていた。
 来年の日本公演を観に行きたいのだけど、問題があるそう。それは、チケット購入の方法。日本でのオペラやバレエ公演のチケット購入方法に問題があると感じているのは在外日本人だけではないようだ。

『按針と家康』、サドラーズで公演

2012.10.13
昨日のイヴニング・スタンダードのエンタメ情報欄にざっと目を通していたら、懐かしくもぎょっとする写真が飛び込んで来た。

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 サドラーズ・ウェルズで侍の物語って、冗談?!と思いつつ今日、サドラーズのウェブを検索したら来年1月から2月にかけてのの上演予告、さらにチケットが発売になっていた。

http://www.sadlerswells.com/show/Anjin-The-Shogun-and-The-English-Samurai

William Adams, known in Japanese as Anjin, was an English maritime pilot who is believed to be the first Englishman to ever reach Japan. His story is brought to the Sadler’s Wells stage in a stunning new play directed by the Royal Shakespeare Company’s Artistic Director, Gregory Doran.

Washed ashore on a strange and exotic land, Anjin soon finds himself as the trusted adviser to the powerful Shogun Tokugawa, drawn to the heart of a dangerous clash of cultures and struggle for power, whilst war threatens to erupt all around. Torn between two worlds and two lives, Anjin must decide who he really is, and where he really belongs.

An epic and compelling tale of friendship, honour, love and sacrifice, this beautifully staged new production stars the celebrated Japanese actor Masachika Ichimura alongside Stephen Boxer, Yuki Furukawa and an international cast direct from Japan and the UK.

Performed in English and Japanese with English surtitles.


 これって、秋・冬公演のパンフレットで予告されていなかったと思うし、サドラーズから追加のお知らせも来ていなかったように思う。正直なところ、このような舞台をサドラーズがやる意味があるのかなと。ハンブルク・バレエとか、パリ・オペラ座バレエのモダンとか、ベジャールやプティのプログラムを上演してほしいぞ。
 で、いつ決まったのだろうと思い、日本語の情報をググったら、今年の6月にイギリス公演のことが既に報道されていた。

http://www.theaterguide.co.jp/theater_news/2012/06/06_02.php

 ダンスではない上に、台詞が日本語と英語のミックスというのには躊躇いがあるけど、初日の最前列が手つかずのままだったので、ど真ん中を買ってみた。ちなみに、最終上演の最前列の中央の二席は既に売れていた。

 ま、市村正親さんの舞台を最前列で観るなんてこと、日本では食指が動かないだろうから記念にはなるだろうけど一体どんな舞台になるんだろうか。

ダウン症の男の子がマークスのモデルに

2012.10.12
春を迎える三寒四温とは逆に、一日晴れては2日曇る、そんな天気で秋の深まりを感じるロンドン。

 まだ酷暑真っ盛りの頃、日本からのニュースで大きく取り上げられたのは、出生前の診断で高確率でダウンズ・シンドロームかどうかが判る方法が臨床で採用されるかもしれないというもの。

 先に進む前に書いておくべきことは、僕の中には、この出生前診断の是非、またダウンズ・シンドロームのお子さんを持つ家族のみなさんの喜び、苦労、楽しさについて書けるような知識や経験がないという事実。唯一の遭遇は、2年前のギリシャで。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1261.html

 9月中旬、タイムズでロンドンの西、古代ローマ浴場の遺跡で知られるバース在住の男の子が、イギリスの大手スーパー・マーケットの一角、マークス・アンド・スペンサーのクリスマス・カタログのモデルに採用されたというニュースが掲載されていました。その男の子は、ダウンズ・シンドロームです。

M&S uses child model with Down's syndrome
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-somerset-19652676

The mother of a boy with Down's syndrome has persuaded Marks & Spencer to rethink the models it uses to sell children's clothes.

Caroline White, from Bath, noticed the lack of diversity in retailers' Back to School campaigns while out shopping for her four-year-old son Seb.

Now M&S has taken on board the comments she made and Seb has become the retailer's latest model recruit.


'He's full of magic and mischief': How a four-year-old boy with Down's Syndrome charmed the pants off M&S to land starring role in High Street retailer's Christmas catalogue
http://www.dailymail.co.uk/femail/article-2206210/How-year-old-boy-Downs-Syndrome-landed-starring-role-M-S-Christmas-catalogue.html

A four-year-old boy with Down's syndrome has been chosen to model for Marks and Spencer’s Christmas catalogue.

Seb White, who has previously modelled for JoJo Maman Bébé, landed the contract after his mother personally contacted the High Street retailer.

Caroline, 39, says she became frustrated with the lack of diversity in kids modelling campaigns, and felt that children like her son were not being represented.


 生まれたお子さんがダウンズ・シンドロームと診断された驚きを乗り越えた後、セバスチャンのお母さんが気づいたのは、子供服の広告にダウンズ・シンドロームの子供が全く起用されていない事実。

'So here’s the thing. He also happens to have Down’s Syndrome. When he was born I was shocked to my core.

'I knew nothing about the condition and what should have been the happiest day of my life was the worst...My heartfelt plight is to get him ‘out there’ and get the message across that different isn’t any less wonderful - or even that different.


 詳細は記事を読んでいただくとして、セバスチャンの母親が最後と思ってマークス・アンド・スペンサーのフェィス・ブックに寄せたコメントから話が進み、マークスは彼を子供服のモデルに採用したそうです。

 様々な誹謗やねたみがあるでしょう。また、単純に日本とイギリスの間のダイヴァーシティの差について書く、というか書けるとは思っていません。しかしながら、セバスチャンの存在は、一方で数えきれないほどの階級差別、障碍者区別が存在するイギリスにおける、「人と違うことを受け入れる社会、人々」の意識を改めて考えます。

In perfect harmony: award-winning pianist Benjamin Grosvenor and his brother Jonathan
http://www.telegraph.co.uk/culture/music/9591529/In-perfect-harmony-award-winning-pianist-Benjamin-Grosvenor-and-his-brother-Jonathan.html

 テレグラフの記事は、ダウンズ・シンドロームの兄との関係を語る若いピアニストのインタヴューです。

グレイト・ブリティッシュ・ベイク・オフ、セミ・ファイナル

2012.10.09
先日紹介して以来、はまってしまったGreat British Bake Off

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1775.html

 今夜、10月9日がセミ・ファイナルの放送で、来週のファイナルに進めるのは3人。観る方法はあるけど、アイ・プレイヤーで観られるようになるまで待つつもり。

 1回目から観たけど、ケイキやパンを作るのって奥が深いことを実感。名前を聞いたことはあったけど実物を見たことのなかったラーディ・バンズ(豚のラードを練り込んだパン)を褒めちぎるイギリス人の姿に唖然としたり、フード・ヒストリアンって一体何人イギリスに存在するのやら、そしてベイグルって焼く前に湯通しするなんて想像したこともなかった。

 コンテンスタントそれぞれの反応を見るのも楽しい。表情、ボディ・ランゲイジを通して彼らの歓喜、興奮、落胆、審査員へは届かない反発、ドラマとして観てもとっても面白い。

 視聴者数も回を追うごとに増加中で、それに伴い、審査員への興味も膨らんでいるそう。例えば、メアリィ・ベリィ女史の服装に注目が集まっているそうだ。

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(フラワー・プリントのミリタリィ・ジャケット風ブルゾン)

 また、この番組のフォーマットがフランスに持ち込まれることも決まったそうだ。

The Great British Bake Off crosses the Channel
http://www.guardian.co.uk/tv-and-radio/2012/oct/07/great-british-bake-off-france-bbc2

The hit BBC2 cookery show has been sold to France, where it will be hosted by the country's answer to Jamie Oliver

[追記]
 観てしまった。面白かった。来週のファイナルが楽しみだ。

アンセル・アダムズ写真展@国立海洋博物館

2012.10.06
今日、大仰な封筒が届き、何かと思ったら国立海洋博物館からのお知らせだった。その中で紹介されていたのは、11月9日から、アメリカ人写真家、アンセル・アダムズの写真展が11月9日から開催されるとのこと。

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Ansel Adams: Photography from the Mountains to the Sea
http://www.rmg.co.uk/visit/exhibitions/future/mountains-to-the-sea

Ansel Adams (1902–1984) is arguably the most popular and the most influential photographer in American history. This spectacular exhibition explores Adams’s unique approach to photography by featuring – for the first time – pictures of water in all its forms.

Fluid, ephemeral, and unpredictable, water was the ideal subject for photographic experimentation. Adams returned to water again and again, capturing seascapes, rapids, waterfalls, geysers, clouds, ice and snow, placid ponds and raging rivers, producing some of the most striking images of his career. Combining some of the most famous works of the 20th century with stunning, lesser-known or seldom seen examples, the exhibition will provide a new context for enjoying the work of this important artist and for understanding his legacy.

This show is being toured from the Peabody Essex Museum, Massachusetts, and brings together over 100 of Adams’s finest photographs, carefully selected from public and private collections across the USA.


 美化されてしまっている記憶によると、アンセル・アダムズは高校生の頃、自分の意志で初めて観たいと思った展覧会だったと思う。以来、日本で暮らしている頃には大小問わず、かなりの数、展覧会に行った。でも、ロンドンではほとんど名前を聞いたことがなかった。
 展覧会の趣旨からすると、おそらく「ニュー・メキシコ、月の出」は出品されないと思うけど、水を中心にした写真というのには興味を惹かれる。せっかくメンバーになっているのだから、是非、行かなければ。

ENO2題:ジュリエッタ、若い聴衆を惹きつけるための企画

2012.10.03
DSCN3350.jpg

栗ごはんが食べたい、そんな秋の深まりを毎日感じるロンドン。

 英語で歌われるのは興ざめと言いつつも、けっこう観に行っているイングリッシュ・ナショナル・オペラ。シーズン2演目目にして、レヴューではとても高い評価を獲得したにもかかわらず、どんなオペラだか皆目分からないであろうために、席が余りまくりのオペラ、「ジュリエッタ」を、2日に観てきました。どんなオペラ?、あらすじは?、と言う方にはこちらを。3年ほど前にバービカンで行われたコンサート形式のものですが、とても判りやすい解説がされています。

http://ameblo.jp/peraperaopera/entry-10240371608.html

 こちらではファンタジーっぽい印象を持たれると思いますが、僕にとっては、人間の潜在意識の底を手探りで探して結局何も見つからないという印象しかありません。誤解のないように書くと、大変、楽しみました。楽しんだというより、筋を追いつつ、現実と空想の境界の危うさを鮮烈に感じました。特に3幕、夢事務所でのやり取りには、設定は違いますが、胡蝶の夢、もしくはコミック「僕の地球を守って」の人気がピークだった頃に、若い読者の何人かが、コミックに書かれているのは自分の前世かもしれないと思い込んだと言うエピソードが想起されました。あらゆるところにシンボルがこれでもかと散りばめられていて、一度だけでは、理解できたとは言いがたいです。

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/8050602609/in/photostream

 音楽的には第一幕はつまらなく感じたのですが、2幕、3幕の音楽の美しいこと。リチャード・ジョーンズによる演出も見応えがありました。このプロダクションは10年前にヨーロッパのどこかで使われたものが初めてイギリスに来たとのこと。僕自身のオペラ鑑賞歴を考えると、10年前にこれを観たら拒否反応しかなかったかもしれないです。
 残念だったのは、あまりの空席の多さ。今日、ENOの芸術監督、ジョン・ベリィ氏に質問する機会があったので、この点をどう思うか尋ねてみました。彼はこのオペラの知名度の低さをあげていましたが、それなら僕はチケットの価格設定をもう少し考慮すべきではなかったのかと感じます。

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(役得。前夜のジュリエッタのセットがそのまま。初めて登ったオペラ劇場の舞台は、意外と狭く感じました)

 で、「ジュリエッタ」ではチケットを売るのに苦戦したENOですが、ここ数年話題作もあり、特に若い世代を、ピンポイントであろうと思いますが、惹きつけている状況をさらに盛り上げる企画を発表しました。企画名は、Undress for the Opera、オペラを観るのに着飾る必要はない、という趣旨です。

John Berry, Artistic Director of English National Opera, joined by Damon Albarn and Rufus Norris, creators of the acclaimed Doctor Dee, which attracted 60% new ticket buyers to ENO, spoke from the stage of the London Coliseum today at the launch of UNDRESS FOR THE OPERA, a new scheme to attract young people and those who would not normally go to opera.

Alongside Loretta Tomasi, Chief Executive of English National Opera, John Berry, Artistic Director, announced plans for the introduction of a series of special informal evenings in the new season, when audiences will be encouraged to come casually dressed, in jeans and trainers if they wish, and the atmosphere will be more relaxed with club style bars serving beer and specially themed cocktails.

Best seats in the house will be held for these evenings at £25 each, which will include in the price a pre-performance introduction, a downloadable synopsis of the opera including Terry Gilliam’s witty ‘do’s and don’t’s’ of going to the opera, and an invitation to a post-performance party with cast and company members.

Undress for the Opera nights are:
Thursday 15 November 2012: Don Giovanni
Thursday 7 February 2013: La Traviata
Thursday 18 April 2013: Sunken Garden
Thursday 13 June 2013: The Perfect American


 毎回販売されるチケットは、100枚のみ。購入の機会を逃さないためにも、以下のリンクから登録しておいた方が良いようです。

http://www.eno.org/undress/undress.php

 会見の場で流された映像では、ギリアムがオペラを初めて演出して大評判だった「ファウストの劫罰」の舞台の模様がたくさん流れたのですが、ウェブ上ではそれはカットされているようで残念。どのようなものになるかの詳細の説明はありませんでしたが、2014年のシーズンに再びギリアムがかかわることがあるかもしれないとのことです。

 前述のベリィ氏と、総支配人のロレッタ・トマシ女史にそれぞれ、「若者世代にしぼるというのは、それはそれで差別じゃないんですか?45歳以上にだってオペラに対してネガティヴな印象を持っている人もいると思うんですが」と尋ねてみました。双方の答えに共通するのは、オペラは一部の人のための芸術ではない、ということをこの企画だけで終わらせるとは考えていない。今回の企画は、ENOの将来へ向けての最初の企画であるとのことでした。

 最後に、せっかくですから今シーズンの注目演目を。11月5日から始まるヴォーン・ウィリアムズの「The Pilgrim’s Progress」の演出家の名前は、Yoshi Oida。確か、フランス在住の日本人舞台演出家・俳優の方ではないかと思います。「春琴」にも出演していたはず。
 2013年2月15日が初日のヘンデルシャルパンティエ「MEDEA」のタイトル・ロールは、イギリス人メゾ・ソプラノのサラ・コノリィ。彼女がでるオペラはすべて高評価なので、これは楽しみです。4月に世界初演となる、オランダ人作曲家 Michel van der Aa (どう発音するんだろう?)による「The Sunken Garden(上演はバービカンで)」、5月には、イギリスでは大ヒット、アメリカでおおこけ(だったはず)した舞台、「エンロン」を手がけたルパート・グールド演出の「ヴォツェック」、そして6月には、来年には76歳になるフィリップ・グラスがウォルト・ディズニィを取り上げたオペラ、「The Perfect American」。これらの間にプッチーニ、ヴェルディ、ロッシーニのオペラがあります。

ファウストの劫罰
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1388.html

真夏の夜の夢
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1397.html

People by Blexbolex

2012.10.03
blexbolexpeople.jpg
(自分で撮った写真がなぜだけ壊れてしまったので、差し替え)

 今日の午前中の取材の後に立ち寄ったドーントで見つけた本。さべあのまを少し思い出させる画風、そして描かれているイラストのいくつかから感じるゆっくりと立ち上ってくる風刺が面白い。長く手元においておくより、タイミングが来たら友人にプレゼントするのも良いかと感じる一冊。

PEOPLE-Gecko_slave_goddess.jpg
(深読みしたくなる組み合わせ)

people1.jpg
(夢を夢で終わらせないために)

 ネットで画像を調べていて気づいたのは、このイラスト本、各国の言葉に翻訳されているようだ。

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