LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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ブロークン・ブリテン2:全国民を犯罪者化するCRBとISA

2009.08.31
CRBとは、Criminal Records Bureauのことで、日本語に直訳すると、「犯罪記録事務所」かな。ISAは、Independent Safeguard Authority。これは2009年10月から発効となるそうですが、すでにあちこちで軋轢が生じています。タイトルは大げさにしてあります。

 2002年、ケンブリッジシャーにあるSohamという町で、10歳の女の子二人が、彼女たちが通う学校に勤める男性職員に誘拐され、殺される事件がおきました。この犯人は、少女たちが行方不明になっていることがわかった当初、少女たちが生きている姿を最後に見たかもしれない目撃者としてテレヴィのインタヴューに堂々と答えていました。今は収監中です。また、犯人のアリバイ工作を補助した女性はすでに刑期を終えて新しい名前、新しい住所を与えられ、警察から24時間の保護を受けているはずです。彼女の安全と「人権」を守るためのこの費用は、すべて税金でまかなわれています。

 CRBが設立されたのは、この事件の後でした。これは、子供や精神的に弱い立場にいる人たちのために働く職業、つまり学校や福祉施設、また児童福祉やメンタル・ヘルスに取り組むチャリティ団体で働こうとする人たちの過去に、虐待等の犯罪歴がないことを確かめるために始まった、というのが僕の理解です。Sohamの事件の主犯の男性にはそのような犯罪歴があった、つまり子供たちがいるところで働くには危険な、いや働いてはいけない人物であったことを見逃してしまった反省に基づいて設立された、といえば響きはいいでしょう。
 問題は、このCRBが間違いを多数犯しているということ。CRBに間違ったデータを登録されてしまった人々は、職を失う、コミュニティの信頼を失うだけでなく、最終的に生活が破綻する、そんなことが起きているとのこと。
 また、いつものとおり新聞報道から情報を得ているので、偏りは否めないと思いますが、たとえばパートナーとの口論が、CRBでは「犯罪」にみなされ前述の特定の職業に就けなくなる可能性を否定できない。さらに、というかもっとも怖いのは、CRBに「犯罪歴あり」と登録される過程を個人が知る術がないこと。エントリの後半のリンクのひとつ、テレグラフ紙の記事によると自分の子供たちが公園で遊んでいる間に、一番小さな子を連れてちょっとその場を離れた母親は警察から注意を受けた。彼女が知らないうちに警察はその「記録」をCRBに送りこの母親は「犯罪者」とみなされたが、当の母親はそのことを知らなかった。その後、地域のヴォランティアに応募したとき、彼女のクリミナル・レコードが調べられ、「子供を危険に追いやる」人物とみなされそのヴォランティアのポジションを断られた。それまで、その母親は自分が「犯罪者」とみなされていることを知らなかった。

 この制度自体に異を唱えるつもりではありません。メンタル・ヘルスにかかわるところにちょっとでもかんでいるものとしては、うまく機能・運営されれば素晴らしい制度だと思います。ただ、参考にした報道は悪い点ばかりを強調しているのかもしれないですが、いくつかの例を読むと、人々がそして社会が長い時間をかけて培ってきた「信頼」を、なし崩しにしてしまうような恐怖感を抱きます。テレグラフの記事からいくつか引用。

Last month a report from respected sociologist Prof. Frank Furedi found that an increase in child protection measures is so great it is “poisoning” relationships between the generations.

In a report for the think-tank Civiats, he says the use of CRB checks to ensure the safety of children and vulnerable adults has created an atmosphere of suspicion.

Prof. Ferudi’s report, Licensed to Hug (つまり、ハグするにも免許がいる、と), highlighted examples of when adult-child relationships are distorted by the need for CRB checks that are already required by schools and other organisations.

In one example, a woman could not kiss her daughter goodbye on a school trip as she had not been vetted.

Another mother was surprised to be told by a parent that she and her husband were CRB checked when their children played together.


 CRBの公平性を欠いた審査で職を追われた男性のコメントは、今すでに起きている状況かもしれません。

I fear there will soon be no one left willing to go into caring.


 今年の10月から発効予定のISAが注目を浴びたのは、小学校を訪れて子供たちに話をする(児童文学)作家は、£64-を自ら払ってISAの審査を受けろ、と。それがいやなら、学校を訪問するのはまかりならん、ということに日本でも人気の高いフィリップ・プルマンらが反発したというニュースが報道されたとき。


(プルマン)

 プルマンがいうように、別に一人の子供だけと密室で会うわけじゃないのに、何を戯けたことを、というのが僕の感想。じゃ、そのISAの審査を通れば、かばんにピストルを忍ばせて学校に行ってもいいわけだな、ということも極端な例ですがいえるのではないかと。
 ところが、驚いたのは社会の反応。「エリート主義」とか「作家だからって偉そうに」とプルマンを批判する意見がかなりありました。
 批判が寄せられるのは、ある意味、健全なことなのでしょう。でも、些細なことかもしれないですが、「信頼」という概念が失われてきているように感じました。CRBとISAを受け入れた時点で、すでにこの国は転換点を間違った方向に曲がってしまったのかな、と。

 僕はまだ直接CRBと遭遇したことはないです。ただ、過去に2回、ケンジントン&チェルシー区のメンタル・ヘルス・サポート・チームでのヴォランティア活動(CRBが設立される前)と、バッキンガム宮殿の夏のアルバイトのインタヴューを受けたとき(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-276.html)に身元調査のために警察に提出する書類を記入したことがあります。そのときに記入したデータがCRBに保管されているかどうかは、まったくわかりません。

Hundreds of innocent people 'wrongly branded criminals', by CRB checks
http://www.telegraph.co.uk/news/2248521/Hundreds-of-innocent-people-wrongly-branded-criminals-by-CRB-checks.html

13,000 people wrongly branded criminals

http://www.telegraph.co.uk/news/newstopics/politics/lawandorder/3449207/13000-people-wrongly-branded-criminals.html

CRB claims 'took away my livelihood'
http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/3447429/CRB-claims-took-away-my-livelihood.html

Mother who left children playing in park is branded a criminal

http://www.telegraph.co.uk/news/newstopics/politics/lawandorder/5818422/Mother-who-left-children-playing-in-park-is-branded-a-criminal.html

Innocent victims of CRB blunders receive just £223 compensation on average
http://www.telegraph.co.uk/news/newstopics/politics/lawandorder/4347615/Innocent-victims-of-CRB-blunders-receive-just-223-compensation-on-average.html

The Criminal Gossip Bureau can ruin your job prospects
http://www.guardian.co.uk/global/2009/jul/15/criminal-records-bureau-database

Authors in revolt against plans to vet them for school visits

http://www.guardian.co.uk/books/2009/jul/10/authors-vet-school-visits

 このエントリについては、CRBISA、またChild Protection等で検索するとたくさん出てくると思います。
 リンクした記事で多用されている「vet」が調査するの意味で使われているのは、おそらく関連の記事に限られるようです。イギリス人の友人に尋ねたところ、かなり古い使い方であり、かつおそらくアメリカでは意味をなさないかもとのことです。

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