LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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ブロークン・ブリテン3:親子が親子でいられなくなる国

2009.09.05
2007年5月、ポルトガルのリゾート・ホテルから、当時3歳だったマデレイン・マッカンちゃんが、両親が食事をしている間に行方不明になりました。まさに国を挙げての騒ぎになり、サッカー選手のデイヴィッド・ベッカムがマデレインちゃんの顔がプリントされたシャツを着た姿が世界のメディアに配信されたので、ご存知の方もいることでしょう。

 その2でふれたSohamの事件とこのマデレイン失踪事件によって、とりわけ親の側のパラノイアに歯止めが利かなくなったようです。何かおかしいな、というもやもやした気分はこの国民全体のパラノイアぶりなのかなと考え始めるきっかけになったのが、昨年の夏にテレグラフ紙が掲載した「イギリス人」でいることがいかに「親」にとってはストレスフルなことなのか、不幸なことなのかということを示してくれた記事でした。

Madeleine McCann abduction leaves family holidays haunted by fear

http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/2435894/Madeleine-McCann-abduction-leaves-family-holidays-haunted-by-fear.html

 短く記事の中身を紹介すると、海外のリゾート地で過ごすイギリス人家族にとって、場所選びはとても重要。ホテルが用意する子供向けの施設で働く係員はすべて身元調査を受けているか、英語を話すことができるか。そのような条件を満たしているところでも、瞬きしたら子供が消えてしまっているかもしれない。そんな恐怖感を背負ったままリゾート地で疲弊するイギリス人の親。
 そんなパラノイア振りは、イギリスに住むほかのヨーロッパ人の親にも伝染し、母国では屋外自由に子供を遊ばせているであろうフランス人やオランダ人の親も、イギリスではひと時たりとも子供から眼を離せなくなってきている。
 さらにイギリス人の親を追い込むのは、他のイギリス人からどう見られてしまうか、という恐怖感。

Last summer in Corfu, my friend Anne left her children – the eldest is 12 and more than capable of looking after her two younger siblings – on the beach while she dashed to a nearby kiosk to get some water. By the time she returned, a concerned English couple were quizzing the children as to where their mother was. “I felt like a criminal,” Anne told me. “The couple seemed to think my children were about to be snatched. We are all over-paranoid.”


 ちょっと子供から離れて用を足しているだけで、犯罪者と見られてしまう、子供を虐待していると見られてしまうのではないかという、まったく根拠のない恐怖感。言うは易しなのでしょうけど、当の親からすればそのようなプレッシャーに四六時中身をおかねばならないのであれば、気の休まることなどないでしょう。
 その2でも個人的な印象として書いたように、社会を、そしてコミュニティを形成する人々の間にあったであろう「信頼」が消滅しかかっている。記事の最後にある男性の苦悩が、その状況が如何に逼迫しているかを説明しているように感じました。

"I saw a boy. He was crying his eyes out and calling out for his parents. I could tell he was lost but felt I couldn't help because I'm a man. That's sad, isn't it? That I can't help a lost child for fear of being thought of as a pervert."

 迷子になり、泣いている子供に手を差し伸べたかった。でも、できなかった。なぜなら、彼は「男」だから、もしかしたら「人攫い」に、いや「小児愛性向者」と見られてしまうかもしれない。助けてあげたい、でもその代償に自分の生活が無に帰す。人として、子を持つ親として秤にかけることではない。でも、そんな危険は冒せない。
 話がずれますが、「男」であるがゆえに「小児愛性向者」に見られてしまうという恐怖感はイギリスにいないと判りづらいかと思いますが、相当に根深いです。本当はこれだけ取り上げて別項で書こうか迷ったのは、初等教育機関で働く「男性教員」の数がほとんど回復不可能なほど激減しているという状況。労働党政権は、ブレアの時代から教育を最重要課題のひとつとして掲げていますが、この男性教員絶滅状態はまったく改善される様子がありません。

 「親」でいることをさらに難しくしているのは、Data Protection, Child Protection、そしてSafety and Security regulation

Grandmother banned from taking photos of her grandchildren
http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/5918526/Grandmother-banned-from-taking-photos-of-her-grandchildren.html

Parents banned from taking pictures of their own children at sports day

http://www.telegraph.co.uk/education/educationnews/5560978/Parents-banned-from-taking-pictures-of-their-own-children-at-sports-day.html

Playing children ordered down from tree by police
http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/5966042/Playing-children-ordered-down-from-tree-by-police.html

 検索すれば他にもいろいろ出てくると思います。公営プールで遊ぶ孫の写真を撮ろうとした85歳の女性が、係員に写真の撮影をとめられた。学校の運動会で、生徒の親がわが子の写真を撮影することを学校が禁じた。木に登って遊んでいた子供たちに、近隣からうるさいと苦情を受けた警察官が出向き、子供に警告書を手渡した。

 これらの記事を読んで浮かび上がってくるのは、行政側の怠慢。先の三つのルールを使って「厄介ごと」と考えている問題を、そしてそれらの問題を解決するために何をどのように取り組んでいくのかを考えるのではなく、問題が起きたときに「被害者」になるであろう親と子供を封じ込めることで自分たちの手を汚さない、自分たちの仕事を増やさない。つぶしてもつぶしても後から後から出てくる犯罪者を取り締まるより、すでにその所在がわかっていて、権力の言ううがままに群れ惑う市民を規制したほうが事は簡単。
 インターネットがもはや日常生活とは切り離せず、悲しいかな、どこに小児性愛者がいて、いつどこでどのように子供の写真がインターネット上に流れるかが判らない。そんな現代において、三つのルールを掲げるのは、一見、理に叶っているように思えるかもしれません。でも、結局、犯罪者は野に放たれたまま、将来の被害者のほうが眼に見えない「檻」に入れられ、本来持っていたであろう自由を理不尽に取り上げられている。
 怖いのは、この状況をどうやらイギリス社会はすでに当然こととして受け入れてしまっているように思えること。2番目の記事にありますが、写真を禁じられるのは残念だけど仕方がない、という親たち。そして、その恐怖を取り除くのではなく、その恐怖が「正しい」という立場で自らの行動を縛っていく社会。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1083.html


I’m frightened of taking photos of children in the park, should I be?


Where you can, please take extra care when taking photographs of other people’s children, so ask their permission. Please avoid submitting photos of children in circumstances where the publication of the image might cause them harm or embarrassment.

 このような、自らが作り出した「恐怖」に脅かされて、お互いの信頼を失っていく社会は、ある意味、眼に見えるテロリズムと同じくらい、時にはそれ以上に怖いと感じます。もうひとつ気になっているのは、このような「親子の絆」を脅かす「緩やかな狂気」に関する記事に取り上げられるのは、その多くは白人。が、根拠はありません。

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