LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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ブロークン・ブリテン5:ドンカスターの惨劇と羨望による社会秩序の破綻

2009.09.21
この「ブロークン・ブリテン」は、昨年、2008年の春から夏にかけて読んだ新聞記事に触発されて書ければいいなと思っていた事柄中心なので、今年の晩夏に大きく報道された、ヨークシャー南部のドンカスターという町で起きた事件は取り上げるつもりはありませんでした。それに、新聞の見出しを読んだだけで、「また、こんな凄惨な事件。読みたくない」との気持ちもありました。
 ただ、そのドンカスターの事件の裁判が引き起こした、「子供を社会的、経済的、そして精神的不毛状況から救えるのは誰なのか?」という大論争を読んで、昨年起きたある狂言誘拐事件が起きた精神的背景について漠然とした考えが浮かんできたので。先に書いておきますが、最初の二つのリンク、読んでいてまったく気持ちのいいものではありません。

Schoolboys plead guilty to torture attack
http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/crime/6130899/Schoolboys-plead-guilty-to-torture-attack.html

Doncaster torture case: Social workers 'must intervene earlier'
http://www.guardian.co.uk/uk/2009/sep/04/doncaster-torture-abuse-history

Doncaster torture case: children's groups warns against naming brothers

http://www.guardian.co.uk/society/2009/sep/05/doncaster-torture-case-anonymity

Children questioned over 'torture' of schoolboys in Edlington are brothers
http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/5114495/Children-questioned-over-torture-of-schoolboys-in-Edlington-are-brothers.html

 事件が起きたのは今年の4月。12歳と10歳の兄弟が、近所に住む11歳と9歳の少年二人を長時間にわたり暴行した。二人が見つかったときには、11歳の少年は意識がなく、ほとんど死ぬ直前の状態だった。どのような惨劇だったかは、翻訳するのがつらいので、テレグラフの記事から。

Setting about beating them with bricks and sticks and forcing them to eat nettles. During a sustained and sadistic attack on April 4 this year, they repeatedly threatened to kill the boys, aged just nine and 11, and forced them to a perform a sex act together.
At one point a disused kitchen sink was dropped on the head of the older boy and a noose put around his neck. He was then thrown 30ft into a disused railway line and left, half naked, drifting in and out of consciousness face down in the mud. The younger victim was burned with cigarette ends on his eyelids and ear before being stabbed with a sharpened stick and cigarettes were pushed into his open wounds.


 暴行を加えた兄弟は、ソーシャルワーカーや警察からすでに危険視されていたが、彼らはこれといったことは何もしなかった(したくなかったのでしょう)。この兄弟からやはり暴行を受けたことのある子供の親が警察から言われたのは、「とにかく、記録はとっておきなさい」、というものだった。

 この時点で、チャイルド・プロテクションっていったい何のためにあるのか?、という疑問が何度も浮かんできました。

 子供が子供を拷問し、殺しかけたという異常な事件が社会全体の思考を麻痺させた。一方で、そのことに目をつぶりたかったのかもしれません、社会が沸騰したのが兄弟が育ったい歪な家族環境でした。アルコール中毒の母親、薬物中毒の父親。両親は子育てを放棄し、というか子育てする能力が欠如し、社会福祉制度によって払われる幾つかの生活補助で暮らすことしか知らなかった。
 Baby Peterhttp://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1079.html)同様、生活能力のない親、常識が欠落した親から子供を救うためには、そういう親の下に生まれた子供はすぐにでも親から引き離すべきだ、という意見が出ました。

Take more babies away from bad parents, says Barnardo's chief

http://www.guardian.co.uk/society/2009/sep/06/children-babies-parents-care-barnardos

Barnardo's chief Martin Narey calls for children to be taken away from 'failed' parents at birth

http://www.telegraph.co.uk/news/newstopics/politics/6146430/Barnardos-chief-Martin-Narey-calls-for-children-to-be-taken-away-from-failed-parents-at-birth.html

Children need more from us than just giving them rights

http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/sep/06/jenni-murray-childrens-rights-protection

'We didn't know our babies had been damaged by alcohol'

http://www.guardian.co.uk/society/2009/sep/13/foetal-alcohol-spectrum-disorder

 口火を切ったのは、イギリスを代表する、子供を守る活動をしているチャリティの代表。彼の主張が正しいかどうかという議論は別にして、すべてのリンクに共通するのは「親」の存在が子供がこの社会で生きていくのにいかに大切なのか、ということだと思います。4番目のガーディアン紙の記事は、引き取った子供が実の母親が妊娠中にずっとアルコールを過剰に摂取していたために、引き取った子供の生活態度に悪影響が出た、というものです。

 僕は、これを通して「親は聖人であるべき」なんてことを言うつもりはまったくありません。子供を育てることが、いかに大変で、でも多くの冒険に満ちているかということを、周りの友人たちの暮らしぶりから経験しています。
 真っ先に思うのは、「社会福祉行政」があるのはなぜ、そして誰のために、ということ。

 もうひとつ、社会の雰囲気というのも見逃せない要因と思います。昨年、やはりイングランド北部で起きた、シングル・マザーによる実の娘の狂言誘拐。

She 'loved Shannon to bits'. But she had her kidnapped. Inside the dark, dangerous world of Karen Matthews
http://www.guardian.co.uk/uk/2008/dec/07/shannon-matthews-kidnap-trial

 記事の冒頭に記者が書いているように、カレン・マシューズが実の娘お誘拐するにいたった背景には、貧困や、今でも歴然と且つこれまでになく突き崩しがたい階級社会の厚い壁等々、いろいろな要因が見出せると思います。
 僕が思うのは、「羨望」。マシューズがこの狂言誘拐を思いついたきっかけのひとつは、マデレイン・マッカンの失踪事件(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1084.html)といわれています。マデレインちゃん発見のためにメディアが出した巨額の懸賞金。それがほしかった。
 それって羨望なの、と思われるかもしれません。僕はそう思います。マデレインちゃんの失踪も、彼女の両親の悲しみもマシューズの目には入らなかった。ただ「懸賞金」がほしかった。子供がいなくなって懸賞金が手に入るなら、私にだってできる。私がもらってはいけないという理由はない。子供を殺めるわけではない、でもあの「懸賞金」をみすみす失うわけには行かない。そんなとても短絡な「羨望」がマシューズの心を支配していたのではないか、と。
 僕はテレヴィを見ない生活をしているのであくまで想像ですが、世間一般で騒がれるリアリティ番組(何がどうなればリアリティなのか、まったく理解できません)が今でも話題になるのは、「羨望」という欲望が今の社会を支配しているからなのかな、と思えてなりません。
 そんなとても幼稚な羨望と、それを抑える術を知らない大人によって子供が子供でいられることを奪われる社会というのは、異様だと思うんです。

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