LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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Anish Kapoor展:戸川純さんに見て欲しい

2009.09.29
9月26日から、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツhttp://www.royalacademy.org.uk/)で始まったAnish Kapoorの展示を早速観てきました。レヴューは割れているようですが、「視覚」だけにもかかわらず、息苦しくなるほど、心臓がバクバクするほど五感すべてが刺激されるような展示でした。

 始まる前は、Kapoorって、誰?状態でしたが、思い出しました。数年前、テイト・モダンのタービン・ホールに超超巨大なホルンのような物体をインストールした人です。



 圧倒されたのは、展示されているものが巨大だから、ということではないです。その巨大なものを作り上げようとした、作り上げたKapoorの精神。たとえば目玉の一つ、Svayambhサンスクリット語で、Self-generatedの意)。
 たぶん、重量1トン以上はあるに違いない巨大な赤い塊が、ロイヤル・アカデミーの優美な展示室5部屋をぶち抜いているだけでなく、その赤い塊が往復3時間かけてレイルの上を動く。


(恐らく、ニュー・ヨークで展示されたときのもの)

 その赤い物体を目の前にしたとき、僕の目の前をゆっくり確実に動いていくさまを見つめていたときに湧き上がってきたのは、「人間はなんて愚かで、無駄なことをして、にもかかわらずなんて面白い生物なんだろう」。
 見たことはまだないですが、スフィンクスやピラミッドをどうして人類は作るにいたったのか。Kapoorの作品(といっていいのか)が千年以上も残ることはありえない。でも、そのコンセプトは形を変え、場所を変えて残っていく。人類の歴史遺産とネガティヴな見方をすれば「コンセプト・アート」という消耗品とを比べるのは筋違いなのかもしれないですが、何かを作り上げることによってしか伝えられない大きな意思、という点では共通するものがあるのかな、と。

 それとこの赤い塊、歌手・女優の戸川純さんにぜひ見てほしいです。彼女が所属した「ヤプーズ」というバンドの「ダイヤルYを回せ」という作品の最後にこんな歌があります。

赤い戦車
/ YAPOOS
作詞:戸川 純  作曲:中原信雄

水彩画より油絵の凝固した色味にも似た
迷いなく確固たる動かぬ血の色の野望

Red bloody the will is
たえざる意志の保持なり

重ねて同じ色を塗り続け幾たびになろう
しかして立体化した型状の絵すなわち成就

辛酸はだいだいの
It's not more red than my hard will

突き上げるあつい想いが描きなぐった血の色の
ペインティングス まるでキューブな自己実現
生きるために生まれたんだと確信する色

重ねて同じ色を塗り続け幾たびになろう
しかして立体化した型状の絵すなわち成就

辛酸はだいだいの
It's not more red than my hard will

傷を染める清冽な赤 凝視するほど傷は癒える
ペインティングス 赤く輝く血は源泉
死人じゃないってこれほどまでに確信する色

突き上げるあつい想いが描きなぐった血の色の
ペインティングス まるでキューブな自己実現
生きるために生まれたんだと確信する色



 もうひとつ、この展示で感じたのは、「アートは、いつも必ず美しくなければならないわけではない」。赤い塊を「排泄物」と想像することもできるでしょう。大砲から打ち出される「赤」が白い壁にべったりと張り付く瞬間、そして重力に抗えずに床に落ちていくシーンが想起させる暴力的な、あるいは醜悪なイメイジ。にもかかわらず、そこにある「意志」とその「力」に刺激される自分と、その刺激を受け入れてしまっていることへの戸惑い。


(発射は20分ごと)

 最後に、「Yellow」という作品を見上げたときに、大昔に読んだ漫画の一こまが急に目の前に。それは記憶違いでなければ、「百億の昼と千億の夜」で、主要登場人物の一人が、弥勒像の口の中に入ることにより外の世界の破壊から救われる。この展覧会、見る側の国籍なんて小さな記号を見事なまでに吹っ飛ばすほどの刺激があるように思いました。12月11日まで。

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Comment

- Fumie

たしかに、これは面白そう!
お金もかかったすごい展示ですね。年初にはビザンチン美術をやってたロイヤル・アカデミー、企画力(&経済力)の規模が違います。さすが。

それにしてもこれ、偶然ではなく「赤い戦車」にインスピレーションを受けて作った作品なのでは?
2009.10.03 Sat 22:23 URL [ Edit ]

- 守屋

Fumieさん

 ロイヤル・アカデミー、懐が深いです。僕にとって、モダン・アートによる「実物」は、消費されるもの、としてのイメイジが強く、今回の展示でもそのように感じた「もの」は有りました。一方で、コンセプトがもつ「影響力」の強さという点では、かなり水準が高いと思います。

 >偶然ではなく「赤い戦車」にインスピレーションを受けて作った作品なのでは?
 そう思えますよね。世界的なアーティストにインタヴューできる機会があるとは思えないですが、尋ねてみたいです。以前、こんな
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-941.html
こともあったので、戸川純/ヤプーズって世界でも知られている存在なのかなと。
2009.10.04 Sun 12:18 URL [ Edit ]

- stmargarets

昨日やっと観てきました!(ぎりぎり)
色々な意味で頭も体も持って行かれた感じです。。。
2009.12.10 Thu 20:05 URL [ Edit ]

- 守屋

stmargaretsさん

 込んでいたのではないですか?今年は、ロンドンの美術展は素晴らしくて、どれも見落とせないものばかりですよね。
2009.12.10 Thu 21:39 URL [ Edit ]

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