LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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La Danse:パリ・オペラ座バレエのドキュメンタリー映画

2009.10.18
何かの機会に、誰かがパリ・オペラ座バレエのドキュメンタリー映画を製作する、しているとの情報を読んでからすっかり忘れていたころに、友人のブログで、そのドキュメンタリー映画がヴェネツィア映画祭で上演されたのを知りました。

http://fumiemve.exblog.jp/8965419/

 イギリスでは絶対に上映されないと諦めていたところ、ある方のブログでロンドンでたった2回だけ上映されることを知り、何とかチケットを購入し、見てきました。ねたばれに近いことを書きますので、これからご覧になられる方は読まれないほうがいいかと。

 観に行く当日になって、「どうして上映されるのか?」と思って調べたところ、14日から始まった第53回ロンドン・フィルム・フェスティヴァルの一環でした。ということで、監督のフレデリック・ワイズマン氏が上映前に挨拶、上映後に観客との質疑応答をしてくれました。フェスティヴァルのHPにあった紹介文です。

Frederick Wiseman, one of the world's greatest documentary makers, films the Paris Opera Ballet, one of the world's greatest ballet companies, and the result is an impressively fluid and insightful glimpse inside one of France's foremost cultural institutions. Wiseman wastes no time in taking us behind the scenes into rehearsals, placing dance itself at the heart of the film, and in sum we see preparations for and/or performances of seven ballets, including The Nutcracker by Rudolf Nureyev, Medea by Angelin Preljocaj, Romeo and Juliet by Sasha Waltz and Orpheus and Eurydyce by Pina Bausch. He also shows us how the company functions at every level, from administration and fundraising to the selection of the dancers and their pastoral care. The relationship between the beauty of the pieces and the sheer hard work that lies behind them is keenly but subtly drawn, and the struggle to maintain creative integrity in the face of commercial reality has a resonance far beyond the specific context. What is self-evident and makes La Danse so special is Wiseman's love of dance and understanding of how to film it (his previous films include Ballet, 1995), every bit as valuable as his vast accumulated knowledge of how institutions work.


(写真はシアトル・タイムズから拝借。正面に映っているのは、恐らくミテキ・クドーさん)

 (異論はあると思いますが)バレエ界の頂上に燦然と君臨するパリ・オペラ座バレエがどのように運営され、どのように毎日が過ぎていくのかを見られるのですからバレエ・ファンにはたまらない映画であることに疑問の余地はないと思います。
 一人のバレエ・ファンとしてみることができて本当に幸運だと思えたのは、ダンサーたちがどのように「踊り」を作り上げていくかという過程がふんだんに写されていることです。英国ロイヤル・バレエの常任振付家であるウェイン・マックグレガーは、新作を振り付ける際はヴィデオ・カメラで創作過程撮影して、それをダンサーと一緒に確認しながら作っていくであろうとばかり思っていました。ところが実際は、ダンサー以上に体を動かしながら、一つ一つの動きを細かく指導していく。マックグレガーの後ろにはノテイターと思われる女性が座っていました。彼の振り付けを紙に残していくのは至難の作業だろうなと思いつつ、新しいバレエが作り出されていく過程はなんてスリリングなんだろうと。


(マックグレガーが振付けたGenesballet.co.ukから拝借)

 今のパリ・オペラ座を代表するエトワール、アニエス・ルテステュが「パキータ」のリハーサルで振付家のラコットの指示に笑顔で抵抗してみせたり、元エトワールのロラン・イレールがプレジョカージュの「メデの夢」を踊るエミリー・コゼットに、ジャン・コクトーの言葉を引用して指導していく。「カセ・ノワゼット(くるみ割り人形)」のリハーサルで、エトワールのレティシィア・プジョルにがんがん駄目だしをする(たぶん)パトリス・バール

 ダンサーと同じくらい、もしかしたらそれ以上にこの映画で取り上げられていたのは、芸術監督のルフェーブル女史。ある夜は、サーシャ・ワルツが新たに振付けた「ロミオとジュリエット」のガラ・ディナーで挨拶する女史。ある日は、オフィスでアメリカ人スポンサーのために無理を押し通そうとするプロモーターに、ダンサーのリハーサル時間をその無理に合わせることはできないと主張する女史(金融危機を深刻化させたリーマン・ブラザーズの名前が出たときには、会場で失笑が漏れました)。
 この役を踊りたくないとごねるバレリーナの話を聞く一方で、停滞していたけどブレイク・スルーがあったと思われる若いダンサーを褒め称え励ます女史。オペラ座のダンサーたちの定年と年金についての集まりで如何にダンサーたちが大切であり、同時に「パリ・オペラ座バレエ」という稀有なバレエ・カンパニーを残していく意義を熱く語る女史。
 ルフェーブル女史が監督に就任して以来、年々、オペラ座バレエの年間スケジュールから「古典バレエ」が減らされ、コンテンポラリーやモダン、新作が増えていくことに対して批判や苦言が有ることはなんとなく聞こえてはいます。が、「オペラ座バレエ」を守り、発展させ、これからも世界の頂点に留まらせる人物として、彼女は最強だと感じました。

 終了後、スクリーンの前に出て来たワイズマン監督によると、撮影は12週間、編集は13ヶ月にも及んだそうです。質疑応答で、それほど長期の編集期間中にルフェーブル女史から何らかの注文、つまり「この場面は使うな」とかのバイアスはなかったのかの質問には、一言「ない」と明快に答えていました。
 質問がそれほど多くなかったので、僕も質問しました。僕自身、オペラ座バレエの公演を最後に観たのは数年前にサドラーズであった「ル・パルク」。ただ、オペラ座バレエのダンサーに関しては情報がたくさんあるので、カメラが追うエトワールの名前はなんとなくわかりました。しかしながら、映画本編では字幕でわざわざダンサーの名前が出ることは一度もなかったので、「Did you want to treat each dancer as a dancer rather than as the dancer?」。
 2時間半以上も座っていて腰の痛みが気になってしまって、自分が質問した割りにワイズマン監督の答に集中できなかったのですが、そのとおりだと。一人一人のダンサーに焦点を当てるのではなく、「カンパニー」を追ったというような趣旨でした。

 このような映画が、きちんと商業的に上映される日本は、恵まれていますね。

 余談ですが、今週末、ロンドン東部のギャラリーでの特別展示に、エトワールのマリ=アニエス・ジロが参加していたそうです。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-735.html

ロイヤル・バレエのウォーム・アップ・クラスを見学したときの記録。

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Comment

- Fumie

リンクありがとうございます。

こうなると、こちらの無知ぶりがちょっと恥ずかしいですが・・・。
2009.10.19 Mon 00:45 URL [ Edit ]

- 守屋

Fumieさん

 興味の対象が違うだけですよ。それにコアなバレエ・ファン以外は、振付家の顔まで判断できないかもしれないです。僕は、マックグレガーが日本でどれだけ認知されているか知りたいです。
2009.10.19 Mon 05:05 URL [ Edit ]

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