LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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コーンウォールの海と陸:その1

2009.12.27
11月下旬に、イギリスの最西端にあるコーンウォールの小さな村に滞在してきました。まずは、旅行ガイド風にコーンウォール全般についての印象を。

コーンウォールとウェスト・カウントリィ
イギリスの地理について詳しい方は聞いたことがあると思いますが、サマセット、ドーセット、デヴォン、そしてコーンウォールのイングランド南西部の4県の総称は、West Country


(普通、ウィルトシャーとグロウスターシャーは入らないはずなんですが、判りやすい地図はこれだけだったので)

僕はこのうち、グラストンベリー在住の友人がいるのでサマセットには何回か行ったことがありますが、デヴォンとドーセットは未踏です。この2県は、変化に富んだ素晴らしい海岸線で有名です。特にドーセットは化石がたくさん発掘されているためにイギリスの「ジュラシック・コースト」として盛んに宣伝されています。
 サマセットでは、数年前に行った、同県北部にあるマインヘッドが紅茶がお好きな方には面白い地域だと思います。イングランド南部地域の水は、日本と違って「硬水」。ところが、マインヘッド周辺だけは、産出されるのが「軟水」で、この水で淹れる紅茶の味がちょっと違うんです。

 コーンウォール。10年以上も前にシリー諸島に行ったとき(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-702.html)に、ペンザンスに一泊しただけ。以来ずっと、いつかはコーンウォールのほかの場所に行ってみたいと念じていました。で、ひょんなところから瓢箪からこま状態で、サーフィンで有名なニューキィからちょっと先にあるMawgan Porth(モーガン・ポース)にある、新しいホテルに泊まれることになり、10数年ぶりに行ってきました。
 今回、ロンドンから飛行機でニューキィまで行った(後述)のですが、飛行機がニューキィ空港に近づくにつれ眼に飛び込んできた地上の風景は、まったく予想していなかったものでした。あちらこちらに、今では使われていないことは明らかな鉱山現場が点在していました。イギリスの鉱山現場というと、どうしてもイングランド北部やウェイルズだけだと思い込んでいましたが、ホテルについて改めて読んだガイドブックによると、コーンウォールはかつて錫と銅の産出で栄えていたそうです。
 土曜日の朝のローカル新聞で見つけたCardinham(カーディナム)という小さな村で催された村のクリスマス・マーケットに行ったときに、面白い話を聞きました。教会内のマーケットでいくつかがらくたを購入した後、ヴィレッジ・ホールでランチを食べました。コーンウォールの小さな村でたった一人の「外人」ということで目立ったからでしょう、食べ始めるなり、二人の女性が隣に。一人は、マーケットの開催スピーチをしたBBCコーンウォールの女性キャスター(前夜ニュースで見た顔と同じだったのでびっくり)。もう一人は、そのキャスターのお母上。
 最初は、キャスターの方からどこに泊まっているのとか、どうしてこの村のマーケットに来たのなどの質問に答えていました。で、話が俄然面白くなったのは、お母さんの演説が始まってから。
 冒頭、「コーンウォールはUKで最も貧しい県よ」というつかみにがっちり引っかかりました。鉱山が廃止になるまでは、ガイドブックも書いていたように、かなり繁栄していたそうです。ところが、鉱山業が廃れた後に、それの受け皿として機能する産業が大きくなっていない。また、コーンウォールで成功している人々や施設は、コーンウォール出身ではなく、いつも外部の人間である。パドストゥを自身のシーフード・レストラン帝国で有名にしたリック・スタインhttp://www.rickstein.com)、エデン・プロジェクトhttp://www.edenproject.com/)を実現させたTim Smitという、多くの人を「今」のコーンウォールに惹き付ける、コーンウォールでもっとも著名な二人はいわばコーンウォール出身でないという意味で「外人」。そういう排他性、もしくは出身者の覇気のなさがコーンウォールの未来を暗くしているのよ、と熱く語ってくれました。
 一人の旅行者として思うのは、コーンウォールは観て回るには時間がかかりすぎるのではないか、ということ。県内には、ペンザンスランズ・エンド(ぼったくりですからお勧めしません)、ニューキィ、テイト美術館があるセント・アイヴズトゥルロ等々それなりに魅力ある町や村はあるのですが、一気にみて回るにはとても不便。国のはずれですから鉄道網は利便性にかけるし、車の移動も地図で見るよりずっと時間がかかると思います。というのも、コーンウォールの田舎道って、慣れていないと車の運転は結構大変に思えるんです。
 イギリスを代表する観光地、たとえばコッツウォルズや湖水地方などは、観光客が見てまわりたいと思う場所がコンパクトにまとまっている、もしくは順序がすっきり整備されていて無駄がない。ところが、コーンウォールは、車で行かないと観光スポットと観光スポットの間の移動に時間がかかりすぎる。そのような点が観光産業の枷になっているのではないかと、今回行ってみて感じました。
 
モーガン・ポース
なんのかんの言いつつ、大当たりだったのが滞在したモーガン・ポース。何にもない、崖に挟まれた小さな海岸の小さな村。その海と陸と空に、魅了されました。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1126.html

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157622838627087/

 ホテルの部屋から眺める海の色彩の変化に飽きることはありませんでした。夕暮れから夜は、暮れなずむ空の色が、眺めている間に海との境界線と交わり溶けていく。気がつけば、空と海の境は群青色のかなたに。
 朝は、漆黒の空に、刷毛で薄い青を描くようにひといろ、ひといろと色が加わり、空に明るさと色が増えるにつれて海との境界線がかすかに、そしてしっかりと浮かび上がってくる。目の前にあった黒い壁が、いつの間にか3次元の奥行きを持ってずっと昔から変わらずに目の前にあったような安堵感。戻ってからある友人にこの感想を伝えると、「フランス語のクレプスキュールという単語がそんな意味だったはずだよ」、とのこと。
 さらに、パリ在住の友人に尋ねたところ、

crépsculeとは、夜がやってくる時間のことで、日が沈み始める時間です。
パリでいえば、今だと17時頃。その時間帯は、すでに日中ではなく、そしてまた、
まだ夜でもありません。一日のうちに、夜明け>午前>午後>crépscule>夜 
となります。

例として、一日の長さをいうとき、"de l'aube au crépscule"「夜明けから日暮れ
(crépscule)まで」。また、人が年老いた時期や、死が近づいている時期のことを 
"crépscule de la vie"(人生の黄昏)と表現します。

日常生活ではあまり使いませんが、この単語は詩の中で使われます。


これを読んで、「一生原語では読めないだろうけど、マラルメのあの有名な詩はこんな海のことを詠んでいるのかな」、などと。それと、若いころ、新星堂が販売していたベルギー発のちょっと変わったレコード・レイベルの名前がクレプスキュール。まさかこんなところで再会するとは思っていませんでした。天気によってこの海と陸と空の色の変化が毎朝、毎夕違っているのでひと月いても飽きなかったかもしれません。
 滞在した週末は、死者が出るほどの大嵐に見舞われたので、特に早朝の崖の散歩はちょっと怖かったですが、ウォーキングがお好きな方もかなり楽しめる地域だと思いました。唯一天気がよかった月曜日の夕方、強風が吹きすさぶ崖の上の草むらに立ち尽くして大西洋を眺めていたら、何とはなしに、若き日のアダム・ダルグリッシュ(イギリス本格推理小説ファンにしかわからない名前)が犯人と対峙していてもおかしくないかな、と。これが夏で、反対側の海岸だったら、クリスティの「白昼の悪魔」です。

行き方
ニューキィにはロンドンから鉄道でもいけますが、今回は、飛行機で。ロンドンは、シティ空港を利用しました。ロンドン・シティ・エアポートへは、今ではドックランド・ライト・レイルウェイが直行しています。アクセスは思っていた以上に簡単でした。それにしてもジュビリー・ラインのカニング・タウン駅からシティ空港までの風景の新鮮なこと。朝焼けの下に広がるこの見たことのない風景が、10年暮らしてきたロンドンの一部なんて。ドックランド・ライト・レイルウェイ、侮れません。
 利用したのは、エア・サウスウェストhttp://www.airsouthwest.com/?from=home)。



僕が乗ったのは、ロンドン・シティ発、プリマス経由、ニューキィでしたが、ニューキィの後にはアイルランドのダブリンまで飛ぶ国際線。でも、プロペラ機。ロンドンに戻るとき、プリマス空港着陸時には、嵐が絶好調だったので、かなり冷や汗ものでした。ところが、シティ空港着陸時にはロンドンは雲ひとつない晴れの夜。機長がサーヴィスしてくれたのか、時間つぶしだったのかはわかりませんが、手を伸ばしたら届きそうな至近距離からの、ネオンに輝くロンドン・アイやカナリー・ワーフの高層ビル群の上を10分以上も旋回。その眺めはとても非現実・超現実でした。機会があったら、ぜひ。
 ということで、ニューキィ空港は、田舎のプレハブ空港とはいえ、立派な国際空港。



何故だか判りませんが、週一便、ルフトハンザによるデュッセルドルフ便があり、冬季限定スキー客見込みでしょう、グルノーブル便もあります。ちなみに、ニューキィ空港から飛行機を利用するときには、Airport Development Fee(ADF)なる料金が課されます。これは、チェック・イン前に払っておかなければなりません。

ちょっとした情報

コーンウォールに限らずですが、イギリスの田舎の、特に農業・放牧地帯を走る道路では耕運機やトラクターに出くわすことが多々あります。運がよければ、500メートルくらいで脇の農道に入っていくこともあれば、運悪く延々数キロもトラクターの後ろをゆっくりと走らなければならないこともあります。そんなとき、中央車線がシングルであれば、対向車がなければ追い越し出来ます。しかしながら、中央車線がダブル(二本線)のときは、対向車が見えなくても、追い越し厳禁ですのでご注意のほど。
 地元発行のローカル新聞のイヴェント情報から、時折面白い情報を得ることが出来ます。思いつきで行った土地で、やることがないけど何か体験してみたいというときは、ローカル新聞を読んでみるのもいいと思います。

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Comment

ドライヴ - dognorah

90年代前半に車でコーンウォールに行ったことがあります。現地での道路事情は悪くはなく、移動は簡単だったという記憶があります。ただ、ロンドンから現地へ入るまでが大変で、高速道路はExeter付近までしか行っていなくてそこから奥へは一般道路となり、かなり時間がかかります。St. Ivesはなかなか魅力的なところと思いましたがアプローチの悪さゆえ、それ以来行っていません。

ところで、今回の旅の目的はどの記事にも書かれていませんが、秘密ですか?(笑)
2009.12.28 Mon 19:55 URL [ Edit ]

- 守屋

dognorahさん

 ブリストルまでは、高速を使えば3時間くらいでしたよね。エクセターのあたりは道路からの眺めもいいでしょうね。
 
 今回の旅の目的は、その2です。ご期待に応えているとは思いませんが、それはそれとしてお読みいただければ幸いです。
2009.12.28 Mon 22:21 URL [ Edit ]

- かんとく

守屋さん
週末にコーンウォールに行ってきました。行った先はPenzansを中心とした西部分だったので、守屋さんのレポートとは違いますが、初めてCornwallに関心を持たせてくれたのが、守屋さんの記事でした。とっても良いところで、紹介頂きありがとうございました。
2010.08.02 Mon 05:14 URL [ Edit ]

- 守屋

かんとく さん

 早速ブログを読みました。朝目が覚めたら別の地にいることを実感できる寝台車での旅行、楽しまれたようですね。続き、楽しみにしています。特に、食べ物。
2010.08.02 Mon 06:07 URL [ Edit ]

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