LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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オペラ:プリマ・ドンナ(ロンドン初日)

2010.04.13
4月12日、新しいオペラがロンドンのサドラーズ・ウェルズ・シアターで初日を迎えました。オペラのタイトルは、「Prima Donna」、作曲と脚本はルーファス・ウェインライト(Rufus Wainwright。脚本は、Bernadette Colomine



まず、サドラーズのウェブから拝借した情報です。

Rufus Wainwright has established himself as one of the great male vocalists and songwriters of his generation, carving out his own singular sound in the worlds of rock, opera, theatre, dance and film. A Grammy nominee, he has released a series of acclaimed albums.

Wainwright’s first foray into opera is inspired by perhaps the best known figure of the art form; the diva. A portrait of a fading opera singer, Régine Saint Laurent, the action is set on Bastille Day in 1970’s Paris. Once the world’s most revered operatic soprano, Saint Laurent is preparing for her return to the stage after six years of silence. But in doing so, she is forced to confront the ghosts of her past.

For these London performances, there is a new production directed by acclaimed British director Tim Albery, whose most recent works include The Flying Dutchman at the Royal Opera House, and Boris Godunov for ENO. The set is designed by Antony McDonald and the opera is conducted by Robert Houssart.

Sung in French with surtitles, the libretto is co-written by Rufus Wainwright and Bernadette Colomine.


 ウェインライトがポップ・シンガーであることは知っていましたが、彼の音楽はまったく聴いたことがありません。僕にとっては、彼の父親、ラウドン・ウェインライト3世のほうが身近な存在。また、彼の妹のマーサは、以前、ロイヤル・バレエの「七つの大罪http://www.chacott-jp.com/magazine/world-report/from-london/london0706b.html)」の舞台で歌を聴いたことがあります。が、ルーファスについては存在は知っていましたが、彼がどのような音楽を作っているのかはまったく知りませんでした。が、そのほうが偏見もなくてよかったようです。ちなみに、オペラはフランス語で歌われました。
 サドラーズにつくと、入り口にはレッド・カーペット、その脇にはカメラマンが密集状態。こんなところを歩いていいのかなと思いつつ中へ。先に劇場に入っていた友人と話し始めてすぐにフラッシュが盛んにたかれたので誰かなと見るも、まったく知らない背の高い若い男性がタータン・チェックの変なスーツを着て手を振っているだけ。友人に誰かを尋ねたら、ウェインライト本人でした。
 しゃべりながらも入り口のほうをしきりに見ていた友人いわく、「今日はゲイ・ナイトの様相だね」、と。何を寝とぼけたこといってんだと思ったら、ウェインライトは彼のボーイ・フレンドと一緒に劇場に入ってきたそうですが、僕はまったく気づかず。言われてあちこち劇場内を観て回ったら、ボーイ・ジョージにグレアム・ノートン等、イギリスの大御所ゲイがたくさんいました。

 今年1月、先月だったか、ウェインライトのご母堂が、数年にわたる癌との戦いの末、亡くなりました。ウェインライトの最新CDと、今回のロンドン公演は彼の母親に捧げられています。

Celebrated Scottish soprano and Covent Garden regular Janis Kelly reprises the role of Régine Saint Laurent, after giving “the performance of her life” (Financial Times) at Prima Donna’s Manchester premiere. The tenor role is sung by the highly praised Canadian, Colin Ainsworth. Also critically acclaimed, Rebecca Bottone and Jonathan Summers complete the cast.

Régine Saint Laurent:Janis Kelly
Marie (メイド):Rebecca Bottone
Andre (記者、テナー):Colin Ainsworth
Philippe (バトラー、マネイジャーかな):Jonathan Summers


 オペラのあらすじ。1970年代のあるバスティーユ・デイ。彼女のために作られたオペラ、「Alienor d'Aquitaine(意味不明)」で6年前に大成功を収めた後、ずっと舞台に立っていなかった往年の名ソプラノ、レジーヌ・サン・ローレンは同じオペラで復帰を計画していたが、まだ歌えるだろうかとの焦燥で眠れぬ夜をすごしている。オペラの上演が近いこともあって、アンドレからのインタヴューに答えるレジーヌ。アンドレからレジーヌの舞台への熱い思いを聞かされた彼女は、彼を夕食に招待する(第一幕)。
 晩餐のために豪華な衣装に身を包んだレジーヌはまどろみの中で、キャリアのピークだった舞台、「Alienor d'Aquitaine」で、王(テノール)と共に交わした愛のデュエットを思い出す。まどろみからさめたレジーヌは、歌えないのではないかという焦りと恐怖、容貌の衰えにおびえ、フィリップとマリーに二度と歌えないと告げる。伝説のディーヴァに仕え、再びその名声をともに享受することをもくろんでいたフィリップは激昂し、レジーヌをなじったのち、彼女の元を去っていく。やっと現れたアンドレは場の様相に驚きつつ、晩餐をともにできない詫びを伝える。彼にはフィアンセがいた。
 フィアンセを待たせておくことに気をもみつつ、アンドレはレジーヌに「Alienor d'Aquitaine」のレコード・ジャケットにサインを頼む。サインをしたあと、「でも、オペラ歌手としての私の最後のサインはあなたにはふさわしくない」とレジーヌは言う。マントル・ピースの上に飾ってあった最後の彼女自身のレコードにサインをしたレジーヌは、最後まで献身的だったマリーに彼女の「最後のサイン」を差し出す。
 マリーを帰し、アパルトマンにはレジーヌだけ。ドレスを脱ぎ捨て、下着姿になったレジーヌ。昔日の写真を焼き捨てる彼女から嗚咽が。そこには年老いたかつてのプリ・マドンナがいるだけ。窓を開けると、屋外ではバスティーユ・デイの花火が上げられ、通りは人で溢れている。レジーヌは歌う、「花火が空を彩り、通りには若い人たちが。I remain」。「花火が終わり、皆いなくなる。I remain」(第二幕)。

 新しいオペラというと、難解な現代音楽を想像される方が多いと思いますが、この「プリ・マドンナ」はオペラの王道。オペラをご存知の方であればあらすじを読んで、ヴェルディの「椿姫」やシュトラウスの「バラの騎士」を思い描かれたと思います。また第2幕前半のデュエットの歌詞はベッリーニの「ノルマ」のシーンを髣髴とさせるもの。しかしながらこれはまったくパロディでも、自虐でもなくウェインライト本人が好む19世紀、20世紀のオペラを彼が21世紀に作り出したかった、その熱い思いが鮮明につたわってくるとてもいい舞台でした。プログラムの中で、ウェインライト本人も、ヴェルディやシュトラウスのオペラに大きな影響を受けたことを記しています。
 最後、レジーヌが歌うアリアは、決して派手やかなものではありません。淡々と歌う姿には、人はこうして年老いていく、オペラ歌手はこうして舞台から去っていくという痛みにも似たself-recoginition、もしくはself-realisationとも受け取れます。一方で、最後の花火が終わり、人々が去っても「私はここにいる」という言葉は、ポジティヴな意味合いとしても受け取れると感じました。リブレットは申し分なし。
 歌手では、女性二人は素晴らしい歌唱・演技でした。翻って、男性陣は、僕の嗜好もありますが、まったくの期待はずれ。少なくとも、アンドレを歌ったエインズワースは僕にとっては痛恨のミスキャスト。

 冒頭で、これは新しいオペラと書きましたが、実際は、2009年のマンチェスター・インターナショナル・フェスティヴァルで世界初演でした。ところが、どの媒体だったか忘れましたが、上演直前の情報で、演出が昨年とは違ったものになるとのこと。というのも、ウェインライトが昨年の演出を好ましく思っていなかったらしいとの噂がある、と。
 会場で会った友人は、昨年、マンチェスターでのワールド・プレミエを観ていたので実際どう変わったのか尋ねたところ、「まったく別物。昨年はヴィデオ・プロジェクターがあったり、第2幕でフィリップが舞台上でセックスをするような場面があった。今晩のはとてもロマンティックで、プッチーニやヴェルディの世界みたいだよ」。
 これを聞いて腑に落ちました。ウェインライトが創作したのは、王道オペラのフォーマットによって、聴衆に人生が、舞台が、そしてオペラが如何に儚く、脆く、でもだからこそ美しいと。このような、小品ながらも佳品のこのオペラが日本でも上演されて欲しいです。

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