LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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ドイツ語の美しい響き4:クリストフ・プレガルディーン

2010.04.17
昨晩、ウィグモア・ホールで、ドイツ人テノール歌手、クリストフ・プレガルディーンのリサイタルを聴いてきました。今年はまだ8ヶ月残っていますが、ぶっちぎりでダントツのパフォーマンスでした。今晩の吉田都さんの舞台に上書きされる前にさらっと。

 僕がプレガルディーンの存在を知ったのは結構前のこと。チェチーリア・バルトリニコラウス・ハーノンコート(どうして日本ではフランス語読みするのかとても不思議)と組んで録音したハイドンの「アルミダ」でリナルド役を歌っていた彼のリリカルな声、そしてバルトリと拮抗できるほどの存在感のある声に惹かれました。CDの中にあった写真ではさえない中年という印象でした。
 以来、彼が出演するオペラ、もしくはリサイタルを観たいと願っていたのですが、実力は抜きん出ていてもヴィジュアルが冴えないドイツ人歌手がロンドンに来ることは稀、もしくは僕の情報収集が下手なこともあって、たった一度だけ、バービカンでバッハの「受難曲」で彼の生の声を経験しただけでした。そのときも一人抜きん出ていたのですが、語りが多い役でもの足りませんでした。

 で、昨年、ウィグモア・ホールの年間スケジュールでプレガルディーンの名前を見つけ、念願以上、というか自分がなぜ感動したのかこれを書いている今も理解できていません。


Between Life And Death – Songs And Arias

Performers
Christoph Prégardien tenor
Michael Gees piano

Programme
Bach Komm, süßer Tod BWV. 478 
Mahler Urlicht from Des Knaben Wunderhorn
Schubert Schwanengesang D744
Schumann Stirb, Lieb und Freud! Op. 35 No. 2
Schubert Auflösung D807
Mozart Abendempfindung K. 523
Brahms Feldeinsamkeit Op. 86 No. 2
Brahms Wie rafft ich mich auf Op. 32 No. 1
Loewe Edward Op. 1 No. 1
Weber Max's recitative and aria from Der Freischütz

Wolf Denk' es, o Seele!
Schubert Der Jüngling und der Tod D545
Schubert Der Tod und das Mädchen D531
Wolf Anakreons Grab
Wolf Das Ständchen
Mendelssohn Neue Liebe Op. 19a No. 4
Loewe Erlkönig Op. 1 No. 3
Wolf Dereinst, dereinst, Gedanke mein
Tchaikovsky Lensky's Aria from Eugene Onegin
Schubert Kriegers Ahnung from Schwanengesang D957
Mahler Revelge from Des Knaben Wunderhorn


About this concert
A firm favourite on the recital circuit and a specialist in the song repertoire of his native Germany,Christoph Prégardien presents a programme ranging from the sacred to the profane, from the poise of Mozart and Schubert to wind-tossed romanticism of Wolf and the earth

 舞台に出てきたプレガルディーンは、そのおなかはまずいんじゃないかなと思うほど幅が出ていました。前半、シューベルトの「スワンソング」までは、リリカルな声はまさに僕の嗜好にあうものの、もうオペラは無理なのかなと感じるヴォリューム。ま、50歳代半ばでこれほどの声を維持しているだけでも立派、と少々後ろ向きな印象のまま聞いていました。ちなみに、ドイツ人ですからドイツ語の響きはそれはもう。四半世紀前に教わったとおりの発音は、耳が喜びました。
 しかしながら、続く、シューマンの歌曲が始まったとたん、プログラムの歌詞を追うのをやめました。歌っているときのプレガルディーンが発するカリスマ、というか表現するすべてを見逃したくない、聞き逃したくないと思うほど、舞台の緊張が一気に上がりました。前半最後の2曲など、劇的な歌唱、存在に圧倒され身じろぎできなかったほど。一度引き下がり、拍手に答えて出てきたプレガルディーンに、聴衆からはブラヴォーが盛んに。

 インターヴァル中は後半の歌の内容を覚えておこうとプログラムを読みふけっていましたが、聞こえてくる会話は「Can you believe?」、「Amazing!」等々。昨晩の聴衆の平均年齢は大変高いようでしたが、そんな年季の入った聴衆を感嘆させるほど。

 後半の2曲目、シューベルトの「死と乙女」と7曲目のLoeweの「Erlkönig」では、「これがオペラの師匠が昔言っていた、素晴らしい歌手ができることなのか」、という経験をおそらく初めて。ひとつの歌の中で、前者では乙女と「死」を、後者では「父」と「死を恐れる息子」を、ごく自然に、彼の持つすべての表現力を使って演じわけ、歌い分けていました。前者の最後のフレイズ、「Sollst sanft in meinen Armen schlafen! (you shall sleep softly in my arms!)」と死が乙女に歌う響きのなんて甘美で、しかしながら暴力的に奪われる若さと人生の終焉を歌うプレガルディーンは、これまできいてきたリートとはべつのリートが存在するのかと感じました。
 アンコールのマーラーの歌曲が終わると、ホールの半分以上の聴衆がスタンディング・オベイション。ピアニストのゲースも、大変素晴らしい演奏でした。

 帰宅してから、ブログ用に写真をとぐぐっていたら、プレガルディーンのサイトを見つけ、昨晩のプログラムは昨年彼とピアニストのミハエル・ゲースが発表したCD全曲をそのまま実際に歌ったもののでした。この事実を知っても、感動はまったく薄れることなく。

http://www.pregardien.com/e/default.htm

 今年の12月1日、プレガルディーンは、ゲース同様ずっと長く共演している別のピアニストとウィグモア・ホールでまったく別のプログラムでリサイタルを行います。そこで紹介されているトロント・スター紙の批評は、僕の昨晩の感動の一端を表しています。

Prégardien stops you in your tracks right away, and will not let you get back to your life until well after silence returns.

 ロンドンの聴衆に、がっかりなことがあります。昨晩だけではありませんが、歌と歌の間に咳をする人が多すぎ。余韻も何もあったものではありません。何度立ち上がって、「曲と曲の間は、あんたらが咳をするためにあるんじゃない!」、と声を挙げたかったことか。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-475.html

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