LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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ロイヤル・オペラ:連隊の娘、またはオペラって楽しい!

2010.05.18
lafilledurégiment
(ロイヤル・オペラ・ハウスのウェブから)

昨晩、ロイヤル・オペラ・ハウスで「連隊の娘」の初日を観てきました。とーーーーっても面白かったです。2007年にこのプロダクションが初演されたときは2回も観ることができたにもかかわらず、本編の感想は書かずに、上演前の関連イヴェントのことだけを書きました。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-461.html

 今回の再演の出演者は、指揮者も含めて初演のときと一人違うだけ。ナタリー・デッセィホヮン・ディエゴ・フローレスが出演するということで、チケットの争奪戦は凄まじく、自分でもよく初日が取れたものだと。ちなみに、会場で、ロイヤル・バレエのヌニェスソアレスのプリンシパル・カップルを見かけました。

La Fille du regiment
Music: Gaetano Dinizetti
Libretto: Jules-Henri Vernoy de Saint-Georges and Jean-François-Alfred Bayard

Conductor: Bruno Campanella
Marie: Natalie Dessay
Tonio: Juan Diego Flórez
La Marquise de Berkenfeld: Ann Murray
Sulpice Pingot: Alessandro Corbelli
Hortensius: Donald Maxwell
La Duchesse de Crackentorp: Dawn French


 イギリスのオペラ界ではヴェテラン中のヴェテラン、アン・マリーは今年の初めに同じくオペラ歌手だったご主人が亡くなったばかり。なので、精神的に出演できるのだろうかと思っていたのですが、華やかで、それでいて影のある役をエレガントに演じていました。カメオ役(歌わない、もしくはしゃべりもしない役)で出演したドーン・フレンチは今回もまたどすの利いた声で巧みにフランス語(だったのだろうか)と英語のせりふを繰り出し会場を爆笑の渦に。


(ドーン・フレンチの登場は2幕のみ)

 連隊のトップで、マリーの父親代わりでもある役を演じた、コルベッリ。脇役という自分の立場を十分に理解し、出過ぎない演技にもかかわらず、結果としていなかったら初日の大成功は違ったものになっていたかもしれないであろういぶし「金」のような存在。本当に巧かった。

 今回も素晴らしいアリアでオペラ・ハウスを爆発させた(英語では、bring house downという表現がよく使われます)フローレス。実は、5月7日にバービカンで彼のソロ・リサイタルを観てきました。レヴューも、在ロンドンの音楽ファンの皆さんのブログでも大絶賛、巣晴らしリサイタルでした。チケットを買って1年半、待った甲斐がありました。
 が、心のそこから楽しんだかといえば、実はもやもやとした物足りなさが残りました。本編が短すぎたとか、サルスエラが多すぎたのでは、という瑣末なことではなく、スリルが感じられなかったんです。言い換えると、フローレス、巧すぎ。他の歌手がどんな手段を用いても得ることのできない天賦の才能を持つフローレスにかかると、どんなに難しい歌唱も、「普通」に聞こえてしまうんです。コミックの「アーシアン」で描かれていたウリエルに匹敵するのではというくらいのこの世のものではないような技術を普通と思ってしまうことが怖いとでもいおうか。
 フローレスの本領はオペラと思ってはいたのですが、オペラ・ファンが薀蓄を語り始めたら、だれそれの「ハイC」を聞いたことがあるの自慢合戦を常に引き起こす「Ah! mes amis, quel jour de fete」も、僕の耳には、「へっ、もう終わっちゃったの?!」というくらいの極めて自然な響き。当然、オペラ・ハウスの拍手、足踏みは2分以上も続きましたが、もっと驚かせて欲しいという想いは残りました。個人的には、第2幕の熱唱系のアリアのほうが胸にジーンときました。


(第1幕から。オペラの舞台はティロル地方)

  デッセィ。3月、ニュー・ヨークのメトで、「ハムレット」のオフィーリア役を病気降板したので、歌えるのかどうかやきもきしていましたが、「連隊の娘」、彼女とフローレス以外ではしばらく観られません。歳の影響かショート・ターム・メモリー機能の劣化が著しい最近にあっても、彼女の鮮烈、コケティッシュ、躍動感に溢れ、「連隊の娘」だけでなくオペラの素晴らしさを小さな体を何倍にも使って伝えようとする姿は、今でも鮮明によみがえってきます。


(第1幕から)

 先週テレグラフ紙に掲載されたインタヴュー(最近、テレグラフはカルチャー関係の記事をウェブに掲載するのが遅いように思えます)によると、「ハムレット」の公演の前は疲れきっていたそうです。現在45歳、おそらくオペラを歌のはあと5年くらい。その5年の間に、ロイヤルに戻ってくるのはおそらくないかもしれない。ロイヤル・オペラで歌うのはとても楽しいけど、彼らはデッセィに出演を依頼してくるのが遅すぎたといっています。
 アイロンをかけながら、洗濯物をたたみながら、ジャガイモを切り刻みながら、真横に抱きかかえられても、兵士たちの頭上に斜めに掲げられても、惨めなときも、幸せなときも歌い演じ続けるデッセィには脱帽です。こんな心がうきうきするオペラですが、彼女の歌や演技に涙を流している人がたくさんいました。


(第2幕から)

 カーテン・コールはすごかったです。最後から2番目のフローレスが出てきた途端、会場をぎっしり埋めた聴衆の半分くらいがスタンディング・オベイション。彼のためだけに、3分以上もの拍手、足踏み、そしてブラヴォー。もちろんデッセィにも同じくらいの熱い感動の嵐が降り注がれていました。

 もちろん、デッセィフローレス、そしてすべての出演者のおかげで楽しい夜をすごすことができましたが、昨晩は、それだけではなかったように思います。オーケストラが序曲を奏でているとき、楽しくて楽しくて。オペラって、結局作られた時代のポップスみたいなものだったんだろうな、と。小賢しいことを考えないで、ありのままにオペラに身を任せ、耳を傾け、歌手が歌ったアリアをはハミングしながら家路につく、そんな夜でした。


(オペラのほぼ終わりの場面から)

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-175.html
デッセィが出演した「ハムレット」。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1049.html
フローレスが出た「床屋」

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-553.html
2007年のフローレスのリサイタル。

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