LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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ポジティヴ・サイコロジィとmental ill-healthへの偏見をなくすには

2010.11.22
精神医療の現場の一部で議論されていることを、僕自身がどう感じたかを記録するのが主目的とはいえ、このような形で書くのであれば丁寧に書きたいのですが、そうすると数時間かかっても終わりそうにないので、このような簡素な形で。ただ、アクセスしやすい情報についてはできるだけ紹介できればと思っています。

 「ポジティヴ・サイコロジィhttp://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1278.html)」は名前だけは知っていましたが、どうも胡散臭い印象を捨てきれていませんでした。が、講習を前に読んでおくようにとのお達しがあったマーティン・セリグマン博士の論文を読むと、人がどのように幸福を感じるかを科学的に論証しようとする試みに、まやかしと感じるような点はありませんでした。

 講習のはじめに、セリグマン博士が牽引するポジティヴ・サイコロジィの考えが精神医療の現場の取り組みにどのような変化をもたらして以下の説明がありました。

From a focus on coping with trauma to the way we lead our lives under benign conditions

From a focus on pathology using a medical/ disease model to the fulfilled individual and thriving community

From a focus of repairing or preventing damage to building positive qualities

From a focus on learned helplessness and depression to learned optimism and wellbeing


 正直、言うは易しと思います。が、特に三番目にあるダメイジから立ちなおせることに集中するだけでなく、(ポジティヴというよりも)生活にもっと柔軟性を取り入れることで、精神へのストレスを自ら緩和できるような生活環境を作り出すことに取り組むというのは、プレッシャァが氾濫する現代、考える意味はあるように思います。

 セリグマン博士のウェブにすでに日本語の表記があるので、日本でもよく知られている心理学の分野なんだと思います。余計な心配ですが、うわべだけを掬い取って、「健全な精神は健全な肉体に宿る」なんて短絡思考が復活しないことを希望します。

 講義の後半で、幸福を感じることができるであろう要素が挙げられました。その中からいくつかを。

Connectedness with family

Connectedness with community and friends

Reasonable financial situation

Hope, honesty, perseverance, courage

Giving is more satisfying than receiving


 実現できればいいとは思うのですけど、今のイギリスの社会情勢からするとどれもこれもかなり難しいのではないかと感じます。たとえば、家族や友人、コミュニティとのつながりを大切にすることについてですが、福祉予算や住宅手当の削減によりロンドンに住めなくなる低所得者層が何万人規模で生まれるであろうとの予測があります。
 政府の政策の失敗で慣れ親しんだ地域を追い立てられる人が増えれば、幸福に感じることはますます難しくなるのではないかと想像します。

 セリグマン博士のサイトで試すことができる「強みに関する調査」について2点。この調査の結果についてまとめた論文が、「アメリカン・サイコロジスト」の2005年の7月8月号に掲載されています。統計学が大好きという奇特な人にしか勧められないほど数字がてんこ盛りです。

 調査の説明の部分で博士は、この調査に参加した人の大部分が心理学に深くかかわっていない人たちという事実がデータの信憑性高めていると思う、といった趣旨の発言をしています。これは本音だと思います。
 個人的なことですが、社会心理学の分野で調査論文(とても簡単なもの)を書いたときに、古典的な質問表を使用したほかに、自分で独自の質問を作った経験があるので、240問の質問に答えている間に、質問の配置の組み合わせや、その組み合わせから浮かび上がってくる結果が読めてしまう気分になりました。そして、あたらずとも遠からずの結果でした。

 この講習会に参加していてひとつ釈然としないと感じるのは、カウンセリングやサイコセラピィをmental ill-healthになってからの「治療」としてしかみなしていないのではないかという点です。しかしながら、セリグマン博士の論文の中で以下の一文を見出したときは、ほっとしました。

Psychotherapy as defined now is where you go to talk about your troubles and your weakness; perhaps in the future it will also be where you go to build your strengths.

 カウンセリングって、心が疲れてからだけではなくて、日常の中で普通に受けてもいいだろうにいつも考えているので、カウンセリングがこういう風に多くの人から捉えてもらえればと願います。

 最後に、イギリスや西洋で語られる「心理学」はそこに生きる人々と、歴史や文化に大きく影響を受けていることを痛感した経験を。言い換えれば、西洋、もしくは日本の「幸せ」とほかの社会・文化の中で感じる「幸せ」の基準は違う。
 レクチャーの後、小グループに分かれておのおのどのようなことが自分にとって幸せなことなのかを話し合いました。僕が入ったグループにジンバブエ出身の女性が居ました。とてもふくよかな方です。
 彼女によれば、「イギリスに来てから、太っていることをまるで犯罪のように言われることが多い。でも、私が生まれ育った国では、あんな政治情勢だから、太っていることが幸せの象徴なのよ」。かなり目からうろこでした。


 「心が疲れてしまって、精神が一時的にへこんでしまった人」への偏見はどのようにこの社会に存在し、そのような人たちをどのように疎外していくのか、という講習の冒頭で紹介されたウェブです。

http://www.time-to-change.org.uk/

 おそらく自動的にヴィデオがポップ・アップしてくると思いますが、出てこないときには「Don’t get me wrong」をクリックしてください。バイポラーか鬱を患った若者がフラットメイトとガールフレンドを探す過程で経験する疎外のシステムです。

http://www.time-to-change.org.uk/erik


 このようなヴィデオが公になっていることだけでも、イギリスは社会が精神医療により取り組んでいると思う反面、これがまだまだ現実なんだと思い知らされました。また、奇麗事だけを言うつもりはありません。僕だって、双極性障害を患っていた事のある見ず知らずの人と住むかと問われれば、答えに詰まってしまうかもしれません。

 講義の流れの中で、「格差が大きい社会で社会的な、そして健康の問題が悪化する傾向にあるのでは」、ということに触れそのときに参考資料として使われたのがこれです。

The Spirit Level from Penguin(日本でもすでに翻訳・出版されているようですね)
http://www.equalitytrust.org.uk/

SpritLevel.jpg

この本にまさかこのようなところでお目にかかるとは思ってもいなかったので驚きました。読んだわけではないのですが、書かれている内容について賞賛の声があると同時に、シンクタンクから激しく批判されているという話題をこの夏に読んだもので。グラフだけを見ていると、何かしらのヴァイアスがかかっているのではとの印象はあります。

The Spirit Level: how 'ideas wreckers' turned book into political punchbag

http://www.guardian.co.uk/books/2010/aug/14/the-spirit-level-equality-thinktanks

 日本は、最も収入格差が小さく、健康・社会問題も最もよいレヴェルにあると紹介されています。本当ですかね?アメリカが収入格差においても、健康問題においても最も酷いという結果に驚く人はいるのでしょうか?


(オックスファム関連のウェブから拝借)

 以上駆け足ですが、どなたかの参考になれば幸いです。

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