LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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トランスジェンダァ・アウェアネス・ワークショップ

2011.01.25
先週の土曜日、ずっとヴォランティアとして参加しているHIV感染者支援団体のテレンス・ヒギンス・トラスト(以下THT)が、ヴォランティアのために設けている勉強会のひとつに参加してきました。
 主題は、「Transgender Awareness」です。この勉強会、人気が高くてこれまでに2回、抽選にもれて3回目にしてやっとでした。関心がない人のほうが多いとは思います。僕も、THTに参加しなければ、自らこの勉強会に赴くなんてことはなかったと思います。でも、心にかかわる分野で活動している以上少なくとも「知る」ことは大切だと最近感じることが多かったのでとてもいい機会でした。参加してなんというか、イギリスってある意味すごい国なんだなと改めて感じることが多くありました。いつもはできる限り使わないようにしているのですが、今回は、訳を一つ一つ気にしているといつまでたっても終わらないので、カタカナがたくさん出てくることをあらかじめお知らせしておきます。

 本題に行く前に、この記事を読んでみてください。とても長いですが、ガーディアンにしては平易な英語です。

A life less ordinary:The extraordinary life and death of Sonia/ David Burgess
http://www.guardian.co.uk/uk/2011/jan/09/david-burgess-sonia-lawyer-death

 2010年10月25日の夕方のラッシュ・アワー時、ピカデリィ線のホームから一人の女性が、彼女の連れの女性に突き落とされ、入ってきた車両の下で死亡しました。僕もこの記事をイヴニング・スタンダード紙の比較的小さな囲み記事で読んだと記憶しています。また、この殺人事件がこれ以上大きくなるとは思ってもいませんでした。
 ところが事件は予想外の方向に進みました。突き落とされた人物の身元がわかったからです。その人は、移民・政治難民の人権を扱う男性弁護士でした。その分野では、イギリスの法律の歴史に名を刻む活動をしてきた方だそうです。社会の好奇心を一気に掻き立てたのは、彼がプライヴェイトでは女性として生活していたこと。上にリンクを張った記事の中で人称は「彼」と「彼女」で揺れ動いています。が、僕は勉強会に参加した後では、なくなった方は自身のジェンダァを「女性」としていたであろうと感じます。

 THTでヴォランティア活動を始めたとき、正直に言えば、トランスジェンダァにかかわることなど予想していませんでした。でも、トランスジェンダァの中にもHIVに感染している人がいることを活動を通じて知るようになりました。
 で、実際、コミュニティ・サポート・ヴォランティアとして担当しました。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-458.html

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-50.html


 ありていに言えば、このときは「トランスジェンダァ」といって思い浮かべることは「性転換した人」、これだけでした。また、当時のサポート・グループのリーダーもそれほど深い認識を持っていたかどうかはわかりません。
 上の経験をしたときは、あまりにもパワフルだったので結果として僕自身が疲弊してしまい、トランスジェンダァって何だろう?と考える余裕をもてませんでした。でも、ここ数年、特に昨年はイギリス国内だけでなく海外からもジェンダァにまつわるニュースを読む機会が増え、今回、勉強会に参加できて、新たな戸惑いもありますが、得た知識のすべては有益だと思っています。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1240.html

 まず、講師の二人が素晴らしかった。手馴れているというより、この複雑な話題をどうやって明瞭に伝えていくかという姿勢に一点の曇もありませんでした。彼ら曰く、2月にはロンドン・メトロポリタン・ポリスの現役警察官を相手に同じワークショップを開くのだそうです。こんなところで日本とイギリスの比較をしても全く意味がないことはわかっていても、もしかしたら日本でも同様なことは僕が知らないだけで行われているのかもしれないですけど、ロンドンという都市が抱える複雑さ、つまり人種、性別、異文化が絡み合っている現実を感じました。

 ワークショップは、次の質問で始まりました。

Where is your gender?
 
 僕は、真っ先にRさんのことを思い浮かべました。「私は女性よ」。ジェンダァって、自分自身の中だけでなく、他者の頭の中にある自分にもつながるのかなと。この質問に関してのディスカッションのあとに言われたことは、Transgenderという言葉はアンブレラ・タームであるということ。

 ワークショップは、もちろん医療関係者向けではないです。手術のことなんて説明されても、僕にはわかりませんし。ただ、ロンドン北部のハムステッドにあるNHS病院が編集した資料が情報のもとになっているようなので、そちらから少し引用します。平易な英語なので、訳しません。

A person who is Transgender is someone who expresses themselves in a different gender to the gender they were assigned as birth. For, transsexual people, this is usually a permanent gender change. Cross-dressers and transvestites are people who adopt the manner and dress of the opposite gender for part of their lives. Some, but not all, transvestites opt for gender confirmation (reassignment) treatment later in their life.
The noun “Transgender” as an umbrella term is appropriate for the majority of people who identify in some way as “Trans” although “Gender Variant” is fast becoming a popular alternative.


 ワークショップの前半の主要トピックは、Transsexualsについてでした。配られた資料によると、

Transwoman: someone born with a male body, but internally sense of gender is female

Transman: someone born with a female body, but internally sense of gender is male

 このことについて参加者が意見や質問をしているときに、「なんだか、男性から女性へ、ということだけが取り上げられている」という風に感じ問題提起してみました。講師の一人曰く、「そのとおり。トランスセクシャルの話を始めると、多くの場合男性から女性へのことばかりが取り上げられる。このトピックですら、偏見からは逃れられない」、とのこと。NHSの資料から。

The term “transsexual” is a medical term and has a recognized medical diagnosis and care pathway for treatment. Specialist Gender Identity Clinics (GIC) under the care of psychiatry has historically led the treatment of trans people. This has led to stigmatization and the mistaken assumption that trans people are mentally ill.

Being “Trans” is neither a lifestyle choice nor a mental disorder but a condition widely recognized to be largely innate and somatic.

What is vital in every case is for trans people to be given the freedom and respect to express their gender identity.

Fashion and dress codes for men and women change, and vary across the diverse cultures that form part of our society. Therefore, it is not unusual that a patient may appear with an uncertain gender, but not identify as trans.


 ここで強調するべきことは、1)トランスセクシャルは精神疾患ではない、そして2)トランスセクシャルは、ヘテロセクシャルのこともあればホモセクシャルのこともある。つまり、女性から男性になった人が女性と結婚するのは、その人にとっては本来の性別になって異性と結婚すること以外のなにものでもない、ということ。

 続いてワークショップで紹介されたことは、性転換手術をして、二人の精神科医からGender Recognition Certificate (GRC) を発行してもらえると、出生証明書 (Birth Certificate) の書き換えがみとめられるというもの。

The Gender Recognition Act 2004 (GRA) gives legal recognition to trans people who have or have had gender dysphoria, have had at least 2 years medical supervision in their confirmed gender, and intend to live in that gender for the rest of their lives. To get this legal recognition the trans person must apply to the Gender Recognition Panel (GRP) for a Gender Recognition Certificate (GRC). If the application is approved, the trans person will receive a GRC and a new birth certificate. At the point they become their confirmed gender for all legal purposes, and must be treated as such.

 これに続いて言われたことで、僕は知らなかったとはいえ間違いを冒したことを悟りました。講師によると、特定の場所でトランスセクシャルの人と会ったとする。その人の許可がない限り、ほかの場所でほかの人にその人がトランスセクシャルであるということ、さらにトランスセクシャルではないかという推測を他者に伝えることは、法律を犯すことになるとのこと。また、

It is against the law to ask a trans person to show you his or her GRC; if verification of identity is required they may show you their birth certificate or other identity documentation such as a passport.
The law makes it a criminal offence, with a financial penalty, for an organization or the employee of an organization to knowingly reveal the status of a trans person with a GRC and disclose this “protected information”.


 つまり、トランスセクシャルであると判ったとしても、本人にCertificate を見せることを強要することは法律に違反し、罰金が科せられる。これは、一義的には、トランスセクシャルの人々の平等雇用を守るということですから、イギリスで事業を展開する企業、そして人事関係者は知らなくてはならないことでしょう。
 同時に、戸惑いを感じたのはこの点です。雇用者や、医療関係者、そしてヴォランティアとはいえ彼らの生活に携わることがある可能性がある僕は知っておくべきことである。でも、イギリスで暮らすすべての人が、このことを知っておかなければならないのだろうか、と。ただでさえ日々の生活の苦しさが増加している昨今、乱暴な言い方ですがマジョリティがマイノリティを気にかける余裕はあるのだろうか、と。さらに極端なことを想起すれば、観光でイギリスに来て、たとえばパブで隣り合った人物がトランスだった、そしてそのことを翌日に誰かにいったらそれは犯罪になってしまうのか。

 書ききれていないことはまだいくつもありますが、それはまた僕の知識が深まっているかもしれない次の機会に。

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Comment

- ハマちゃん

最後の方の法律の話は、
そんな法律の存在を知ってる人が超少数であろうこと、
啓蒙しても一般に浸透するかどうかは疑問であること、
にもかかわらず、それは知らずに犯した場合「犯罪」となること、

ものすごく妙な感じを受けてしまいますね、確かに。

そして、確かに守屋さんの言う、マジョリティがマイノリティを
そこまで気にかける余裕があるのかとか、
そういうのも語弊はあるかもしれませんが、私は同感です。

トランスジェンダーを扱う映画も結構あって、
そういう映画を観たりした中で
基本的な、この記事で挙げられている
1)2)については頭では解っていましたが、

性同一性障害(GID)とはどう違うのか、よく解らないです。
2011.01.26 Wed 10:59 URL [ Edit ]

- 守屋

ハマちゃん さん

 参加したワークショップでは、性同一性障害の英語表記で使われる、「Disorder」という単語は全く出てきませんでした。その点から考えると、「傷害」という単語を使うのは誤解を生み続けることになるのではないかでしょうか。

 最近、このポストに全く関連しませんが、「平等」社会の矛盾を感じる報道を読んだばかりです。「平等」を目指すことが、これまでのヒエラルキィを壊して、別のヒエラルキィを作っているに過ぎない、そんなことを考えているのですが、上手くまとまりません。
2011.01.26 Wed 20:58 URL [ Edit ]

- ハマちゃん

もしかしたら、性同一性障害の「障害」の部分が現実に即していないと言うことで、トランスジェンダーに言い換えるようになったのでしょうかね。

「これまでのヒエラルキーを壊して別のヒエラルキーを作っているに過ぎない」
という表現、ズバリだと思いました。
私が最近ずっと考え続けていることに、見事に合致する表現でした。

テキサスで、元女性が性転換して男性となり、
誰が見ても「カウボーイ」の風貌のおじさんとなった。
彼が人生のパートナーとして選んだ女性が元男性で…
というドキュメンタリー映画がありました。

その男性になった側には子宮が残ってたのですが、子宮ガンにかかり、だけど保守的な南部の病院はどこもこの男性の受け入れを拒否します。
男性は痛み止めだけをもらい、入院は出来ず(お金もなかったのだけど)、愛する人と最後まで淡々と生きる。
という内容でした。
彼が死ぬ日まで、を追うドキュメンタリーです。

哀しい話なのだけど、彼は愛する人と一緒にいることで
安らいでいて、幸せだったと言えるのかな、とも思えました。
2011.01.27 Thu 08:15 URL [ Edit ]

- 守屋

ハマちゃん さん

 映画の紹介、ありがとうございます。このような話を読むと、犯罪を犯したわけではないのに「尊厳」が全く考えられることもなく、セカンド・シティズンとして社会から追い出されていくというのは、なんとも言いようのない感情がこみ上げてきます。

 自分本来の姿になり、さらに真の理解者を得られる人生というのは、世界に対して「Look at me!」という必要がないほど穏やかで充実した人生なのかもしれないですね。
2011.01.27 Thu 21:20 URL [ Edit ]

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