LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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女子高校から垣間見る、イギリスのソーシャル・モビリティ

2011.02.06
スコットランド人の友人夫婦の上のお嬢さん(以下、H)が通う女子高校(便宜上)で、毎年恒例の生徒主催による「ジャズ・コンサート」があって、Hがその中で一曲ソロを歌うので見に来て欲しいと誘いを受けたので行ってきました。実際は、ジャズ・コンサートではなくて、生徒たちが父兄による玄人はだしの生演奏で流行の歌を歌うというもので、エンタメとしては何の意味もありませんでしたが、階級間格差、人種間格差が広がるいっぽうのイギリス社会を考えてみる面白い夜でもありました。

 まずは、コンサートのことを少し。Hと初めて会ったのは、約9年前(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-100.html)。以来、友人夫婦が仕事で遅くなるときは、Hと彼女の妹の子守をしたこともありました。そんなHが、肩むきだし、ひざ上15センチ以上のミニのイヴニングを着て、カーリー・サイモンの「うつろな愛」を堂々と、しかも結構情感を込めて歌い上げている姿には、子供が大きくなる過程を見るのって、こういうことなのかとちょっと感慨にふけりました。
 Hが通う女子高校は、著名な開業医の多くがオフィスを持ちたいハ-レィ・ストリートにあります。歴史と由緒はあるのだろうけど勉強のレヴェルは普通なんだろうと思っていたら、友人(以下、M)によると、昨年はオックスブリッジに10人ほど合格したそうです。
 そのような実績があろうとも、この高校に通うのは、いや通えるのは両親の収入が高水準である子供だけ。実際、学費がどれくらいなのかはわかりませんが、私立高校ですから普通の共働き一般家庭では簡単に払えるものではないと思います。コンサートが始まる前、また休憩中、廊下や会場内で家族と一緒にいる学生のほとんどが片手にスマートフォンを握り締めている姿は、彼らにとっては普通なのかもしれないですが、僕には別の次元の光景のようでした。
 Hの父親は、規模は大きくないながらもシティにある国際弁護士事務所で働く現役。しかも、自主制作CDを出すほどの技術を持つヴァイオリニスト。そんなプロ級の父親たちの生演奏で、まるでプロのように歌う彼女たち。コンサート終了後に彼はこういいました:「そんな、カラオケに併せて歌うなんてどこでもできることじゃないか。せっかく僕たちが演奏できるんだから、子供たちには、生演奏で歌うことがどんなことだか経験して欲しいんだ」。公立学校で同じようなコンサートが企画されたとして、学生たちが生演奏に合わせて歌える機会はどれくらいあるのだろうか、と。

 時を同じくして、友人からソーシャル・モビリティに関する面白い記事を教えてもらいました。

Social mobility: Less privileged face fight for top jobs
http://www.bbc.co.uk/news/uk-12339401

When you look at the UK's top jobs, the statistics are grim. Only 7% of children are privately educated but more than half the top doctors went to private school. Seven in 10 judges and six in 10 barristers went to independent schools.
今のイギリスのトップランクの職業を見ると、わずかに7%の子供たちしか私立高校の教育を受けていないにもかかわらず、半分以上の高ランクの医師は私立高校出身。また、10人中7人の裁判官がインディペンデント(私立高校)にいっている。

Aristotle on modern ethical dilemmas

http://www.bbc.co.uk/news/magazine-12279627

Does a narrow social elite run the country?
http://www.bbc.co.uk/news/magazine-12282505

Cameron, Clegg and Osborne all went to private schools with fees now higher than the average annual wage. Half the cabinet went to fee-paying schools - versus only 7% of the country - as did a third of all MPs.
デイヴィッド・キャメロン(首相)、ニック・クレッグ(副首相)、ジョージ・オズボーン(財相)の三人とも質で教育を受けている。学費は、平均収入を上回る。

 コンサートが終わってからの帰り道、母親としての喜びに浸っているMに質問しました。

 「確か、君のお父さんは現役の配管工だよね。コンサートを見ていたときに、今のイギリス社会におけるソーシャル・モビリティのことを考えていたんだけど、なんか意見ある?」。

 「何を尋ねられているのかよく判っているわよ。私の両親世代、そして私のエモーショナル・バックグラウンドは、ワーキング・クラス。幸運にも私は大学教育を受けることができて、仕事がある。そして、社会状況もよく判っている。私がビジネスに戻ったのは、I am determined to provide my girls the best things as much as I can」。

 先日、ブログに上げたイギリス社会における地位ランク。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1309.html

 友人夫婦は、社会経済区分で言えば、個人で間違いなくカテゴリィ1。でも、彼らの根っこはワーキング・クラス。彼らの子供たちは、自分たちはどの階級だと思うのか?最近思うのは、イギリスの階級社会って、結局誰のためにあるのか?なくなる、なくなるといわれても決して無くならないのは、誰かが望んでいるからなのか。

 ソーシャル・モビリティを多文化的観点から考察する経験がありました。昨秋、仕事関連で何度かバービカンに行った折、そのつど、University of East Londonの卒業式にかちあいました。卒業生の中に、広義の意味での白人を見ることはありませんでした。
 1月24日に「デスノート」の続きを読もうと思ってバービカンの図書館に行ったとき、ホールではKing`s College(ロンドン大学)の卒業式が催されていました。イギリス人だけとは限りませんが、学生の9割以上はいわゆる「白人」。極東系、中東系、アフリカ系の学生は一瞬にしてかぞえらるほどの少数。

 ロンドン、そしてイギリスは、今、大いに揺れているように思います。

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Comment

- ハマちゃん

ただただ唸るしかない私、です。
何がどうおかしいのか、それが上手く言い表せないんですが、

何かが違う、間違ってる、
ずっとそういうことを考えてます。
社会が目指している方向そのものが間違ってるような、妙な違和感を、ずっと感じてます。

自分だって、子供たちには「良い生活」を与えたい。
それは誰しも同じだとは思うのだけど
その「良い生活」って、何なんだろう?
2011.02.07 Mon 11:01 URL [ Edit ]

- かんとく

私もこの手の問題は何か間違っていて、何か正しいのか?そもそも、正誤の問題なのか?良くわかりません。ソーシャルモビリティが担保されているのは、健全な社会の必要条件ぐらいの一般論しか言えません。母親Mさんの言葉は、一人の親として至極常識的な発言だと思うし、いったい何かIssueなのだろうか?自問しています。そういった意味では、日本も今はSocialMobilityはどんどんなくなってきています。東大生の親の平均年収は優に1000万超えているという記事も読みました。支離滅裂なコメントで申し訳ないです。
2011.02.07 Mon 21:55 URL [ Edit ]

- 守屋

ハマちゃん さん

 このこと、考え出したらきりがないと思います。でも、考えないと、自分が暮らしている社会の、コミュニティの、なんと言ったらいいのか、たとえばコミュニティが持つ包容力と個々人の自主性がどのように組み合わさっていくか、そしてその過程で現れるであろう協調と対立がもたらす影響を見失うことになってしまうのではないかと感じます。
2011.02.08 Tue 21:29 URL [ Edit ]

- 守屋

かんとく さん
 
 先日アップしたソーシャル・キャピタルについてのポストに入れようと思って、でも言葉でどうしても上手くつなげられなかった、今もつなげられないことは、現実には良い生活を求めて場を動くことを強要される人ほど、高品質のソーシャル・モビリティの恩恵を受けることができない。かんとくさんの自問がまさにだと思いますが、矛盾ばかりなのに、なんだか機能している。

 友人は、彼女の子供たちを甘やかしているわけではなくて、社会に出てから生き抜けるだけの経験をさせておきたいといつも言っています。贔屓目ですけど、とても厳しい親であると同時に、お嬢さんたちにとってはいいロール・モデルであろうと思っています。
2011.02.08 Tue 21:36 URL [ Edit ]

- Yoshi

こんにちは。さかのぼってのコメントで恐縮です。

Social mobilityを考える時、日本にいると収入の上下や勤め先(大企業かそうでないか)などが大きな指標になると思いますが、イギリスにいると'class'という言葉で表現されることが多いですね。社会全体としては、social mobilityが大きいほうが良いとは思いますが、個々人の幸福のレベルで考えると、やや複雑な気がします。今イギリス社会が抱えている大きな問題は、産業革命以来の(主として白人の)ワーキング・クラスが、経済のグローバル化の大波と共に崩壊しつつあり、厳しい肉体労働や職人技に大きな誇りを持ち、伝統を築いていた人々と彼らの文化が動揺していることだと思います。また単純に階級でくくれない移民達の大きなコミュニティーという異物の存在も関わっているでしょう。

ここ数十年の間に、公教育が発展し、内容もかなり民主化されたこと、大学が多く作られたこと、更にさかのぼれば、第2次世界大戦で多くの人が一兵士として交わり、階級感の違いを超えた関係を強いられたこと、戦後の福祉社会の形成など、長いスパンでの多くの要素が、徐々に階級区分を不安定化させています。これらによる良い面はもちろん沢山ある一方、階級移動に取り残された人々を非常に不安にさせます。「ワーキング・クラス」の概念は残るが、その実体は誇りも文化にも乏しい貧困階層、ということになりかねません。これはイギリス社会のアメリカ化ですね。アメリカでは、American Dream実現の旗印の陰で、それに全く参画できない敗者が社会の底辺に沈滞し、劣等感にさいなまれがちなのではないでしょうか。昨年の"Downtown Abbey"とか、"Upstairs Downstairs"の人気などを見ると、多くの人が古き良き階級社会にノスタルジアを感じているのかも知れないな、と感じました。また、貧しい人々が確固としたアイデンティティーを求める時、移民社会での過激な宗派とか、白人ワーキング・クラスの極右政党といった問題にもある程度関係がありそうです。

Social mobilityを強く求める人々には機会が開かれている、しかしそうでない、ワーキング・クラスの親の仕事を継いだり、地域の人々と同様の暮らしで満足する人も不幸にならない社会が望ましいとは思いますが、今は世界全体が激しい経済競争の中にありますから、難しいですねえ。 Yoshi
2011.02.09 Wed 01:42 URL [ Edit ]

- 守屋

Yoshi さん

 こんばんわ。

 言葉をいじっているだけの印象になってしまうかもしれませんが。「労働者階級」と日本語で表現するときに、かつて日本で働いていたとき、自分がしていたことは「労働」以外のなにものでもないし、誰かが僕のことを「労働者」と呼べば、その通りだったと思います。
 延長して、「ワーキング・クラス」といわれれば、僕はやっぱりワーキング・クラスのように思います。概念でしかない階級、モビリティが心理面に及ぼす影響力は強いです。

>第2次世界大戦で多くの人が一兵士として交わり、階級感の違いを超えた関係を強いられたこと
 この指摘、大変興味深く、いろいろと考えることがあります。ここで一つ強く思うことは、先日のBBCの件で明らかなように、戦争という蛮行が社会にもたらす弊害の強さ、そしてその弊害が長く長く、人の命よりも長く社会に残るであろうこと。

 激しい経済競争の相手は誰なんだろう、と考えます。
2011.02.09 Wed 21:05 URL [ Edit ]

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