LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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ロイヤル・バレエ:白鳥の湖

2011.02.15
2月14日に、ロイヤル・バレエの「白鳥の湖」を観てきました。今回の前、最後にこのプロダクションを観たのがいつだか全く思い出せないほど。ひいきのダンサーがいなくなってしまって「是が非でも、観にいこう」とは奮い立たなかったうえに、どんなダンサーが出ても売切れは必至の「白鳥」のチケットの争奪戦に参加したいと思えるほどの時間的余裕がなかったので、今回もまた観ないことになりそうだと思っていました。
 しかし、数少ない好きなダンサーのセナイダ・ヤナウスキィの「オデット/ オディール」の評価が非常に高く、でも、彼女の最後の出演日がヴァレンタイン(3月5日に、マチネで踊る予定と知らせていただきました)ということでリターンは無理かなと半ばあきらめていました。が、「そうか、ヴァレンタインを直前に、破局するカップルがいるかもしれない」と邪なことを考えた僕に黒鳥は微笑んでくれたようで後にも先にもたった1枚だけ出たリターンを購入することができました。ヴァレンタインって、カップルのためだけにあるわけではないようです。

 エンタメのことを書くのは久しぶりですし、舞台上、そして客席でいくつかのことがあったので、取り留めのないものになるかもしれません。
 エンタメのことを書かなかったのは、今は先に書いておきたいことがほかにあるというのも理由のひとつですが、聴衆のマナーにがっかりすることが多くて嫌な想いをした舞台のことを書いてもな、という気分があります。14日も、ひとつ、僕にとっては非常に腹立たしいマナーに遭遇しました。
 リターンで購入できた席は、とてもいい席でした。通路側なので、たとえ前にでかいのが座っても、ちょっと頭を動かせば舞台が観える席。お値段もそれなりです。僕の隣に座ったのは、30代後半くらいと思しき夫婦、それともカップル。女性が僕の隣でした。
 カーテンが上がり、久しぶりに観る群舞を双眼鏡で追っている目の端に、光るものが飛びこんできました。隣の女性が、スマートフォンのスクリーンを目で追っていました。ロイヤルに来る観客のマナーもここまで落ちたのかと嘆息しつつ、「Could you please switch off your screen?」と。すかさず女性は、あわてた素振りは見せながらも、「My daughter is sick」。この二人、結局最後までいました。こんな親に育てられるお嬢さんのなんと哀れなことか。

 よかったこと。第一幕が始まる直前になって、前に座ったのは白人中年男性の二人組み。僕の前に座った方はイギリス人にしてはやや背が低く、しきりに頭を動かしながらも、舞台を心から楽しんでいるようでした。彼が席に座るときにちょっと見えた横顔が、どこかで見たような気がしていました。1回目のインターヴァルが終わり彼らが戻ってきたときに尋ねてみました。「Excuse me! Are you Mr Simon Russel Beale?」。

simonrussellbeale2_17031t.jpg

 大当たり。イギリス舞台演劇界の至宝(のはず)のサイモン氏の声は、さすが名俳優とすぐに思えるほど深い響きでした。話し方はちょっとせわしないところもありましたが、オフ時間にもかかわらず、気さくに質問に答えてくれました。もう一人は、演出家のニコラス・ハイトナー氏。ロイヤル・オペラには2年ほど前にヴェルディの「ドン・カルロス」を演出しています。ハイトナー氏と話せませんでした。
 サイモン氏が、今月末に世界初演となるロイヤル・バレエの新作「Alice's Adventures in Wonderland」に踊らない役で出るのは知っていたので、どのように進んでいるかを尋ねてみました。

 「楽しいよ。僕、バレエが大好きなんだ」。

 「踊るんですか?」
 
 「それはいえない。でも、バレエはいつも試してみたいと思っているけど、難しいよ」。

 「ミュージカルにも出たことがあるのだから、不可能ではないですよね」。

 「(微笑)」


(ミュージカル、Spamalotで主役をやったとき)

 2回目のインターヴァル中に、外に出て新鮮な空気を吸っていたら、隣でタバコをふかしていたまん丸顔の男性がサイモンさんでした。

 「(日本人とは言ってあったので)僕、日本には何度か行っているんだ(Fellowといっていたのでマスター・クラスか何かかと)。でも、まだ日本のメディアに取り上げられたことってないんだ」そうです、日本の演劇雑誌の皆さん。それにしても、バレエ・ファンと演劇ファンは重ならないようです。僕以外、誰もサイモンさん、およびハイトナー氏に話しかけていませんでした。

 やっとバレエ。

Odette/ Odile: Zenaida Yanowsky

Prince Siegfried: Nehemiah Kish


 がっかり、というかヤナウスキィの年齢を感じてしまったのは、古典バレエダンサーなら技術を誇れる一番の見せ場、オディールの32回転のフェッテを回りきれなかったこと。技術だけに限れば、ヤナウスキィはシルヴィ・ギエムタマラ・ロホとは比べることなど無意味。それでも、彼女がロイヤル・バレエで「白鳥」のデビューを飾ったときは、3回転はおろか、2回転ですら数えるくらいしか入れることはできませんでしたが、それでも32回は回っていました。
 今回は、フェッテが始まってすぐにすべて1回転でこなすつもりであろうと感じました。本来であれば同じ場所で回り続けるのですが、次第に大きく舞台左手に動いてしまい、最後はよろけるようにフェッテを終えました。通路をはさんで座っていたファイナンシャル・タイムズのバレエ・クリティクのクレメント・クリスプ氏は大げさに両手を広げて「32回転できないオディールとは何事だ」と言いたげなしぐさをしていました。ヤナウスキィ本人の表情からは、「仕方ないわね」と悪びれるというより、「これが今の私よね」、といったさばさばした微笑が浮かんでいました。僕にとっては、オディールとジークフリートのこの見せ場で、両方に拍手が起きなかったというかなりまれな舞台でした。

 よかった点。というか、こんなオデットの解釈と表現方法があるのかと思ったところ。多くの批評家が書いていたように、ヤナウスキィのオデットはある意味、奇蹟のようでした。ジークフリーとロットバルトの間で引き裂かれるオデットの腕の動き。左手ではロットバルトの力を拒み、右腕ではジークフリートに届こうと必死に願う彼女の希望。
 圧巻は、ジークフリートとのパ・ド・ドゥ。彼に抱え上げられたオデットの掌とロイヤル・オペラ・ハウスの天井をはるかに超えたどこかにある高みに向けられた視線には、「やっとこの空に戻れる。羽があるのは囚われるためではない。この空を愛する人と飛ぶため」。一瞬にしてなくなりそうなほど繊細でありながら、とても暖かな感情の流れがありました。

 古典バレエは観ていてとても楽しいです。が、ロイヤル・バレエには、そろそろ新しいプロダクションにして欲しいです。

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