LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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フィデリオ@ロイヤル・オペラ:真の愛は恐れず

2011.03.31
Fidelio-performed-at-The--007.jpg
(シュテンメとヴォットリッヒ。ガーディアンから拝借)

ベートーヴェンが作曲した唯一のオペラ、「フィデリオ」を初日となった3月29日にロイヤル・オペラ・ハウスで観てきました。2007年に上演されたときにはまってしまった状況はこちらをご参照ください。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-476.html

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-502.html

 予想はしていましたけど、チケットの売れ行きは芳しくなく、初日の数日前になってけちがついてしまいました。当初、今回の上演での指揮者はロシア出身のKirill Petrenkoでした。ところが、3月25日にロイヤル・オペラ・ハウスから届いたメイルで、背中の痛みで指揮ができずに全公演を降板。代わりに、マーク・エルダーが最初の4公演、残り2回をデイヴィッド・サイラスが指揮することになったというものでした。

Performers
Conductor:Mark Elder
Leonore:Nina Stemme
Florestan:Endrik Wottrich
Rocco:Kurt Rydl
Marzelline:Elizabeth Watts
Jaquino:Steven Ebel§
Don Pizarro:John Wegner
Don Fernando:Willard W. White


 2007年の上演時にも批評家受けはあまりよくありませんでしたが、今回は指揮者の急な交代もあってろくでもない評価だろと予想していましたが、その通りでした。いつも高い評価を得ているエルダーを準備不足で低く評価するのは、僕は的外れだと思います。大好きなオペラなので、オーケストラのそばで聞きたく平土間の最前列ど真ん中、まさにエルダーの背後でした。僕は指揮者の理解度、オーケストラとのインテグリティをどうこう言えるほどの知識は持ち合わせていません。でも、舞台上の歌手に細やかに指示を出すエルダーの指揮は大変好ましく移りました。
 もうひとつ批評家の槍玉に上がったのは、ユルゲン・フリムの演出。2007年の上演を存分に楽しんだ僕にも、フリムの演出はどうもオペラが描こうとしている本来の物語を十分に描ききれていないという印象が今回の上演で強まりました。苦難の果てにやっと巡り会えたレオノーレとフロレスタンが舞台の左右に分かれたままでその歓喜を歌い上げる場面の冷たさ。敵役のドン・ピサーロが最後に再び出てきて兵士たちにぼこぼこにされる場面は、リブレットに本当に書かれていることなのかどうか。

 今回の上演の最大の注目は、世界中で人気のスウェーデン出身のソプラノ、ニーナ・シュテンメがフィデリオのロール・デビューを果たしたこと。全体を通して、何度もエルダーのほうに視線を向けていたのは緊張の現われなのかもしれません。歌手にとっても、突然の指揮者の交代は緊張を強いられることなのかもしれません。だからなのか、シュテンメが舞台に登場してしばらくはガツンとノック・アウトされるような印象をもてませんでした。
 しかしながら、第1幕のアリア、そして第2幕では実力全開の歌唱。2007年のカリタ・マッティラの印象がいまだに強く残っているのでそのときほどの感動にはいたりませんでしたが、舞台栄えしつつ、かつこの難しい役をきっちり歌える実力のある歌手であると感じました。
 主要歌手陣で唯一のがっかりは、2007年にフロレスタンを演じたエントリーク・ヴォットリッヒ。声質は好きな部類なのですが、高音域になると喉が詰まっているのではといぶかってしまうほど広がりがなくて、オペラ・ハウスの上まで聞こえたのかどうか。レオノーレとの重唱はよかったのですが、ソロの部分でかなり不満が残りました。ただ、シュテンメの声との相性はなかなかだったので、二人ともすでにレパートリィに入れている「ナクソス島のアリアドネ」で聞いてみたいものです。
 逆に期待していなかった驚きは、ロッコを演じたクルト・リドル。見た目が悪役そのものなので、オペラ・ファンの間ではあまり人気は高くないかもしれません。でも、今回自分の信念を通すか曲げるかに苦悩するロッコを滋味豊かに表現していました。
 もう一人、ドン・ピサーロのジョン・ヴェークナァ。まだ世界にはこれほど達者な歌手が沢山いることを思い知りました。敵役とはこうあるべきと納得できるふてぶてしさ。ヴェーくなぁを含めて前回と違い、男性主要歌手がすべてドイツ語圏出身でそれぞれのドイツ語の響きが微妙に違って、聞いていて楽しめました。
 マルツェリーナを歌ったエリザベス・ワッツも好演。さらに、最後の最後で舞台を引き締めたのが、第2幕の最後にしか登場しないドン・フェルナンド役のウィリアム・ウィラード。たった十数分の役回りにもかかわらず、彼が歌いだすとエンディングに向けての高揚感が一気に凝縮される存在感を示していました。

 最初に書いたように、この「フィデリオ」はオペラ好きの間でもあまり評価・人気は高くないようです。僕は、このオペラの主題は、地震と津波、そして原発のトラブルで心も体も疲弊しきっている特に現在の日本に、そして日本人に生きていくうえで大切なことを暖かく語りかけるように思います。運命は過酷かもしれない。でも信念をあきらめなければ、いつか必ず、一度は失ってしまった何かを再び心の中に取り戻せるかもしれない、と。

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