LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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ロイヤル・バレエ:トリプル・ビル

2011.05.15
ballo-della-regina.jpg
(ロイヤル・バレエのサイトから拝借)

見たいダンサーがいなくなるとここまで遠ざかってしまうのか、というくらい今年はロイヤル・バレエから遠ざかっています。が、その見たいダンサーと見たい演目が重なったので、5月13日に初日を迎えたトリプル・ビを観てきました。演目の上演順に、

Ballo della regina / Live Fire Exercise / Danse à Grande Vitesse
です。

 ジョージ・バランシーンが1978年に発表したBallo della geginaは今回がロイヤル・バレエでの初演です。僕も初めて観る演目でした。音楽は、ヴェルディの「ドン・カルロ」が使われていますが、このオペラは未見なのでどの部分から使われたのかはわかりません。
 この演目を一言で済ませてしまうと、主要ダンサー二人の技量をこれでもかと見せ付けるもの。といってもそこはバランシーン、コールドのアンサンブルも良くまとめられていてたった19分の小品にもかかわらず思いのほか楽しめました。まったく雰囲気は違いますが、作品が振付けられた目的は、アシュトンの「ラプソディ」に通じるものがあるように感じました。
 楽しめた大きな理由は、メインを踊った二人のプリンシパル、Marianela NuñezSergei Poluninによります。ポルーニンは、飛ぶ鳥を落とす勢いという常套句は今や彼のためにあるといっても言いすぎでないほどの存在感。確かまだ20代前半のはずですが、古典バレエの優美さと高度な技術をあたかも息をするのと同じくらい普通に見せてしまうダンサーとしては、彼はロイヤル・バレエの男性ダンサーの中で頂点に達しているように思いました。
 久しぶりに見るヌニェスは、僕の記憶に残っている彼女の姿からするととてもやせてしまったように見えました。特に両肩のラインが筋肉と骨だけのようでそこだけ見ているとちょっと心配になるくらい。逆に、技術はますます磨きがかかっているようで、ポワントのまま小さく跳躍しつつ高速で回転するという、まるでダンサーの足首を痛めるのが目的なのではと思ったほどのヴァリエイションもまったく揺るがなかったです。
 メインの二人を盛りたてる女性ダンサーは4人。初日は、日本出身の崔由姫さんと高田茜さんがはつらつと。崔さんは、どうしてだかわかりませんが、年末の「くるみ割り」まで大きな役にはまったくキャスティングされていません。逆に高田さんは、現段階ではファースト・アーティストという下から2番目のランクにもかかわらず、9月から始まる来シーズンは「眠り」のオーロラ姫に抜擢されています。おそらく、新しいシーズンの開幕に合わせて昇進することが決まっているのではないかと推察します。二人とも素晴らしい技術と演技力を持ったダンサーであることに疑問の余地はないですが、崔さんが脇に置かれている印象をどうしても拭うことができなかったので、この夜は高田さんにはちょっと厳しい評価をしたかもしれません。そんな邪推を差し引いても、崔さんの音楽性は素晴らしかったです。

 2番目の演目は、ロイヤル・バレエの常任振付家、ウェイン・マックグレガーhttp://www.roh.org.uk/discover/thepeople/theroyalballet/waynemcgregor.aspx)による新作の「Fire live exercise」。どうやら元は軍事用語から来ているこのタイトル。バレエ作品としては、僕にとってはこの夜一番のヒットでしたが、タイトルだけは観る人に誤解を与えかねないという意味で再考すべきではなかったかと思います。

Music:Michael Tippett
Choreography:Wayne McGregor
Set designs:John Gerrard
Costume designs:Moritz Junge
Lighting design:Lucy Carter

Lauren Cuthbertson
Sar ah Lamb
Akane Takada
Federico Bonelli
Ricardo Cervera
Eric Underwood


 2006年の「クローマ」以降、2007年にたった一回だけしか上演されなかった「ニンバスhttp://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-592.html)」以外は、ダンサー、振り付け、音楽、舞台効果そしてコスチュームが融合しないままで終わってしまった印象が強く、舞台を「全体」として受け入れることができませんでした。
 今回、まず特筆すべきは、イギリス人作曲家、マイケル・ティペットの音楽。舞台後方のスクリーンに映し出された、CGによる大きな炎が醸し出す「暴力性」と、ダンサーの身体能力の限界を超えてまで使いきろうとする振り付けから感じる「非現実」感を優しく抱きかかえるような抱擁されるような旋律が鮮烈な印象でした。振り付けにあっているかどうかは意見が分かれるであろうと思いますが、音楽の選択は僕には最良のものでした。

http://www.ballet.co.uk/gallery/dm_royal_ballet_live_fire_3bill_roh_0511
(バレエの舞台とは思えない写真が沢山あります)

 ウェブ上のバレエ・サイトではすでに評価、というか酷評が山のように出ています。が、見る前から評価なんてするものかというネガティヴな見方が多いように感じます。マックグレガーの創作ポイントがどこにあるのかはぼくにはわかりません。でも、滝のような汗を流しながら走り、支えあい、反発し、そして力尽き果てて力なく寄り添いあうダンサーたちを見ていたら、観る人によって細部は違えども、明確な物語が自然と浮かび上がってくるようでした。体を動かすことは、身体的なことだけではないです。そこに感情、そして精神が必ずともなってきます。はっきり言って、3月に上演されたウィールドンの「アリス」が冗長に物語をなぞっただけで何一つ創造、そして想像を舞台に生み出してなかったことと比較すると、僕の中の何かを創造したいという欲求が激しく刺激されました。
 おそらく踊るはずであったであろうエドワード・ワトソンが怪我のために舞台にいなかったのは残念ですが、6人とも素晴らしい「バレエ」を見せてくれました。高田さん、よく踊っていましたが、ほかの5人といるとどうしてもまだ経験が少ないという点を感じました。彼女はこれからもっと伸びるでしょう。

wayne_1897678b.jpg
(from the Telegraph. Lamb and Underwood)

 特筆すべきは、ラムアンダーウッド。多分、この二人はこの演目のメインではないのかもしれません。でも、僕にとってはこの二人が舞台に再現して見せた踊りがあってこそ、抽象に過ぎないマックグレガーの振り付けが、とても雄弁な具象に変貌する過程に遭遇するような高揚感を感じます。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1114.html

 プログラムの最後、「DGV」はウィールドンの作品の中ではかなり好きなものです。2006年の初演の感想はこちらを。ひさしぶりに読みましたが、青い。

http://www.chacott-jp.com/magazine/world-report/from-london/london0612b.html

 振り付け自体、おそらく技術的にはさほど難易度の高いものではないと思います。強いて言えば、いくつかのリフトが難しい程度かなと。でも、これも「総合芸術」としてはその総合度がとても高いもの。でも、今回2度目となる再演の初日は、一人のダンサーに目が釘付けになったまま。
 そのダンサーは、セナイダ・ヤナウスキィ。第1ムーヴメントで舞台に出てきただけで、舞台での存在が一人だけ別の次元のよう。彼女のパートナーを踊ったコールドの中では評価しているアンダーウッドですら視界から消滅してしまうほど。彼女の視線はしがないロンドンの片隅に向けられていたのではなく、まだ誰ひとりとして見たことのない空に向けられているようでした。
 来シーズン、ロイヤル・バレエのプログラムはオペラに比べるととても魅力的ですが、ヤナウスキィが出る演目だけに絞ろうと固く誓った舞台でした。

 先にポストをアップされた方。

http://voyage2art.exblog.jp/12575437/

 カーテン・コールの写真とともに、大変思慮に満ちた感想を書かれています。

 余談。バランシーンが始まる前、僕の前の席に座っていた女性のところに、カンパニィのケヴィン・オヘア氏が来てなにやら楽しげに話していました。誰だろと思ったら、2年ほど前にカンパニィを退団したイザベル・マックミーカンさん(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-914.html)でした。
 すでにロイヤル・バレエのダンサーではないのですから話しかけるのはどうかとは思ったのですが、今、どの分野で活躍されているのかを知りたくて話しかけてみました。現在は、バレエを教える側にいて、とても楽しんでいるとのことでした。
 でもやっぱり一言伝えたかったので、「I wish I could see you dancing on the stage tonight」。にっこり微笑んで、握手を求められました。

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