LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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イングリッシュ・ナショナル・オペラ:真夏の夜の夢

2011.06.14
雷雨や、豪雨、肌寒い朝とロンドンの天気はいつもの様に「程よさ」からは遠くかけ離れた状況ですが、日照時間が長いのは本当に嬉しいです。

 本題のベンジャミン・ブリテンの「Midsummer night’s dream」の前に。6月7日に、ウィグモア・ホールでドイツ人カウンター・テノールのアンドレアス・ショルのリサイタルを見てきました。実はこれ、先行予約では購入できなくてあきらめていたのですが、ロンドンのブログ仲間の一人(http://ameblo.jp/peraperaopera/)から融通してもらってみることができました。
 椿姫さんによると、2010年12月にバービカンであったコンサートでは風邪で絶不調だったらしいショルですが、このリサイタルでは一度咳き込んだほかは全く問題なく、気分が穏やかになる素晴らしい歌唱でした。
 僕は、個人的にはカウンター・テノールをおっているわけではありません。が、ショルの堂々とした歌を聴いていると、ふた昔くらい前までは色物として見られることが多かったであろうカウンター・テノールの幅が広がったなと感じました。もう一つ思ったのは、カウンター・テノールといってもその声域は女声のコントラルト、メゾの声域までは行かないんだなと。
で、思い出したのがロイヤル・オペラが数年前に上演した「オルランドhttp://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-225.html)」。このプロダクションの初演時のタイトル・ロールはイギリス人メゾ・ソプラノの方。もともとカストラートに作曲されたらしい旋律は彼女には低く、再演時に別のカウンター・テノール(ズービン・メータの甥っ子)が歌ったときは全く違和感がありませんでした。

 そんなことが頭の片隅に残ったまま、6月11日にイングリッシュ・ナショナル・オペラによる、ベンジャミン・ブリテン作曲の「真夏の夜の夢」を観てきました。先日の「ファウストの劫罰http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1388.html)」に続く大当たりの舞台でした。同じ日にご覧になられた方のレポです。キャスト情報は、こちらから拝借しました。

http://blog.goo.ne.jp/bigupset39/e/c82a6c75f7382367bef89994ce3ee17d

Conductor Leo Hussain
Director Christopher Alden
Set Designer Charles Edwards
Costume Designer Sue Willmington
Lighting Designer Adam Silverman

Cast includes:
Oberon Iestyn Davies
Bottom Willard White
Tytania Anna Christy


 舞台は、翌日に結婚式を控えた男性が、彼が通った男子校を訪れるところから始まります。そこから彼の夢が始まるわけですが、舞台はその「男子校」。この設定が、秀逸としか言いようがないほどのはまりぶり。
 シェイクスピアの原作は読んでおらず、僕にとって「真夏の夜の夢」への印象は常にフレデリック・アシュトンによるバレエ作品が醸し出す牧歌的な雰囲気に満ちたもの。なので、学校の裏庭で繰り広げられる隠微さを醸し出す身振り、冷たくてねちっこい視線、ヴェイルの後ろにひっそりと隠された暴力的な性衝動からは、これぞ「エキセントリック・ブリテン(国のほうです)」。
 いくつかのブログを読んで考えるに、「真夏の夜の夢」はさまざまな設定に変換されているようですが、まさかオベロンとタイタニアが学校の先生という設定は全く想像していませんでした。タイタニアは、髪をひっつめのおかっぱ風にまとめ、能面のような全く感情が読めない表情。が、ボトムに一目ぼれして彼への情欲をSM風に表現する場面では、上半身はブラジャー姿になるのですが、そのコントラストに一昔前の日本でのCMコピィ、「私、脱いだら凄いんです」が浮かんできました。ボトム役を演じたウィラード・ホワイトが60歳を過ぎているとは思えない筋骨隆々で、上半身裸になった彼をベルトで嬲る(まね)タイタニアとの絡みがいやらしくないんだけど妙にねっとりしていて、箍が外れたイギリス人の性衝動ってこんなのかもしれないな、と。

midsummer-nights-dream-eno.jpg

 今では禁止されている、ケインによる体罰(CP、コマーシャル・ペイパーではありません)の場面が出てきたり、第2幕の最後で校舎の内部で火が燃え盛るなど、シンプルな舞台セットながら、とても説得力のある演出でした。演出で印象に残った別の二つの点。アシュトンのバレエでは出てこないので原作には出てくることすら知らなかったテーセウス。彼の出現の仕方には意表を突かれたの一言。もうひとつは、小道具、だけどとても重要な要素であるタバコ。僕の貧しい知識の中でも、ヒッチコックの「裏窓」でのタバコの使い方に匹敵するものでした。
 ブリテンによる音楽は、リンクさせていただいた方が書いておられるように、「オペラ」という印象は強くないです。オペラの核となるようなアリアがあったようななかったような、そんな印象です。が、音楽がつまらなかったということではありません舞台セットから受けた印象のように、気づかないうちに水がひたひたと足元に流れ込んでくる。そして気づいたらいつの間にか胸元まで水が迫ってきて、音楽に身体の自由が奪われていく、そんな感じです。ある意味、これほどの「総合芸術」の舞台はないのではないか、つまり何か一つが突出しているわけではないのだけど、どれか一つでも欠けたらこの夢は成り立たない、そんな印象が観て数日が経過したにもかかわらず強くなってきています。
 今回の舞台で、絶対に欠けてはならない存在だったのが、オベロンを演じたイギリス人カウンター・テノールのイェスティン・デイヴィス。まさしくカルキュレイティングという形容詞しか思いつかないほど(ガーディアンではcreepyと評されていました)、オベロンとしての完璧な存在感。暴力的では決してない、でも背筋にびっちりと冷や汗をかいてしまうようなじわじわと強まる息苦しさ。レヴューによると、初日は体調が優れず、デイヴィスは舞台で演技だけして舞台袖から別のカウンター・テノールが歌ったそうです。レヴューを読んだのは舞台を観てからだったのですが、確かに第一幕では声に弾力が欠けていたような印象を持ちました。が、幕が進むうちに彼の声そのものが物語になったようで舞台の深みがいっそう増したようでした。技術的には難しくないオペラなのかもしれないですが、要求される表現力の難度は高いと感じました。
 公演前に掲載されたガーディアンのインタヴューでは、オペラだけをやっていくつもりはないと宣言していましたが、メトやシカゴでのデビュウが決まっているそうです。また、記憶違いでなければ、2012/13にはウィグモア・ホールのレジデンス・アーティストになる予定だったような。
 21日からは、ロイヤル・オペラがブリテンの「ピーター・グライムズ」を上演します。作品も演出もすきなのですが、一つ問題が。タイトル・ロールを歌うのはカナダ人テノールのベン・ヘップナァ

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-983.html

 ロイヤル・オペラの「トリスタンとイゾルデ」に出演したとき、後半の舞台では声が出なくなり演技だけになってしまったそうです。彼の声が好きなので、音をはずしてもそれは許せるのですが、歌えなくなってしまっては困ります。勝手な推測ですが、おそらくこれがヘップナァがロイヤル・オペラで歌う最後かなという気がするのですが行くかどうか、いまだ逡巡中。

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