LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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「象は忘れない」からの連想

2011.09.04
この世界にアガサ・クリスティのファンは星の数ほどいるだろうし、僕はその中の一ファンに過ぎないのでクリスティ論をぶち上げるつもりなど全くない。ただ、つい最近、家族が送ってくれた雑誌を読んでいて、クリスティの小説のタイトルの日本語訳で面白いなと思っていたことを思い出すことがあった。

 キャリアの後半、クリスティの作品のいくつかは現在進行形の犯罪ではなく、過去に起きた悲劇の真相を解き明かすことに焦点が置かれている。クリスティの生前、エルキュール・ポワロが登場する最後の作品(らしい)となった「象は忘れない」はその一つ。

Elephants can remember

 あらすじをネットでざっと読んでも、実際に読んだのは中学生の頃なので全く思い出せない。でも、この作品はそのタイトルを忘れたことはない。画像の右上部に英語のタイトルは表記されているのだけど、これに気づいたのはロンドンに来てからだと思う。
 オリジナル・タイトルは「Elephants can remember」。日本語タイトル、「象は忘れない」を英語にすると、「Elephants never forget」。ネイティヴの友人に尋ねてみたところ、意図するところはわかるけど、意味合いは変わってくるとのこと。

 英語で書かれた本のタイトルを日本語に訳すとき、ある程度の意訳は仕方ないだろう。それに、この「象は忘れない」を非難する気など全くない。非難するどころか、これほど的確なタイトルはないとすら思う。一つ問題になる点は、日本語タイトルを英訳したときにイギリス人のクリスティ・ファンがすぐに理解できるかどうかだろう。

 そんな、日本語を英語のニュアンスの違いを超えて、思わずひざを打ったのがミランダ・ジュライの「いちばんここに似合う人(新潮社)」。

No one belongs

 新潮社のPR雑誌、「波」の9月号でクレスト・ブックスが大きく宣伝されている。その中に、オリジナル・タイトルの前に目に入ったのが、「いちばんここに似合う人」だった。

 ペイジをめくっていて鮮やかな黄色の表紙に「No one belongs here more than you」と印字されているのを見て2秒ほど。なんて的を得た訳だと思った。
 「象は忘れない」とは逆で、オリジナルに入っている否定を、それが本来意図した肯定の意味を成す日本語に変換している。若干ニュアンスの違いは生じるだろうけど、プロの仕事だと感心した。

 このような「否定」を「肯定」に、その逆の変換を日常会話などで成立させるのは難しいだろう。でも、オリジナルの意味を損なわずに、さらに想像力をかきたてる日本語タイトルは、ある種の芸術だと感じる。

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Comment

- かんとく

守屋さん、こんにちは。
映画のタイトルの訳もいろいろありますよね。
好きなのは、「明日に向かって撃て」 (Butch Cassidy and the Sundance Kid)、嫌いなのは「愛と青春の旅立ち」(An Officer and a Gentleman)、かな。
2011.09.05 Mon 18:49 URL [ Edit ]

- 守屋

かんとく さん

 こんばんわ。

 「愛の青春の旅立ち」の原題を初めて知りました。ありがとうございます。この映画は、邦題を耳にした時点で観る気をさっぱりなくしました。外国語の映画や本のタイトルを日本語に翻訳するのは、一種の賭けでもあるかもしれないですね。

 僕が一番大好きな日本語訳のタイトルは、これまで何度も何度も書いてきましたが、「ガープの世界(The world according to Garp)」です。これには強い思い入れがあるので仕方ないですが。
2011.09.05 Mon 20:42 URL [ Edit ]

タイトル - レイネ

タイトルや見出しは、原題の意図を汲み取ってしかもキャッチーなのを付けないといけないし、もちろん内容と乖離してもいけないので奥深く難しいものです。要は語学・文学的素養とセンスをいかに発揮するかですね。
ブログで映画の記事を書く時、邦題を知ってびっくりすることがあります。でも大概は日本未公開作品なので、これは邦題付けるのが難しいだろうなあ、と思うことが多いですが。80年代は『愛とナントカの』という枕詞の邦題がやたらと流行りましたね。『愛と哀しみのボレロ』(Les Uns et les Autres)とか『愛と哀しみの果て』(Out of Africa)とか。

ミランダ・ジュライが監督・主演の映画The Futureが公開中です。美貌と才能に恵まれた人ですね。
2011.09.06 Tue 06:29 URL [ Edit ]

- 守屋

レイネ さん

 友人の一人が、プロの映像翻訳をしています。友人によると、レイネさんが仰るように、日本語に訳しようがないと思える表現にかなりの頻度で遭遇するそうです。

 ミランダ・ジュライの写真、検索してみます。
2011.09.08 Thu 05:56 URL [ Edit ]

翻訳を放棄したタイトル - Yoshi

タイトルの翻訳ほど難しいものはないでしょう。的確な訳語を選ぶだけでなく、商業的な成功も大事ですから、出版社/配給会社の意向もあるでしょうし。

私が一番残念に思うのは、特に映画に多いようですが、翻訳を放棄し、カタカナだけにしてしまうタイトルです。例えば、「エクゼクティブ・ディシジョン」とか「クルーエル・インテンションズ」なんて邦題があるようですが、中途半端に英語の出来る人には響きが良いと感じられるのかも知れませんが・・・、わけ分かりませんね。まあ、結局タイトルなんかどうでもいいという程度の内容しかない映画と言うことでしょう。Yoshi
2011.09.11 Sun 03:06 URL [ Edit ]

- ハマちゃん

ちょっと横になってしまってすみません、
Yoshiさんが書かれてること、
私もずっと以前からそう思ってました。

特に昔は007シリーズなんか、なかなか気の利いた邦題が付いていたのに、最近はそのまんまで、つまらない。
クォンタム・オブ・ソラスなんて、怒りすら覚えました。(笑)

守屋さんが書かれている、
否定を肯定に(あるいは肯定を否定に)、で、
自然でスッキリ頭に入ってくるタイトルが付けられるというのは、本当にセンスが要求されることですね。
2011.09.11 Sun 19:45 URL [ Edit ]

- 守屋

Yoshi さん

 挙げてくださった二つの例は、英語を母国語とする人には興味を惹かれるタイトルになるんでしょうか?話題になった「ブラック・スワン」もナタリィ・ポートマンのイメイジなしでは、バレエを題材にしたものと思わない人がいるかもしれないし。タイトルって、大切なんですね。
2011.09.12 Mon 05:24 URL [ Edit ]

- 守屋

ハマちゃん さん

 「クォンタム・オブ・ソラス」ってそのままだったんですか。僕にとってはクォンタムだけが引っかかり、「とうとう007も金融にまつわるスパイものになっのか」と思いました。クォンタムというと、ジョージ・ソロスのクォンタム・ファンドがまず思い浮かぶので。でも、日本語の直訳、「慰めの報酬」だと昔の東映のやくざ映画みたいだし。

 昨日の新聞で、村上春樹の「1Q84」が、来月英米で発売されるという記事を読みました。タイトルの翻訳という点から考えると、村上さん自身、タイトルの翻訳から生じるかもしれない混乱を避けたかった、というのは深読みのしすぎでしょうね。
2011.09.12 Mon 05:34 URL [ Edit ]

- Yoshi

上で挙げた2つの例は、近年に公開された映画のリストから適当に選んだもので、私は見たこともなく、内容も知りません。英語としては良いタイトルか否かではなく、日本語にすることを全く止めてしまっていることが問題と思います。

他国の映画や小説の場合、やや説明的なタイトルになったり、場合によっては完全に異なったタイトルになるのはやむを得ない場合も多いと思います。『明日に向かって撃て』は成功している例と思います。外国語の出来る人は、オリジナルと違ったタイトルだと細々とクレームをつけがちですが、原作を知らない人の心にすっと入っていけるタイトルをつけて欲しいですね。Yoshi
2011.09.12 Mon 05:53 URL [ Edit ]

- ハマちゃん

「クォンタム・オブ・ソラス」は公開前に、邦題を「一般募集」してて、
なんかそのまま決まらずに?ネット上での映画の宣伝では
「クォンタム・オブ・ソラス」になってましたが

今あらためて検索してみたら
守屋さんがヤクザ映画みたいと仰った
「慰めの報酬」になってるみたいです。う~ん…

007の邦題で上手いなーと思ったのは、
やはり守屋さんが書いてるような「否定→肯定(あるいはその逆)」パターンと似た感じの
「007は二度死ぬ」(You Only Live Twice)ですね。

Yoshiさんが書かれてる「日本語にすることを全く止めてしまっている」ことに私も危機感を感じますが
一方、外国人と映画の話をするときに、「原題なんだっけ」と考えずに済むのはラクだと思う時もあります…

が、やっぱり邦題を工夫して付けようとしないのは、味気ない。
2011.09.12 Mon 08:46 URL [ Edit ]

- 守屋

Yoshi さん

 言葉が足りなかったかもしれません。僕は、これらのタイトルでは、イングリッシュ・スピーカーにもアピールしないような印象を持ちました。

>原作を知らない人の心にすっと入っていけるタイトル
 これは大事な点だと僕も思います。古典ですけど、「赤毛のアン」をオリジナルのタイトルをそのまま直訳したらかなり味気ないでしょう。
2011.09.12 Mon 20:22 URL [ Edit ]

- 守屋

ハマちゃん さん

 ショーン・コネリィ主演の映画で、「氷壁の女(だったはず)」という映画をはるか昔に観ました。オリジナル・タイトルは全く思い出せません。この邦題は、内容を知らない観客の興味を惹くと同時に、原題を知らないと外国人と話すのが難しい好例でしょうね。

 このポストにこんなにコメントをいただけるとは思っていませんでした。でも、返事を考えている過程で、「良い邦題がけっこうあったよな」、と。ウディ・アレンの「カイロの紫の薔薇」はそのままですけど日本語に変換されてとても異国情緒が深まったように感じます。マニアックなところだと、アントニア・フレイザー(故ハロルド・ピンターの奥さん)の初めての推理小説の邦題は、「尼僧のようにひそやかに(Quiet as a nun)」。これも、日本語のタイトルに惹かれて、「どんな殺人事件なんだろう?」と手に取ったらとても面白かったです。
2011.09.12 Mon 20:40 URL [ Edit ]

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