LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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DESH(Homeland):アクラム・カーンの新作

2011.10.08
世界初演は9月、レスターの劇場でだったアクラム・カーンの新作「DESH」のロンドン公演が、4日から8日までサドラーズ・ウェルズ劇場でありました。サドラーズのウェブにあった紹介文です。

DESH (homeland) is a new full length solo from celebrated choreographer and performer, Akram Khan, inspired by his homeland of Bangladesh. After critically acclaimed collaborations with artists including Sylvie Guillem, Anish Kapoor and Antony Gormley, DESH is set to be one of Khan’s most personal works, as he seeks to reconnect with his cultural roots.

Reflecting on life in Bangladesh, Khan will portray several characters familiar in daily Bangladeshi culture through his own body and voice. For this solo performance, he has teamed up with Oscar-winning Chinese visual artist Tim Yip (production designer for Crouching Tiger, Hidden Dragon), fellow Sadler’s Wells Associate Artist and lighting designer Michael Hulls, Indian writer and poet Karthika Nair, Olivier Award-winning composer Jocelyn Pook and British slam poet Polar Bear.
DESH will explore the idea of transformation - of body, land, identity and memory, while examining the contradictions of Khan’s own British-Asian identity. In Khan’s own words: “I am searching for a story that addresses both the tragedy and comedy of life in Bangladesh.”

Akram Khan: Choreographer, Performer
Tim Yip: Visual Designer
Jocelyn Pook: Composer
Michael Hulls: Lighting Designer
Yeast Culture: Visual Animation


 カーン自身のソロ作品はかなり久しぶりだったようで、各メディアのレヴュウもほとんどが4星以上(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1463.html)。9月のレスター公演でレヴュウをかいたガーディアンとオブザーヴァはともに「マスターピース」との評価。
 僕は初日と最終日を観ました。僕にとっては「傑作」ではありませんでしたが、舞台芸術としては素晴らしいものでした。照明、音楽、セットの完成度の高さは、たった一人のダンサーのソロ作品にここまで資金をつぎ込んだのか、でも資金が全く無駄にはならなかったことに疑いの余地はない、それほどすべての要素がほぼ完璧に融合した舞台でした。特に、モンスーンが吹き荒れるバングラデシュの森をカーンが彷徨うシーンでのアニメイションは特筆もの。ここ数年、映像が使われるバレエ・ダンス公演が増えていますし、実際に何度も経験してきました。映像が使われない舞台を観たい気持ちのほうがまだ大きいですが、最近は映像によって舞台が台無し、という経験は少なくなってきているように思います。9月、「TeZukA」の舞台で接した上田大樹さんの素晴らしい映像(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1446.html)は今でも鮮明に記憶に残っています。

 舞台の構成には、詩人と脚本家が携わっています。大筋は、バングラデシュからイギリスに移民した両親の元、イギリスで生まれ育ったアクラム・カーンの「サイコロジカル・ジャーニィ」。一歩間違えれば、自己満足の世界に陥る危険性の大きい主題。
 そのような主題を、舞台芸術として完全に昇華させることができたのは、アクラム・カーン自身が発する舞台上でのカリスマ。ところどころ休みが入るものの、80分もの間舞台にいるのはカーンだけ。舞台の中央で静かにたたずんでいても、カタク(インド古典舞踊の一つ)の超人的な速さの回転で舞台奥に移動しても、舞台から発せられる観る側にひと時も瞬きさせないような波動が途切れることは全くありませんでした。
 初日、事前情報もなく観ました。最後、カーンの信じられないほど静かな、それでいて完璧にコントロールされた踊りからあふれ出る悲しみに包まれてじんわりと涙が出てしまったほど。「自分探し」は言葉で言うほど易しいものではない。異文化、異民族の狭間で揺れ動く自分のアイデンティティはどこのあるのか、その終わりのない問いかけこそ生きていくことに他ならない。そんな印象を持ちました。
 カーンの踊りを期待していくとかなり肩透かしと感じるかもしれません。80分の舞台を一人で踊りきるのは、いくらカーンでも無理でしょう。しかしながら、総合芸術として、一つの到達点を示したダンス・パフォーマンスと考えます。

 その高みに到達した舞台を作り上げるには巨額な資金が必要。今回の舞台は、コンテンポラリィ・ダンスを作り上げる環境が変化していることも示しました。
 もともと、アクラム・カーンはサドラーズのアソシエイト・アーティスト。そこに、フランスのグルノーブルに本拠がある「MC2:」という劇場(なのかな?)と国際的な連携(資金確保や運営の援助など)を持つことで、今年から2013年まで年1作、アクラム・カーンの創作を支援するというもの。オペラやバレエでは世界各地のオペラ・ハウスやバレエ・カンパニィとの共同制作というのはもはや珍しくないです。モダンやコンテンポラリィの世界でも、一つのカンパニィや劇場だけでは新しいものを創り出す予算をまかなえなくなってきているように思います。
 7月にあったシルヴィ・ギエムの「6000 miles awayhttp://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1414.html)」、「TeZukA」そしてこの「DESH」。いずれもロンドン公演のあとはまず欧州を回る予定になっています。特にイギリスよりも公演数が多いのではと感じるのが、フランス。ギエムはフランス出身、アクラム・カーンはフランスのカンパニィと連携しているから自然な成り行きなのかもしれないですが、コンテンポラリィの人気はフランスのほうが高いのかなと思ったりもします。

 付属情報。初日は、今回の舞台は細部をじっくり観たかったので、1階席最前列中央。そしたら右となりは偶然にも、サドラーズ芸術監督のスポルディングさん。さらに彼の隣がシェルカウイだったので、「TeZukA、絶対に東京でも成功しますよ」と。で、スポルディングさんに訊いたところ、DESHは日本に行く予定はまだ決まっていないけど、ぜひ、日本公演を実現させたいとのこと。僕もこの舞台が日本に行くとなれば日本のダンス・ファンにはとても面白い機会になると思います。反面、立ちふさがるのは言葉の壁。
 シルヴィ・ギエムのとのコラボレイション、「セイクレッド・モンスターズhttp://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-41.html)」同様、台詞がとても多い舞台です。映像だけでなく、字幕が入るダンス公演も増えてきているようですが、個人的には、字幕を見なければ理解できないダンス公演は、ダンスではないと思ってしまいます。かといって、ではアクラム・カーンの台詞を日本人の俳優が日本語で吹き込んだものをかぶせると言うのは興ざめだろうし。
 最終日には、ロンドン南西部在住の友達と。ロンドン南西部から、ロンドン東北部にあるサドラーズへの道のりは平坦なものではありません。今回友人は、オーヴァーグラウンドを使ってHighbury & Islingtonまで来て、そこから19番(ほかに4番、30番も可)のバスでサドラーズの正面へ。予想以上に快適、迅速だったとのこと。ロンドン南西部のダンス・ファンの皆さん、ぜひ、お試しを。

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