LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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ルシアン・フロイト@ナショナル・ポートレイト・ギャラリィ

2012.02.08
benefit.jpg


(この二つを選んだ理由は、下に)

トラファルガー広場にあるナショナル・ポートレイト・ギャラリィで、2011年7月に88歳でなくなったルシアン・フロイトの肖像画を中心にすえた展覧会が9日から始まります。初日を前に観る機会に参加できました。仕事を続けさせてもらうことに感謝しつつ、リサーチしてもフロイトが日本でどの程度知られているのかが良く判らないので、興味を持ってもらえるような情報と感想を織り交ぜて。

 まず、余談から。先週終わったナショナル・ギャラリィの「レオナルド展(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1514.html)」、ロイヤル・アカデミィで開催中の「ホックニィ展(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1546.html)、そしてこの「ルシアン・フロイト」の超人気展覧会のメディア・パートナーはThe Times。ルパート・マードックにこれ以上の金を払うものかという気持ちは変わらずですが、タイムズを定期購読するとアート関連のインセンティヴがほかの新聞よりずっとお得なんです。美術館の会員になるより、タイムズを定期購読したほうがいいのかもしれないと煩悶しています。

 タイムズを含むイギリス国内のメイジャーなメディアは数日前に内覧を済ませていて、今日はそのほかのメディア。でも、アート・クリティク以外の、例えばオペラやダンスの批評家が沢山来ていました。吃驚したのは、ヨーロッパ各国のテレビ局からの取材の多さ。数年前に、パリのポンピドー・センターで開かれたフロイト展が大成功を収めたのは知っていましたが、彼の人気がイギリス国外でこれほどとは知りませんでした。

http://www.npg.org.uk/freudsite/index.htm

 今回の展覧会は、フロイトが画家として活動を始めた1940年代から亡くなる2011年まで、70年にわたる彼の絵を時代ごとに展示することで、彼の画風の変化、それによる彼が描く対象が、人物の顔だけの肖像画から、体全体の肖像に映り、さらに変化を遂げてきた過程をとても判りやすく展示しています。130点もの絵は、観て回るとけっこう長い時間がかかりますが、もう少しあったほうがより深い理解を得られたのではないか、とも感じました。

 キュレイターの女性の話、および解説にも書かれていることですが、かなりの数の絵がプライヴェイト・コレクションからの貸し出しで、特に初期の絵の中に今回初めて一般に展示される絵が多いそうです。彼の初期の絵では、繊細な筆が使われたということで、後期の筆致との差から彼の画風、そしてモデルを観察する視点の変化などに注目すると面白いのではないか、と。画風の大きな転換点の一つは、座って描くことを止めて立って描くことにしたことが大きいそうですし、フロイト本人もそれを認めるような発言が簡易カタログに記載されています。

 僕自身、ルシアン・フロイトのことは、時折メディアで書かれる表層的なことしか知らなくて、彼の画家としてのポジションをよく理解していたとは言えません。ジークムント・フロイトの孫だからといって、肖像画の中に精神分析の解釈を散りばめているわけではなかろうに、そんな程度です。

 2時間みっちりと観て回りました。観終わったときは、疲労困憊。決して悪い意味ではありません。でも、キャンヴァスの下から発せられる、フロイトがモデルと対峙していたときの、モデル側の精神的葛藤の重さで息苦しいほどでした。

 この展覧会、ロンドンのあとに、アメリカのテキサスにあるthe Modern Art Museum in Fort Worthに巡回します。そこのチーフ・キュレイター、Michael Auping氏の発言がとても興味深いものでした。曰く、アメリカでルシアン・フロイトの人気が高いのは、彼が描く絵はアメリカの画家がなしえないものを持っているから。アメリカの絵画は、FlatnessDistancenessが多く、フロイトの肖像画が生み出すclosenessがほぼ存在しないからだ、と。

 この点がとても面白かったので、ほかの人の質問が終わって彼が一人のときに質問してみました。

「あなたが表現したアメリカ絵画の特徴、Flatness とDistanceness、とても興味深いです。I am not sure whether it is an appropriate comparison, but how about Andrew Wyeth?

No, even Wyeth shows distanceness. I guess you are thinking about Christina’s World?! Let’s think about it. あの絵では、ワイエスの視点はクリスティーナの背後にあり、さらにその先までを含めた世界であって、画家とモデルの間の距離は物理的にも心理的にもとても大きい。エドワード・ホッパーでさえ、フロイトが描く緊密さを描いたとはいえないと僕は思う(ここまで来ると僕の理解の範疇を超えています)」

By the way, although I find Freud’s nude portraits not erotic from the surface from the paintings, psychologically, it is powerfully erotic. You have said that this exhibition is going to Texas, do you think it will be controversial?

I know what you mean, and we have been discussing this point. I think we will have to put a message for parents in order to avoid complains

 アメリカとイギリスの社会の違いを絵画から理解するという点でも面白い機会になるかもしれないです。

 肖像画にもかかわらず、いや、もしかしたら肖像画だからこそ言葉で説明するのがとても難しい、でも大変に見応えのある展覧会だと思います。やるべきことを全て終えてギャラリィを出てから、ナショナル・ポートレイト・ギャラリィに勤めている友人に、いくつか手配してくれたことへの感謝を伝えたところ、こういわれました。「僕個人の意見だけど、このフロイトの展覧会は21世紀になってからNPGがなしえた最良の展覧会だと思っている」。

 多くの人にはルシアン・フロイトって誰?、かも知れないですがこれもまた多くの意味で、とてもイギリスらしい展覧会だと思います。

Lucian-Freud-at-National--007.jpg

http://www.guardian.co.uk/artanddesign/gallery/2012/feb/08/lucian-freud-national-portrait-gallery


[追記:2月11日]
 一般公開の前日、2月8日の夕方に、ダッチェス・オブ・ケンブリッジ(キャサリン妃)が一人で見学に訪れたそう。

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Comment

2点を選んだ訳 - レイネ

ルシアン・フロイトは、どうも日本人一般にはあまり受けがよくないようですが、フランシス・ベーコンと並ぶイギリス20世紀後半の重要な画家だし、どちらも個人的にかなり好きな部類に入ります。(ベーコンは10年前にデン・ハーグでかなり大きな展覧会があったので、このフロイト展もオランダに来ないかしら、と期待してるんですが。。。)
守屋さんが選んだ2点の絵は、偶然にも昨日のNRC紙に載ったもの。特に、スー・ティリーさんのが大きく見開きで。モデルのスーさんのパーソナリティというかインタビューが面白かったです。NRC紙に掲載の絵のは全部で3点で、もう一点は『リフレクション』という自画像でした。
ただ、守屋さんがなぜこの2点を130の中から選んだのかが、他の絵を観ていない者にはよくわかりません。心理学的にpowerfully eroticという観点でしょうか。

(ところで、オペラ『アナ・ニコル』がオランダで先週TV放映され、ニュースなどの関連動画に初日の観客インタビューがあり、Moriyaさんという人が映ってるのですが、もしかしてこちらの守屋さん?)
2012.02.09 Thu 09:03 URL [ Edit ]

- 守屋

レイネさん

 こんばんわ。初期の作品の中に、フランシス・ベイコンがちょっと扇情的なポーズをとっているエッチング(だったか素描だったか)がありました。ベイコン、フロイト、そしてホックニィを抜きにイギリス現代美術は語れないでしょうね。広報の方に尋ねましたが、アメリカの後の予定は聞いていないそうです。保険がかなり高額になったと言っていたので、スポンサーを集めなければでしょう。
 
 二つを選んだのは、絵のサイズが大きいので注目を集めるだろうということ。そしてエロティックという意味では、おとなしめなので選んでみました。人間の肌って、こんなに薄汚くて、生々しくて、それでいてエネルギィを発しているというようでした。
 展示の中には、ルシアンの母親の肖像画がいくつかあります。とても深い悲しみと静かさに満ちていて、心臓をわしづかみされました。

 「アナ・ニコル」、ちょうど、昨年の今頃でしたね。で、ご質問の件ですが、もしかしたら。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1333.html

 レイネさんにもコメントいただいたポストです。ワインとオペラのあとで高揚していたときにマイクを向けられたので、何を言ったのかは思い出せません。これ、イギリスでも観られるでしょうか?どのテレヴィ局かをご教示いただけると嬉しいです。

 美術展に戻ると。3月は、ロンドンではこのフロイト展、ホックニィ展、テイト・ブリテンのピカソ展、モダンでYayoi Kusama展、そしてV&Aでのセシル・ビートンと美術ファンにはたまらないでしょう。さらに、2月下旬で終わってしまいますが、サラ・コノリィも出演しているENOの「薔薇の騎士」へは最大級の賛辞が贈られています。ロンドンへ足を伸ばすのも楽しいかもしれないですよ。
2012.02.09 Thu 18:45 URL [ Edit ]

AP - レイネ

『アナ・ニコル』初日の動画(インタビュー)は、APがアップしてます。通信社のインタビューなのでBBCニュースでも流れた模様ですが、Koji Moriyaさんという名前をしっかり出しているのは下にリンクを張ったAPの動画です。
http://www.youtube.com/watch?v=vG0g1Jrl7Yo

守屋さんご本人ですよね?

サラ様のオクタヴィアン聴くのを兼ねて展覧会も観たいからロンドン遠征したいなあ、と思い始めてます。。。
2012.02.10 Fri 09:34 URL [ Edit ]

- 守屋

レイネ さん

 ハイ、本人です。もっと中身が濃そうなことも話したと思うんですが。インターネットって、凄いですね。教えてくださってありがとうございます。1年前とはいえ、家族に元気な姿を見せることができます。

 フロイト展は、ホックニィやレオナルドほど前売り券が売れているわけではないようですが、それでも初日を前にして2万枚近く売れていたようです。

 
2012.02.10 Fri 20:23 URL [ Edit ]

- かんとく

土曜日にENOへ行ったのですが、その前に見れるかなと軽い気持ちでNPGに行ったのですが、全く甘かったです。凄い人出で、あんなNPGは初めてです。前売りをきちんと買って行かないといけないようです。
フロイトは絵と名前が一致してなかったのですが、今回この個展のおかげで、一致しました。ご紹介ありがとうございます。
2012.02.12 Sun 18:54 URL [ Edit ]

- 守屋

かんとく さん

 こんばんわ。情報をありがとうございます。土曜日の(おそらく)午後ということもあると思うのですが、始まってすぐということもあったのかもしれないですね。メディアの取り上げ方も、ちょっと異様なくらいの熱気ですし。

 本文に書きましたが、僕もこの展覧会の前まではフロイトの影響力というものを見くびっていました。肖像画がほとんどですが、一枚、一枚じっくり観ているとあっという間に時間が過ぎてしまうと思います。
2012.02.12 Sun 21:25 URL [ Edit ]

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