LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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遠野まごころネット参加の記録

2012.05.07
2011年3月11日に起きた東日本大震災来、次に一時帰国するときは東北地方でのヴォランティア活動に参加したいと思っていました。可能であれば自分が携わっている「メンタル・ヘルス、 心理カウンセリング」の分野で参加したいといろいろと探しました。震災数ヶ月後以降でも日本で活動していた国際人道支援団体のいくつかにも連絡・問い合わせをしたのですが、東日本大震災後も次々に世界各地で起こる自然災害や民族間の紛争に焦点が移り、日本での継続的な支援活動は縮小するという返答が多かったです。また、メンタル・ヘルス・サポート分野は既に短期の支援から、中・長期への支援活動にシフトしています。短期の新参者が心理カウンセリングを提供するよりも、地域に根ざしたカウンセラーが定期的にするという計画に参加することは、今回の一時帰国では難しいことでした。
 自分がやれることは心理サポートだけではないだろうと切り替え、周りの友人たちに相談したところ岩手県の遠野を拠点に支援活動を続ける「遠野まごころネットhttp://tonomagokoro.net/)」が個人のヴォランティアを受け入れていることを知りました。短期間(2日間)のヴォランティア参加も受け入れるとの返事を受け取り、参加を決めました。

 装備をそろえるのは困難なことでありませんでした。遠野まごころネットが提供している各装備の情報をアマゾンで検索すると、選択肢がたくさん出てきます。クリックして実家に送っておくだけでした。一つ甘く見ていたのが、軍手。軍手を二枚重ねにしておけば平気だろうと予想していたのですが、実際に力仕事に参加して感じたのは厚手のゴムの手袋を軍手の上に重ねた方が不測のけがを最も防げるのではないかと感じました。僕はけがをした訳ではないですが、泥の中から出てくるガラス片や瓦の破片の中には、とても鋭いものがたくさんあったので、用心した方がいいと思います。
 さらに遠野に到着するまで見落としていたのは、長靴のソール。てっきり釘踏み抜き防止の鋼鉄ソールが入っていると思っていたら、まごころネットの事務所で会ったリピーターの方に念のため調べてもらったところ入っていないと。この踏み抜き防止ソールが無いと、力仕事参加は不可です。どうしようかと思ったのですが、幸運にも遠野市内にはいくつかこのような装備を扱う専門店があり、まごころネットの事務所のそばにもあるので明くる日の力仕事参加の前に購入することができました。ただ、やはりくる前に装備はしっかりそろえておいた方がいいと思います。

 個人的に最も難関だったのが、ヴォランティア保険の加入でした。インターネットで簡単に加入できると思っていたのですが、それは不可能。どこで入れるのかを検索し続けて判ったのは、原則、全国社会福祉協議会での扱いになるということ。実家のある地域の協議会に連絡して届いた返事は、その地域では福祉協議会の事務所ではなくて総合ヴォランティアセンターでの加入手続きになるとのこと。帰国便が早朝の到着だったのでその日のうちに加入できましたが、正直なところ焦りました。
 この保険が、純粋にヴォランティア活動のための保険であるからこのようなことになるとは理解できてはいましたが、本当に大変でした。また、まごころネットで知り合った長野県在住のオーストラリア人夫妻も、住んでいる千曲市の事務所では申込所が無くて別の役所からファクスで送ってもらったそうです。ヴォランティア保険の加入は必須なので、加入方法を全国で統一した方がいいのではと感じました。

 僕が参加したときには、まごころネットが事務所として利用していた遠野浄化センターの敷地内に建てられた事務所の大部屋では、寝袋利用で寝泊まりできるようになっていました。ヴォランティアとして参加している人たちとの交流を図りたい方には最適だと思うのですが、一時帰国して数日後では時差ぼけで眠れず周りにも迷惑になるかもしれないし、また僕自身の体力にも自信を持てなかったので(若くはないですから)遠野に住んでおられる方からいくつか宿泊施設を教えていただき、「民宿とおの」さんにお世話になりました。
 浄化センターにも徒歩10分ほどの場所にあり、とても便利でした。ヴォランティア活動や、復興活動に携わる人がよく宿泊するということで、朝食の開始時間も朝6時からとの配慮で、遠野まごころネットの活動にも支障無く参加できました。実際、毎朝午前3時くらいには目が覚めてしまったのでこの選択は正解でした。遠野にはいくつも民宿やホテルがありますが、復興に携わる人々が拠点にすることが多いらしく、予約は早めにしておいた方がいいでしょう。

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157629816714861/
(遠野、箱崎の写真)

 力仕事に参加した3月27日と28日の両日とも、釜石市の箱崎地区での小さながれき撤去活動に携わりました。何人かいた外国人ヴォランティア参加者への通訳も依頼されましたが、いったん活動が始まるとひとつひとつ通訳する必要も無く、各自が何をするべきかをしっかり理解していて、予想していなかった交流もでき、参加できて本当によかったです。
 活動の内容は、防波堤のすぐそばにあり、津波によって破壊された家々の未だ泥をかぶった土台を清掃すること。釜石班のリーダーの方(若林さん)によると、ヴォランティア が清掃するエリアはもしかすると今後、埋め立てられることもあり得るので無意味に思えるかもしれない。でも、家の持ち主の皆さんからすると、たとえ土台だ けでも、自分の家がどこにあったかが判ることで踏ん切りがつき、復興に向けて踏み出せるとのことでした。
 両日ともそれぞれ80人くらいのヴォランティアが箱崎地区に派遣されました。それだけの数のヴォランティアががれき除去作業を3時間続けても、2軒の土台がやっときれいになるかどうかといった具合です。

  箱崎は、まごころネットの支援が最も遅くに始まったところだそうです。理由は、震災後、箱崎地区に入ってきた最初の部外者が窃盗団で、地域の皆さんがヴォランティアでも部外者が来ることに強い警戒を抱いていたからだそうです。しかし、まごころネットが毎日派遣するヴォランティアたちが活動を続けるのをみて次第に理解が深まり、今では復興計画についてもともに話し合っているそうです。

 実際の現場で感心したのは、現場のリーダーの危機管理(ちょっと大げさな表現ですが)の仕方。いくつかの班に分けられた活動現場をまんべんなく回り、活動にのめり込むあまり(悪いことではありませんが)体力を超えたような働きをしているヴォランティアに向けて、「仕事じゃないんだから、ヴォランティア活動なんだから、ちょっと休んでいいんですよ」、と気楽に声をかける。試行錯誤があったと想像できますが、活動中には心配なことはありませんでした。

 外国人参加者よりも、ロンドンから参加した日本人というのがいい意味で目立ったようで、珍しく何人かの方から話しかけられました。いつもはガードが高いので話しかけられることは少ないのですが、今回はいつもとは違う状況ということでガードを下げました。一人で初めて参加されている方々も何かを声に出してみたいのだろうと思いましたし。

 岐阜から参加された男性は、勤続20年の連続休暇を利用して参加されたとのこと。お盆と正月以外でこのような連続休暇を取ったことが無いのでどうすごそうかといろいろと考えてヴォランティア活動への参加を決めたそうです。この方のすごいのは、車を一人で運転して岐阜から遠野までこられたとのこと。このかたも含めて、同世代とおぼしき会社勤務の男性の皆さんのほとんどがヴォランティア休暇を使っての参加ではないということ。
 現在の日本の経済状況を考えれば、ヴォランティア休暇を自力でもうけることができる会社は限られているでしょう。ならば、国が補助するとかの動きがでないものかと。埼玉から参加していた教師をしている男性たちは、遠野での活動終了後に花巻で一泊してから戻ると言っていました。というのも、花巻ではヴォランティア活動参加者にヴォランティア割引を提供する温泉宿があるからだそうです。
 二日目に、活動の合間に話したのは、最近、ゴアテックスの取締役(だろうと想像しています)を退職した梨本さんという方。退職して、今後どのようなことで社会とかかわっていくかを考える過程で今回のヴォランティア活動参加を決めたそうです。真似できないなと思ったのは、「ヴォランティア活動を一緒にしている人たちともっと交流するために」寝袋で寝泊まりしていたこと。

 ここまで読んでいただければ明らかですが、ヴォランティア活動に参加するのは無料ではありません。それなり、というかかなりの出費になります。そして、それだけの出費をしたからと言って、活動に参加できる保証はありません。天候が悪ければ、活動が中止になることもあります。
 イギリスでのヴォランティア活動を通して学んだことの一つは、自分が提供する活動が必ずしもいつも受け入れられるわけではない、または実現しないこともあることを受け入れる準備ができているかということ。
 天気が悪くて参加できなくなってしまったときに、「せっかく準備してきたのに。天気が悪いだけで活動できないなんて」、とつまらなく思うこともあるでしょう。でも、ヴォランティアが無理をして活動し、挙げ句怪我をしてしまっては、もしかしたらそれがヴォランティア活動全体の中止につながることだってあり得ます。支援を必要としている人たちにその支援が届かないことになってしまっては、本末転倒。
 僕個人としては、現在復興活動にシフトしている東北地方でのヴォランティア活動の中で、ヴォランティア参加者と支援を必要としている被災された人々の間にヒエラルキーがあってはよくないと思っています。しかしながら、一義的には、ヴォランティア活動はヴォランティアの支援を必要としている人々へその支援が届くか、ということ。個人の不満でその支援が滞るべきではありません。

 遠野まごころネットの活動に限りませんが、参加すれば活動に無条件に携われることではない、ということは覚えておいた方がいいと思います。また、ヴォランティア活動に参加してけがしてしまっては、とても悲しいこと。

 僕は今後どのようなかたちで貢献できるのか判りませんが、少なくとも自分が見聞したことをこのようなかたちで広めることはできるということで。遠野まごころネットの情報によると、最近、のべのヴォランティア参加者数が60000人を超えたそうです。
 今後、復興が進めばヴォランティア活動の内容も変わっていくでしょう。でも、それは復興支援がすぐさま終わるということではないです。まだまだ多くのヴォランティアが必要とされると考えます。
 震災後1年以上が経過し、支援活動に参加するヴォランティアの数が激減しているとのニュースを帰国前に読みました。実際に箱崎に行き、力仕事に参加して痛感したことは復興の道のりはまだまだ長く、被害が大きかった地区ではヴォランティアがこれからもずっと必要とされているということです。そのような状況で、ヴォランティア参加者への配慮を国が率先して中止しようとする態度は、現状を見ているのだろうかと。

 書いてきたように、ヴォランティアとして参加することは誰もがすぐにできることではありません。仕事、家庭、資金の都合を付けるなどたくさんの準備が必要です。ですから、強制されて参加するものではありません。復興活動を別のかたちで支援することもできるでしょう。大切なのは、この自然災害の被害を忘れてはならないということ。
 遠野まごころネットの運営に携わるすべての皆さんが参加したヴォランティアたちに何度も強調していたことは、体験したことを家族や友人たちに伝えて欲しい。なぜなら、今回の震災の記憶を風化させないために。その不安が現実にならないことを切望します。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1624.html
(英語で書いたもの)

これは47Newsの特集。無料で読めます。
http://www.47news.jp/47topics/e/tsukuru.html


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Comment

- かんとく

限られた日本滞在の予定の中で、こうやってボランティア活動に参加される当事者意識って素晴らしいですね。今の私にはできません。帰国したら何ができるか、考えたい思います。
2012.05.09 Wed 23:23 URL [ Edit ]

- 守屋

かんとく さん

 直情型ではないのですが、今回のヴォランティア参加は、自分のためとの想いもありました。参加できて本当によかったです。

 本文の最後に書いたことを繰り返しますが、人々が忘れてしまうことが最も怖いことだと思います。
2012.05.10 Thu 19:35 URL [ Edit ]

持続的援助の必要を痛感して - sony

投稿するのは初めてです。いつも拝見しているので何か初めてという感じがしないのです。
今回の記事は日本語と英文で読みました。さすが心理カウンセラーだけあって指摘が鋭いと思いました。厳しい状況の中でのヴォランティアは日本にいて多くの情報を読んだり、また、直接聞いたこともあります。私の関係しているところも国際ボランティア(自腹で来ている)の援助がありました。大変な経験はいろいろ聞いたり読んだりしていましたが、守屋さんがはるばるロンドンより飛んでいらっしゃたこと素晴らしいことです。しかも今の時期にです。今回は現地の人々の内面にまでは入り込めなかったようですが、現地のがれきの山を片づけること同時に心理的ケアも大切であろうと思います。
私の実家は茨城の北部ですが生まれ育ったところは全壊でした、東北ほどひどくはなかったのですが、長いこと心理的にダメージが多く何もやる気がおこりませんでした。地震と津波ですべてを失った人々の心理的なものは相当なものだろうと察することができます。
今回の守屋さんの素晴らしい経験を拝読し私も心打たれ、息の長い援助そして協力が必要なことを痛感しました。感動して。
2012.05.13 Sun 14:19 URL [ Edit ]

- 守屋

sony さん

 こんにちは。コメント、ありがとうございます。最近では茨城のことはニュースで読む機会が減っていますが、直接の被害は大きかったのですね。教えてくださって、ありがとうございます。
 帰国していたときに、茨城出身の親友とあって話を聞きました。友人の地元は地震の被害はひどくなかったそうですが、風評被害に悩まされているとのこと。茨城全体だと、特産のrose pork の販売が激減したままだそうですね。銀座を歩いているときに、偶然茨城の物産店を見つけて、ローズ・ポーク使用のレトルト・カレーを購入しました。美味しかったですよ。

 批判するという意志は全くないということを強調した上で、僕は、この大きな自然災害からの復興には、国外からの支援を継続することが必要と考えます。元に戻すことだけでなくその先のこと考えるとき、外からの刺激はいい変化をもたらすのではないかと思うからです。物理的な支援、そして心理面でのサポートも国内外のリソースが協力することがいいのではないかと考えます。
2012.05.13 Sun 17:18 URL [ Edit ]

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