LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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シリィ諸島の光と陰:離島の楽しみ、リスク

2012.07.02
Isles of Scilly Group

‘Small islands are microcosms for our world. We are all inhabitants of the global island, surrounded by the limitless ocean of space. If we can find solutions to the special vulnerabilities of islands, it will help us to address more global problems. If we fail to do so, the interlocking environmental crisis facing our planet today may well remain intractable. ‘Small islands, big issues’ was the slogan we used for the Barbados Conference in 1994. That sentiment remains just as true today.’

Kofi Annan, Secretary General of the United Nations



 シリィ諸島への16年ぶりの再訪は、僕自身にとって早めの休暇以外の何ものでもなかったので、宿泊の手配、面倒だった交通手段の手配が終わった段階では、訪問したそれぞれの島々の情報をブログにアップできればいいなという程度の想いでした。

 手配が終わって数日後のガーディアン紙に、シリィ諸島に関する記事が掲載されました。内容は、スコットランドの島々に比べて、シリィ諸島への交通手段の料金の高さを報告する物でした。

Isles of Scilly fear costly transport links will hurt economy and tourism
http://www.guardian.co.uk/uk/2012/jun/04/isles-scilly-costly-transport-links

Scilly councillors warn that without government intervention, islands could become 'a haven for the rich'

 記事に書かれているシリィ諸島への交通手段の高さは、僕も実際に痛感したこと。16年前は、今回も利用したホテルがオファーしたイギリス本土とシリィを結ぶ交通手段込みのパッケイジ(現在はなし)を利用したので気が回りませんでした。今回自分ですべてを手配しているときに知った事実が、「シリィ諸島への渡航費は高いし、高い金を払っても接続が不便」という物でした。これは島で話したリピーターの多くも同意していました。
 記事で渡航費の比較として言及されている、インナー・ヘブリディーズ諸島の一つのアイラ島にも18年前に行きました。偶然、僕自身が訪れた二つの島のこの差はなんだろう、と不思議に思いました。

 また、記事の内容と同じくらい深く興味を惹かれたのが、読者からのコメントでした。シリィ諸島が直面する難しさへの理解を示す読者が居る一方で、半数近いコメントは「高級リゾートが何を言っている」という感じのもの。
 このような反応があるのには、考えられる理由があります。それは、一番大きなSt Mary’s のごく一部の土地を除き、シリィ諸島のほぼ全土を所有する地主は、ダッチィ・オブ・コーンウォール、言い換えると、チャールズ皇太子です。これはかなり知られていることなので、読者が「高級」というコメントを残すのも少なからず理解できます。

 この記事を読んで、自分が訪れる島についてもっと知りたいという気分が高まり、駄目もとでシリィ諸島の地方行政部門に、何方かに会ってこの話をもっと聞くことはできるかどうかのメイルを送りました。いち観光客の疑問に、小さいとはいえ地方行政が連絡をくれるかどうかとの考えは有りました。
 返信が来ました。喜んで会いましょうと。送り主は、ガーディアンもインタヴューしているマリアン・ベネットさん。

Marian Bennett, the chairman of the council's policy and resources committee and a resident of the island of Bryher, says the islands desperately need an affordable, year-round ferry service. "Transport is the key to everything here, to the future of the islands. If prices aren't tackled, people won't be able to live and visitors will stop coming. The islands are a national treasure. We're not moaners, we're not whingers, but we do need some help."

 一つ問題だったのは、ベネットさんにとって彼女が暮らすブライアー島で会うのが好都合だということ。16年前の最初の訪問時、ブライアーへ行く機会が無かったので、僕にとっても素晴らしい機会になるとは思ったものの、僕が滞在したSt Martin’s からブライアーへ渡る船は週に一回、もしくは2回しか運航されないので前日になるまで行けるかどうか判りませんでした。幸運なことに、27日の夕刻、28日にブライアーへ行く船が運航されることがホテル内の掲示板に表示され(http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/7470727622/in/photostream)、ベネットさんと会うことができました。

スクリーンショット 2012-07-05 6.52.56

 島の船着き場で待っていてくれたベネットさんは、小柄ながらも颯爽とした姿。孫が二人も居るとはすぐには信じられませんでした。何処の馬の骨とも判らない日本人を、さらに本当にシリィ諸島のことをきちんと紹介することすらでまかせととられても仕方ない状況で、自宅に招いてくれたベネットさんの暖かさは嬉しかったです。ちなみに、彼女だけでなく、島であった住民の多くは本当に気さくで話し易かったです。

 居心地の良いダイニングテイブルで紅茶をいただき、ベネットさんが資料を開く前に、日本語とはいえ彼女の名前を出して良いのかを尋ねました。答えは、「It’s fine. I am happy to do it in order to invest the Scilly isles」、ととても明瞭でした。ベネットさんからもらった資料はこれです。


ISLES OF SCILLY TRANSPORT A Comparative Study of the Isles of Scilly and the Scottish Islands
(このタイトルをグーグルでコピペして、グーグルドキュメントであけると読めるはずです)

 この108ペイジにも及ぶドキュメントの最大の論点は、スコットランドのアイラ島へのフェリィ料金は政府の援助で割安に押さえられているのに対し、シリィ諸島へのフェリィ料金は割高のままでこのままでは島最大の産業である観光が追いやられてしまうというのものです。論点に進む前に、このドキュメントは心理学のリサーチと違って、真っ当な報告書なので、離島を多く持つ日本にも通じる物が有ると考えます。手数がかかっても、ぜひ、読んでみてください。冒頭にあげた、コフィ・アナン氏の言葉が引用されています。

 ベネットさんによると、25日にはロンドンに自腹で出向いて、上院でこの件を陳情してきたそうです。そのニュースを見つけました。

Lords told: islanders paying tourist price for ferry travel
http://www.thisiscornwall.co.uk/Lords-told-islanders-paying-tourist-price-ferry/story-16463486-detail/story.html

Bryher councillor Marian Bennett, who, with economic development officer Diana Mompoloki played a significant role in assembling the statistics of the comparative study, said: "From encouragement given by people involved in transport to the Scottish Isles, and support from key figures like our MP Andrew George and Lord Berkeley, it shows that people are taking our situation very seriously."

 ガーディアンの記事、および報告書を読んでいただけると一目瞭然ですが、シリィ諸島への渡航費、さらに島と島を結ぶ船の運賃は本当に高く感じます。もちろん、船を運航する地元の会社にとっては、離島であるが故の高い燃料費をまかなうためには仕方のないことでしょう。それでもやはり「観光」でシリィを訪れた人にとってはもしかしたらぼったくりと映るかもしれません。ひとしきり報告書の内容と僕の感じたことを話し合った後に、一つ質問しました。「Do you think that we, the tourists, should understand the reasons why the boat fee is so expensive?

 ベネットさんは数秒間沈黙の後、暖かく微笑みながら、「Yes, they should」。当然と言えば当然。僕たちは観光で訪れているけれど、島の人たちには、彼らの生活を成り立たせるために必要不可欠な手段。政府の支援が無いのであれば、料金を低くすることは生活の破綻と同じこと。コーンウォールを訪れる観光客の数は過去10年で順調にのびている一方で、シリィ諸島への観光客数は過去5年でかなり下降傾向。それを上昇に変えるには、「シリィ諸島に行くのは高い」という印象の元凶である、渡航費を低くする必要が有る、と。
 ベネットさんとの話の内容だけでなく、実際に滞在し、毎日、近隣の島を訪れて感じたことは、家族連れが少ないこと。例えば、家族4人で宿泊はB&B、もしくはセルフ・ケイタリングのコテイジにしたとしても、それはそれで出費が有る上に、さらにこの高額の移動費を考えると訪れることをためらうのではないかと考えます。
 だからこそベネットさん等、島の議員たちは動いていると。島への愛情あふれるベネットさんの話を聞いているのはとても楽しく、本当に有意義な2時間でした。ベネットさんによると、今年の秋、スコットランドのマル島で、欧州連合内の島について討議する会議が有るそうです。参加したいです。訪れた島の印象は別項で。

 ここからは僕の経験と、実際の運賃について簡単に。St Martin’s のホテルを予約するのは至って簡単でした。問題は、何泊するかによって交通料金に差が出ること、ペンザンスでの宿泊料金が派生してしまうという状況でした。
 シリィ諸島への交通手段は、飛行機(プリストル、エクセター、ニューキィ、ランズ・エンド、サウザンプトン)、ヘリコプター(ペンザンス)、そしてペンザンスからのフェリィになります。仮に寝台列車でバディントン・ペンザンス間を移動すればフェリィの利用でもペンザンスに宿泊する必要は無かったかもしれないですが、乗り物で寝ることができない僕にとっては寝台車の利用は選択外。
 ならば朝一番の列車でロンドを出発すれば毎日5往復しているヘリコプターに間に合うだろうと高をくくっていました。7週間前にもかかわらず、乗り継ぎの良いヘリコプターはすべて予約でいっぱいでした。再度移動手段の接続を検討する前にヘリコプターの料金を知って驚きました。往復190ポンド。片道20分の飛行にこれだけ払うのは、やはり高いとの印象をぬぐい去ることはできません。
 結局、ペンザンスに前泊、ロンドンに戻る前にも宿泊と2泊し、シリィ諸島への移動はフェリィにしました。片道、約3時間です。ちなみにフェリィだけに限りませんが、シリィ諸島への渡航、宿泊をする際には、あらゆるところで旅行保険に入っているかも尋ねられます。6月の中旬には、とてもひどい天候のために、滅多に止まらないフェリィが一日欠航。滞在中の6月27日には、諸島とペンザンスの霧が濃くてすべての飛行機とヘリコプターが欠航ということが有りました。このリスクをカヴァーする保険は必須です。
 で、シリィ諸島に到着してからも移動費の支払いからは逃れられません。島と島を移動する船の運賃は、片道4.30-、往復8.60-です。この出費が滞在中はほぼ毎日有ります。これも、報告書で比較されていますが、シェトランド諸島では場所によっては無料です。この移動費の高さが、シリィ諸島への観光客数減少をの大きな要因であることは間違いないです。ATMが有るのはSt Mary's だけなので、ほかの島に滞在するのであれば、小銭の用意も忘れないように。

 で、これだけ高額な交通費を払い、長時間をかけてたどり着いた小さな島で天気が悪かったらどうしますか?ハワイや、イギリスのワイト島と違ってずっと小さなシリィ諸島ではアクティヴィティの選択は元々限られています。そんな選択肢が少ない環境でさらに天気が悪くても、自ら行動を起こせる、もしくは何もしないという選択を楽しめますか?
 このリスクを受け入れることができると感じるなら、ツアコンが居なくても自ら楽しみを見いだせるのであれば、シリィは素晴らしい島です。バードウォッチングやウォーキングではとても有名です。

 旅行には多かれ少なかれリスクはつきものだと思います。しかし、小さな離島滞在では、島が小さければ小さいほどリスクに直面する確率は高くなる、言い換えると滞在を楽しめるかは自分次第だと思います。天気がよくなかったからこそ、ということも有りますが、可能なら、明日にでも戻りたいくらいです。島では暮らせないことは判っていても、ロンドンの狂乱と狂騒とは無縁の島の空気を胸いっぱいに吸い込みたいです。

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Comment

離島 - レイネ

お帰りなさいませ。
フェリーで3時間と伺いびっくり。かなりの離島ですね。海は荒れたりしてませんでした?
ヨットに乗るものにとっては、憧れの島々ですが、霧が多くて天候は不安定らしいです。
アクセスが悪い、料金が高い、というデメリットを逆手に取り、高級でセレブな離れ島というイメージを押し出す、という手も考えられます。大衆化・俗化から免れた別天地という付加価値で、高くても静けさを求める人たちは来るでしょう。

ギリシアにも様々な島があり、観光化が著しいところと、そうでないところとの差が著しいです。意外な過疎地が各国王室やハリウッド・セレブに目を付けられて、別荘地として華やかに開発されたりしてます。

ただし、シリー諸島のリスクは、気象条件があまりに厳しい点にありますね。
2012.07.03 Tue 07:42 URL [ Edit ]

- 守屋

レイネ さん

 荒れましたよ。特に25日。後で詳しく書きます。

 島の皆さんやリピーターによると、過去3年くらい5月、6月の天候が安定しないそうです。代わりに、9月がおすすめだそうです。

 上手く言葉にできませんが、肌で感じたのは、シリィ諸島は高級感を醸し出すことは難しいかな。瞠目するようなワイルドな自然ではないのですが、居るとほっとする、そんな感じです。静かさという点では、癒されました。

 コメントを読んで、保険に関することを書き忘れたことに気づきましたので加えました。これも、リスクの一つでしょう。
2012.07.03 Tue 08:29 URL [ Edit ]

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