LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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NHSへの誤解を解くために、その現状を

2012.07.11
ロンドンが土砂降りに見舞われているとき、メキシコ北部は記録的な旱魃というニュースを読みました。

 最近、あるところでイギリスの医療システム、NHSについて読んでいてつい考え込んでしまったやり取りに遭遇しました。母国とは異なる社会環境、天候、食べ物に囲まれ、さらに病気になったときに受けたい診療・治療をすぐに受けられないことへの不満は、イギリスで暮らす日本人だけでなく、日本で暮らす外国人居住者も多少の差はあれども、日常の一部として経験することだと考えます。

県内外国人「受診控える」22% 県国際交流協が医療調査
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/society/35680.html

 通常、インターネット上のやり取りについては静観することにしているのですが、命に関わることにもかかわらず、冷静さをやや欠いている経緯を読んでいて、僕自身の限られた範囲での経験と、新聞から得た情報を書きました。以下のものは、書き込んだものに訂正、情報を追加したものです。一般論になりませんが、NHSを利用するイギリスで暮らし、働く日本人が少しでも冷静に対処できることの助けになればと。



 2009年3月と3年前のことですが、友人が急病になったときの記録です。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-990.html

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-993.html

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1014.html

 これ以降政権が変わり、NHSを取り巻く環境は毎月のように変更が有ります。特に大きな話題は、予算削減の強行とそれに伴う地方病院救急医療体制の縮小、夜間診療のアウトソーシングなどです。強硬な予算削減策の影響は特に顕著で、最近では、ロンドンの著名な病院の小児心臓外科の廃止が決まったというニュースが有りました。

Hospitals to close heart units after years of delays that 'cost children's lives'
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jul/04/hospitals-heart-units-delays-children

 このニュースに関しては、僕は記事に書かれていること以外のことは知りません。一つ推測することは、多くのイギリス人にとって、とりわけ今回閉鎖が決まった病院に入院している、もしくは治療を受けられることを予想していた患者やその家族にとっては大きな不安でしょう。

 この例のように、イギリス人にすら何が起きているのか判らない、きちんとした治療や診療をいつ受けられるのかの予想が難しくなっている現状で、外国人居住者にすぎない日本人にとって、NHSを利用するのは簡単なことではないです。

イギリス人コラムニストの乳がん治療についての不満
http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1501.html

 僕の専門での経験ですから、一般論にはなりませんが。メンタル・ヘルス専門のNHS、およびコミュニティ・ベイスのカウンセリング・センターの双方で研修していたとき、GPから紹介されてくる患者さんたちの 待ち期間は平均で半年くらいでした。患者さんの不安もさることながら、中に居る僕たちもどうしてこんなに時間がかかるのか、と混乱することが少なからずありました。また、カウンセリングが始まっても、何回のセッションを受けられるかは予算等の複雑な理由で限られています。
 
 現在、NHSのメンタル・ヘルスの分野では、IAPTという心理カウンセリングをもっと簡便に受けられるようにするプログラムが有ります。イン ターネットでIAPTと居住地域の名前を入れれば、どこに有るかが判ります。このサーヴィスもまた、地域によってかなり差があると聞いているので、 どこまで「簡便」なのかは受ける人の環境によって左右されるかも知れません。また、プログラム自体、確か運営期限が決まっていて、延長されるかどうかの議論がこれから始まるはずです。
 小児心臓外科部門の閉鎖と同様、一般的にNHSの各医療部門の運営はどれだけの予算が配分されるか、予算が数年にわたって確保されるかにかなり左右される、というのが報道から得ている印象です。また、実際、メンタル・ヘルスの分野でも、予算削減によりコミュニティ・カウンセリング・サーヴィスが急に閉鎖されるというニュースも時折耳にします。

 現在はNHSからはなれているので、もしかしたら僕の経験は既に昔のものになっているかもしれません。が、いつも感じていたことは、NHSを日本人が利用することは、まず言葉の点で難しいということ。日本人はマイノリティでありながら、高い社会ステイタスが有るとの暗黙の意識からか、NHSの予算で日本人通訳を雇うという話を聞いたことがないです。ほかの少数言語の通訳はいるのに、と思ったことは何度も有ります。

 ロンドンに限ったことですが、日本語によるカウンセリングを行っているコミュニティ・カウンセリング・サーヴィスがあります。

http://www.waterloocc.co.uk/CounsellinginYourOwnLanguage/%E6%AF%8D%E5%9B%BD%E8%AA%9E%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E3%81%A7%E3%81%AE%E3%82%AB%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0Japanese.aspx

 有料です。このような機関で日本語(さらにほかの外国語)でカウンセリングを受けられるのはロンドンでもここぐらいかもしれません。NHSのメンタル・ヘルス部門でも、少数言語を話すことができるカウンセラーを募集することはよくありますが、自分の言葉をはなせるカウンセラーに到達するためには、長い待ち時間とどの病院にそのカウンセラーが居るかを調べる努力が必要となるでしょう。

 NHSとの関わりを持ちたい、地域の中でどのような役割を持っているのかを知りたいというのであれば、それぞれの病院が行っているチャリティ行事に参加したり、病院内でのヴォランティア活動に参加するのも良いと思います。このような活動に参加したからといって病気になったときに優先的に治療を受けられるということはありません。しかしながら、他の人の経験を間接的に聞いてNHSへの誤解を増すより、自分の目と耳でNHSとはどのような医療体制なのかを知ることのほうが健全だと考えます。

 診療・治療を必要とする人が不安を抱えながらいろいろ考えなければならないのか、という点については、個人的には疑問を感じることも有ります。しかしながら、これほどまでの巨大な医療システム運営の背景を知らないまま、事故を取り上げて「やっぱりNHSは駄目だ」とあげつらうことだけに終始するのは生産的ではないと考えます。

 
 以上です。先に書いたように限定の情報。また、報道で知る範囲ではNHSが抱える問題は増えこそすれ、減ることは無いような印象を強くします。健康不安を抱えてNHSとやり取りをしなければならないのは理不尽と思われる方も居るでしょう。一つ思うことは、世界のどこでも同じだと思いますが、NHSは患者を拒否するためにある医療機関ではないということ。

 このエントリについてコメントをと思われる皆さんへ。「聞いた話ですが」とか、「友人の家族の友人が経験したことですが」というのはやめてください。少なからず命に関わることで、責任の所在が全く判らない二次情報、三次情報は根拠の無い誤解を増長します。


県内外国人「受診控える」22% 県国際交流協が医療調査
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/society/35680.html


県国際交流協会は、福井県内在住の外国人と病院・診療所を対象に医療の現状を調査し、10日に報告書を公表した。大半の外国人が医療保険に加入しているものの、「日本語ができない」などの理由で2割以上の人が受診を控えている。一方で病院・診療所も、医療通訳の必要性を感じつつ、経費の面から積極的になれない現状が浮き彫りになっている。

 県内の外国人を取り巻く医療の現状調査は初めて。同協会によると、県内在住の外国人は約1万2千人(昨年末現在)。中国人が最も多く約4280人、ブラジル人約2520人、フィリピン人約1250人などとなっている。

 調査は、同協会が県医師会や県と外国人医療支援検討委員会を設置して実施した。調査票を配布した外国人1600人のうち52・1%に当たる834人(中国人472人、ブラジル人119人など)が回答。病院・診療所は560機関のうち170機関(30・4%)が回答した。

 外国人に加入している保険を聞いたところ、協会けんぽなど「社会保険・健康保険」が39・8%、「国民健康保険」が38・7%など、9割以上がなんらかの保険に加入していた。無保険は1・4%、「分からない」が4・0%いた。

 病気になったときの対応は「家から近い病院・診療所に行く」(30・0%)が最多だったが、22・0%は「できるだけ我慢して病院・診療所に行かない」と回答。診療を控える理由は「日本語ができない」(55・1%)、「お金がもったいない」(22・1%)、「健康保険に入っていない」(3・5%)などだった。

 病院・診療所で困ったことは、「体の具合を説明する」などコミュニケーションについてが全体の3分の1以上を占めた。無料の通訳や、複数言語で問診票などの書類を準備するよう求める声が多かった。

 一方、病院・診療所では、英語での対応が可能な医師・看護師は全体で92人だった。中国語は2人、ポルトガル語はゼロだった。外国人患者への対応の不安では「症状などの説明」が全体の4割を占めており、日本語ができる人に同伴してもらうなどして、対応しているケースが多い。

 医療通訳についても7割以上が「必要を感じることがある」と回答しながら、実際に有料の制度が設けられた場合「利用する」というのは22・7%のみ。1回当たりの経費も、選択肢の中で最も安い「1千円」が7割近くを占め、費用面での負担増を懸念する様子がうかがえる。

 調査を踏まえ、検討委は▽書類などを複数言語で提供する▽診察や入退院時に説明を行う通訳サービス体制づくり―など4点を同協会に提言した。同協会は「医療通訳は費用負担や責任の所在など課題は多いが、検討していきたい」としている。


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Comment

- ハマちゃん

もしかしてイングランドとスコットランドでは違いがあるのかもしれないのですが

日本語通訳については、私は帝王切開手術の際に「欲しいですか」って訊かれました。
結局利用しなかったのですが、有料とは言われなかったので、NHS持ちなのかな。

別件では、子供のことでNHSの電話相談を利用したときに、話が分かり辛くて困っていたら「通訳用意しましょうか」と言われて、
途中から日本語通訳を交えて三者通話になりました。

カウンセリングだとそれが出来ないとなると、なんだか不思議な話ですね。

日本人の英国在住者の、医療への不満不安はよく分かるけども、一方、日本のサービスは過剰な部分もあり、それを「必要」と思わされているケースもままある、ということを冷静に頭に入れておく必要もあるかと思います。
あの、例のコミュニティでのやり取りを読む限り、風邪とかインフルエンザでGPにかかって「蜂蜜レモン」でも飲めと言われて怒ってた人なんかは、日本の不必要な過剰な医療を「普通」と思ってるが故に怒ってるんだなー、なんて思えたので。
2012.07.11 Wed 11:34 URL [ Edit ]

- 守屋

ハマちゃん さん

 そうなんですよね。イングランドとスコットランドで差がある、というのは外国人には状況をさらに複雑にしていると思います。

 日本語通訳を交えての電話三者通話ということがあるんですね。日本語通訳をプールしていることは知りませんでした。
 カウンセリングでも通訳が入ることはあります。が、個人的にはもどかしいです。

 ロンドンに来たばかりの頃は、GPとはなんて不親切なんだと思いました。が、これがイギリスなんだな、と。
2012.07.11 Wed 11:53 URL [ Edit ]

- ハマちゃん

通訳は、また第三のコールセンターみたいなところに繋いでの「三者通話」のようでしたが。

最初の通訳さんは非常にスムーズだったけど
二回目に別の通訳が付いたとき、その方は明らかにスコットランド訛りに慣れてなくて、大変そうでした。
あのコールセンターは、イングランドにあるのかと思ってましたが、違うのかな?

GPは当たり外れのブレもすごく大きかったりしますよね。
こればかりは「運」なのか…と思ったり。
個人的には、産婦人科の専門病院に関しては、素晴らしいの一言でした。
機能的な面がというよりも、患者を、普通に人間として扱ってくれる雰囲気、が。
私が診察で動揺したら、応接室に案内されて紅茶とビスケットを出してくれて、落ち着くまで待ってくれる…というような気遣いに、心打たれました。
2012.07.11 Wed 12:24 URL [ Edit ]

- 守屋

ハマちゃん さん

 医療通訳者は、相応のトレイニングを積んでいるであろうし、また専門用語の理解も深いと思います。でも、そこにアクセントの違いまで加わるとなれば大変な仕事でしょうね。

 「運」とか「当たり外れ」というのは理不尽に聞こえますが、医者も人間。それに最近では非英国人GPも増えているようですから(人のことはいえないですが)、患者が経験することもこれまでとは違ってくる可能性もあるのではないかと考えます。
2012.07.11 Wed 15:57 URL [ Edit ]

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