LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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アンドレアス・ショル@ウィグモア・ホール

2012.11.20
イギリスは文化予算・文化教育消滅の危機に、アート界が政府に猛反発している晩秋。

 オペラを聴き始めた当初、カウンター・テノールについては何も知らないまま「邪道」だと思い込んでいました。ただ、その頃はカストラートの歴史についても何知らないまま、オペラにについても何も知らないまま、ファルセットで歌うことの意味を見いだせなかったからです。

 本題に行く前に、こちらのヴィデオを観てください。レオナルド・ヴィンチ(ダ・ヴィンチ、ではありせん)による「アルタセルセ」というオペラからのアリアです。有料放送をYTにポストした映像の様なのでいつまで視聴可能かは判りません。

Franco Fagioli - Vinci - Artaserse - Arbace's aria "Vo solcando un mar crudel"
http://www.youtube.com/watch?v=BumvvBzj0D8&feature=player_embedded

 これまでいくつかオペラを観てきましたが、このファジョーリの歌唱には驚きました。喉の構造はどうなっているのだろうと。何より、カウンター・テノールってすごいんだな、と。

 本題。「アルタセルセ」に出演した若手CTより上の世代で、おそらく現在のカウンター・テノール人気安定へ大きく貢献したであろう一人、アンドレアス・ショル(ドイツ人)のリサイタルをウィグモア・ホールで聞いてきました。上のYTの映像をアップしてくださったこちらのブログ(http://bonnjour.exblog.jp/)でカウンター・テノールについての知識を得ることができたので、僕個人の不満は有った物の、ショルの歌唱を以前よりも深く聴くことができました。

Performers
Andreas Scholl
countertenor

Tamar Halperin
piano

Programme

Haydn
Despair
The Wanderer
Recollection

Schubert
Waltz in B minor D145 (solo piano)

Schubert
Im Haine
Abendstern
An Mignon
Du bist die Ruh

Brahms
Intermezzo in A Op. 118 No. 2 (solo piano)

Mozart
Das Veilchen

Brahms
Mein Mädel hat einen Rosenmund

Brahms
Guten Abend
All mein Gedanken
Da unten im Tale

Schubert
Der Jüngling auf dem Hügel

Mozart
Rondo in F K494 (solo piano)

Schubert
Der Tod und das Mädchen

Brahms
Es ging ein Maidlein zarte
In stiller Nacht

Mozart
Abendempfindung

About this concert

In the two decades since making his professional recital debut, Andreas Scholl has introduced countless new listeners to the delights of the countertenor voice. He returns to Wigmore Hall with Tamar Halperin to perform a programme of Classical and Romantic song, interleaved with solo keyboard works and graced by its repertoire breadth. The irresistible beauty of Scholl’s voice and charismatic power of his stage presence will doubtless deliver yet another unforgettable audience experience.


 先に不満点をあげると、プログラムの構成。偏った聞き方をしているとはいえ、ウィグモア・ホールでいくつものリーダーアーベントを聴いて来た僕にはシューベルトやブラームスのリートをショルが歌う意味が見いだせませんでした。
 歌われた歌の中で聴いたことが有ったのはシューベルトの3曲くらいだったので、リート歌いと言われる歌手の皆さんとの単純な比較はできません。また、後半の歌曲群の流れは、恋の芽生えから、死別、そして魂の安寧という流れで物語としては大変優れていた思います。
 ショルの歌唱は絶好調。コップの水で何度か喉を湿らせていましたが、声には一点の曇りも有りませんでした。だからこそなのかもしれないですが、僕には彼の声が「語り部」で止まってしまって物語の主人公になっていないように感じました。
 その好例が、シューベルトの「死と乙女」。これをプログラムで見つけたときにもしかしてと思った通り、ショルは前半の乙女の部分をカウンター・テノールとして、後半には彼の地声であろうバリトン声で歌い分けました。これは僕はずるいと感じましたし、また、2年前のクリストフ・プレガルディーンによる素晴らしい歌唱(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1180.html)がデフォルトになっているので、声を使い分けてるショルからは歌詞が伝える核心が弱まってしまったようにも感じられました。

 ショルがなぜリートを歌おうとしたかの理由は判りません。でも、同じドイツ語ならバッハとかの方が彼の魅力・実力を存分に発揮できたのではないかと。しかし、先に書いたように声は好調。前半のシューベルトの4曲、特に「ミニョンに」は何度も聴いてきましたが、新鮮な経験でした。プログラムの中で僕がショルの声に最もあっていると感じたのは、モーツァルトの2曲。特に最後の「夕べの想い(とでも訳すのか)」は、ドイツ人による真摯なドイツ語の歌を聴いたという喜びにあふれるものでした。

 最近では、メゾ・ソプラノ歌手による「冬の旅」リサイタルが有るので、カウンター・テノールによるリートがいけないということは無いでしょう。興味深い試みだったと思います。しかし、ショルがリートを歌うなら、この夜はモーツァルト以外の歌曲群は僕には強くアピールしませんでした。ただ、これでショルを聴くのはやめるという気は全くありません。別の歌でもっと彼の本質を聴いてみたいです。

[追記]
インターヴァル中に禿頭を見かけたのでレヴューがでると思っていたガーディアン。

http://www.guardian.co.uk/music/2012/nov/20/andreas-scholl-tamar-halperin-review

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Comment

さっそくのレポ、ありがとうございます。 - bonnjour

ショルのコンサートのレポ、さっそくありがとうございます(あと、拙ブログをご紹介くださり、恐れ入ります。冷汗)。

シューベルトやブラームスのリートをショルが歌う意味?主催者によるコンサートの案内にもあるように、(バロック・オペラや宗教曲だけでない)、古典派やロマン派の作品をレパートリーに入れて、新しい光を当てたかったのかなと想像しました。あと、ドイツ人として、ドイツ語で表現することへの思い入れがあるのかと。

とはいえショルが、あるいはCTがこのようなレパートリーを歌うことの必然性を聴衆に納得させるのは、なかなか大変なことなのですね。彼の端正で清潔な歌唱スタイルが、ロマン派作品には向いていないということもあるのでしょうか。

ところで、我が愛する(笑)CTのフィリップ・ジャルスキーは、バロックのほかに、(本国では古臭いとして邪険に扱われている)フランス歌曲をレパートリーにしていまして、ディスクも出ているのですが、バリトンやソプラノが歌うフランス歌曲とは一線を画した、この世のものとも思えない陶酔の世界を作り出しています。彼も、CTがフランス歌曲を歌う意味、をずっと自問し続けたそうです。<==と、ショルの記事なのにジャルスキーを宣伝。

それから、ファジョーリ!彼は、ショルともジャルスキーとも、まったく違ったタイプのCTで、安定感と音のふくよかさ、高音の伸びはCTのイメージを塗り替えるものですね。ジャル君いわく、「フランコ・ファジョーリにはメゾソプラノの完璧な技術があるんだ。女性歌手が彼の歌を聴いたら皆、羨ましがるだろうね」。激賞されるファジョーリ、カッコイイ。そして同僚を手放しでほめるジャルスキー、( ;∀;)イイヒトダナー。
2012.11.20 Tue 20:48 URL [ Edit ]

- 守屋

bonnjour さん

 追記でリンクしたガーディアンのレヴューに有るように、会場ではおおむね好評でした。僕の耳には、ショルの端正、且つ透き通る声はリートにはちょっと深みにかけるかな、というのが本音です。

 ただ、そちらのブログで教えていただいたように、ショルのバックグラウンドを知った上で聴くことができたので、カウンター・テノールにもいろいろなタイプがいることを理解した上で聴けたのは良い経験になりました。

 カウンター・テノールが主役を張るなんてイギリスでは考えられないので、ジャルスキーやファジョーリをオペラの舞台で聴くならば大陸に遠征しなければならないんでしょうね。
 主役ではないですが、2013年早々、ロイヤル・オペラの現代オペラにカウンター・テノールが出演します。1月の「ミノタウロ」、3月の「Written on Skin」です。後者は、この夏エクサン・プロヴァンスで世界初演になったばかり。評判もかなり高かったので観に行こうかと思っています。
 でも、せめてコンサート形式でも良いので「アルタセルセ」にロンドンに来てほしいです。
2012.11.20 Tue 21:22 URL [ Edit ]

イギリスでもCT活躍 - レイネ

CT話題なので、またしゃしゃり出てしまいます。

>カウンター・テノールが主役を張るなんてイギリスでは考えられないので、

ENOの先月の公演『ジュリアス・シーザー』では、ローレンス・ザゾが主役だったはず。
去年のグラインドボーン・オン・ツアーでは、わたしがプッシュしているクリストフ・デュモーが『リナルド』主役でしたよ。また、2014年の本家グラインドボーンでの『リナルド』はイギリスの誇る若手実力派CT、イェスティン・デイヴィースが主役を張ります!

1月の『ミノタウロ』に出演するCTは、ティム・ミードでしょうか?初演のTV放映には彼が出演してたので、固唾を呑んで見守ったものですが、生贄の若い衆の1人で、歌らしい歌はほとんどなかったと記憶してます。
Written on Skinは、里帰りのためアムステルダム歌劇場での公演(CTのベジュン・メータが出演)を見逃してしまいました。エクスでの映像がかなり長いことArte Live Webでストリーミングされてたんですが、実演鑑賞するつもりだったのでこれも見逃し。。。ロンドン以外でも各地でまだまだ公演があるので、いつかどこかでチャンスがあれば、と思ってます。
2012.11.21 Wed 11:04 URL [ Edit ]

ショル - レイネ

肝心のショルのリサイタルに関しても、一言二言。
確かに、ショルがリートを歌う意味ってなんだろうと思いますよね。でも、いつもの安全パイだけに飽き足らなくなって、新分野にチャレンジした結果を世に問うたのだと思います。同じジャンルでの繰り返しに飽きたのかも。。。教会系の彼の声にはバロックでも特にバッハがピッタリなんですが、もっと古い時代の吟遊詩人のコンサートも行ったりと、レパートリーを広げることには意欲的な彼ですからね。
また、8月に結婚したばかりの奥さんがピアノ伴奏担当なので、彼女のお披露目という意味もあったのかも。ラブラブってだけでなく、二人でこれからずっと人生を共にして行くんだという覚悟も選曲によく現れてます。
この夏、ショルの4時間近い長時間ラジオ・インタビューおよび映像が全部オンラインで見れたんですが、ガーディアン紙の禿頭氏も褒めてるように、奥さんによるブラームスの間奏曲第二番の演奏が素晴らしかったのを覚えてます。(丁度、わたしも夏前にその曲を練習してた)
2012.11.21 Wed 12:02 URL [ Edit ]

- 守屋

レイネ さん

 >ENOの先月の公演『ジュリアス・シーザー』では、ローレンス・ザゾが主役だったはず
 そうでしたね。すっかり失念していました。でも、僕にとっては、やはりロイヤル・オペラでCTが主役のオペラを観たいです。数年前、ヘンデルの「オルランド」でベジュン・メータがタイトル・ロール以来、無いのではないかと思います。
 「ミノタウロ」のCTは、第2幕にでてくるスネーク・プリーストの役です。初演時同様、アンドリュー・ワッツだと思います。

 やっぱり、彼女はショルの奥様なんですね。ステイジでの二人のコミュニケイションからそうかなと思っていました。友人には考え過ぎだよと言われたのですが、ドイツ人とイスラエル人の夫妻は、あの紛争をどう考えているのだろうかと。ちょうど、イスラエルのダンス・カンパニィがイギリスで公演中だったのですが、いくつかの劇場の前では抗議行動が有ったそうです。
 後半のプログラムは、歌詞を読んでいると、心にぐっとくるものが有りました。素晴らしい構成、よく考えられた選曲でした。
2012.11.23 Fri 18:52 URL [ Edit ]

- アルチーナ

はじめまして。
レイネさんやbonnjourさんの所でおみかけしておりました♪
フランコ・ファジョーリに興味を持ってらっしゃるようなので、気になっておりました。
さて、昨日出てきた情報なのですが
2014-15シーズン、彼はROHの「イドメネオ」でイダマンテを歌う予定だそうです。
http://www.forumopera.com/index.php?mact=News,cntnt01,detail,0&cntnt01articleid=5182&cntnt01origid=57&cntnt01detailtemplate=gabarit_detail_breves&cntnt01lang=fr_FR&cntnt01returnid=36
コヴェントガーデンはCTにはちょっと大きいのではないかと心配ですが、新たなレパートリーへの挑戦、嬉しく思っております。
まだまだ、先の事ではありますが、ご報告まで♪
2013.05.16 Thu 06:03 URL [ Edit ]

- 守屋

アルチーナ さん

 初めまして。コメント、そして貴重な情報をありがとうございます。

 2014−15ということは、仮に「イドメネオ」がシーズン最後の頃の上演だとすると、長くて2年以内ということですね。それでも、アルチーナさんを初め多くの皆さんが熱く語られているファジョーリの生を大陸に行かずに聴ける機会があるというのは嬉しいです。でもその前に、ソロCD発売記念リサイタル・ツアーにロンドンも入れて欲しいとお伝えください。
2013.05.16 Thu 17:10 URL [ Edit ]

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