LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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ヘンゼルとグレーテル@リンベリィ

2013.05.12
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最低気温が未だに10度以下に、イギリスは北国だということを実感します。

 先週、5月8日から11日の間に5回、ロイヤル・オペラ・ハウスの地下にあるリンベリィ・スタジオ・シアターで、ロイヤル・バレエのアーティスト・レジデンスであるリアム・スカーレットによる「ヘンゼルとグレーテル」が上演されました。宣伝は、「スカーレットによる初の全幕バレエ」というもの。

 「メタモルフォーシス(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1934.html)のところで盛大に愚痴りましたが、これもまたフレンズ枠の発売日にはほとんど席がないという状況でした。が、おそらく一般発売日に上級フレンズからのリターンがあるだろうとの予想があたり、とりあえず2回分は確保できました。で、再び恩恵に与っての文句ですが、5月に入って早々に、初日以外の各回にそれぞれ20枚ほどのリターンがでました。

 チケットを受け取りにいった時に再び、「このリターンのやり方はおかしいのではないか」と尋ねたところ、「全く新しい作品だから、マネジメントが全部の券を放出するのを躊躇ったのかもしれない」と。へ理屈は幾らでもでて来るようです。

Hansel and Gretel

振り付け:Liam Scarlett

音楽:Dan Jones

デザイン:Jon Bausor

照明:Paul Keogan

バレエ指導:Samantha Raine, Ricardo Cervera

Hansel: James Hay, Ludovic Ondiviela

Gretel: Leanne Cope, Elizabeth Harrod

Father: Bennet Gartside, Johannes Stepanek

Step-Mother: Laura Morera, Kristen McNally

The Sandman: Steven McRAE, Donald Thom

The Witch: Brian Maloney, Ryoichi Hirano
(名前、二人目はBキャスト。Aは3回、Bは2回)


(プログラムとガーディアンのレヴューによると)舞台は1950年代のアメリカのどこか。貧困から脱するために家を売ろうとする父は、苦悩からアルコールに浸っている。その父親をグレーテルは心配するが、ヘンゼルの方はテディベアに夢中。グレーテルと継母の間には明らかな緊張感が存在する。

 (第一幕のこの辺りに緊張感がなくて既に記憶喪失気味)何らかの理由で家を出たヘンゼルとグレーテルは、コテイジを見つける。髪をきっちりと分け、度の強そうな眼鏡をかけた男性がひっそりと暮らしていた。二人をコテイジの中に招き入れる男性。

 家が売れ、出て行く準備をしていた父親と継母は、子供たちがいないことに気づく。半狂乱の父親を、まるで他人事のように観る継母。

 両親は、ヘンゼルのテディベアの頭部を見つけたそばにあるコテイジのドアをノックする。仲から出て来た男性は二人に席に着くことを勧める。結局子供たちの情報を得られなかった二人は家に戻り、子供たちをあとにして出て行く。

 コテイジの地下に閉じ込められたヘンゼルとグレーテルは、攻防の末に脱出する。絶望した男性は、(既に死んでいる設定の)魔女の頭部が突っ込まれているオーヴンの中に自分も飛び込む。

 家に戻った二人は、もぬけの殻の家の中に立ち尽くす。継母のネグリジェを見つけたグレーテルはそれを羽織る。


 2日目のBキャストで観た時、The Sandmanの存在に「?」だったので、大学時代の恩師に質問しました。

1.Sandmann (砂男: 子どもが眠くなる、つまり、日本で言うと「目が渋くなる」)英国を含めた西欧の民間信仰によると、月に住むとかの砂男が、子 どもの目に砂を投げ込むからだそうです。KHM (いわゆる『グリム童話集』= 『子どもと家庭のための昔話集』Kinder- und Hausmärchen の略称)15 Hänsel und Gretel には出て来ません。E.T.A. Hoffmann: Der Sandmann はこの伝承を踏まえています。

2.絵(上部参照)を見ると、連れだって森へ入って行く二人の内、女の子の方が男の子より背が高いですね。もとより KHM15 では Bruder / Schwester とあるだけで兄妹か、姉弟か、つまりどっちが年長か分かりません。ご存じのように、魔女の小屋へ行き着くまでは男の子が主導権を握り、後半からは女の子が分別を働かせます。このバレーの演出では終始一貫女の子の方が積極的なんでしょうか?


 この情報がとても有益で、最終日の公演は、振り付けの意図を更に深く理解できたように感じました。スカーレットがサンドマンを入れた真の理由は判りませんが、振り付け的にはとても重要な役でした。ロイヤルのこちらのリンクで写真を観られます。

http://www.flickr.com/photos/royaloperahouse/sets/72157633439208093/

 次代のロイヤル・バレエの新作振付家の先頭を走るスカーレットの初の全幕バレエということがあるからでしょう、監督のケヴィン・オヘア氏は全公演に来ていたらしいです。僕が見かけたのは、9日にマックレーとギャリィ・エイヴィス。最終公演の時はセルヴェラがいました。

 ガーディアンの批評が的を得ていたと感じますが、スカーレットは全幕のペイス配分を巧くできていなかったように思います。第1幕の前半は、ダンサーたちに触れられそうなほど近い最前列に座っていましたが、ちょっと眠かったです。

 しかしながら、1幕の後半、そして第2幕は観る側の緊張感と期待をずっと持続させるのに充分な構成でした。

 今回の公演では、これまでん何度も観ているダンサーたちの別の面を観ることができたのも面白かったです。

 父親を踊ったガートサイドとステパネクは、双方とも普段は「いい人」。それが酒に溺れ、子供たちを案じつつも妻のセックス・アピールにあらがえない男のわびしさを鮮明に演じていました。

 Aキャストのマックレーは、別格の動き。被っていたマスクからの印象もありますが、まるで得体の知れないトカゲのようでした。

 最も意外だったのが、Bキャストで魔女を踊った平野さん。彼こそまさにプリンセスのパートナーをするための理想のダンサーというのが多くの人、少なくとも僕の印象でした。が、目の前で、ずっと小首をかしげたままのおどおどした姿勢ながら、体全体から強烈に発せられる「危ない人」という存在感は、平野さん、こんな役ができるんだと。ずっと昔、「アナスタシア」で吉田都さんを艶のあるバレリーナ役で観たとき以来の新鮮な驚きです。
 平野さんの役は、演目発表当初はセナイダ・ヤナウスキィがキャストされていましたが、怪我で降板という情報。舞台を観終わって感じたのは、実生活では母でもあるヤナウスキィには心理的な抵抗感があったのではと推察します。

 物語の展開に、つい最近アメリカで発覚した監禁事件や、昨年来、イギリスを揺さぶり続ける子供への性的虐待事件を思い出さずにはいられませんでした。充分、海外へ輸出できる舞台だと思います。今回12歳未満は入場できなったようですが、仮に日本で公演されるなら、15歳未満は保護者同伴になるかなと感じます。

 酷い写真ですが、舞台はこんな感じです。

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157633461535389/

スクリーンショット 2013-05-12 20.09.31

 リンベリィで上演される舞台のプログラムで、こんなに立派なのは初めて観ました。期待されているんでしょう。

 9日に観に来られていたMiklosさんのポストです。

http://miklos.asablo.jp/blog/2013/05/09/6809185

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Comment

ダンス、ダンス、ダンス - レイネ

ヴッパタールの『カフェ・ミュラー』は、3D映画『ピナ・バウシュ』の中で踊ってるのを見ました。これと『ハルサイ』のダブル・ビル、ご覧になられたのですね。わたしも絶対に見逃さないようにしよう!

ところで、サンドマンはオペラ『ヘンゼルとグレーテル』にも出てきますね。子供を眠くする眠りの精みたいな存在のサンドマンは、子供に読み聞かせる絵本などにもよく出てくるし、オランダでは一般名詞化してます。
2013.05.13 Mon 06:50 URL [ Edit ]

- Miklos

ただ、このスカーレット版のサンドマンは、子供をウィッチのところへ導く役割ですが、オペラみたいに眠らせるわけじゃないんですよね。そこがちょっと不可解ではありました。
2013.05.13 Mon 21:23 URL [ Edit ]

- 守屋

レイネ さん

 マチネに行けるようでしたら、ヴッパタールは是非。バウシュとともにヴッパタールを築いて来たヴェテランたちも引退が近づいているらしいので。

 wikiで読む限り、サンドマンは英語では一般名詞化しているようではないですね。でも、グリム童話と精神分析を関連づけることは熱心ですから、いろいろな場面で自然に使われるのではと推測します。
2013.05.14 Tue 12:53 URL [ Edit ]

- 守屋

Miklos さん

 狂言回し的な役だと、中立の立場が多いかと思いますが、この舞台ではかなり「悪」よりに感じました。ロンドンでは再演が決まっていますが、スカーレットの作品はけっこう日本でも演じられているようですから、ダークな舞台とは言え、近いうちに日本での上演もあるかなと。
2013.05.14 Tue 12:56 URL [ Edit ]

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