LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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湖上の美人@ロイヤル・オペラ・ハウス

2013.05.19
朝夕は本当に今は5月末だとは思えないほど冷え込むことのあるロンドンですが、ま、いつものことかなと。地球温暖化って、どこの話?、とロンドンでは感じます。

 2012年早春、ロイヤル・オペラの2012/13シーズンの演目が発表になった時、どうしてもこれだけは見逃したくないと思った演目はただ一つ。ロッシーニによる「La donna del lago」。物語の原作はウォルター・スコットの「The Lady of the lake」をそのまま訳すと「湖の淑女」が妥当という気はしますが、日本語では「湖上の美人(もしくは美女)」で通っているので「湖上の美人」で。

 どうしても観たかった理由はいくつかあります。現在のベル・カント・オペラ歌手の中でもダントツの存在であることは多くの人が認めるだろうフローレスジョイス・ディドナートが主演。ロイヤルはベル・カントものを頻繁に上演しない上に、この超売れっ子の二人を要する舞台は2009年の「理髪師http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1047.html)以来。でも、二人一緒の舞台は数年ぶりとはいえ、ロンドンにはよく来てくれる二人。

 出演予定の歌手の中で、その二人を差し置いて僕の目を惹きつけたのは、イタリア人メゾ・ソプラノのダニエラ・バルチェッローナ。1999年のペーザロ・フェスティヴァルでの「タンクレディ(ロッシーニ作)」で一躍注目を浴びたという彼女。その当たり役である「タンクレディ」のタイトル・ロールのアリアを歌う彼女の映像をずっと昔に観てその歌唱技術に驚嘆して以来、オペラの舞台でどうしても観たい歌手の一人でした。でも、彼女も日本へはよくいくけどイギリスにはほとんど来ない歌手の一人のようでした。今回の「湖上の美人」はバルチェッローナのロイヤル・オペラ初登場になります。

演出:John Fulljames

セット:Dick Bird

衣装:Yannis Thavoris

照明:Bruno Poet

振り付け:Arthur Pita (何をどこに振付けたのか全く判らず)

Conductor: Michele Mariotti

Elena: Joyce DiDonato

King of Scotland or Uberto: Juan Diego Flórez

Malcom: Daniela Barcellona

Rodrigo: Michael Spyres (コリン・リーの代役)


 物語は、テレグラフのレヴューから拝借。

http://www.telegraph.co.uk/culture/music/opera/10065672/La-Donna-del-Lago-Royal-Opera-Royal-Opera-House-review.html

A standard plot unfolds, wherein A (Uberto) loves B (Elena, she of the lake). But B loves C (Malcom, whose second “l” gets lost in translation) - an amour complicated by the fact that A is the King and at war with C, and that B is both betrothed to D (Rodrigo) and unaware of A’s regal identity. Come on, it’s Italian opera, keep up!

 一言で言えば、四角関係。この4人には超絶技巧が要求されるので、簡単には上演されないオペラだと思います。初日の17日は、ロドリゴを演じる予定だったコリン・リーが急な病欠。通常フローレスが演じない日の第2キャストになることが多いコリン・リー。僕は未だに彼を聴いたことがないのですが、ブログ仲間の椿姫さんによると(http://ameblo.jp/peraperaopera/entry-11532986953.html)リー自身が素晴らしい歌手だそうです。スパイアーズは中音、低音はよかったのですが、肝心の高音がかなりきつくてかなりがっかりでした。また、フローレス、そしてバルチェッローナ(男性役)がとても凛々しかったのに比べて、その若さで既にそんなに大きなお腹でどうすると。もう一度観に行く予定なので、コリン・リーが復帰することを願っています。

 他の歌手に行く前に、演出。僕にとっては最低でした。幾つかのレヴューを読んで理解したのは、19世紀のどこかのジェントルマンズ・クラブのラウンジに、スコットランドの民族蜂起の際の人物像を標本箱に入れて保存してあるという出だし。

http://www.flickr.com/photos/royaloperahouse/8746344365/in/photostream

 そして最後はエレナを再びまるで棺桶を想起させるガラスの大箱に入れるという演出。このような入れ子の構成は、3月に「Written on skinhttp://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1901.html)」で独創性あふれる舞台を観たばかりなので、それと比べると全く凡庸なもの。更に第一幕での生け贄の羊の生々しさ、戦場におけるスコットランド人兵士が女性を強姦するシーンなど、創造力・想像力、どちらも全く欠如した演出でした。
 スコットランドが舞台のオペラをロイヤルで観るのは僕は2回目でした。その2回とも、全くスコットランドらしさが反映されていなくてとても残念です。

2003年のルチア

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-239.html

 もう一つ舞台の印象を悪くさせたのが、特に第1幕で物語の展開に併せて多用された螺旋階段のセット。2008年の秋にロイヤル・オペラで上演された、やはりロッシーニの「シャブランのマチルド」では今回のセットより見た目が美しかった螺旋階段が使われたので、今回はまるでその舞台の二番煎じのように思えてしまいました。と言うこともあってか、演出チームには盛大なブーイング。当然でしょう。

 標本箱の意味をはかりかねたままで始まった音楽は、正直、最初の20分くらいはディドナートとフローレスの二重唱があったにもかかわらず、睡魔との戦いでした。僕にとってロッシーニ・オペラの魅力の一つである声のアンサンブルがほとんどなかったので退屈な展開でした。

 で、睡魔が吹き飛んだのは、目当てのバルチェッローナが舞台に出てきたとき。彼女が長身であることはどこかで読んでいました。また今回の舞台では、ズボン役であることも充分知っていました。でも、舞台袖から出てきた長身の「男性」が女性歌手であるとは、数秒の間は思えませんでした。それほど、凛々しい姿でした。

http://www.flickr.com/photos/royaloperahouse/8746344005/in/photostream

http://www.flickr.com/photos/royaloperahouse/8747465304/in/photostream

 おそらく履いていたブーツは多少上げ底になっているのではないかと想像します。エレナ役のディドナートだけでなく、敵役のロドリーゴよりも背が高いのには、勇猛果敢なスコットランド人男性を観ているようでした。些細なことかもしれませんが、それでも女性らしい細やかな演技と感じた点があります。キルトをはいていて何度か膝まづく場面がありました。その度に、キルトの正面を片手でそっと押さえて、中が見えないように気を使っていたようでした。

 歌唱。メゾにとっては低めの音域から高音域まで全くの無傷。どの音域でも軽やかに、そして全くぶれずに響くコロラチューラ。またコーラスやオーケストラの音の中でも必ず耳に届く発声。少なくとも10年待った、その甲斐以上の歌手でした。叶うなら、彼女の出世作「タンクレディ」を観たいです。日本には、今秋ヴェルディの「ファルスタッフ」に出演予定です。

 フローレス。何を書けと。彼はもはや神ですね。崇めるつもりは毛頭ないですが、あの声、技術、声量は唯一無二でしょう。

 途中、バルチェッローナとの二重唱があり、ソロがあり、そして3重唱までありと歌の比重では一番のエレナを演じたディドナート。それでも最後の場面まではディドナートにとってはけっこう楽な舞台のなのではと感じていました。

 しかし、まさに舞台の大団円。エレナに当てられたアリアの装飾音の凄まじさ。それを表現力たっぷりに、そしてロッシーニのオペラには大きすぎるのではないかと常々揶揄されるロイヤル・オペラ・ハウスの隅々まで届いたであろう素晴らしい歌唱力、発声技術。フローレスを観たさに来た人が多かったかもしれませんが、初日は、フローレスだけでなくディドナートもまたベル・カント・オペラの素晴らしい歌い手、表現者であることを多くの聴衆に強く印象づけたと思います。

 イギリスでは、5月27日にこのオペラは映画館で同時上映されます。ロイヤル・バレエはずいぶん日本では映画館で上映されているようですが、オペラは上映されるのかは知りません。

 相変わらずの写真です。

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/sets/72157633518191017/

 ロイヤル・オペラ・ハウスのフリッカーです。

http://www.flickr.com/photos/royaloperahouse/

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