LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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LS Lowry @ テイト・ブリテン

2013.09.09
lowry.jpg
(The Cripples, 1949, http://arts.guardian.co.uk/pictures/image/0,,-1050329418596,00.html

6月26日からテイト・ブリテンで始まったイギリス人画家、LS Lowryの展示を見てきました。

Lowry and the Painting of Modern Life
http://www.tate.org.uk/whats-on/tate-britain/exhibition/lowry-and-painting-modern-life

 テイトの年間予定の中でこの画家の名前を見つけた時の反応は、「誰、これ?」。

 でも、テイトが取り上げるくらいだからそれなりに意味のある画家だとは思っていました。先日あった友人によると混雑していたとのことなので、イギリス人の間では人気の展覧会との印象が強まりました。ちなみにその友人は、ラウリィの拠点であるマンチェスターとのつながりが深く、とても楽しみにしていたそうで、内容には大満足だったとのこと。

 それならばと、小雨が降る平日の午前中に行ってみたところ、激混みではなかったのですが、予想以上の観覧者数にまず吃驚。入り口で受け取ったガイドブックはラウリィをこう紹介しています。

LS Lowry (1887-1976) devoted his life to painting the England of the Industrial Revolution.

 展示は6つのセクションに別れています。

1. Looking at Lowry
2. The Idea of Modern Life
3. Street Life: Incident and Accident
4. Ruined Landscape
5. The Social Life of Labour Britain
6. Industrial Landscapes


 ラウリィのことを全く調べずに入った最初の部屋に展示されていた幾つかの絵を観て感じたのは、モーリス・ユトリロが描く絵の雰囲気に似ているかなと。しかし、解説ではラウリィの絵はパリのサロンで評判が高かったものの、参照としてあげられていたのはピサロでした。
 自分の鑑賞眼なんてそんなものかと思いつつ入った2番目の部屋には2枚のユトリロの絵。積み重ねてきた経験が裏打ちされるのは嬉しいです。

 話題がそれました。ラウリィが描くキャンヴァスには、緑したたるイギリスの丘陵地帯、輝く湖水や河川、人々が喜びを求めて散策する庭は一切ありません。

 描かれているのは、煙突から黙々と吐き出される煙に覆われた空のした、工場に向かい、そして工場をでる労働者の大群。家賃を払えずに借家を追い出される労働者階級の家族。産業革命の影(と言っていいのかどうか)の部分を描くのみ。また、1枚、2枚、3枚とラウリィの絵を観て行くうちに気づくのは、描かれる人々の影の欠落。この影の欠落が産業革命の繁栄の影に追いやられた労働者の希望のない生活、もしくは階級社会における彼らの存在の儚さを象徴しているのかは判りませんが、影のない人物描写がもたらす印象は強いものでした。

 友人よると、美術界の中でラウリィの評価は高くはないそうです。確かに、技術的には瞠目するような手法ではありませんでした。遠近の捉え方もかなり平面的のように感じました。
 しかしながら、市井の人々の暮らしを、一人の画家がどのように観察したかという点においては、まるで寡黙なコラムニストという印象を持ちました。

 ラウリィが描く光景を批評した、1966年にNew Society(という雑誌なのか、論文雑誌なのか)にJohn Bergerが書いたものが会場にありました。

“These paintings are about what has been happening to the British economy since 1918, and their logic implies the collapse still to come. This is what happened to the ‘Workshop of the World’. Here is the recurring so-called production crisis: the obsolete industrial plants: the inadequacy of unchanged transport systems and overstrained power supplies: the failure of education to keep pace with technological advance: the ineffectiveness of national planning; the lack of capital investment at home and the disastrous reliance on colonial and neo-colonial overseas investments: the shift of power from industrial capital to international finance capital, the essential agreements with in the two party system blocking every initiative towards political independence and thus economic viabitily”.

 これ、「1966年」という表示がなければ、2013年のイギリスそのものです。イギリスという国、社会の根底は1918年、1966年、そして2013年、何も変わっていないんだ、と。僕個人としては、学術的な裏付けは一切ありませんが、ホガースを学び、ロンドンに来てからターナーやコンスタブル等をたくさん見る機会を、昨年はホックニィ、ルシアン・フロイト、そしてラファエル前派を吸収し、ちょうどそのラファエル前派とホックニィやフロイトの間の欠落していた時代をラウリィによって埋めることができたように感じています。

 ラウリィがイギリスの外で知られている存在だとは考えられません。なので、イギリスの近現代の市井の暮らしに興味がある人、イギリスという国の成り立ちに興味がある人には興味深い展覧会だと思います。

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