LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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フェリシティ・ロット、ウィグモア・ホールでの最後の「ソロ」リサイタル

2013.11.17
11月15日に、ウィグモア・ホールでイギリス人ソプラノ、フェリシティ・ロットのソロ・リサイタルを聴いてきました。
 
 感想を読んで頂く前に、2010年の春に観たこちらのオペラの感想を読んでみてください。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1177.html

 イギリスを代表するロットがウィグモア・ホールにデビューしたのは1975年6月6日。2013年11月15日は、彼女にとって、ソロとしてウィグモア・ホールに立つのは最後の舞台になります。ピアニストは、ロットのデビューのとき同様、グレアム・ジョンソン。

DSCN0123.jpg

 ウィグモア・ホールのウェブに掲載されていた情報です。

Performers
Dame Felicity Lott (Soprano)

Graham Johnson (Piano)

Programme
Schumann
Widmung: Liebeslied: Meine Rose: Singet nicht in Trauertönen

Wolf
From Italienisches Liederbuch: Auch kleine Dinge; Du denkst mit einem Fädchen mich zu fangen; Was für ein Lied soll dir gesungen werden?; Mein Liebster ist so klein

So lasst mich scheinen

Kennst du das Land

Strauss
Das Rosenband: Ruhe, meine Seele: Ach, was Kummer, Qual und Schmerzen: Morgen

Interval, during the interval there is a complimentary drink for every member of the audience

Bridge
Go not happy day: When you are old

Britten
Fish in the unruffled lakes: O Waly, Waly: Quand j'étais chez mon père

Bizet
Guitare

Bernard
Ça fait peur aux oiseaux

Yvain
Je chante la nuit: Mireille: Tant pis pour la rime

Offenbach
Dites-lui: Ah,que j'aime les militaires!


About this concert

Connoisseurs of fine singing took note when a young soprano made her Wigmore Hall debut on a warm June evening in 1975.

Felicity Lott, accompanied by her friend Graham Johnson, immediately connected with the Hall’s audience. Over the past four decades, Dame Felicity’s glittering career has included many exceptional performances at the Hall, recognised in 2010 with the award of the prestigious Wigmore Hall Medal. This programme reflects the warmth, charm, humour and humanity of one of Britain’s best-loved artists.

This will be Dame Felicity’s final solo recital but not necessarily her last appearance on the Wigmore Hall stage.


 ウィグモア・ホールのリサイタルで、一晩のうちに英語、ドイツ語、フランス語による歌がこれほど歌われる舞台を観たのは本当に久しぶり。2回、もしくは3回くらい、高音がきつそうな場面がありました。が、全体を通して、ロットは時に真摯に、時に洒脱に、時に朗らかに、そしてプロのオペラ歌手としての佇まいが崩れることは全くありませんでした。オペラ歌手としてのエレガンスの極みでした。

 前半と後半でドレスを替え、プログラムは無料、休憩時間中には聴衆全てにシャンペンが振る舞われるなど、誰が当夜の主役だか判らないくらい至れり尽くせり。大仰なセレモニィは全くなく、ロットの最後のソロ・リサイタルを聴衆とともに、そしてロットのためにと、ホール側の姿勢は素晴らしい物でした。

 アンコールに2回応えたあとのカーテン・コールで、舞台に現れた支配人のギルフーリィ氏が、40年間、ロットのマネイジャーを勤めた男性を紹介しました。彼がこれまでに彼女が演じた役や出演した歌劇場の名前を読み上げながら彼女を称えた時だけ、ロットも手を目に当てていました。ウィグモア・ホールからの感謝の贈り物は、ロットのホール・デビューの際のプログラムの表紙を額に入れたもの。

 フェリシティ・ロットとピアニストのグレアム・ジョンソンはともにウィグモア・ホールのパトロンでもあります。これまでにも、ホールが資金集めの特別な催しをする時には、聴衆からの寄付がホールにとって如何に大切かを熱く語ってきました。

 ロットが最後に歌った曲の題名は判りません。歌われた内容は、「この家(ウィグモア・ホール)はとても大切だから、これからも支えて行きましょう」というかんじでした。

 湿っぽい涙も、大仰すぎる演出も振る舞いもなく、ともにこの歌を楽しみましょう、このホールが素晴らしいから、そのような暖かい雰囲気に満ちた夜でした。意外だったのは、聴衆の中に、ロイヤル・オペラの音楽監督、アントニオ・パッパーノが居たこと。

 僕がフェリシティ・ロットの歌を初めて聴いたのは、1994年にカルロス・クライバーが東京で指揮した「薔薇の騎士」での元帥夫人ででした。その時は、クライバーのことも、ロットのことも、そして「薔薇の騎士」というオペラのことも全く知りませんでした。一つおぼろに覚えているのは、ロットがインタヴューで、「このオペラでは私は聴衆にたくさんの涙を流させてきたのだから、クリネックスから感謝されても良いかも」なんてことを言っていたような。

 ロンドンに来てからやっと、フェリシティ・ロットが素晴らしいオペラ歌手であることを知りました。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-282.html

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-285.html

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-291.html

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-1773.html
 
 イングリッシュ・ナショナル・オペラでオッフェンバックの「La belle Hélène」も観たのですが、その感想は書いていなかったみたいです。僕が観た夜は、相手役のトビー・スペンスが風邪で声が出ないというアクシデントがあったからか、大御所がここまでやるかと感心するくらいロットの素晴らしい演技で、会場は笑いに包まれていたのを覚えています。

 始まりがあれば終わりがあるのは当然ですし、ソロのリサイタルはこれで最後でも、他の歌手との競演はこれからもあるとのこと。それでも、ロットによる「カプリッチョ」や「インタメッツォ」、得意とするフランス語によるオペラの舞台をもっと観る機会があったならとの悔いはあります。

 オペラ歌手が全てディーヴァ然としていたら食傷するでしょうから、ロットのようにさりげなく颯爽としていて、そして自然体の振る舞いは幾人かのオペラ歌手、特にソプラノの皆さんには見習って欲しいものです。

 それにしても、故カルロス・クライバーとともに仕事をした歌手もどんどん現役の舞台から去り、イギリスではチャールズ・マッケラスやコリン・デイヴィスが亡くなり、ダンスの世界でもピナ・バウシュやマース・カニンガムが世を去り、20世紀後半から舞台芸術の質を高めてきたであろう人たちが少なくなってきているのは、仕方ないこととはいえ寂しさも。ということで、ロットとは何の関連もないですが、以前からずっと生の舞台を観たいと思っていたパティ・スミスの来年2月のチケットをポチッと。

http://www.flickr.com/photos/89578620@N00/10881868426/


[追記]
本文を書き終わってネットで情報を探してみたところ、ロットは東日本大震災発生直後の4月に日本でリサイタルを。

http://www.ojihall.jp/topics/interview/lott_int.html

 あれから2年以上、今でも日本での公演を渋る舞台関係者は多く居るのに。このインタヴューを見つけるまで知らなかった。このようなことを声高にふれて回らないのは、ロットのたしなみなのだろう。

[追記2]
ロットのインタヴューを読んでから王子ホールの予定を観てみると、1月早々、ドイツ人バリトンのクリスティアン・ゲルハーヘルのリサイタルが2回ある。ゲルハーヘルは3月にウィグモア・ホールでも2回リサイタルがあるけど、なんだか、ロンドンに来るより、日本に行くことが増えて行きそうなオペラ歌手になってしまうのかな。それにしても、1月にゲルハーヘル、2月にはトッパン・ホールでクリストフ・プレガルディーン(演目はこれかな、http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-2016.html)、そしてイアン・ボストリッジがやはりトッパン・ホールで4月中旬にリサイタル。日本ではリートの人気が高いのかな。いずれもこれほどの歌手のリサイタルにしてはチケットの価格は手頃に思える。

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Comment

- Vermeer

椿姫さんのブログからやって参りました。

王子ホールには亡くなった吉田秀和氏もいらしていたそうです。「彼女は自分が歌いたい歌でなく、聴き手が聴きたい歌を歌っていた」旨のことを語っていたと記憶しています。

N響定演・プレヴィンの棒で『カプリッチョ』終景を歌いに15年振りの来日の際、サインを頂こうと探しているうち、彼女のアルバムは様々な歌を集めたbouquet の様なものが多いなと思い至りました。「数多くの歌の花束を作っていらっしゃいますが、ガーデニングはお好きですか?」「ええ、とっても。」

その時のやわらかな笑顔と、王子ホールのアンコール『あすの朝』を生涯忘れないと思います。
2015.01.30 Fri 10:55 URL [ Edit ]

- 守屋

Vermeer さん

 コメント、ありがとうございます。素晴らしい思い出をシェアしてくださって嬉しいです。王子ホールでのロットの衣装は、ロンドンでは観たことのない朗らかなパターン。でもお話を伺って、ホールを訪れた聴衆の皆さんとの距離を縮める意図があったのかなと。

 彼女のような聴衆とともにあるスター・オペラ歌手はもはや少ないのかなと感じます。
2015.02.01 Sun 21:18 URL [ Edit ]

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