LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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エイリアン・パスポート

2014.03.12
すっかり春爛漫のロンドン。4月のどか雪なんてことにならないことを。

 まず、WWWが生まれて、25周年だそうで。

Sir Tim Berners-Lee: World wide web needs bill of rights
http://www.bbc.co.uk/news/uk-26540635

Links to the past: a history of the world wide web – timeline
http://www.theguardian.com/technology/2014/mar/12/history-world-wide-web-timeline

 25年前、ウェブが生まれる前の生活がどんなものだったかは、もう思い出せないです。25年というとても短いタイム・スパンでこれほどの発達・普遍性を成し遂げた技術はそれほどないのではないかと考えます。最近だと、3Dプリンターの急激な躍進がこれに近いのかなという気がします。

 本題。その25年に満たない独立国家が国内で暮らしているある人たちにしていることを最近、知りました。元会社の現役の皆さんや、国際的な人権問題に興味がある人には馴染みのある言葉・機能なのかもしれないですが、僕は初めて聞いた単語とそのあり方に驚きました。時系列で。

 以前、一度だけ登場してもらったことのあるエストニア国籍の知人男性が、ロンドンの暮らしに疲れて遅くとも年内にはイギリスを離れると聞いたので、先週、久しぶりに会いました。

 彼がエストニア国籍とロシア国籍を保持しているのは、以前、本人から聞いたので知っていました。が、その経緯はあまりにも複雑だし、個人的なことなので書きません。一つだけ、彼がエストニアのパスポートを取得したのは18歳のとき。試験を受けて取得したそうです。

 深刻な理由があってイギリスを離れるのかを尋ねた所、ちょうど仕事が一段落し、それならば、すべてにおいてロシアが悪いという西側のメンタリティに疲れたので、いいタイミングではないかと。今回のウクライナの混乱でも、イギリスや欧米で報道されることはプチンだけが悪者というものばかり。ロシア国内で今回の混乱がどのように語られているかを報道しなければ、バランスは全く取れていない。と、そのようなことを穏やかに話す知人。そういえば、知人はいずれロシアに戻ると言っていたなと思い出していたときに、知人は続けて。

 「今回のクリミアの独立の動きで、エストニア政府が動揺しているんだ」。

 知人がこう話しだしたとき、「エストニアとクリミアの間に、深い絆があるのか?」、といぶかしく思っていると。

 「エストニア国内で暮らすロシア系住民を引き止めるために、エイリアン・パスボートしか持っていない彼ら(ロシア系住民)にエストニアのパスポートを発給しようかどうかを検討し始めたらしい」。

 「Wait! エイリアン・パスポートって、何?」。

 「エストニアが旧ソ連から独立した時に、エストニア国内に居たロシア系住民で、エストニア国籍を持たない人が持てるパスポートだよ。知らなかった?」。

 知人曰く、そのような趣旨でエイリアン・パスポートを発効しているのはエストニアとラトヴィアだけ。知る術すらない、と。

 「僕の両親はエイリアン・パスポートしか持っていない。EU圏内はヴィザなしで移動できるけどイギリス、スイス、ノルウェイにはヴィザなしでは入国できない」。

 スイスとノルウェイは判るけど、なぜにイギリスが。あ、シェンゲンだな。

 「エストニア国内でエイリアン・パスポートを持っている人たちがエストニア国籍を取得するには、幾つかの試験に合格しなければならないんだ。僕の両親の世代に、エストニア語を勉強して試験に合格しなければ、というのは難しいんだ」。このようなことをしてきたエストニア政府だが、クリミアのロシア編入が現実味を持ってきたことで、人口の半分弱を占めるロシア系住民を引き止めることが重要な課題になってきた、というのがエストニアとクリミアをつなぐ鍵。

 独立してもうすぐ25年になろうとする「西側」の国でこのような区別があるとは全く知りませんでした。また、EUの人権委員会ではこれは問題ではないのか、と疑問が浮かびます。Wikipediaではラトヴィアの方が詳しく言及されています。

 興味を惹かれたので、ネットで検索してみた所、エイリアン・パスポートを発効している国は他にもあります。例えば、デンマーク。

http://www.nyidanmark.dk/en-us/coming_to_dk/asylum/passport_application.htm
 
 しかし、デンマークの場合は難民への発効であって、「国」という機関が勝手に決めた国境の中にずっと暮らしていたにもかかわらず、「存在しない国民」へ発効されているエストニアのエイリアン・パスポートとは趣旨が違います。

 想像は膨らみ、ではスコットランドが独立したら同地域内に居る非スコットランド人は、クリミアがロシアに編入したらそこで暮らすウクライナ国籍保持者はどうなるんだろう。

 ボーダーレスという概念は、地上にもネット上にも既にあり得ない世界であることを感じます。

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Comment

- ハマちゃん

私は常々、西側発の情報しか入って来ない状況にフラストレーションが溜まっています。
一方的にロシア=悪みたいな図を作り上げる構図に。

多くの人が指摘していますが、ウクライナの反政府運動(前政権に対して)への資金面などでの支援は西側(EUや米国)が関わってる、
それもソチ五輪中ならばロシアが手も足も出ない事を狙ってやった、
汚いのは西も同じである、という説が

どこまで本当なのかは分かりませんが、さもありなんな話ではあります。

アフガニスタンを反ソ連に仕立てるのにアメリカが後ろで糸引いて(戦闘訓練までしてやって)たのと同じような話なのでは、と。
結局それが仇になって、アメリカ仕込みの戦闘技術や武器がブーメランのようにアメリカに歯向かう道具になったのは滑稽ですね。

特に西側発のメディアだけにしか触れない世界では、正義vs悪のようなことを簡単に言いますが(過去の歴史に関しても)

実際は「双方」が「正義」と「信じきってる」からこそ、戦争が起こるのです。

どこの誰が「俺は悪の帝王だあー!世界を征服してやるうー!」みたいなこと考えてるでしょうか。
「その立場なりの正義」があって、争いが起こるのです。

それを、一方だけを悪(だからこっちは善)という構図で発信することの欺瞞に、気持ち悪くてしょうがありません。

私は身近にロシア人の知り合いはいませんから、そういう話を聴く機会すらもないですが、守屋さんは貴重な機会だと思いますよ、そういう話や意見を聴けるというのは。
ロシア人でも当然一枚岩じゃないでしょうが。

エイリアン・パスポートの話は初耳でしたが、旧ソ連圏だったら「いかにも」ありそうな話ですね。
2014.03.14 Fri 14:54 URL [ Edit ]

- 守屋

ハマちゃん さん

>どこの誰が「俺は悪の帝王だあー!世界を征服してやるうー!」みたいなこと考えてるでしょうか
 もしかしたら居るかもしれないですが、素晴らしい着眼点だと思います。これから、覚えておきたい点です。最初から「善」と「悪」を設定するのは簡単だと思います。でも、その「善」と「悪」が生まれたグレイ・ゾーンを探る努力が、最近では見過ごされているような印象があります。

 知人の話を聞いていて、ま、フラストレイションも有って話したかったんだろう思いつつ聞いていて、確かに理が通ると思いました。反面、では、西側でない国々で知らされていることの多くのことが「真実」なのか。僕には知る術はないです。

 メディアや西側の国を闇雲に擁護するつもりはないです。しかし、知りたい情報が得られない、だから信じられなくなる(とハマちゃんサンが仰って居る訳でないことは承知です)というのは、それはそれで自分の視野を自ら狭めてしまうと感じます。

>アメリカ仕込みの戦闘技術や武器がブーメランのようにアメリカに歯向かう道具になったのは滑稽ですね
 政治家の目論見が失敗したのは滑稽ですが、その「滑稽」で命を失った多くの人々、家族や友人を失った人々にとっては、滑稽という言葉で語られてはたまらないでしょうね。

 エイリアン・パスポート、もう少しましな名称はないものかと。存在が認められていない市民だからというのが理由からだと思いますが、インテグレイションの意志を全く感じられません。
2014.03.16 Sun 07:55 URL [ Edit ]

- ハマちゃん

そうですね、現実に失われた命に、滑稽という言葉は使えないですね。
政治家の目論見の浅さ、に、向けられるべき言葉ですね。

私は、東側の情報は西よりさらに操作されたプロパガンダが展開されてると思っているので、単純に、双方の情報が入れば真実に近づくわけではないだろうとも思ってます。
が、東側から(あるいは他地域ならシリア政府から見た正義像なり、カダフィ大佐の正義像なり)見た正義像を知り得ない中でのフラストレーションがある、そういうことを考えてます。
悪とされてた側のリーダーが一方的に殺されて、私たちは都合良くあちらの言い分を知り得ずに、あたかも正義が勝ったかのように歴史が書かれていくことの怖さ、を。
2014.03.16 Sun 20:31 URL [ Edit ]

- 守屋

ハマちゃん さん

>あたかも正義が勝ったかのように歴史が書かれていくことの怖さ
 言及されているシリアに関して、この点は本当に判らないし、まだ最悪に行き着いていないのではとの恐怖を持ちます。なぜ、アサド大統領はまだ大統領としていられるのか?これだけ命が奪われて、なぜ、世界は何もできないのか

 同時に、シリア、現在のクリミアも近い将来、その悲劇、争乱を忘れられて行くのではないか、と。数年前のグルジアの混乱はどのように静まって、世界は忘れたのか。先日、ある新聞の旅行セクションが、グルジアが旅行先として熱い注目を集めているとの特集記事を載せました。
 愕然としました。あれほど世界が揺れたグルジアの争乱をすっかり忘れていた自分。その国が今では、西側の消費社会の一部として取り上げられる。

 不条理が多い世界だと思います。
2014.03.17 Mon 21:53 URL [ Edit ]

- ハマちゃん

シリアに話逸れてしまってすみませんが

あの化学兵器攻撃を、アサド(政権)は否定してて、その否定自体がウソなのか、それとも本当に反政府軍の一部とか、あるいは第三者がやってるのか、誰にも分からない、
だけどアサドが悪者になっていて
これがリビアのパターンでドサクサでアサドが殺されたら真相が分からないまま「悪者のアサドが死んで一件落着」になるのでは、と。
実際には中東や東欧の揉め事はかなり裏があって、マッチポンプみたいなことが行われてるということは相当あると、私は思っています。
悪者とされてる人間1人がやってること、ではないことが多いのでは、と。
(北朝鮮はちょっと違うけど)

リビアのドサクサ紛れにカダフィ大佐を殺してしまったのは、戦闘と言うものはそういうものなのかもしれませんが

少なくともイラクのフセイン大統領のときはもっと真っ当な裁判が出来たはず、
結論はいずれにしても死刑だったのだろうけども、自白なり、より真実に近い供述を得られる最後のチャンスを、年末のそれこそドサクサな唐突な絞首刑で幕を下ろした。
(死刑確定から4日間での施行)
あれはもの凄い違和感がありました。
年末にやってしまえばその後は新年のカウントダウンで世界は「とりあえず次行こ。」ってなっていくのを見越して?

何かを隠そうとしているのでもなければ、あんな死刑のやり方はしないと、どうしても思ってしまう。

アサド夫人への手紙とかいうタイトルのブログ文を前にどこかで読んだんですが、砂漠のバラと呼ばれて改革の象徴、希望でもあったらしい(私は全然良く知りませんが)夫人への失望を表した文でしたが
この夫人も、そんなに180度変わったのか、そういうことも含めて、単純に、不思議なんですよね。
私が平和な国での暮らししか知らないからなんでしょうか。

グルジアが今は旅行先として注目を集めてるというのは知りませんでしたが
西側社会は忘れていても、東側は忘れてないでしょうし、ロシアにとってこういう動きがどういう意味を持つのかとか、そういうことまで西側の消費者は考えないですもんね。
目の前にあることが見えない、立ち位置で見えるものが違う、そういうことがちょっと怖いと感じるこの頃。
2014.03.18 Tue 05:49 URL [ Edit ]

- 守屋

ハマちゃん さん

 ハマちゃんさんが書かれた疑問への答えは僕も持っていません。昨日、友人のW夫人とシリアのことも含めて話した時に、自然と、最も怖いのは争いの影で苦しんでいる多くの一般市民のことが忘れられてしまうことだろうと。

 世界を変えられるのは政治家でもテロリスト、まして宗教家でもなく、普通の人々であると希望しています。
2014.03.19 Wed 15:43 URL [ Edit ]

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