LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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現代を生きて行けないから死を選んだ女性、または死を選べる時代に負けないぞ、と

2014.04.09
イギリスでは、気候変動なんて存在しないという輩がたくさん居ますが、こんな暖かくて天気が安定しているイギリス、今年の夏がどのような天気になるのか。

 先週、ミクシィを通して友人と、現代社会においてその技術の進み方や生活様式の激変について行けない人はどうするのだろうということについて簡単に意見を交換しました。で、4月6日のサンディ・タイムズに掲載されたのは、現代の技術先行の社会で生きて行ける自信を失った89歳のイギリス人女性が、ディグニタスで自らの命を終わらせたというニュース。タイムズの記事はリンクできないので、後追いで掲載したテレグラフとインディペンデントの記事をリンクします。

Retired British art teacher ends life at Dignitas ‘because she couldn’t adapt to modern world’
http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/retired-british-art-teacher-ends-life-at-dignitas-because-she-couldnt-adapt-to-modern-world-9242053.html

I cannot adapt to modern times, said teacher who ended life at Dignitas
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/10748699/I-cannot-adapt-to-modern-times-said-teacher-who-ended-life-at-Dignitas.html

 引用はテレグラフから。引用は僕の勝手な判断なので、できれば記事の全文を読んでみてください。

A retired art teacher committed suicide at Dignitas after becoming disillusioned with the trappings of modern life.

The 89-year-old complained that modern technology was turning people into “robots,” before travelling to Dignitas in Switzerland, to end her life — despite not being terminally ill.

Speaking days before her assisted suicide last month, the former teacher, who asked only to be identified as Anne, said she felt that she faced a choice either to “adapt or die” and said she was not prepared to adapt to a world in which technology took precedence over humanity.


 アンというクリスチャン・ネイムの89歳のイギリス人女性は、現代の技術社会に適応できるか、さもなくば死ぬかの選択を考え、自らの死を選んだ。

Before her death last month she told The Sunday Times: “People are becoming more and more remote  … We are becoming robots. It is this lack of humanity.”

She added: “I find myself swimming against the current, and you can’t do that. If you can’t join them, get off.”

She described the modern age as “cutting corners” and said she could not adapt to it, as she felt all the traditional ways of doing things had disappeared. “They say 'adapt or die’,” she said, days before taking a lethal dose of barbiturates. “At my age, I feel that I can’t adapt, because the new age is not an age that I grew up to understand.


 (ディグニタスで命を終える前に)アンがメディアに語ったのは、「人々はずっと疎遠になってきている。まるで、ロボットのよう。私自身、流れに逆らって泳いでいるように感じる。私は(現代の技術社会に)適応できない。なぜなら、今の時代は、私が(社会を)理解しながら育った時代ではないから」。

 
 呼応するかどうかは別にして、朝日新聞のウェブで読んだ記事。

沈黙のまま暮らす 65歳以上男性の6人に1人
http://www.asahi.com/and_w/life/SDI2014040741031.html

 もう一つ。日本から送られてきた新潮社のPR雑誌の「波」に掲載されていた篠田節子さんの、新刊発売にあわせてのインタヴュー。その中で、「昔は親が病で倒れたら、介護は2年くらいだった。今では、その介護の期間がずっと長くなっている(から大変)」という趣旨の言葉。

 年老いた世代が、若い世代によって牽引される技術革新について行けないというのは21世紀だけのことではないでしょう。ただ、最近、ロンドンの暮らしの中で頻繁に感じるのは、その技術革新について行けない人が選べる選択肢が物理的にも精神的にも、力づくでなくされているのではと。

 例えば旅行。最近では劇場のチケットは言うに及ばず、飛行機の搭乗券、列車の切符さえ自分で印刷する、もしくはスマートフォンの画面で確認するというのが幅を利かせています。

 引退して会社でそのような印刷をする機会が無くなった人々はどうすれば良いのか?スマートフォンを利用する経済的な余裕がない年金世代の人はどうすれば良いのか?年に一回か2回程度の旅行の切符を印刷するためにプリンターを自宅に持てる人がどれくらい居るのでしょうか?

 コンピュータのスクリーン上で、予約まではできたとしても、「印刷」という術を持たない、持てない人たちは企業や社会のターゲットではないから無視される。そのような流れが凄まじい勢いで加速しているように感じます。その勢いにあらがえなくてアンと同じ選択を望む人が増えてしまうのではないか。そしてその脱落者を労る機能を今の社会は持てない、持とうとしない。

 記事の最後で警鐘が鳴らされているように、社会の変革に適応できないから死ぬことを選択することが暗黙の了解になることは、僕は反対です。きれいごとですが、生まれること、そして死ぬことを選べないから人生は楽しみ、悲しみ、苦しみ、そして刺激に満ちている、と思います。

 多くの人が考えることではないかもしれないですが、僕には、今回、アンがとっと選択ですら、現代の技術社会では、織り込み済み・予測済みの現象としてしか捉えられないのではないか。社会への警鐘にはならないのではないか、そんな印象があります。だからこそ、現在の僕の身体的/精神的な立ち位置からは、そのような社会にたてつかないままで終わることはしたくない、と。

 平均寿命が伸びたことが「幸福」であるとは限らない、という考えを掘り下げる動きが有っても良いのではないかと、このニュースを読んで思いました。

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Comment

- ハマちゃん

ショッキングな記事です。
だけど、もの凄く、もの凄く、その気持ちが分かります。
自分がそういう年齢になって、「あなたみたいな(時代遅れな)客はうちに来なくていいです」という扱いを受け続け、どこの店でも排除される存在となり

必要な物すらも買えない、必要な場所にすらも行けない、
なぜなら最新技術を駆使出来ないから

という状況になったら、そういうことを考えてもおかしくないと思うんですよね。

それは、単純に技術に付いていけないから、という話じゃないわけです。
アンさんが言っているように、人間性の喪失に対して、絶望してしまうわけです。

>その技術革新について行けない人が選べる選択肢が物理的にも精神的にも、力づくでなくされている

私が常日頃思っている事も、それです。

技術革新は、「その気」になれば、それは覚える事は不可能ではない。
だけどそこに潜む「切り捨て」が、私には我慢ならないです。
「お宅、プリンタが無いなら、どうしようもないですね。」っていう、切り捨てが。
(うちも無いですよ。)

大きな病院に電話かけるにしたって、音声ガイドにしたがってプッシュボタンを押し続けながらようやく目的の部署に繋いでもらえるか
そこでさらに電子オルゴールの音聴かされながら待たされるのか
とにかく、人間がまともなサービスをするという形態が崩れて来てしまっているのは、もう変えられないものなのか。
私はアンさんの半分の年齢ですが、それでもすでに「流れに逆らって泳いでいる」気持ちで、すでに疲弊しています。

技術革新は常にあったではないか、と言いますが、
ここ20年程の革新のスピードは人類史に例を見ないスピードであり、
一人の人間の一生涯の間に、ダイヤル式の電話→プッシュホン→ポケベル→携帯&メール→SNS…それに伴い、買い物の仕方や公共料金の支払い方法も同じように変わって行った、と。
という、これだけの変化が起こるという事態は、過去に無かったはずです。
それに付いていけない人がいて、だけど従来の手段は強制的に無くす(経済的事情優先)、
経済すら回っていれば良いという発想、そこに人間性が感じられなくなって絶望するのも、無理ないと、共感を覚えてしまいます。
2014.04.09 Wed 15:29 URL [ Edit ]

- 守屋

ハマちゃん さん

 このニュースを読んでまずはアンへのシンパシィをもちました。で、どのように書けるかと考えながらじわじわと気分の中に広がってきたのは、ディグニタスが彼女の希望を受け入れたことへの驚き。つぎに、イギリス国内でのほぼ何も議論が起きない状況が一番のショックです。少なくともイギリス国内では、彼女の決断は、誰も驚かないのか、と。

 技術革新とその速さについて。こんなことを書くとどこかのねじが間違っているのかと思われるかもしれないですが、いつも考えていること。

 人類の生活の中で、その質を高めるための技術革新や発見は、例えば、過去5000年の間、間断なく続けられているとして。人間の脳の機能、脳細胞の許容能力はそれほど変化がないのではないだろうか、と裏付けのないまま考えます。

 時代ごとに天才が居て、努力家がいて、彼らの発見と牽引力によって生活は激変してきたことでしょう。その変革が一般人にも判るように普遍化され普及されて行く過程で、特に現代において、なぜ、個々人の適応力の差が拡大されて行くのか。人類が元々持っている生存機能の中に、「経済」という機能はなかったのかな、なんてことを考えています。
2014.04.10 Thu 06:10 URL [ Edit ]

- ハマちゃん

これ、イギリス国内で議論になってないんですか。
(TVもラジオもネットも、最近はニュースに接してなくて)

でも、イギリス人はそういう面では(他人事に関しては)ドライですからね。
英南部の洪水の時も、一部では「ああいう場所にわざわざ住むという選択をしてるのだから」っていう人がいたくらいですからね。
(私の周りでは大概が同情してましたけど)

あと、人間の脳の機能、に関しては仰る通りと思います。
いつも思ってました、携帯で見積作成が出来る機能とか出来て、「外出してたので」という言い訳が出来なくなる世界になりつつあっても
それでもどんなに便利になったって一人の人間が一定時間内に出来ることには限度があるし、一日は24時間しかない、人間は一定時間眠らなくてはならない、食べる時間も要る、そういうことに変わりはないのに
何故テクノロジーが膨大な処理量を可能にしたからと生身の人間の処理量がそれに比例すると考えるのか、と。
テクノロジーを使う能力は比例するかもしれませんが、人間自体はそんな短期間に進化するわけがないのに。

あと、便利さを求め過ぎて結果的に人間の方がテクノロジーの奴隷になることは、本末転倒ですよ。
2014.04.10 Thu 08:47 URL [ Edit ]

- 守屋

ハマちゃん さん

>イギリス国内で議論になってないんですか。
 幾つかの新聞がタイムズの後追いという形で報道しています。が、その後の広がりはないようです。僕個人としては、ガーディアンが全く取り上げていないのが不思議です。

 僕の携帯電話は、友人に「アンティーク」と言われるくらいのもの。日本のガラケーよりもずっとずっとアンティークです。なので、携帯電話で見積もりができるだなんて、それが現実なんですね。

 人間、寝て、食べて、そして働ける。24時間働けるなんてことあり得ないし、それを望む社会の方がおかしいはず。でも、そのおかしいと言う「声」を挙げる方が少数なんだと思います。

 何か思い出せないと思っていたのは、マイケル・サンでるの「What money can't buy」。だらだらと読んでいるのですが、アンという女性が自らの命を終えるために、是非は脇に置いておいて、お金を払ったという事実が、命をお金で扱えることが不自然に感じない社会になってしまっているのか、と。
2014.04.11 Fri 17:20 URL [ Edit ]

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