LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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ポッペアの戴冠@バービカン・ホール

2014.10.05
メンバーシップの特典だった割引がなくなって足が遠のいていたバービカン。そうなると、どうしても観たいという演目だけを絞ることになってしまったのだが、そのどうしてもの一つが、昨晩セミ・ステイジ形式によるモンテヴェルディの「ポッペアの戴冠」。

Monteverdi L'incoronazione di Poppea
Academy of Ancient Music / Howarth
4 October 2014 / 19:00

Please note: due to a recent cast change, Lynne Dawson will be replacing Anna Caterina Antonacci in the role of Poppea.

Also, regretfully the Academy of Ancient Music’s Music Director, Richard Egarr, has had to withdraw from the concert for family reasons. We are delighted to announce that Robert Howarth will now direct the performance.

Monteverdi’s most sensuous – and scandalous- opera performed in concert by Robert Howarth, the Academy of Ancient Music and a stellar cast.

The story of the Emperor Nero’s intrigues, and the rise of his mistress Poppea is supposedly a cautionary tale. But L’incoronazione di Poppea (1643) tells that story in music of such beauty that audiences regularly find themselves seduced. Robert Howarth directs the Academy of Ancient Music and a world-class cast.

Power corrupts; but love can corrupt absolutely, and Monteverdi’s L’incoronazione di Poppea proves that point in music so dangerously seductive that it can still shock today. Following on from last year’s L’Orfeo, this second part of the Barbican’s three-year Monteverdi opera cycle is the first of three baroque programmes this season exploring the themes of Love, War, Betrayal and Intrigue. The Academy of Ancient Music are joined by leading modern exponents of these roles: Sarah Connolly sings Nerone, while Lynne Dawson's expressive soprano makes her a natural fit for the role of Poppea..


 このプログラムの発表当初、チケットが発売になった時のタイトル・ロールは、カタリナ・アントナッチだった。が、けっこう早い段階で彼女の降板が発表になり、ポッペアはイギリスのオペラ界で著名らしい、でも全く聴いたことのない、リン・ドーソン女史に。

Monteverdi L'incoronazione di Poppea
Semi-staged performance

Academy of Ancient Music
Robert Howarth director
Alexander Oliver stage director
Lynne Dawson Poppea
Sarah Connolly Nerone
Sophie Junker Drusilla/Virtu
Daniela Lehner Amore/Damigella
Marina de Liso Ottavia
Matthew Rose Seneca
Iestyn Davies Ottone
Andrew Tortise Arnalta
Vicki St Pierre Nutrice
Elmar Gilbertsson Lucano/2nd Soldier
Gwilym Bowen Valletto/1st Soldier/Highest Familiari
Richard Latham Liberto/Middle Familiari
Charmian Bedford Fortuna
Phillip Tebb Littore/Bass Familiari


 バロックにありがちな、本来は他愛のない愛憎劇を最大限に拡大した物語はwikiでどうぞ。

日本語
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%83%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%81%AE%E6%88%B4%E5%86%A0

英語
http://en.wikipedia.org/wiki/L%27incoronazione_di_Poppea

10月15日にオペラ・シティで上演される情報。とても判り易い。
http://www.allegromusic.co.jp/POPPEA2014.html

 前夜には、イングリッシュ・ナショナル・オペラによるヘンデルの「XERXES」を観た。どちらもよい舞台だったのだが、出演歌手陣のチャーム/カリスマという点では、「ポッペア」の方が上だったように思う。

 演奏が始まる前にこの夜のパフォーマンスは、Academy of Ancient Musicの創始者で、先日亡くなったクリストファー・ホッグウッドに捧げるとのアナウンスがあった。

Christopher Hogwood obituary
http://www.theguardian.com/music/2014/sep/24/christopher-hogwood

ブログ仲間の椿姫さんのレポ
http://ameblo.jp/peraperaopera/entry-11934656438.html

 ステイジ上の演奏者は、ハープシコード演奏もする指揮者(若いのに既にかなり太め)を加えても、11人という小編成。しかしながら、演奏される一つ一つの楽器の音が聞こえて満足できた。

 演出家によるセミ・ステイジ式の舞台は階段がしつらえられ、そこに幾つかの椅子が置かれている。こんな階段様式だと階段を登ったり下りたり、また足音がして歌手も歌い難いのではないかと思ったが、実際は、幾人かの歌手は客席を移動しながら歌うなど、視覚的には予想以上に面白かった。

 第1幕、第2幕では、正直、ポッペアのリン・ドーソンには失望感を抱いた。プログラムによると、30年以上のキャリアで日本にもよく行っているそうで、技術は確かだと思う。また、高音域は、失礼を承知の上で、年齢を感じさせない力強さがあり他の旬の歌手達と遜色はなかった。しかし、中音域、低音域になると途端に声から芯が無くなってしまうようで、もどかしかった。ピアニッシモは声が小さくて聞こえなくなる歌い方、というのではない。声が小さくても会場中に聞こえることがピアニッシモの技術だと思うのだが、この点はサラ・コノリィやイェスティン・デイヴィース等の今が旬の歌手の勢いに完全に遅れを取っていたように思う。

 ネローネを演じたサラ・コノリィ。舞台に登場したその瞬間から、「男性」そのものの美しい凛々しさで会場をひれ伏せさせたのではないかと。そのまま宝塚の男役のトップに君臨できるほど。もちろん、歌も素晴らしかった。

 イギリスのみならず、世界で人気のカウンターテノール、イェスティン・デイヴィース。珍しく白のスーツだったのは、敵役のオットーネのキャラクターを立たせる為か。彼にはさして難しい役ではなかったのではないかと感じる、安定した歌唱。

 こんなに巧かったかな、とよい意味で驚いたのがマシュー・ローズ。もう一人よい歌唱だと思ったのはポッペアの乳母、Arnaltaを歌ったAndrew Tortise。彼の経歴紹介によると、近い将来、ロイヤル・オペラでモーツァルトの「ミトリダテ」に出演予定とのこと。このオペラも久しく舞台で観て居ないので楽しみ。

 モンテヴェルディのオペラを生で聴くのは昨晩が初めて。音楽的には、第3幕の盛り上がりが楽しめた。更に面白かったのは、リブレット。人間の狡猾さ、小賢しさ、貪欲さ、身勝手さはローマ帝国時代から全く変わっていないのだなと。ポッペアの戴冠が決まり、それによって自分の地位も上がると歓喜するアルナルタが歌う内容は、現代にもしっかりと通じるものがある。

 物語だけを読むと、ポッペアという女性は性格の悪さでは誰にも負けていないだろうと感じる。昨晩の舞台の大団円、全ての邪魔者を見事に排除し、皇帝の妃の地位に昇りつめたポッペア。柔和な笑みを幽かに、儚げに浮かべるリン・ドーソン演じるポッペアからは、性悪という雰囲気を感じることはなかった。あたかも、「私は何もしていないわ。愚かな人たちが勝手に身を滅ぼして、私は妃になったの」という印象だった。

 そう思ったとたん思い浮かんだのは、京極夏彦の「絡新婦(じょろうぐも)の理」。弁当箱のような厚さのあの小説を説明するのは容易ではないので、ややネタバレ気味に。犯人は、自分の地位を確保する為に、邪魔者同士が殺し合う犯罪を発動するというもの。帰国中に懐かしくなってまた購入して今でも読んでいるので、リン・ドーソン演じるポッペアの柔和な笑みに、犯人の印象が重なった。もしかして演出家の、そのような悪女とは逆の印象を生み出す為にアントナッチからドーソンに変更されたのかと。アントナッチでは、「私は何も悪いことはしていないのよ」という雰囲気を感じるのはとても難しいと思う。

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Comment

主役以外では満足 - レイネ

守屋さんもいらしてたんですね。お会いできなくて残念でした。この公演は、ひいきの歌手二人(サラ様とイエスティン君)の競演、しかも好きな演目ということでこの秋一番注目していたものです。アントナッチ降板は非常に痛かったし、その代役がリン・ドーソンと知って、「なんでいまさらあの人?????」と納得いきませんでしたが、実際の舞台ではもう哀しくなるほど、声にハリも清らかさも滑らかさもないし、年よりずっと老けて見えるルックスにもがっかりでした。今まで舞台観賞した「ポッペア」では、マレーナ様ネローネにダニエル・デニースのポッペア、フランコ・ファジョーリ(!)ネローネにマリア・ベングトソンのポッペアで、ネローネ役には大満足、ポッペア役はう~~~む、というキャストだったのですが、ドーソンに比べたらまだましだったなあ、と今回は非常に残念でした。
最前列で鑑賞したので、サラ様ネローネのかっこよさと、イエスティン君の表情の細やかな演技の隅々まで堪能できたのでよしとしましょう。
2014.10.05 Sun 16:46 URL [ Edit ]

- 守屋

レイネ さん

 会場の後方真ん中の席でした。なので、双眼鏡で歌手の表情をしっかり観察できました。コノリィはほれぼれするほど凛々しかったです。
 
 ドーソン女史は、最初の歌でいきなり声が掠れたのが僕には痛かったです。3幕は、僕の思い込みでこんなポッペアの演技もありだろうと思いましたが。

 イギリスに比べると、大陸の方が「ポッペア」を体験する機会がたくさん有るようですね。ファジョーリのネローネなんて、とても羨ましいです。
2014.10.05 Sun 17:08 URL [ Edit ]

今シーズンのハイライトでしたね - ロンドンの椿姫

ブログのリンクありがとうございます。私もENOのXerxes観ましたよ。上手なイギリス人のメゾソプラノとカウンターテナーの競演という意味ではこのポッペアと同じですが、どちらも良かったものの、近くで観たポッペアの方が良さが直接に感じられました。サラ様もイエスティン君も、歌唱力はもちろんのこと、細やかな演技もさすがでした。
2014.10.05 Sun 18:32 URL [ Edit ]

- 守屋

ロンドンの椿姫 さん

 コノリィ演じるネローネが、解説によると友人の設定らしいルカーノとのデュエットでは、ネローネはバイ・セクシャルの設定なのかと思うほど迫力がありました。

 ENOでのアンドリュー・ワッツも良い歌唱でした。イギリス出身のカウンターテノールも次第に注目されるようになってきているのかなと期待します。
2014.10.06 Mon 05:37 URL [ Edit ]

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