LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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大学は、ノーベル賞科学者すら切り捨てる

2015.06.14
日本では数日遅れて報道された、ノーベル賞受賞者、ティモシィ・ハント博士の発言。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-2486.html

 発言内容と同じくらい僕が興味をかき立てられたのは、大学を辞してしまったハント博士の指導者としての資質はどうなのだろうということ。今日、6月15日のオブザーヴァ紙に、ハント博士と奥さん(やはり科学者)のインタヴューが掲載された。

Tim Hunt: ‘I’ve been hung out to dry. They haven’t even bothered to ask for my side of affairs’
http://www.theguardian.com/science/2015/jun/13/tim-hunt-hung-out-to-dry-interview-mary-collins

By the end of the week, however, several female scientists and commentators had written or come forward to defend Hunt, including plant biologist Professor Ottoline Leyser, of Cambridge University and a fellow FRS.

“Tim taught me as an undergraduate and I have known him for years,” she told the Observer. “It is quite clear to me that he is not a sexist in any way. I don’t know why he said those silly things, but the way his remarks have been taken up implies that women in science are having a horrible time. That is not the case. I, for one, am having a wonderful time.”

Hunt was also supported by Dame Athene Donald, professor of experimental physics at Cambridge, who described Hunt’s sacking from the ERC as hugely sad.

“During the time I worked with him he was always immensely supportive of the ERC’s work around gender equality. His off-the-cuff remarks in Korea are clearly inappropriate and indefensible, but … he has worked tirelessly in support of young scientists of both genders.”


Shamed Nobel laureate Tim Hunt ‘ruined by rush to judgment after stupid remarks’
http://www.theguardian.com/science/2015/jun/13/tim-hunt-forced-to-resign

However, several senior female scientists last week came forward to defend Hunt, including the physicist Dame Athene Donald, the biologist Professor Ottoline Leyser, and the physiologist Dame Nancy Rothwell. All three, although critical of Hunt’s specific remarks about women, spoke warmly about his past support for younger scientists of either gender. “Many will testify to Tim’s great support and encouragement for younger scientists, both male and female. Indeed, he has trained and mentored some outstanding female scientists,” said Rothwell.

 インタヴューの行間から感じるのは、ハント博士は愚かな発言をしてしまったような会議で上手く立ち回れるような人ではない、と。結果論だが、行かなければ良かったのに、と今は思う。

 おそらく、ハント博士は科学者として、また指導者としては優れた人物なのだと思う。彼の失敗は、インターネット上に流されるニュースの移動の速さ、そして彼が今暮らす社会が21世紀であると自覚していなかった(のではないかと感じる)ことだろう。全てが瞬時にジャッジされ、「良いね」されなかったら即、反論をする余地が与えられないまま叩かれる。そんな社会。

 それは、奥さんも同じようだ。インタヴューではハント博士の辞職が大学側からの強制だったことが明かされている。奥さんのユニヴァーシティ・カレッジへの怒り。

Nor has Collins fared well. “My relations with University College have been badly tarnished,” she adds. “They have let Tim and I down badly. They cared only for their reputation and not about wellbeing of their staff.”

 この箇所を読んでの感想は、なんてナイーヴ。イギリスだけかもしれないが、大学にとって重要なのは、評判・評価。それが揺らげば、大学は「顧客(学生)」と顧客がもたらす「金(授業料)」を失う。研究分野での論争であったなら、大学はハント博士を支援したかもしれない。しかし、学業・功績に関係ない発言でも、それがランキングからの脱落を引き起こすのであれば、たとえノーベル賞授賞者であっても大学はそのような人物を即座に切り捨てる。是非はともかく、それが「今」の大学だろう。

 日本はどうなのだろう。国立大学は独立法人となって生き残りに懸命で的外れな「国際化」を垂れ流し、私立大学は20年後には多くが廃校の危機に直面するように思う。そのような時代に、大学が教員をどこまで守るのか、守る余力があるのか。

[追記:6月16日]
太陽電池が充電されて、再びデイタ送信が始まった彗星探査機プロジェクトの中心人物が叩かれたとき。

Rosetta scientist Dr Matt Taylor apologises for ‘offensive’ shirt
http://www.theguardian.com/science/2014/nov/14/rosetta-comet-dr-matt-taylor-apology-sexist-shirt

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Comment

- Yoshi

私も見出しを見てはいましたが、辞職する程になっているとは知りませんでした。印象としては、学者によくいる、やや常識外れの、研究室ぼけとでもいうタイプの方の、本音も含んだ失言のように思いました。しかし、この方の研究室からセクハラなどの被害で訴える人がでているならともかく、今回は失言だけですよね? だとすれば、何らかの懲戒処分はあってしかるべきですが、大学首脳部が無理矢理辞職を迫る、つまり実質的な解雇となると、行き過ぎに思えます。

私も教員としてかなりの失敗をしてきましたし、同僚の失敗も見てきました。学生に重大な不利益が起きるケース、例えば深刻なセクハラ、パワハラなどでは解雇を含む処分が検討されるべきと思いますが、このケースはそれに当たらないと思います。犯した過ちに正しく見合った処分を求めて、彼には法廷闘争を含めて頑張って欲しかった気がしますが、年齢から見ても、精神的に消耗して、そのエネルギーもなかったのでしょうか。

UCLやKCLなど、ロンドン大学のコレッジでは、色々な理由で教師が解雇されるのが日常茶飯事になりつつあるようです。そういう組織風土の中で起きた事件と言えるでしょう。本人に反省と更正の機会を与えず、学者として事実上の死刑判決を言い渡すようなやり方では、他の教員も萎縮していることでしょう。組合や同僚のサポートが無かったのだろうとも推察します。大学は半ば独立した専門家の集まりなので、お互いをサポートする体制が弱く、非常に冷たい組織になりがちですね。
2015.06.15 Mon 07:06 URL [ Edit ]

- 守屋

Yoshi さん

 昨夕の、イヴニング・スタンダードに載った小さい記事です。

Londoner's Diary: Will Tim Hunt’s nemesis at UCL now stand up?
http://www.standard.co.uk/news/londoners-diary/londoners-diary-will-tim-hunts-nemesis-at-ucl-now-stand-up-10320940.html

A decision of such gravitas would normally be taken by the council of UCL, which is headed by Dame DeAnne Julius, formerly member of the Monetary Policy Committee of the Bank of England, and a keen bonsai enthusiast.

However, The Londoner has learned that the full council was not informed and its members are furious. “The council was not consulted,” says my source. Moreover, “there will be many council members and academics at UCL unhappy with this reaction to a silly joke by an elderly professor”.

 全てがランキングで判断される社会では、教育を受ける「平等」と、教育を提供する側の「安定」というのは既に無くなりつつあるのかなと、漠然と考えています。別の所で教えて頂いた内田 樹さんの記事もとても参考になりました。

国立大学改革亡国論「文系学部廃止」は天下の愚策 - 内田 樹
http://blogos.com/article/113789/
2015.06.16 Tue 04:56 URL [ Edit ]

- ハマちゃん

ヒステリックな反応、対応、に、恐怖すら覚えます。
ハント博士のケースも、マット・テイラー博士のシャツの件も。

女性がプロフェッショナルな場で泣く、というのは、実際にあることで、なんだかんだ、男性にはそういうことは許されないというか、プライドなんでしょうか、だから泣くということはまず無いわけで
「相対的」にはハント博士の言うようなことは実際起きているのでは、と思います。
それを公の場で言ったのは失言にはなるのでしょうけどね。

うちの主人が年に一度、職場で部下に考課面接を行う時、毎年ゲンナリして帰宅します。
女性部下がいつも考課面接の場で泣くから。
それも同じ人ではなく、毎年違う女性に泣かれる。
全員、その職場でのプロフェッショナルです。
だけど自分が頑張ったという気持ちと、職場からの評価が食い違うと、そこで泣く。
そういうことに苛立っている(泣きたいけど泣かずにやってる人、相対的には恐らく男性が多くなるのかもしれません)人はいるのだろうと、私は思いますけどね。

それは置いといて、こういう極端過ぎる反応/対応は、現代では皆が常に地雷の上を歩いている状態で、ひとつ小さなミスをしたらボカン、人生が吹っ飛ぶという世界ですね。
生き難くて嫌になるな。
そんなフェミニズム、私は要らないですけど。
2015.06.16 Tue 11:24 URL [ Edit ]

- 守屋

ハマちゃん さん

 返信、遅れてすみません。

 僕は、「フェミニズム」という言葉が使われなくなった時に、女性と男性が、おがたいの長所を活かして生活のできる社会になるのかなと思います。

 ハント博士の発言の直前に、オブザーヴァに掲載された、フランス人女性シェフの話は、けっこう考えることがありました。

Hélène Darroze: life according to the world’s best female chef
http://www.theguardian.com/lifeandstyle/2015/jun/07/helene-darroze-female-chefs

It is advice that has served her well. Darroze says she felt “big emotion” on receiving the award for the world’s best female chef. But isn’t it patronising to have a special prize just for women?

“No. Like every minority, we have some special awards,” she replies. “On the contrary, I take that as an opportunity to speak about us [female chefs]. I take it as a good thing, as motivation to other women.”

 引用した部分だけでなく、男性上位と思われている分野でどのように活動の質を高めてきたかのプロセスと自己分析は、やればできるではなく、やらなければできないというメッセイジがあるように思います。

 僕は自分がかかわっている分野が心理学ですから、もしかしたらやや例外なのかもしれないですが、イギリスでは男性もよく泣くと思います。泣くのは自然な機能ですし。
2015.06.18 Thu 18:21 URL [ Edit ]

- ハマちゃん

男性もよく泣く、のは、イギリスも日本も、どこでもあります。

ハント博士の話及び私の先のコメントは、職場では、の話をしてます。
私は職場では男性がワンワン泣くのは見たことなくて。
女性はすぐ泣きます。沢山見てきました。
正直、同性でもウンザリする程で。
2015.06.19 Fri 07:20 URL [ Edit ]

- ハマちゃん

iPhoneからで、細切れですみません、

ハント博士のジョークはpolitically incorrect で、そういう場ではマズイんでしょうが、正直こんな騒ぎになったのは気の毒。
女性が職場で、批判されたり、disagreement があると泣く人が多いのは事実なのに。
そのせいで建設的な議論が出来なくなったり、というのはあるでしょうから。
ああいう場で口にしてしまったこと、が、最大の不注意だとは思いますが、
この反応はフェミニズムという名のイジメに見えますけどね。
2015.06.19 Fri 07:38 URL [ Edit ]

- 守屋

ハマちゃん さん

 >女性はすぐ泣きます。沢山見てきました。
 
 このような経験を伺うと、僕は自分の居た職場が例外だったのかなと思えて来ます。東京で働いていた頃の営業職場では、女性同僚がたくさん居ましたが、彼女達が泣いている姿を観た記憶は全くありません。どこかでこっそり泣いていたのかな。

 ハント博士への批判を的外れと批判する「フェミニスト」も居るようです。「フェミニズム」を社会に還元できるかどうかは、「フェミニズム」という意識を生み出した社会がその意識は誰が必要としているのかをしっかりと受け止めることが大切なのではと思います。

 今晩、ガーディアンのウェブを斜め読みしていて、フェミニストが声を挙げられ、その声が程度の差はあれども注目を集める社会で僕は暮らしたいなと思った記事。

Glass ceiling in the sky: Qatar Airways’ problem with pregnant cabin crew
http://www.theguardian.com/world/2015/jun/19/glass-ceiling-in-the-sky-qatar-airways-pregnant-employees
2015.06.19 Fri 21:01 URL [ Edit ]

- ハマちゃん

前職では一度、会社で泣きましたが、トイレで涙拭いて素知らぬ顔で勤務続行しました。
会長の前でプレゼンしなければならないときに、朝イチで会長の機嫌を損ねてしまい(前日部署内で打ち合わせた通りにやったことが、たまたま会長の気に入らず)、フロアのショーグン様から「お前は一日中給湯室に篭って、出てくるな!」と言われ。
プレゼン控えてる状態だったから、立て直さねばならず、取り敢えずトイレでちょびっと涙拭いてみた。
守屋さんの御同僚さんたちも、トイレで、というパターンあったのかもしれませんね。
主人の職場は大変みたいですよ、批評しなければならない場で泣かれると、やらねばならない話が出来ない、って。
私も、泣くなら後からトイレで泣け、と思います。
その場はやるべきことに集中すべき。
フェミニズムも色々なんですね。
女性の足を引っ張るフェミニズムもあれば、まともな人もいて。
2015.06.20 Sat 21:30 URL [ Edit ]

- ハマちゃん

http://www.ishiyuri.com/entry/2015/06/16/25-examples-of-male-privilege-from-a-trans-guys-perspective

↑トランスジェンダーで女性から男性になった方の体験
こういうのは、説得力あります、私には。
2015.06.21 Sun 20:08 URL [ Edit ]

- 守屋

ハマちゃん さん

 幸せの涙ですら時に体力を消耗するであろうに、ネガティヴな気分で泣くことは、自分だけでなくて周りの人達の体力/精神力を浪費させる、ということは多くの人が知っておいても良いかなと思います。

 リンク、ありがとうございます。判っていても、このような体験を知るのは面白いです。本当に、説得力ありますね。
2015.06.21 Sun 20:52 URL [ Edit ]

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