LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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ディズマランド:アートが伝える社会の不都合

2015.09.23
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8月下旬、突然、そしてこつ然と現れたバンクシィが企画・実現させたDismaland

http://www.dismaland.co.uk/

 チケット争奪戦を勝ち抜け、「£86-, you must be joking?! The cost of the return tickets from London to Weston-super-Mare is £86-? Unbelievable!」、とロンドンに住むイギリス人の友人全てが驚いた・呆れた運賃を支払い、片道およそ3時間弱をかけてイングランド西部まで行った甲斐があったと断言できるほど、ディズマランドを堪能して来た。

 ウェストン・スパ・メア駅から歩くこと10分ほど、視界に入って来たディズマランドの正面には長蛇の列。11時15分だけどまだ開園していないのだろうかとの思いは甘かった。列は2つあり、一つはチケットを購入できなかった、もしくはあえて購入しなかった皆さん。もう一つは、チケットを購入できたにもかかわらず、入場の順番を延々と待っている皆さん。聞くともなしに聞こえて来た会話によると、チケットを持っていても、連日、行列は午前9時頃から出現していたらしい。後ろのイングランド人とおぼしき女性二人は、「こんなに待たせるなんて、これこそ憂鬱だわ」とこぼしていたが、彼女達を含めて1時間待ちの行列中から、反乱が起きることが無かったのは、やはりイギリスだからだろう。

 僕が最初の持ち物検査に到達する頃には、チケットを持ってる人たちの行列に加わる人がほぼ途絶え、チケット販売所から歓声が上がったので、人数制限は徹底していたようだ。そのスロットのチケット保持者が全て入りきると当日券待ちの人たちもかなりの人数、入れたのではないかと思う。入場制限に限らず、施設の運営はかなりしっかりとされていた。

 公式の持ち物検査所を過ぎて、ディズマランドの入り口で、報道の通り、来園者を更に陰鬱にさせる皆さんによるお出迎え。「陰鬱な場所に行くのだから、明るい(派手ともいう)服を着ていこう」、とピンク地にパイナップルとブーゲンビリアのアロハシャツを着ていったのは正解だった。入り口だけでなく、内部でも何度か絡まれた。

 ランド内に入って最初のがっかりは、人魚姫が取り払われていたこと。本家のネズミーランドからクレイムがきたのだろうか。更に、ランド内でも建物内部の展示を見る行列、行列、そして行列。とりあえず、外部の展示物の写真を撮ってから、行列に並ぼうと決めた。

 外部に設置されている大きな展示物は、単体だけでだと、一度観れば充分かな、という印象。ざっと観てから、列の短かった展示へ向かう。
 
 内部で、外の展示物の単調さに少し萎んでいた気分が、叩き起こされた。内部で展示されていた写真、ドローイング、人形からは、芸術/美術作品が社会、そして政治への強い声となることを鮮烈に感じた。例えば、これ。

https://www.flickr.com/photos/89578620@N00/20850786993/in/dateposted/

 これを観た時、誰の作品なのかは全く知らなかったが、目を離せなかった。帰宅してから公式プログラムを読むと、イスラエル出身のアーティストだった。意図は判らない。が、僕には、戦争・紛争地域に閉じ込められた子供達の姿を描いているのかなと。もう一つは、これ。

https://www.flickr.com/photos/89578620@N00/20849161474/in/dateposted/

 個人的に、入れ墨・タトゥーについては、するのはその人の自由だけど、僕にはそれを見せつけられなくてもいい権利があるはず、という立ち位置。が、これらの人形を観た時、社会のマジョリティが作り上げた規範の為に社会にとけ込めず、でもその社会に参加したいけど強い声を持てない人には、タトゥーは自分自身を精神的に守る為の鎧になることもあるのかなと。

 これだけは観ておかねば、ということで馬車の事故で死亡したシンデレラを。朽ち果てた城の入り口で何の説明も無いまま、「写真が要らなければ、直ぐに入れてやっても良いぞ」という男性係員の意図が分からず、でも死亡したシンデレラの写真を撮りたかったので、写真が要るという方に並んだ。そうすると、入り口を入ってすぐ、事故現場に通される前の狭い空間で、「右の壁に貼ってあるピース・マークを観て笑え」とカメラをかまえた女性係員。何事と思いつつ、シンデレラ死亡事故の現場を心ゆくまで撮影してから向かった出口では、写真を売っていた。

 何の写真だと思って画面を見ていると、画面に現れたのは、シンデレラ死亡事故現場の横で間抜けに笑う自分の姿。写真、一枚£5−、もちろん購入した。でも、どうやってこんな鮮明に撮れたんだろう?あっ、合成だ。素晴らしい、この来園者の期待の斜め上を行くエンターテインメント!

 主催するバンクシィ、そしてメディアもこのディズマランドを「陰鬱」という言葉で表現する。おそらく、バンクシィ側はそれを意図的に演じているのだろう。ディズマランドの趣旨、集められた作品群、そして係員によって演じられる非幸福的な演技から感じるのは、「今の社会を作ったのは僕たち。それに不満なら叩き壊してみれば良いじゃないか。でも、できないだろう。不満を口にするだけでは何も変わらないんだよ」というアジテイション、もしくは喝!アートは、社会を揺さぶる「パワー」、そして「意志」。

 ディズマランドでもう一つ感じたことは、既にロンドンの友人に書き送ったもので。

I have only one concern about the land. There are many young people working there whose task is to depress the visitors and make them miserable. I cannot remember if they are professional actors or hired locally. I could tell that none of them are evil. So, if they are not trained actors and if they do not know how to switch off their roles and go back to their own personality, how can they draw the line between their own life and acting as miserable people there? The reason of this, I have recently been interested in what difference would be between education and brainwash.

 この企画が短期間であることが、残念でならない。展示された作品の中に後生に語り継がれる傑作があるとは感じなかった。しかし、「今」僕たちの暮らし、社会の中で起きている不都合を、視覚化によって伝えることができる作品はもっと多くの人に社会が抱える課題を自ら考えることを促すだろうと思う。

写真
https://www.flickr.com/photos/89578620@N00/collections/72157658311329399/

スクリーンショット 2015-09-23 15.11.21
 
参加アーティスト
Andreas Hykade (Bavaria), Amir Schiby (Israel), Ammar Abd Rabbo (Syria), Axel Void (USA), Banksy (UK), Barry Reigate (UK), Ben Long (UK), Bill Barminski (USA), Block9 (UK), Brock Davis (USA), Caitlin Cherry (USA), Caroline McCarthy (IRL), Damien Hirst (UK), Darren Cullen (UK), David Shrigley (UK), Dorcas Casey (UK), Dietrich Wegner (USA), Ed Hall (UK), El Teneen (Egypt), Escif (Spain), Espo (USA), Fares Cachoux (Syria), Foundland (Syria/South Africa), Greg Haberny (USA), Huda Beydoun (Saudi Arabia), James Joyce (UK), Jani Leinonen (Finland), Jeff Gillette (USA), Jenny Holzer (USA), Jessica Harrison (UK), Jimmy Cauty (UK), Joanna Pollonais (Canada), Josh Keyes (USA), Julie Burchill (UK), Kate MacDowell (USA), Laura Lancaster (UK), Lee Madgwick (UK), Leigh Mulley (UK), Lush (Australia), Mana Neyestani (Iran), Maskull Lasserre (Canada), Michael Beitz (USA), Mike Ross (USA), Neta Harari Navon (Israel), Nettie Wakefield (UK), Paco Pomet (Spain), Paul Insect & BAST (UK/USA), Peter Kennard & Cat Phillips(UK), Polly Morgan (UK), Pure Evil (UK), Ronit Baranga (Israel), Sami Musa (Palestine), Scott Hove (USA), Severija Inčirauskaitė-Kriaunevičienė (Lithuania), Shadi Alzaqzouq (Palestine), Suliman Mansour (Palestine), Tammam Azzam (Syria), The Astronauts’ Caravan (UK), Tinsel Edwards (UK), Wasted Rita (Portugal), Zaria Forman (USA)
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