LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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Sizewell B原子力発電所見学ツアーに参加して知った福島第一が世界にもたらした衝撃

2016.09.07
今日、9月7日、イースト・アングリアのサフォーク県にあるSizewell B(以下サイズウェル)原子力発電所の見学ツアーに参加した。参加しようと思ったきっかけはイギリスと中国の間の、ヒンクリィ・ポイントC原子力発電所建設を巡る政治駆け引き。

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-2724.html

 最初は話題沸騰中のヒンクリィに行こうかと考えた。一日で戻って来ることは可能だが、運賃が高いのとサマセットまで行ってがっかりしたくないなという気分が勝り、他を探した。距離的にはロンドンを南に下るダンジネスが近いのだが、その近辺が故郷の友人曰く、車でないときついとのこと。消去法だが、他方、見学ツアーが最長で3時間とあるサイズウェルなら時間をかけていく意義があると思い、申し込んだ。

https://www.edfenergy.com/energy/power-stations/sizewell-b

 サイトの情報では、サイズウェルはイギリスで唯一の「加圧水型原子炉」。現在イギリス国内で稼働する原子炉の中で最も新しい。原子炉の廃棄処分は2035年となっているが、幾つかの情報を読むと流動的らしい。

 イギリス人ではないので、申し込みと同時に、書類による身元調査を受けなければならなかった。検査にはパスし、その上で見学当日にもパスポートの持参は必須だった。見学センターで、ツアー中に得た情報を第三者には渡しません、という誓約書に署名しなければならなかったので見学ツアーの詳細を書くことは控える。

 ガイドの話を聞いて感じたのは、プラント内の全てがロジカル。安全対策も、完璧なんてことは無いことは判っているから、何かが起きた時の保全策は3歩くらい先を見据えて計画、そして実行される。僕はこれまで原子力発電所をみたことが無かったので、機会があるのであれば体験したかっただけ。しかし、この見学ツアーは、人事担当者や、組織を見直したい管理職が参加しても得るものがあるだろうと思う。

 これくらいは書いても良いだろう。ガイドが話してくれた中で印象に残ったこと。「例えば、コントロール・ルームで3人が働いている。そのとき最も経験の長いエンジニアが気づかずに間違いをし始めた。その時に、若いエンジニアがそれは間違っているのではないか、と声を挙げることができる強さがこの職場では大切な」ことである。

 もう一つ鮮明に印象に残ったのは、場の雰囲気。ガイドと一緒に歩いていて働いている人たちが前から歩いて来ると、彼らはとても朗らかに挨拶を交わす。その挨拶が終わると同時に場を覆うのは、触ろうと思えば触れるような緊張感、もしくはシリアスネス。まるで、冗談を言ってはいけない、なぜなら、ここで働くことはファンタジィではなく、安全を維持することが至上の目的だから。巧く表現できないが、自分たちの仕事の到達点を知っている、そしてそこへ到達することの難しさを理解している、そんな緊張感。

 僕が日本人であるから、自ずとガイドの話の4割ほどは福島第一が絡んできた。で、これまで全く知らなかったのは、福島の事故を受けてイギリスの原子力発電所がとった改善策。その名称は、Japanese Earthquake Response Programme (JER)

DSC04038.jpg

EDF Energy response to the Fukushima nuclear accident
https://www.edfenergy.com/content/edf-energy-response-fukushima-nuclear-accident

PDFファイル、200ペイジ
https://www.edfenergy.com/sites/default/files/japanese_earthquake_response_programmes_final_report_to_the_onr.pdf

Fukushima and the UK nuclear industry
http://www.onr.org.uk/fukushima/

Japanese earthquake and tsunami: Implications for the UK nuclear industry(PDF、315ペイジ)
http://www.onr.org.uk/fukushima/final-report.pdf

Fukushima Daiichi
http://www.niauk.org/fukushima-daiichi

 日本の原発情報は日本語でしか読んでいないので、このような政策がイギリスに存在することを知らなかった。貰った資料を斜め読みしただけだが、日本のような地震が起きることはほぼ無いと判っていても、更に福島の事故を教訓に安全性を高める。ツアー終了後に貰った資料のあるペイジでは、フロー・チャートの展開でどの部門の安全対策の向上の進捗状況をシンプル、且つ判り易く強調している。

 ロンドンへ戻る間に考えていたことは、結局ヒンクリィ・ポイントを巡る最大の論点は原子炉本体の安全策ではない。なぜなら、イギリスの原子炉は「安全」だという立ち位置は揺るがない。重要なのは、国家の機密の保全であると。

 イギリス人の友人曰く、「見学ツアーに参加するからといって、原子力発電所のすべてが判る訳ではないからね」とはまさにその通り。ただ、原子力発電所、そして原子力全般の話題に参加するなら、原子力発電所がどのようなものなのかを観ておいても良いだろうと考え、その考えは僕自身には正しかった。ちなみに、原子力発電所に反対の人が見学ツアーに申し込んで来ることはあまり多くないそうだ。

 イギリスに居住していなくても、日本からイギリスに来る日程にあわせて見学ツアーに参加することは可能だそうだ。ただし、イギリス国外からの申込者の身元調査は6週間以上かかることもあり得るので、興味がある人は2ヶ月前をめどに問い合わせをした方が良いだろう。また、資料を読むと、イギリスの原子力発電所の見学センターは、9/11の時に閉鎖されたらしい。それが再開されたのは、福島の影響で社会が発電所への誤解を深めないようにということがある様だ。サイズウェルの見学センターが再開されたのは2012年後半。なので、何かが起きたらまた閉鎖される可能性はなきにしもあらず。

 今日、サイズウェルを体験して、ますますヒンクリィ・ポイントも観てみたくなった。そして、上に張り付けた最後のリンクの中で書かれているように、福島以降の日本の援助の為に協力しているのがセラフィールド

http://www.sellafieldsites.com/

Sellafield 'riddled with safety flaws', according to BBC investigation
https://www.theguardian.com/environment/2016/sep/05/sellafield-nuclear-plant-riddled-safety-flaws-according-bbc-panorama

 ヒンクリィは自力で見学ツアーに参加できるだろう。でも、セラフィールドは個人ではほぼ無理。どこかのメディアが僕を送り込んでくれないだろうか。

 サイズウェルを見学して、原子力発電所の存在を良し、とはしない。誰も答えたくない質問はたくさん有る。他方、見学ツアーという「疑似空間」での体験だとしても、少なくとも原子力発電所がどのように管理されているかの一端を知ることができたのは有意義だった。

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