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LONDON Love&Hate 愛と憎しみのロンドン

1999年のクリスマス・イヴにロンドンに。以来、友人達に送りつけていたプライヴェイト・メイル・マガジンがもと。※掲載されている全ての文章の無断引用・転載を禁じます。
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グループ・リレイションズ・カンファレンス

2008.09.28
日本の政治家と比べたら、ゴードン・ブラウンデイヴィッド・キャメロンがまともな政治家に思えてしまいます。

 先日、サイコダイナミック・カウンセリングについて書いたもの(http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-900.html)の後半でふれた、ワークショップに参加してきました。

Group Relations Conference

http://loveandhatelondon.blog102.fc2.com/blog-entry-920.html

 正直な所、僕も正確に説明できる自信はないですが、極々簡単にいうと、ワークショップの目的は恐らくこんな感じです。
 ジークムント・フロイトメラニー・クライン等がPsychoanalytic Psychotherapy/ Psychodynamic Counsellingの基礎にし、発展させてきた人格形成の理論の幾つかを、組織内において個人の性格や個性が、無意識に組織の機能、役職にどのような影響を及ぼすかを、しっかりと構成された人工的な「組織構造」の中で経験する、というもの。

 これ、別にバークベックの特許というわけではなく、イギリス国内だけでなく世界的にもよく知られているらしい、Tavistock Instituteという研究機関が中心になっているようです。
http://www.tavinstitute.org/work/development/leicester_conference.php
http://www.tavinstitute.org/
ちなみに、ロンドンのSwiss Cottage駅の近くにあるイギリスを代表するメンタル・ヘルスの病院、Tavistockhttp://www.tavi-port.org/)とどのような関係が有るかは知りません。また、イギリス国内のすべてのカウンセリング・コースがこのようなコースをしているわけではないようです。カウンセリング・センターで、他のコースに在籍している同僚たちからは羨ましがられることもあれば、胡散臭い目で見られることもあります。

 いつにもまして皆さんにはなんの事やらかもしれませんが、自分用の記録も兼ねて。カンファレンスの最後に、マネジメント側から、「守秘義務」について考慮するようにとのお達しもあり、また、今の世の中、誰と誰がどこでどうつながっているか予想も出来ないですから、固有名詞、性別、年齢は一部を除いてぼやかして書きます。

 このカンファレンスには3年前にも一度参加していますが、ディレクターが代わったので、若干構成が変わり、また、現在のディレクターの方針で、カウンセリング・コースの学生だけでなく、実社会でマネジメントや人材育成に関わっているプロフェッショナルな皆さんの参加も積極的に受け入れています。前回は、外部からの参加者はいませんでした。この外部からの参加者の皆さんがそれぞれ個性的で、彼らによってもたらされた変化を僕は大いに楽しみました。
 外部からの参加者は全部で7人。エグゼクティヴ・コーチングをしているイギリス人、コンサルティング会社を経営しているイスラエル人(わざわざこのためにイギリスまで来たそうです)、イスラエルの大学で心理劇を教えている方など。中でも異彩を放っていたのが、ロンドン在住の経営コンサルタントで流暢な日本語を話すアメリカ人と、世界でトップクラスのMBAコースを擁する研究機関から派遣されてきたリーダーシップ論の権威。何でそんな人たちまでと最初は驚きました。ワークショップの間に何度か話して判ったのは、この二人はサイコダイナミック・カウンセリングへの興味は薄い。が、組織の中で、組織を構成する人々の精神的な葛藤(親子関係とか、個人的な経験によるもの)がどのような悪影響、もしくは刺激になるかを経験する為に参加したそう。

 あとは、カウンセリング・コースに在籍する学生と教授陣。学生と言っても、ほぼ全員が社会人なのでちゃらちゃらした雰囲気は微塵もなく。ま、毎日朝9時から午後9時半まで続くので、騒ぎたいという気力も失せます。

 バークベックには、二つのサイコダイナミック・カウンセリングのコースがあります。一つは僕が在籍する「大人」の患者を対象にするコース(Adult course)。もう一つは「Children & AdolescentsC&A)」。
 今回は、外部からの参加者が男性の参加者数を押し上げたのですが、逆に、C&Aに在籍する男性が一人しかいないという事実に「やっぱり」という感慨を持ちました。と言うのも、今年になって何度もイギリス国内で報道されているのは、イギリス国内の初等教育機関(幼稚園や小学校に当る)で働く、または働きたいと希望する男性教員が激減しているということ。
 現在のイギリスは、多くの社会問題を抱えています。その一つが、急増している「小児性愛者」によって引き起こされる地域社会が内包する不安と軋轢。男性というだけで、初等教育機関で働く男性教師全員が「小児性愛者」とみなす社会の偏見によるプレッシャーに耐えられないそうです。その、ただ一人の男性に尋ねてみたところ、危機的な段階にまできているそうです。カウンセリングの現場でも、男性カウンセラーを取り巻く状況は集団ヒステリーの様相だとか。彼は、「僕は子供達の助けになりたい。そのためにも続ける」と。

 今回、更に興味深かったのは、多様な人種。学生の多くはイギリス生まれですが、移民2世や3世というバックグラウンドを持つ人が半数を占めていたように思います。ジュウイッシュインド系ムスリムアフロ・カリビアンナイジェリアユダヤ系アルゼンチン旧東独からの移民2世、パレスチナ、そしてロマの血を引く人など。それぞれの家族が引き継ぐ苦悩をほんの刹那、垣間見た程度ですが、なんて稀有な状況に居合わせることが出来たことか。僕だけかもしれませんが、イスラエル人の参加者とパレスチナ系の参加者が隣り合って座ってカウンセリングのことを話している場面は、「奇蹟」としか思えませんでした。

 カンファレンスは、学んだこと、経験したことを如何に現実社会につなげるかということが課題の一つです。正直な所、組織論、リーダーシップ論を僕の現実にすぐさまつなげることができるかどうかは判りません。が、今回さまざまなイヴェントを通して多くの参加者が共有した「希望」というか「願い」のように感じたものがありました。それは、「他者」をどのように理解し、どのようにつながっていくか、というもの。

 最後の大きなイヴェントとして、最終日前日に「コミュニティ・イヴェント」というものがありました。確か全部で8つくらいのグループに分かれて、「作られたコミュニティで何を感じたか」、ということを話、何かで具現化してみようということが行われました。僕が参加したグループは、アルゼンチン出身者、インド系アメリカ人、アイリッシュナイジェリアンブラック・アメリカンミドル・クラス・ホワイト・ブリティッシュ、そして日本人。この多岐にわたる人種の違いを超えて共有できることはあるのかどうか。理想に過ぎないのかもしれませんが、充実したディスカッションでした。
 このイヴェントの最後に、あるグループによる抱腹絶倒のデモンストレイションがありました。参加者全員がホールに集まり、イヴェントから得たこと、感じたことを話し合うという時に、そのグループの全員(8人くらいだったか)がホールの中央に椅子を持って移動し、車座になってすわりました。
 何が始まったかというと、全員が一斉に話し始め、ある時点で立ち上がって怒鳴りあい、最後には肩を抱き合って仲直り、と言うもの。凄かったのは、一人一人が全く別の言葉を話していたこと。前述のアメリカ人が日本語で「熱々のご飯にはイカの塩辛」とか「カツどんが食べたいな」とか真面目な表情で言う度に、僕だけが大笑い。ブリティッシュ・イングリッシュスペイン語、ヘブライ語、アラビア語、イディッシュなど。あとから聞いた所によると、サイコ・ドラマを教えるイスラエル人の参加者が構成を考えたそうです。
 理解できなくても、理解できるのかもしれない、そんな感想を持ちました。

 もちろん、参加者全員がHappyなんてことはなく、不満や猜疑心、怒りを顕わにする参加者もいました。それが普通だと思います。全員が全く同じ感情を共有したら、それは怖いことだと僕は思います。

 今回は2回目の参加だったので、余裕を持って様々な状況に身を置くことができたので、予想していた以上に楽しむことが出来たのは良かったです。ただ、現実として、このワークショップに参加したことがどのように僕自身に結びついていくかを理解するには、まだ時間がかかりそうです。

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Comment

- ハマちゃん

子供の教育やカウンセリングに関わる男性スタッフが、そんな色眼鏡で見られてプレッシャーを感じているなんて知りませんでした。
確かに小児性愛者の犯罪はあるけど、そんなに何でもかんでも疑心暗鬼になるほどなんでしょうか。
(ハッキリ言って、日本の方が犯罪件数としては多いと思うのに、しかも教育現場の男性教員による犯行が多いのに、日本ではそういう職場の男性差別ってあまり聞かないような気がする)
英国の男性がそういう職を敬遠する、というのも当然ですね。

リーダーシップ論の権威の方も参加しているというのは、ビジネスの現場も結局は心理学だから、なんでしょうね。
私も会社員時代、仕事って心理の駆け引きだなあと思ってました。
理屈だけじゃない、複雑な心理が絡み合っているから、理屈が正しいかどうかは関係ないところでエネルギーを使う。
同じ事を言っても、相手がどう受け止めるか、それぞれの人の家庭環境、育ち方、で全く違いますもんね。
同じ問題にとっさにどんな対処をするか、も違う。
そういうことを踏まえるというのも、当然リーダーシップに求められるのでしょうね。
2008.09.29 Mon 10:33 URL [ Edit ]

- 守屋

ハマちゃんさん

 今日もカレッジで件の方に会えたので、更に幾つか尋ねたのですが、幼稚園で働く男性職員はイギリス全土から居なくなるのは、もはや時間の問題だそうです。僕は、男性職員がFather Figureとして必要というやや短絡な議論にはすぐに賛同することはないですが、性差によって増長される偏見もここまでくると怖いです。
 小児性愛者に社会がどう対応するかの懊悩は、現代イギリスの社会構造に暗い影を落としているように感じられます。今日も、かつてのポップ・スター、ギャリー・グリッターはイギリス国内に禁足、なんて報道が有ったばかり。

 >同じ事を言っても、相手がどう受け止めるか、それぞれの人の家庭環境、育ち方、で全く違います
 そうなんですよ。仰られたこと、丁度今日、カレッジで取り上げられた主題です。同じ業務を話しているつもりでも、Aが頭に描く業務は「四角」なのに対し、Bは「三角」を描いているかもしれな。その違いは、個々人の生活に影響を受けていると。また、双方にとって、そのイメイジは「現実」。でも、それでは仕事はなりたたない。では、どうしましょう?、と。
 その権威の方は、経歴から考えると講師として参加しても全く違和感ないですが、自ら学生と交わるほうを選んだそうです。
 僕は彼の専門分野については全くの門外漢ですが、リーダーシップ論で最近よく語られることの一つは、「How to mobilise people」ということだそうです。この考え方では、リーダーシップという「概念」は、一人の人にだけついて回るのではなく、状況によっては組織の中で移動することもありうる、という講義を無料で受けることができました。
2008.09.29 Mon 21:29 URL [ Edit ]

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